ヤマトシロアリの結婚飛行 2025年(シロアリの群の画像あり)

5月11日、来週土曜日(5/17)に実施する「生きものミニサロン」の準備のために、お隣の樹林地内をサポートスタッフのみなさんと下見をしていました。すると、森の一角から無数の羽虫が湧き上がるように飛び立っています。先月末には動物担当学芸員がクロオオアリのオスの群飛の様子をブログにアップしていましたが、今回は、ヤマトシロアリでした(ちなみに、シロアリはアリの仲間ではありません)。

飛び立つヤマトシロアリの生殖虫

シロアリは家屋害虫として知られていますが(イエシロアリ)、ヤマトシロアリのように樹林地に普通に生息している種類もいて、倒木や落枝などを穴だらけにして分解を促進しています。
4月下旬から5月のおだやかな晴天の日の午前、ヤマトシロアリの生殖虫(有翅虫)は巣穴から出て、結婚飛行と呼ばれる群飛を行います。この日はちょうどそのタイミングに出会えたというわけです。

群飛前のヤマトシロアリの生殖虫 不思議なことに、少し離れた3つのコロニーからほぼ同時に飛び立っていました

(この動画に音声はありません)

この群飛はコロニーを増殖するためのものですが、なんと少し飛んだだけで、生殖虫はすぐに翅(はね)を落とします。そして、地上を歩きながらパートナーを探し、交尾します。

飛んでいるヤマトシロアリ 翅はこのあとすぐに落としてしまいます

じつは、上の動画を撮影したときは群飛の様子を撮影できるレンズを持っていなくてスマホで撮影したのですが、この後館内にレンズを取りに行き、すぐにもとの場所へ戻りました。しかし、すでに飛び立ちは終了していました。ほんの10数分のことだったようです。
かわりに、ヤマトシロアリの群に大喜びで?集まった捕食者たちを撮影できました。こちらはニホンカナヘビです。次々と大量のヤマトシロアリを食べていました。

ヤマトシロアリを捕らえたニホンカナヘビ

こちらはヒガシニホントカゲ。お腹がぱんぱんなのか、動きが鈍かったです。

ヒガシニホントカゲ

そして、アブの仲間も。

そこらじゅうで捕まっていました

近くのオニグモの巣にもたくさんのヤマトシロアリがかかっていました。

クモの巣にかかったヤマトシロアリ

飛び立ったと思ったら捕まるとは、はかない運命です。しかし、小さな野生動物たちのダイナミックな営みを目の当たりにして、楽しい下見となりました。
今月の「生きものミニサロン」は5月17日(土)12時から実施します。今回はサポートスタッフのみなさんの企画で楽しく自然観察します!お楽しみに。※シロアリの観察は行いません。
(生物担当学芸員)

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バードウイーク

5月10日から、愛鳥週間(バードウイーク)が始まりました。
バードウイークは、1947年に米国の鳥類学者、オリバーL・オースチンの提唱により4月10日をバードデイと定めたのが始まりです。しかし、4月初旬ではまだ積雪の残る地方があることから、その後ひと月遅らせて5月10日に、さらに1950年からは5月10日~16日をバードウイークとし、様々な普及啓発活動が行われてきました。
さて、そんな5月初旬、中央区のある公園近くで、小型のタカの仲間であるツミの鳴き声が聞こえてきました。車の通りも激しい市街地なのに、タカがいる・・。そう、ツミは2000年代に入るころから都市の緑地などへ繁殖分布を広げた、いわゆる「都市鳥」なのです。

ツミ(メス) 国内では一番小さなタカ

近年のツミの営巣場所を見ていると、あえて人通りのある通路の真上や、建物に近い樹木の中などに巣を作っています。これは、ツバメと同様に、人の存在によってカラスなどの天敵から巣を守る効果を狙っているようです。さらに、ツミの存在をあてにして営巣する鳥もいます。オナガです。

