菰巻き(こもまき)の虫観察

虫が動き出すといわれる「啓蟄」が過ぎ、虫たちもそろそろ越冬からあける時期になってきました。
先週、横浜市にある高校と横浜国立大学で、虫たちの冬越し場所として設置した「菰巻き(こもまき)」を開け、中にいる虫を観察するイベントが実施されました。
※横浜国立大学のものは、11月に実施した観察会で設置した菰です。

菰巻き

木にまかれた菰を室内に持ち帰り、藁の中にどんな虫が隠れているか、探していきます。

中の虫を探します

藁の中から出てくる虫たちに、会場は大盛り上がり。
ワラジムシやダンゴムシの数が多く、テントウムシやゴミムシダマシ、ゴキブリのなかまなどの昆虫も混じる、という結果になりました。

たくさんの虫が見つかりました

どの仲間かな?

中には、要注意な虫たちも。
大きなムカデや、マツの害虫であるマツカレハの幼虫(毒のある毛虫)です。

ムカデ

マツカレハ

菰巻きに入る虫たちの観察は動物担当学芸員の私も初めての経験だったので、とても勉強になりました。
(動物担当学芸員)

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ミミガタテンナンショウの芽生え

3月18日、博物館の中庭に植えてあるミミガタテンナンショウが芽生えているのを見つけました。

ミミガタテンナンショウの芽生え(2025年3月18日)

ちなみに昨年のちょうど同じ日に撮影した同じ株の写真があったので比較してみると・・

昨年の同じ日の同じ株(2024年3月18日)

昨年は咲き始めていました。今年はタンポポをはじめとして春の草花の開花が遅く、なかなか咲いてくれませんが、ミミガタテンナンショウはあと数日くらいで花が咲き出しそうです。
ミミガタテンナンショウは神奈川県内の分布が偏っていて、相模川を境に西側の山地や丘陵地では普通に見られますが、東側にはほとんど分布していません。その中で、相模原市の低地の緑地では相模川より東側であるにも関わらず、比較的普通に分布しています。
博物館周辺の樹林にも多いので、これからニョキニョキと咲き出すはずです。
(生物担当学芸員)

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生きものミニサロン「顕微鏡でスギの花粉を見てやろう!」を実施しました

3月15日、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。
今回のテーマは「顕微鏡でスギの花粉を見てやろう!」です。花粉症の原因物質として社会的な問題となっているスギ花粉ですが、実際にそれがどのような形をしているのか見たことのある人は少ないようなので、顕微鏡で観察をしてみました。まずは、花粉の採集です。博物館に停めてある公用車のフロントガラスに、セロハンテープをくっつけるだけ。

 

フロントガラスに新鮮な?花粉がたくさんついています

軽く貼り付けます

それを、スライドグラスの大きさに切ってパンチで穴をあけたボール紙に貼り付けます。

スライドグラスの代わりのダンボール紙に貼り付けます

そして、顕微鏡へのせます。はじめはピント合わせなどに慣れないため苦戦していましたが、次第にバッチリ合わせられるようになりました。

見えた!

スギの花粉は球形で、パピラと呼ばれる突起が一つあるのが特徴です。そして、フロントガラスにつもっている時には黄色っぽく見えましたが、顕微鏡で見ると透明です。

スギの花粉 大きさは約40マイクロメートル

みなさん、しっかりと観察して、スギ花粉の“正体”をつかむことができました。慣れたところで、博物館お隣の樹林内でなぜか咲いていたヒメリュウキンカ(園芸種)の花粉も見てみました。スギと違い、黄色くてラグビーボールのような形をしています。参加者のお一人は、「お米みたいな形!」と言っていました。

ヒメリュウキンカの花粉

花粉以外にも、ミズキの切り株に染み出た樹液が発酵した、スライム・フラックスと呼ばれる菌類のコロニーが見られたので、これもしっかり観察。

ペリペリとめくる、勇気あるお子さんも

においをかいだお子さんが、ミカンみたいなにおいがする!と教えてくれました。

ちょっと甘いにおいがしました

最後に、今日の観察のポイントを紹介した「こんな観察ししたね!カード」を配布しました。

こんな観察したね!カード

【参加者のみなさまへのお詫び】このカードのスギ花粉の解説文で、「1つの雌花から約40万粒の花粉が・・」と書いてしまいましたが「雄花から約40万粒」が正解です。サポートスタッフのヨシ君が見つけて指摘してくれました。お詫びして訂正します。

