紅白のミズヒキ

水引(みずひき)というと、祝儀袋などに結ばれた紅白、あるいは金銀の紐のことを指します。植物にもこの名が使われていて、ミズヒキというタデ科の植物が博物館のまわりにもたくさん生えています。花はとても小さいのですが、紅白のツートンカラーが美しく、長く伸びた花序(かじょ=花の配列の様子)を水引に見立てたものと思われます。

水引の花

花後に実った果実は、紅白が上下に分かれるので、上から見ると紅色ですが、下から見ると白く見えます。

ミズヒキ 上から見たところ

同じ株の花序を裏返して見たところ

このミズヒキには白花の品種も知られています。花に紅色の部分が無く、純白の花です。

ギンミズヒキの花

品種名は、ギンミズヒキと呼ばれます。こちらは上から見ても白いのが特徴です。

ギンミズヒキ 上から見たところ

さて、ここで少々紛らわしい種名を紹介します。キンミズヒキ(バラ科)です。ギンミズヒキのすぐそばで咲いていたキンミズヒキの花はこちらです。やはり、長く伸びた花序にたくさんの黄色い花がつきます。

キンミズヒキの花

植物の世界では、黄色をしばしば「金」と表現します。やはり金と呼んだ方が縁起が良さそうだからでしょう。いま、芳香を放っているキンモクセイもその一つです。それにしても、水引では金銀とセットで扱われるのに、キンミズヒキとギンミズヒキは属する科が異なる縁遠い植物です。一方で、どちらの植物も“ひっつき虫”でもあります。キンミズヒキは果実が実るとこんな感じです。

キンミズヒキの果実

動物の毛や衣服にしっかりひっつきます。ミズヒキやギンミズヒキはというと、ひっかかる程度であまりひっつく意思を感じません。

ミズヒキの若い果実

いずれにしても、古くから身近で親しまれてきたからこその種名なのは間違いありませんね。
(生物担当学芸員)

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