ツミのそばに“お約束どおり”にいたオナガ

ツミの巣の周りでオナガが営巣するのも、今や定番です。オナガはツミの狩りの対象となりうる体のサイズですが、それ以上に、巣の卵やヒナを狙うカラスの方が脅威のようです。ツミは巣の近くに来たカラスを追い払うので、その防衛力に期待しているのでしょう。「虎の威を借る狐」ならぬ「ツミの威を借るオナガ」です。
そして、博物館お隣の樹林ではキビタキがさえずりを聞かせてくれています。

キビタキ

キビタキも、2000年代に入ってから、都市の緑地の樹木が高木化、古木化したことに伴って繁殖分布を広げてきました。野鳥たちの暮らしぶりも、刻々と変化を続けています。バードウイークは、そんな野鳥たちを改めて見つめ直すきっかけになるとよいですね。
(生物担当学芸員)

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緑区三ケ木の村芝居

津久井地域では、かつて村芝居(芝居を生業として行うのではなく、地域の住民が自ら演じるもの)がさかんでした。特に昭和40年に終了した旧藤野町牧野の篠原歌舞伎が有名です。
しかし、各地の村芝居は次第に消滅していき、現在ではほとんど見られなくなっています。

その中で現在でも残されているものに、緑区の三ケ木青年会による村芝居があります。
これは、毎年4月29日に、「津久井中央地区春祭り敬老会」の演目の一つとして行われているものです。
大正期からはじまったと伝えられ、当初は三ケ木神社祭礼での奉納芝居として行われていました。

会場の三ケ木クラブ入口。のぼりには役者名が書かれています。

こちらの看板には、役と役者名が書かれています。役者名は各自で決めますが、例えば、栓太郎さんは水道屋さんで長男、畳治郎さんは畳屋さんで次男、など地域の人なら誰だか分かるようになっています。

現在では、脚本、演出、振り付け、小道具、衣装、音響など、すべて自分たちで作っています。
演目は毎回書き下ろされ、今年は「道志川犯科帳」が上演されました。オレオレ詐欺をテーマにした内容です。

公演の様子

オレオレ詐欺の注意喚起をされつつ、招待された地域の高齢者の方々は大笑いしながら、村芝居を楽しまれていました。

(民俗担当学芸員)

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路傍の花

5月に入り、二十四節気の立夏(5月6日)も過ぎました。路傍の草花も元気いっぱいです。相模原市役所(中央区)のそばの駐車場脇では、こんな花が咲いていました。

キツネアザミ

キツネアザミです。もともと、日当たりの良い農耕地など草原に生える植物ですが、ここ数年、市街地でも目立つようになりました。
こちらはユウゲショウです。かわいらしいピンク色の花に、外来植物ながら愛着がわきます。

ユウゲショウ

コヒルガオもあちこちで開花しています。

コヒルガオ

こちらは地味ながら形がおもしろい、イネ科のコバンソウです。

コバンソウ

博物館周辺では、ハリエンジュも咲き出しています。

ハリエンジュ

数日おきに雨も降り、植物がぐんぐん伸びてどんどん花が咲く季節になりました。
(生物担当学芸員)

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ツチハンミョウ

市内の林道でツチハンミョウのなかまを見つけました。
どうやらヒメツチハンミョウという種のようです。

ヒメツチハンミョウ(雌)

この個体は雌です。
大きな腹部にはたくさんの卵が詰まっているのでしょう。

ツチハンミョウは、いわゆる「ハンミョウ」のなかま(下の写真のコニワハンミョウなど)とは異なるグループの昆虫です。
素早く動くハンミョウとは異なり、ツチハンミョウはのんびりと歩きます。

「ハンミョウ」のなかま、コニワハンミョウ

数メートル先に、今度は雄がいました。
ツチハンミョウのなかまはの雄の触角は、途中が膨らんだ変わった形をしています。
この点で簡単に雌雄を判別することができます。

ヒメツチハンミョウ(雄)。触角の形に注目!

