「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No54・養蚕の祈願①)

本シリーズNo.50で彼岸に行われた念仏講、前回のNo.53では新築された家での家見(いえみ)念仏を紹介しましたが、地域のもっとも重要な産業であった養蚕のために女性が集まって講を行い、お祈りすることも各地で見られました。

最初の写真は、昭和58年(1983)度制作の文化財記録映画・第2作目の「さがみはらの養蚕」において、緑区相原で撮影された蚕影講(こかげこう)です。4月の養蚕の作業が始まる前に、蚕の神である蚕影様の掛け軸の前で、念仏講のように数珠(じゅず)を回しながら行っています。

次の写真は、昭和59年(1984)4月18日に中央区田名・堀之内地区での撮影で、この地区では蚕影山神社を祀っていますが、地区の女性有志が公会堂に集まり、養蚕開始の4月と終了する10月に金色姫(こんじきひめ)の和讃(わさん)を唱えます。その内容は蚕の由来を説くもので、蚕の始まりの物語が独特の節回しで唄われます。

同じく田名・堀之内では、月の26日に集まって念仏をあげる二十六夜講が行われていました(昭和59年[1984]4月26日撮影)。かつては4月と10月の26日に、講中の家々の比較的年齢が若いお嫁さんたちが集まり、4月は蚕がよく繭を作るように、10月は養蚕が当たったことのお礼として行いました。

また、二十六夜講では愛染明王(あいぜんみょうおう)を礼拝するとされており、ここでも愛染明王の掛け軸を掛けています。

「養蚕は女性の仕事」と言われ、蚕の世話や糸取りなどは女性が中心で、このような祈願や養蚕終了後のお礼の行事なども女性によって行われました。こうした養蚕の信仰に関わる写真をほかにも多く保管しており、次回も取り上げてみたいと思います。

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