’さっそう’ざっそうシリーズ(No.4 ハコベ)

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島崎藤村 千曲川旅情の歌

小諸なる 古城のほとり
雲白く 遊子(ゆうし)悲しむ
緑なす繁縷(はこべ)は萌えず
若草も籍(し)くによしなし
しろがねの 衾(ふすま)の岡辺(おかべ)
日に溶けて 淡雪(あわゆき)流る

あたゝかき 光はあれど
野に満つる 香(かおり)も知らず
浅くのみ 春は霞(かす)みて
麦の色 わずかに青し
旅人の 群(むれ)はいくつか
畠中(はたなか)の 道を急ぎぬ

暮行けば 浅間も見えず
歌哀し(かなし) 佐久(さく)の草笛
千曲川(ちくまがわ) いざよう波の
岸近き 宿にのぼりつ
濁(にご)り酒 濁れる飲みて
草枕 しばし慰(なぐさ)む


「いきなり藤村」で、びっくりなさったかも知れません。
写真の草の名前は、「ハコベ」。いやあ、「小説:紅ハコベ」のほうが身近だよ、と仰る方もおいででしょう。

実は、このハコベの撮影場所は、上を国道16号線が通る大河原陸橋の下なんです。車が通るたびに大きな音がしますし、千曲川の風情には合わないんですが、でも敢えて出演していただきました。

ハコベは、小鳥が(ニワトリも)好んで食べると紹介されています。何が「おいしい」のか、鳥にしか判らないことですが。・・・・
そういえば、小さい頃父親がカナリヤをツガイで飼って雛を育てていた事を思い出しました。エサには、何やら植物の種子をベースにした飼料、2日に1回はゆで卵(鶏卵)のごちそうです。黄身をカナリヤに、自分には白身をくれました。そして、ハコベの生野菜もあったかも知れません。

何かの折に触れて、過去の記憶が一瞬走馬灯のように蘇ることはよくある事です。楽しい事、辛い事が’ない交ぜ’になって、封印されていたかのような情景が立ち現れる。そんな一瞬があっても良いですね。

新型コロナの感染拡大が続いていますが、
’良きことをハコベと祈る今日の朝’
(さ)