この個体を木の枝でつついてみると、黄色い液体を出しました。

カンタリジンを含む液体

この液体には、カンタリジンという有毒物質が含まれています。
ツチハンミョウのゆっくりとした動きのヒミツは、この毒を持っているがゆえの自信…なのかもしれません。
(動物担当学芸員)

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夜の散策

4月末のある日の夜、市内の里山を散策しました。
まずは山ぎわの池で、ヤマアカガエルがじっとしているのを見つけました。

ヤマアカガエル

しばらく観察すると、ゆっくりと池の中に潜っていきました。

つづいて、木の枝にとまっていたのはオオミズアオです。

オオミズアオ

水色のような、黄緑のような、美しい色をした大型のガです。

最後に見つけたのは、ミイデラゴミムシ。
敵に襲われると高温のガスをおしりから出す、「へっぴり虫」として有名な虫です。

ミイデラゴミムシ

写真を撮ることはできせんでしたが、タヌキの姿も見かけました。
昼間とは違う生き物を見られて楽しいですね。
(動物担当学芸員)

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博物館で端午の節句!

本日5月5日は、お子さまの健やかな成長を願う「こどもの日」。「端午の節句」ともいい、男の子の初節句のお祝いには鯉のぼりや五月人形などが贈られ、柏餅やちまきを食べて祝う行事として親しまれています。今夜のお風呂はショウブ湯に浸かるというご家庭もあるのではないでしょうか?

当館でも、情報サービスコーナー前に五月人形や鎧兜(よろいかぶと)を展示しています。

ゴールデンウイーク後半の5月5日(月・祝)・6日(火・休)の2日間、当館ではこどもの日のイベント「博物館で端午の節句!」を実施しています。
これは、先月からエントランスで展示している「博物館で五月人形」の関連イベントとして、当館の博物館ボランティア「市民学芸員」が企画したものです。

朝からイベントの準備をする市民学芸員さん。気合十分です!

「博物館で端午の節句!」では、3つのイベントをお楽しみいただけます。
まずは、展示中の五月人形と一緒に記念撮影できるフォトスポットです。イベント期間中は、お子さまが被れるサイズの紙やフェルト製の兜(かぶと)をご用意しています。

兜をかぶって、五月人形と一緒に仲良く記念撮影!

続いて、お馴染みの「ぶんぶんゴマで遊ぼう!」。昨年度の学習資料展や「博物館でひな祭り!」でも大変好評でした。初めてのぶんぶんゴマ遊びでもご安心を!市民学芸員の皆さんが上手な回し方を伝授します。

思い思いの色使いでぶんぶんゴマを完成させます。

そして、市民学芸員「紙芝居クラブ」による紙芝居を、午前11時50分からと午後2時からの1日2回上演します。演目は、鯉のぼりやこどもの日にちなんだ端午の節句にふさわしいものとなっています。最後までご覧いただくと、「なぜ『こどもの日』には鯉のぼりを掲げるの?」という疑問が解決するかもしれません。

じっくりお話を聞いています。

明日が連休最終日という方も多いと思いますが、市内はあいにくの雨予報です。「博物館で端午の節句!」は明日も午前11時から午後3時まで実施しますので、雨でも楽しい博物館へぜひお出かけください!

(歴史担当学芸員)

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カメムシ2種

昆虫調査の折、面白いカメムシを2種、観察しました。

キバネアシブトマキバサシガメ

まずは、キバネアシブトマキバサシガメ。
地面を素早く歩くカメムシで、「キバネ」の名がつきますが、この個体はオレンジの翅(はね)をしています。
見かける機会が多いカメムシではないので、嬉しい出会いでした。

イボヒラタカメムシ

続いて、イボヒラタカメムシ。
シロハカワラタケというきのこが好きで、そのきのこが生えた枯れ木の裏などでよく見つかります。
普通種ながら、武骨でとてもかっこいい種です。
同じ枯れ木に幼虫もいました。

イボヒラタカメムシの幼虫

成虫とは異なり、体色が白いのが特徴です。
(動物担当学芸員)

