博物館の窓について。

今日は1月最終日ですが、よく晴れて思いの外気温も上がり、気持ちの良い一日でした。

20140131-214914.jpg
休憩コーナー上の天窓。

20140131-215001.jpg
ホワイエから見上げる青空。
ところで先日、市役所の技術職職員の研修が博物館で開催されました。
何故、博物館が会場になったのかというと、博物館の設計に関わった方をお招きして、講演を聴き、実際に建物を見てみよう、という内容だったからです。
博物館の建物は建築業協会賞をはじめ、幾つもの賞を受した経歴があります。
とはいっても門外漢の私には、「森の中の博物館」というコンセプトは知っているものの、いまひとつその価値がわかりません。
今回、館内の案内をする事になったので、一緒にお話も聴かせていただきました。
色々な話題がありましたが、印象に残ったのは「『博物館』というと重々しいイメージがあるけれど、そういう建物にしたくなかった」という、冒頭の言葉でした。そう、これが一番のキーワードだったんですね。
資料の保護を考えれば、外光など取り入れず、密閉してしまった方が紫外線の影響もなく、温湿度管理も楽なはずです。それをわざわざ開放的なイメージで作ろうとしたのですから、色々大変だったろうな、と思います。
先程のホワイエの風景も「地下室っぽくならないように」設計した結果。たしかに、普通に作ったら、ただの地下室になってしまう空間です。

20140131-215249.jpg
そして、このエントランスの風景は「森の中を散策するイメージ」。そのために柱の強度を増して細くし、上端をグリル状の構造に突き抜けさせる事で、自然の木立のような空間とリズム感を生み出したのだそうです。そう言われるとなるほど、正面に見える中庭も、俄然、説得力をもって見えてきます。
他にも色々工夫があるのですが、それはそれとして、ちょっと見方が変わるだけで、建物も随分違って見えるんだなあ、と思いました。
そして実は一番驚いたのがこれ。

20140131-215450.jpg
駐車場に面した側にある、大きな窓。バックヤードを行き来するための階段の上にあります。なんでこんなお客さんの来ない場所に窓をつけるのか、どうしても気になったので、尋ねてみると、
「職員の人達が、収蔵庫にこもって仕事をしたあと、ここで開放的な気分になってくれると良いな、と思ったんです」という答えが返ってきました。
職員は裏方だと思っていたので、これは予想外でした。いや、なんというか、ありがとうございます。
今回、傍聴のような立場でしたが、大変ためになりました。
皆さんも博物館を訪れた時に、設計者の気持ちを考えながらゆっくりあたりを見渡してみてください。もしかしたら、何か新しい発見があるかも知れません。(学芸班 木村)

※タイトルは、博物館ホームページのコラムとは関係ありません。コラム「博物館の窓」はこちら:http://www.remus.dti.ne.jp/~sagami/90-00mado.htm

カテゴリー: 学芸員のひとりごと パーマリンク