セミの受難

このところ、セミの羽化など夜の自然観察について頻繁に投稿しています。その中で、7月29日に実施した大野南公民館でのセミの羽化観察会のために、公民館の実行委員のみなさんと7月27日に現地を下見しました。その際、衝撃的なシーンに出会いました。羽化しかけたセミの幼虫に、スズメバチが襲い掛かっていたのです。

スズメバチの一種に食べられる羽化直前のセミの幼虫

ちょうど羽化が始まって背中が開いたところを、スズメバチの一種が目ざとく見つけて食いついたのです。セミの幼虫はなすすべもなく体をちぎられて肉団子にされていました。5年余りを地中で過ごし、やっと地上へ出て成虫になろうというところで起きた悲劇です。
・・と書くのは、セミの側からの一方的な見方ですね。生態系を客観的に見れば、スズメバチにも事情があり、おそらくこのセミの肉団子は、巣へ持ち帰ってスズメバチの子育てに使われるものです。
そもそもスズメバチがそうして増えると危なくて困る、というのは人間の側からの見方です。スズメバチやアシナガバチなど肉食性のハチがいなければ、イモムシなどが増えすぎて植物が食べて尽くされてしまう可能性もあります。

羽化場所を探して地上を歩き回るアブラゼミの幼虫

懸命に羽化の場所を探して歩き回るセミの幼虫を見ていると、応援したくなるのは当然です。でも、たとえそれが鳥やハチなどに食べられたとしても、そうした関係性も含めて生態系のバランスが保たれていることを、しっかり伝えていきたいと考えています。
(生物担当学芸員)

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