さて、今年度の生きものミニサロンは今回が最終となりますが、来年度も引き続き、第三土曜日を中心に実施する予定です(数回、第三以外の実施となります)。お楽しみに!
(生物担当学芸員)

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キブシが開花

3月14日、博物館お隣の樹林でキブシが開花しているのを確認しました。

開花したキブシ

キブシは春一番に木に咲く花の一つです。かんざしのような形の花がとてもかわいらしいですね。

かんざしのように連なって咲きます

まだつぼみの方が多いので、これからしばらく楽しめそうです。
キブシと名前が似ていますが、こちらのコブシはまだつぼみのままです。真冬に比べるとだいぶ大きくなってきたので、間もなく開花となるでしょう。

コブシのつぼみ

週末はまた気温が下がる予報ですが、ひとたび開花が進むと後戻りすることはありませんので、見逃さないよう気を付けようと思います。
(生物担当学芸員)

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相模原市立博物館の開館30周年記念ロゴが決定しました!

相模原市立博物館にとって、本年は特別な年です。平成7(1995)、相模原市中央区高根の地にオープンした当館は、令和7(2025)年11月20日をもって開館30年を迎えます。

平成7(1995)年、開館当初の相模原市立博物館(当館所蔵)

次年度の令和7年度からは本格的に開館30周年記念事業が動き出すため、日々様々な準備を進めているところですが、このたび、当館の開館30周年を象徴するロゴマークが決定したことをここに報告いたします!

相模原市立博物館開館30周年記念ロゴマーク

ロゴマークをデザインしていただいたikedariさんのコメントを紹介します。

ikedariさん:博物館の特徴である円筒の建物を「0」の部分に落とし込んだロゴデザインです。「3」はふたつの円筒が交差する形で描きました。この交差する円筒は、「人文」「自然」という2つの分野が交わる「博物館という場所」を表現しています。カラーリングはそれぞれ黄土色=地面・土、緑=自然、青=空・宇宙をイメージしています。

とても素敵に仕上げていただいたこちらのロゴマークは、開館30周年記念事業に関する刊行物・制作物や当館の各SNS等、様々な場面で広く活用します。
このブログをご覧の皆さまにも、ぜひ当館の開館30周年をご一緒に盛り上げていただきたいと思います。

現在計画中の開館30周年記念事業についても、詳細をホームページ等で順次お知らせいたしますので、どうぞ楽しみにお待ちください!

(歴史担当学芸員)

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早春の林道

3月10日、緑区のある林道を歩きました。お天気が良かったこともあり気温が上がり、テングチョウがあちらこちらで飛び交っていました。

テングチョウ

早いスピードで直線的に飛びますが、すぐに日なたにとまります。昆虫にとってはまだまだ寒いのでしょう。
ミソサザイはさえずりを聞かせてくれていました。

ミソサザイ 尾をピンと立てる姿勢が特徴です

日本国内でも最小クラスの大きさの鳥ですが、さえずりの声量は上位に入ります。この小さな体でどうやってこんな大きな鳴き声を出せるのか不思議です。
林道からの帰り道、緑区鳥屋地区の、フクジュソウの群生地に寄りました。

フクジュソウ

ここは地区のみなさんが保護し、開花期には公開している場所です。午後の一番よく開いている時間帯だったこともあり、見事な咲きっぷりでした。

数えきれないくらいの花が咲いていました

冬と春が交差するような毎日ですが、春がどんどんと押し寄せています。
(生物担当学芸員)

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自然・歴史展示室を探検!

