美しい標本

昨年12月14日は、学芸員とともに博物館の動物資料の標本化を担ってくれている専門ボランティアである、相模原動物標本クラブの活動日でした。
この日、メンバーのお一人の標本士さんが、大きめの鳥の剥製の仕上げをしています。

ノスリというタカのなかまの本剥製ですが、ふつうの剥製とちょっと違います。片方の翼だけ広げ、さらにお腹のあたりから持ち手が出ています。これは、鳥の翼の機能や構造を解説するときのためにリクエストして作っていただいたものです。どの部分の造形もすばらしいのですが、特に、顔です。脊椎動物は顔も骨だけでなく、筋肉などさまざまな組織で細かな凹凸などをつけているので、剥製でそれを表現するのは極めて困難です。しかし・・

この手持ち剥製の造形は、私たちが野外で見るノスリそのものの顔です。間近で見ているとそのひとつひとつの工程に唸ってしまうのですが、細かいことはさておき、その技術の確かさをこの顔が物語っています。
ノスリを仕上げたあと、標本士さんはばらばらになった骨を取り出しました。

これも、鳥の骨格を学ぶ講座で使いたいと考えている、ハシブトガラスの全身骨格です。こちらは漂白処理までされていて、ばらばらの標本をこれから組み立てていくところです。
これまで行ってきた講座で、子どもから大人まで、一番興味を引く標本が骨格です。骨格を目の前にしたときの受講者のみなさんの目の輝きをまた見たくて、これもリクエストして製作をお願いしました。
確かな技術でつくられる標本は、機能に基づいた美しさを備えています。

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