行政機関による障害者雇用水増しに関する声明

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報道によると約40年に渡り、複数の省庁で、法律で義務づけられた障害者の雇用割
合を過大に算出し、「水増し」していた疑いが出ている。
1960年、国や自治体に一定割合以上の障害者の雇用を求める障害者雇用率の制度
ができた。その後、1976年には民間企業にも義務づけられた。
 この目的は、心身に何らかの障害のある人たちの働く権利を保障し、それぞれの人
が能力を発揮し、生きがいを持って働ける社会を目指す。そんな理念に根ざす制度で
あったはずである。
 とりわけ国の機関や自治体には、民間企業より高い目標が設定されている。これは、
公が率先して取り組む姿勢を示すためだ。
 障害者の法定雇用率をめぐっては、2014年に厚労省所管の独立行政法人で、障
害者を多く雇ったように装う虚偽報告が発覚したにもかかわらず、昨年の国の行政機
関の平均雇用率は2・49%で、当時の法定雇用率2・3%を大半が達成していると
公表していた。
 ところがその数字も虚偽の可能性があり、共生社会の理念を軽視した行為と言うほ
かない。
 政府関係者は「中央省庁と自治体を合わせれば水増しは1万人規模に膨らむかもし
れない」と予測している。
 民間企業においては、行政より厳しい監督下の中、障害者雇用率の2,2%を必死
に目指して努力を行っている企業が多く存在しており、それを目指して採用も行って
いる実態がある。
 国や自治体の法定雇用率はこの4月から2・5%に引き上げられた。
 いくら目標を高く掲げたとしても、実態把握もできていないのでは「絵に描いた餅」
だ。徹底的に調べ、悪質な行為には厳正に対処するべきである。
 民間企業に厳しいルールを課しながら、範を示すべき中央省庁のなんとずさんなこ
とか。 これは氷山の一角にすぎないと考えられる。
 このような行為は、共生社会の理念を軽んじた行為と言うほかない。
厚生労働省の指針に定められた障害者手帳や医師の診断書などによる確認を怠り、対
象外の人を算入していたと考えられる。
 更に、行政機関の発表において「水増ししていたとは思っていなかった」とか「障
害者手帳を確認していなかった」など呆れてしまう言い訳に開いた口が塞がらない!
 なぜ中央省庁でずさんな算定がまかり通ったのか。
 民間企業との運用の違いも一因と思われる。
 従業員100人以上の企業が法定雇用率に達しない場合、その人数に応じて納付金
を課せられると共に、算定が正しく行われているか、定期的な訪問検査も実施されて
いる。
 こうしたチェックの仕組みは、公的機関にはない。チェック体制の在り方を見直す
べきではないだろうか!
 雇用される障害者のカウント方法にも問題はある。
 毎年実施されている6・1調査の中では身体、知的、精神の3障害の調査であって、
肢体、聴覚、視覚、内部などの内容には踏み込んでいない。正しく障害者の雇用を
調べるのであれば内容も今後検討することを求める者である。
 重度の障害者は「ダブルカウント」として一人で二人雇用されるという方式がある。
 例えば車いすの障害者は一人採用すれば障害者二人を採用したとカウントされる。
また、車いすの障害者は机に座ってしまえば健常者と変わらないと言っても過言で
はない。 移動に関しても、今ではバリアフリーの元段差は解消されたり、エレベー
ターが設置されるなど、一般の人にも便利なものであるため、その普及は進んでいる。
 断っておくが、これは車いすの障害者を揶揄しているわけではなく実態を述べてい
るものとご理解していただきたい。
 障害者の中でも、視覚障害者は重度の障害にあたる。そのため、視覚障害者を雇用
するためには、通勤をはじめ事務所内での配置やパソコンの音声ソフトの導入など、
企業側に求められる配慮がより多くなるケースもある。
 視覚障害者だけでなく、障害者の雇用に当たっては、障害者自身の努力はもちろん
であるが、雇用企業の障害に対する偏見・差別意識を取り除き、さらには職場環境な
どいろいろな合理的配慮が提供されたなら、障害者の雇用は本来難しいものではない
ことをこの機会に知ってもらいたいものだ。
 視覚障害者雇用にあたっては、企業としてもリスクを恐れず積極的に進めてもらい
たいと期待をしている中で、今回の許しがたい行政による正に虚偽報告の実態が明ら
かになった。
 その意味では国の責任として、 都道府県、市区町村、独立行政法人など全ての公
的機関を対象に調査を迅速に行い、速やかに結果を公表することを強く求めたい。
 また、これらの事件に対して、マスコミの動きが遅いと感じている。 報道機関は
事の重要性を理解し真相究明にペンやカメラを総動員して伝えるべきである。
 そして、こういった不正の影響で働く機会を奪われた障害者の雇用確保策や、就労
に関する要件やカウントの見直しなども含めて早急な対応を強く求めたい。
 行政を問いただす機関は国会である。実態調査と再発防止策の検討と、今後の障害
者雇用の在り方について、閉会中審査を開催し迅速に事態解決を行うよう強く求める。

2018年8月26日
神奈川県視覚障害者福祉協会
相模原市視覚障害者協会

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