3月9日(日)、当館の自然・歴史展示室で学芸員による展示解説を実施しました。この展示解説は、ボーノ相模大野(南区相模大野)内に拠点を置くユニコムプラザさがみはらからの依頼によるもので、当館学芸員が講師を務めた「さがみはら地域づくり大学」修了生の皆さんが「さがみはら地域探検隊」と称して参加されました。
昨年7月に実施した「さがみはら地域づくり大学」の講義の様子は、このブログでも紹介しています。

今回は“相模原を学び、世界に誇る相模原の先端宇宙産業「JAXA」を体験!”をテーマに、当館とお向かいにあるJAXA相模原キャンパスを探検場所として選んだそうです。
この日はJAXA宇宙科学探査交流棟の見学を終え、当館特別展示室で行っているJAXA連携ミニ展示ミニプラネタリウムを観覧後、展示解説をスタートしました。

展示室へ向かう前に、エントランスのはやぶさ2模型の前で導入のお話。

地域の総合博物館である当館の自然・歴史展示室は、1つの展示室の中に地質、考古、歴史、民俗、生物の5分野が同居しています。(※天文分野は別室ですが、工事の都合により本年7月中旬まで休室しています。)
時間の都合上、各分野の特徴をポイントで解説することになりましたが、どのコーナーも皆さん熱心に見学されていました。また、時折「さがみはら地域づくり大学」の講義内容を思い出しながら解説を聴いていただいている様子も。さすが、地域への関心が高い「さがみはら地域探検隊」のメンバーです。

市域の仏教遺産について解説しています。

相模原を語るうえで欠かせない養蚕のコーナー

ここでは、段丘崖の自然についてお話ししました。

ラストは、参加した皆さんゆかりの相模大野のまちの変遷の模型です。

約40分の解説後、参加いただいた方には参加証をプレゼントして終了となりました。

この日の日付を入れて参加証をプレゼントしました!

普段の出前講座でもできるだけ博物館資料の紹介を交えるようにしていますが、やはり館外で実施するとなると実物資料を持ち出すことは難しく、写真による説明に留まる場合がほとんどです。
しかし、今回は展示室で実物を目の前に解説したため、より理解を深めていただけたように思います。実際に来館して展示見学する醍醐味ですね。

この探検を機に、参加者の皆さんにとって新たな発見があれば幸いです。

(歴史担当学芸員)

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境川でバードウォッチング その3 美しくカワイイ鳥たち

3月8日に境川で行ったバードウォッチングの様子を2回の記事でお伝えしました。じっくりと観察したため、いろいろご紹介してきましたが、3回目の今回で終了します。
今回は間近でじっくり見て改めて美しさやかわいらしさを感じた野鳥たちです。まずは、冬鳥を代表してジョウビタキです。この日は美しいオスも、かわいいメスもじっくりと観察できました。

ジョウビタキ オス

ジョウビタキ メス

こちらはハシボソガラスです。青光りした光沢が美しくて、全員でうっとりと観察しました。

青光りしたハシボソガラスの羽色

途中、畑ではムクドリとヒヨドリのいさかいを観察しました。地面で採食していたムクドリに、突如ヒヨドリが攻撃をしかけます。

ムクドリに対峙するヒヨドリ

なぜかと思って見ていたら、ヒヨドリの大好物であるブロッコリーの葉の近くにムクドリが寄って行ったからでした。ムクドリを追い払ったヒヨドリの表情はちょっとりりしいですね。

畑のブロッコリーにとまるヒヨドリ

ただし、ムクドリはブロッコリーの葉には興味がありません。ただ地面で小さな虫かなにか食べていただけのムクドリにとっては、はた迷惑な攻撃だったかもしれませんね。
この日、一番盛り上がったのはこちらです。

鉄塔の上にとまっていたのは・・

高圧鉄塔の上にスリムな猛禽がビシっととまっている!と思って望遠鏡で確かめると・・タカのデコイでした・・カラスなどが巣を作って送電に悪影響が出ないよう、こうしたデコイを設置しているようです。よく見れば作り物とわかりますが、ちょっと見ただけでは本物に見えるため、「やられた~」となりました。

肌寒いお天気でしたが、ニワトコはすでに冬芽が開き始めていました。

崩芽したニワトコ

早春の境川で、のんびりじっくりバードウォッチングを楽しむことができました。
(生物担当学芸員)

