ホタルブクロにとってホタルはお呼びでない?

博物館のまわりでホタルブクロの仲間がたくさん咲いています。

ヤマホタルブクロの花

ホタルがこの花に入り込んで光ると、あんどんのようになって美しそう・・そんな風流な想像からこの花は名付けられました。実際、昔の人はそんな風にホタルを入れて遊ぶのを楽しんだのかもしれません。
しかし、ホタルブクロにとってホタルは正式な?お客ではありません。ホタルブクロが来て欲しい昆虫は、マルハナバチ。花粉を運んでもらう仕組みを整えて、マルハナバチを待っています。
ホタルブクロの花を一つずつ見て行くと、花冠(かかん)の内部中央に伸びた柱頭の形に違いがあるのがわかります。下の写真は、咲き始めのもの。

柱頭がまだ開いていない花(咲き始め)

花が開いて時間が経つと、このようになります。

柱頭が開いた花(少し時間が経った花)

柱頭の先が3つに割れて開いています。柱頭はこの状態になると、受粉します。このような柱頭の花の奥側を見ると、縮れた雄しべが見えます。
すでに雄しべは役目を終えているのです。

柱頭が開いた花の奥には、役目を終えた雄しべが

じつは、花が咲き始める時、先に雄しべが成熟して、花柱(柱頭がついた雌しべの柄)の下の方に花粉をたくさん付けます。そして、蜜を求めて訪れたマルハナバチは、その体に合わせたようにピッタリ狭い花の中を動き回り、体中に花粉をつけますが、その花の柱頭はまだ開いていないので、受粉しません。他の花を訪れた時、その花の柱頭が開いているとそちらへ花粉が着くことになります。
つまり、これは自家受粉を避けるしくみで、雌雄異熟(しゆういじゅく)と呼んでいます。両性花ではよく見られる性質で、ホタルブクロのように雄しべが先なら雄性先熟、雌しべが先なら雌性先熟となります。
ホタルが入ってくれればよいのに・・という人間の優雅な思惑とは裏腹に、ホタルブクロの花にはしたたかな繁殖戦略が練られているのです。

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