地面の上の台風の痕

博物館の前には大きなクヌギの木があります。博物館の前庭にもありますし、お向かいのJAXAのフェンス沿いにもほんとうに大きな木が何本もあります。先日の台風では、こうした大木から無数の枝がちぎり落とされました。

甲虫類のハイイロチョッキリなどもこの時期、同じような感じで枝を落とすので、両方混じっているようです。枝の切り口がきれいで、ドングリが数個ついた枝先ならチョッキリ、まさしくちぎったように大ぶりの枝が落ちていれば、台風のしわざとなります。台風で落とされた枝には、チョッキリも産卵する気にならないような、まだ未熟なドングリがたくさんついています。クヌギ特有の、もじゃもじゃの殻斗が目印です。

ドングリだけが振り落とされたものも。

ちいさいドングリだと思って近づいてみると・・どうも雰囲気が違います。

虫こぶでした!クヌギエダイガフシという長い名の虫こぶ(虫えい)です。虫こぶの名前は、宿主の植物名+虫こぶを作る部位+虫こぶの形状+フシ(虫こぶのこと)の順で命名するきまりがあります。なので、どうしても長くなりますね。この虫こぶの主は、クヌギエダイガタマバエというそうです。ちなみにこの虫こぶから出てくる成虫はすべてメスだとか!単為生殖して花芽を持つ枝に産卵すると、次の世代は別の形の虫こぶを作り、そこで両性が出てくるそうです。なんとも不思議な生態です。

近くにはシラカシの若いドングリも落ちていました。

去年は、相模原近辺ではドングリの実成りがあまりよくありませんでしたが、今年はなかなか良さそうです。道路の上の台風の痕から、そんなことも見えてきました。

(生物担当学芸員 秋山)

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