不当命名の植物

地面の上の草の多くがみずみずしさを失って枯れ草色になる中、妙に元気に花を咲かせている植物もあります。

花はかなり小さくて目立たないのですが、よく見ればかわいらしい花です。

この花の名前は・・ちょっとひどい名前なのですが、ハキダメギクと言います。
大正時代に日本に入ってきたとされる外来植物で、「ゴミ捨て場などによく見られるから」とその由来が紹介されています。だからってそれはないだろう・・というネーミングです。
この時期、西日に反射して黄金の輝きを見せるこの果実も、そんな植物の一つです。

ヘクソカズラです。あえて漢字で書くと屁糞葛・・さらにひどいですね。
この植物の強いにおいに由来するのですが、このにおいを悪臭と感じる人もいれば、わりといい匂いと感じる人もいます。良し悪しを一方的に決めつける不当なネーミングですが・・
一方で、この強烈な名前のおかげで記憶にとどまりやすいのも確かです。命名した人は確信犯とも言えるでしょう。ちなみに、別名はヤイトバナ。

上の写真は夏の開花のようすですが、この可憐な花を「灸(やいと)」、つまり、お灸をすえるようすに見立てたものです。
ところが今、生活の中でお灸(しかも「やいと」を使うやり方)を見ることがほとんどないため、「やいと」は死語になりつつあります。そうなると、意味が伝わりにくい名前より、ヘクソカズラはまんざらでもないのかもしれません。
ハキダメギクも、自然観察のネタとして重宝しています。
不当命名なんて、言えた義理ではないですね。
(生物担当学芸員 秋山)

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