太陽と杉

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この写真、樹齢約2000年の屋久杉の切り株をスライスしたものです。年輪には西暦とその頃起きた歴史的事件を示すピンとキャプションがついています。これを見た人は「へー、すごいね、歴史の目撃者みたいだね」と、感心してくれます。
でもなんかちょっと変。というのはこの屋久杉、現在開催中の企画展「太陽にいどむ〜日時計から太陽観測衛星まで〜」の会場に展示してあるのです。何故?歴史の企画展じゃないのに?
その理由は、この杉が過去の太陽活動を推定する研究に使われたものだからです。
太陽系外からやってきて、常に地球に降り注いでいる「宇宙線」というものがあります。これが大気と反応して、炭素の放射性同位体「炭素14」をつくります。一方、太陽からは「太陽風」というものが出ており、これが宇宙線の到達が妨げられます。このため太陽の活動が活発だと、地球に降り注ぐ宇宙線は減り、炭素14も減ります。逆に太陽の活動が弱まると、炭素14は増えます。
炭素は、光合成により植物にとり込まれ、植物が身体を作るのに使われます。このため、年輪ごとに炭素14の比率を調べると、その年の太陽活動が活発だったかどうかがわかるのだそうです。
物知り顔で書きましたが、完全に受け売りです。実際にどのような作業が行われたかは知りません。きっと大変だったんだろうな、という事は想像できますが…
というわけで、これからこの企画展を観に来る方、屋久杉を見たら歴史だけでなく、太陽と杉の2000年に及ぶ意外な関係にも想いを馳せてみてください。会期は8月31日までです。(学芸班 木村)
*この屋久杉は東京大学宇宙線研究所から借用したものです。

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