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縄文ムラの地形観察〜段丘を歩いて湧水を探ろう〜

3月9日に相模原市の文化財保護課の主催事業「縄文ムラの地形観察〜谷戸(やと)を歩いて湧き水をたどろう〜」が開催され、相模原市南区の勝坂遺跡公園周辺の地形や地層を案内しました。この辺りは坂や谷が多く,複雑な地形をしています。地形は複雑ですが、比較的短時間で相模野台地の特徴的な地形・地質をほとんど見ることができる“お得”な場所です。

野外観察の前に、相模野台地の地形・地質の概要を、30分程度、お話ししてから出かけました。

相模野台地は平坦面が広い階段状の地形をしています。相模原市内の相模野台地は大きく上段(相模原段丘)、中段(田名原段丘)、下段(陽原(みなはら)段丘)の3つに分けられますが、ごく狭い範囲に上段と中段の間の段(中津原段丘)が見られる場所があります。各段丘の平坦面はそれぞれの段丘の名前をつけて「相模原面」などと呼びます。勝坂遺跡公園のある平坦面は中津原面です。

勝坂遺跡公園から崖を下ると、何ヶ所かで湧き水が見られます。そのうちの一つ、有鹿(あるか)神社の湧き水を観察しました。

勝坂遺跡公園の下、鳩川の両岸にある平坦面は陽原面です。鳩川の川底にある礫(れき)は、約2万年前に相模川が運んできたもので、陽原段丘をつくっている礫層です。

再び中津原面に登る途中の崖で中津原段丘をつくる関東ローム層を観察しました。ここでは、約2万5千年前に富士山の噴火により噴出された溶岩の破片の層や、約3万年前に姶良(あいら)カルデラの超巨大噴火により噴出された火山灰が含まれる部分が見られます。姶良カルデラは今の鹿児島県の桜島あたりにあった火山です。相模原では姶良カルデラからの火山灰は肉眼で見ることはできませんが、顕微鏡観察で確認することができます。

中津原面の上から相模川対岸の中津原面を観察しました。厚木市や愛川町の工業団地がある平坦面が中津原面です。

中津原面からの坂道を登ると相模原面です。下の写真に写っているのは相模原段丘の崖です。

最後に、もう一度、陽原面(下段)まで下りて、小さな川がつくった谷地形を観察しました。この川も湧き水が水源です。下の写真では右端の崖は田名原段丘の崖、左側の崖が中津原段丘の崖です。谷を挟んで高さの違う段丘が見られます。

お天気も良く、野外観察をするのちょうど良い陽気でした。相模野台地の地形と地質を堪能できるだけでなく、縄文時代の人たちが見ていた風景を観察しながら歩くことで、縄文人の暮らしぶりも感じることができたのではないでしょうか。

(地質担当学芸員)

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境川でバードウォッチング その2 コサギのプルプル採食

3月8日のバードウォッチングは野鳥たちのいろいろな行動を見られたので、ちょっとずつ紹介します。2回目は水鳥たちの様子で、まずはコサギのプルプル採食です。

流路に降り立つコサギ

これは、コサギが水辺を歩いて食べ物を探すときに、足を小刻みに震わせて水底に潜んでいる動物をあぶり出して捕らえる採食方法です。動画も録れたので紹介します。3月に入り、コサギも繁殖羽になっています。背中側の飾り羽も小刻みに震えているのでとてもわかりやすいですね。

上の動画にも登場しましたが、バンが2羽、私たちが進む方向へ一緒に歩いたり泳いだりして採食していたので、長い時間じっくり観察できました。

バン

カモ類は2羽ずつペアで見られることが多く、こちらのオナガガモも、オスとメスが一緒に行動していたので番(つがい)が成立しているのでしょう。

オナガガモ オス(左)とメス(右)

こちらはイソシギです。尾を振りながら浅瀬を歩いて採食していました。

イソシギ

そして、境川と言えばカワセミです。ほぼ100パーセントの確立で見られるので、探鳥会に花を添えてくれます。

カワセミ

まだまだ紹介したい写真があるので、このシリーズはもう少し続きます。
(生物担当学芸員)

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