仕事始めにやってきた貴重な資料

今朝、仕事始めにふさわしい(というより、とてつもなくビックな)連絡が入りました。
緑区の某所で、フクロウの死体が落ちているというのです。連絡をくれたのは、郷土の文化や自然を探求し、発信している城山エコミュージアムのメンバーの方です。早速駆けつけました。

死んでしまったフクロウはかわいそうでしたが、自然界では、死はいつもどんな場所にも存在します。自然の摂理に従って土に還るのがもっとも理にかなった死体の行く末ですが、これほど状態の良い標本はめったにありません。博物館としては、相模原の動物相を後世に残すための資料としてとして活用させていただくべく、拾得することにしました。
博物館へ持ち帰ると、早速、フクロウの研究をしている学生さんが駆けつけてきました。

あれこれ計測して、羽根や各部位の状態などを観察します。やっぱり、フクロウといえばこの足。羽毛の生えた指に、大きな爪。これで掴まれたら、ノネズミはイチコロですね。

翼を広げたところ。一見、ほかの猛禽類と違いがないのですが、微細な構造が異なります。また後日詳しく写真をアップしようと思いますがフクロウの羽毛は、飛翔中に音が出ない構造になっています。夜行性のフクロウが、食物であるネズミなどを闇の中で襲うのに都合がよいからです。

この構造は、生物模倣技術(バイオミメティクス)として、パンタグラフの空気抵抗による騒音の軽減に役立てられています。
ちなみに、こうした死体を扱っていると、ワラワラと羽毛の表面を動くものがいます。ハジラミの一種です。

この仲間は、羽毛の繊維を食べているようです。このフクロウは外傷がなく、かなり痩せていたので、衰弱死したものと思われます。衰弱した個体は、ハジラミが増えないようにするためのケアである羽づくろいをじゅうぶんできないため、たくさんのハジラミがついていることが多いのです。
今後、解剖して胃内容物を見たり、標本づくりのなかまたちとはく製にして、博物館資料として最大限に活用していきたいと思います。
(生物担当学芸員 秋山)

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