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天文企画展「プラネタリウムの歴史」

4月15日から当館1F特別展示室の奥側にて、天文企画展「プラネタリウムの歴史」が始まりました。

概要は(株)五藤光学研究所がこれまで製作したプラネタリウムの実物機器をはじめ、昨年12月まで当館で稼働していた光学式投映機「GSS-HELIOS」の本体や、日本におけるプラネタリウムの歴史を解説するパネルを展示しています。

「プラネタリウムの歴史」展示会場

これは当館プラネタリウムが現在リニューアル工事期間中(~令和7年7月中旬)であることや、世界で初めて誕生した光学式投映機(カールツァイス社製)がドイツ博物館に常設公開された1925年5月から、ちょうど100年を迎えたこの時期に、プラネタリウムのこれまでの歴史を知ってもらう内容となっています。

当館プラネタリウムで昨年12月まで稼働していた光学式投映機「GSS-HELIOS」本体の展示

さらに、当館プラネタリウムリニューアル工事の様子を知ることができる映像も大型スクリーンで紹介中です。

ドーム内側のスクリーンが新たに設置されている工事の様子

今回は関連行事として、5月18日(日)および6月21日(土)午前11時〜と午後2時〜の各30分程度で、プラネタリウム製造技術者による実物機器の解説を行うギャラリートーク「プラネタリウムの仕組み」を予定しています。お申込み不要(無料)ですので、ぜひお気軽に会場の特別展示室にお越しください。

4月19日に開催したギャラリートークの様子 (GSS-HELIOSのカバーを外し、恒星投映筒を取り出しています)

また、本企画展は6月29日(日)まで開催しています。

 

そして、プラネタリウムのリニューアルオープンの日程が決まりました!
7月17日(木)から一般公開となります。詳しくはこちらをご覧ください。

プラネタリウム改修後イメージ

4月末時点でのプラネタリウム内の様子(新たな投映機や座席はこれから設置予定)

たくさんのご来場をお待ちしております。

(天文担当学芸員)

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小山中でタンポポの授業

5月1日、市内緑区の小山中学校でタンポポの授業を行いました。これは、法務省矯正局が、同校と小山小学校が旧神奈川医療少年院跡地に隣接することから、少年院の敷地内にあった在来種のカントウタンポポを、再整備が終了するまで両校などへ避難させる事業の一環として行ったものです。

カントウタンポポ(写真は博物館お隣の樹林地の株)

小山中の環境委員会の生徒さん向けに、カントウタンポポと、現在路傍などに広く分布する雑種タンポポの見分け方を解説しました。

生育環境の違いなどを説明

雑種タンポポについては先月、このブログでも紹介しました。今年度の環境委員が発足して間もないため、今年初めてタンポポに関わる生徒さんもいます。そもそもタンポポってどんな植物なの?というところから始まり、雑種のできるしくみと、見分け方、そして、なぜこのような活動を進めているのかについて、生物多様性の観点から解説しました。その後、カントウタンポポを栽培している花壇で、花粉を採集します。

中庭の花壇で花粉を採集

花壇のように人の手が大きく加わっている場所では、雑種タンポポが入っいる可能性が高く、実際、この日に咲いていた花の特徴は雑種のものでした。
採集した花粉を室内へ持ち帰り、早速顕微鏡観察します。

中学生なので顕微鏡の扱い方は慣れたものでした

その結果、採集したすべての花の花粉の大きさが不揃いで、雑種と判断されました。

雑種タンポポの花(写真は博物館駐車場の株)

すでに咲き終わっている株も多く、花壇のタンポポがすべて雑種かどうかわかりません。カントウタンポポはすでに花期が終わっている可能性があるため、来年の早春にまた同じ確認作業を行うようアドバイスしました。生物多様性の保全のための活動は、常に科学的に検証しつつ進める必要があります。もし、花壇のタンポポがすべて雑種に置き換わっていたら、少年院跡地から補充する必要がありますし、どのような対策が必要か検討しなくてはいけません。今後、そうしたプロセスについても生徒さんたちと考えていきたいと思います。
(生物担当学芸員)

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