民俗分野ブログ「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.2)

5月に入っての年中行事というと、「端午(たんご)の節供」が思い浮かびます。第2回目は、平成元年(1989)の五月節供の写真を掲載します。なお、年中行事も神にお供えものをする機会ということで、ここでは「節句」ではなく「節供」と記します。

 教育委員会では、昭和57年(1982)度から平成6年(1994)まで、毎年さまざまな民俗を映像で記録する「文化財記録映画」を製作しており、毎回、多くの市民の皆様のご協力を得て撮影されました。
今回はその第8作目「相模原の年中行事」での撮影です。記録映画では、映像とともに写真も撮影しましたが、当時は記録用にモノクロ(白黒)のフィルムを使うことも多く、今回の紹介はカラー写真ではないことをお断りします。

下の写真は中央区上溝で、当時、ごくわずかに残っていた草ぶき屋根の家をお借りして撮影が行われました。梯子を上った人が、草ぶき屋根の上に何かをさし込んでいます。

さしているのは植物の菖蒲(しょうぶ)です。五月節供では風呂に菖蒲の葉を入れることが有名で、このほかに「菖蒲屋根」といって、菖蒲を屋根にさしたり、軒先に付けたりすることがありました。津久井地域からの報告もあり、広く行われていたようですが、撮影当時はすでにそうした言い伝えはかなり薄れていて、この写真は再現です。上溝などでは、昭和の初めころまではそうした風習が見られたと言います。

五月の節供というと、何といっても外に飾る幟(のぼり)です。よく見られる鯉幟のほかに、縦に長く、勇ましい武士などが描かれた外幟もありました。写真の中の小さいものは、悪霊や病気を払う神とされる「鍾馗」(しょうき)が描かれています。こうした鯉幟や外幟は男の子が生まれると、嫁の実家や親戚から贈られました。撮影は南区上鶴間本町です。

年中行事にはいろいろな食べ物を作り、五月節供を代表するのが柏餅(かしわもち)です。米粉を練り、小豆餡(あん)を入れて蒸した柏餅は、食べるだけでなく、これも親戚などから贈られた五月人形にも供えます。
上側の写真では柏の葉で包んでおり、下側はできた柏餅を人形にお供えしているところです。店舗で売られることも多い柏餅ですが、当時、手作りしていた緑区下九沢の方にお願いして撮影しました。

文化財記録映画は全部で13作品あり、そのテーマや内容は撮影当時に実際に行われていたものから、今回の菖蒲屋根のようにかつての様子を再現したものなど、さまざまです。
※文化財記録映画は、博物館でビデオテープでの視聴が、また、視聴覚ライブラリーでDVDでの視聴・貸し出しができます(現在休館中)。

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