キビタキの水浴び場

毎年、博物館お隣の樹林地では夏鳥のキビタキがやってくることはこのブログでも度々紹介しています。今年は博物館の建物近くでさえずっていることが多いのですが、先日(5月10日)、やけに近いところで「ヒッ、ヒッ」という地鳴き(じなき:さえずりではない、ふだんの鳴き声)が聞こえると思って探して見ると、思いがけず博物館のフェンスにとまって鳴いていました。

フェンスにとまるキビタキ

このフェンスは博物館の裏手の、排水路に沿っている場所です。この排水路は、4メートルほど掘りこまれており、上に金網が張られています。時折、排水が流れるため、ところどころに水たまりもできています。金網は、ヒヨドリくらいのサイズまでしか通り抜けられないため、小鳥にとっては安全この上ない水場となっています。そんな様子を一昨年、このブログでも紹介しました。
キビタキもまた、この水場を利用していたのでした。

金網にとまるキビタキ

この直後に金網の下へスッと入ったところは見たのですが、残念ながら、見失ってしまい、水浴びをしている現場は撮影できませんでした。それでも、キビタキが人工物にとまるところをあまり見たことが無いので、フェンスや金網にとまる様子など、ちょっと面白い写真を撮ることができました。
(生物担当学芸員)

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令和6年度地質学講座 1回目

5月12日(日)に令和6年度の地質学講座の第1回目を開催しました.地質学講座は2年ぶりの開催です.

今年度のテーマは「神奈川県最古の地層」で陣馬山や道志川下流に分布する約1億年前の地層を観察します.連続4回の講座で,1,4回目は博物館での講義,2,3回目は野外に出かけて地層の観察をします.

1回目は博物館での基礎的な事項の講義で,神奈川県最古の地層である小仏層群とそのでき方を理解するのに欠かせないプレートテクトニクスについて解説しました.

2日目は5月26日(日),相模原市緑区の陣馬山麓で小仏層群の地層を観察する予定です.

2年前の地質学講座は全回博物館での講義でした.それ以前は新型コロナウィルスの影響で地質学講座自体が開催できなかったので,野外観察を組み込んだ地質学講座は2019年以来,5年ぶりです.久しぶりの野外での地質学講座ですので,荒天とならないよう祈るばかりです.

(地質担当学芸員)

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最近活発な太陽活動と低緯度オーロラ?!

5月8日~11日かけて、太陽表面の大きな爆発現象である「太陽フレア」が何度も起こり、ニュースでも取り上げられるほど、話題になりました。当館の2F屋上にある太陽専用の望遠鏡が捉えた、太陽の様子をご紹介します。

当館の天文展示室では、晴れていればリアルタイムの太陽の姿を大きな丸いスクリーン(120cm)に映し出して見ることができます。

丸いスクリーン内の白く明るい円がリアルタイムの太陽[白色光]
(当館展示「8分19秒の彼方から」)

太陽フレアは、大きな黒点のまわりに起こることが多いのですが、この時、太陽の中心部下の南西側(右下)に2つの黒点群が合わさるように大きく広がっている様子がスクリーンで確認することができました。
(※これらの黒点群は太陽の自転により、いずれ太陽裏側にまわって見えなくなります。)

大きく広がっている黒点群
(左画像:白色光、右画像:Hα像)

この黒点群のまわりで、大規模なXクラスのフレアが短期間に5回以上起きています。
そのいくつかを当館で捉えたものがこちらです。(※太陽フレアはX線強度によって、5段階[低い←A,B,C,M,X→高い]に分けられています。)

明るく輝く太陽フレア[Hα像]
(左画像:5/10夕方  X3.9、右画像:5/11午前中  X5.8)

さらに5月11日には、これら太陽の爆発現象によって吹き出された太陽風(プラズマ)が地球の磁場に大きな影響を与えたことにより、「磁気嵐」が発生しました。磁場が乱れたことによって、人工衛星を使った全地球測位システム「GPS」に異常が発生し、地球のオーロラが非常に活発になりました。普段は地球の極域にしか見られないオーロラが、見ることがほとんどできない地域でも確認され、日本でも赤やピンク、紫色に見える「低緯度オーロラ」が観測されました。

通常の低緯度オーロラは、日本では極地方に近い北海道で確認されることが稀にありますが、今回のオーロラは大規模に発達したため、東北や北陸などの地域でも観測に成功しているようです。

もしかすると、相模原でも見ることができるかもしれないと思い、神奈川県相模原市緑区と東京都八王子市の境界にある標高約855mの陣馬山(じんばさん)の山頂で北の空の撮影にチャレンジしてみました。その結果は…

陣馬山の山頂から見た北の空 [↑クリックで拡大]
(2024/5/11撮影:当館職員)

11日深夜は北の低空に厚い雲があり、空全体にも薄雲があったため、肉眼では全く低緯度オーロラを確認することはできませんでした。

自宅に帰り、撮影した画像を改めて見ると、周りの夜空とは色が違う薄っすら紫色をした部分があることに気づきました。確証が持てませんが、もしかすると北の極域で活発に出ていたオーロラの上層部分(紫色)が写っていた可能性があります。

色を強調した陣馬山の山頂から見た北の空 [↑クリックで拡大]
(2024/5/11撮影:当館職員)

ちなみに、陣馬山の山頂から西側を向くと富士山が見えます。

陣馬山の山頂から見た西の空 [↑クリックで拡大]
(2024/5/12撮影:当館職員)

ここ数年(2024~2026年)は、太陽の活動周期(約11年)が極大期を迎えていることもあり、このような大規模な太陽活動や、オーロラが見られるチャンスとなっています。
ぜひ注目してみてください。

※太陽を直接目で見ることは、絶対にしてはいけません。必ず遮光板等の専用の道具を使い、安全に観察しましょう。
(天文担当学芸員)

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少年院跡地でタンポポ観察会!

5月11日、相模原市緑区小山の神奈川医療少年院跡地で自然観察会「黄色い花の見分けをしよう」を実施し、生物担当の学芸員が講師の一人として参加しました。この観察会は少年院を管轄する法務省矯正局などが主催し、同じ場所に建設予定の新しい少年院と地域の結びつきを強めることを目的として実施したものです。
じつは、70年以上の歴史に幕を閉じた神奈川医療少年院内には、在来種のカントウタンポポが多数自生していて、その一部は現在も跡地で元気に生育しています。それを観察するのですが、その前に、お隣の小原公園でウォーミングアップです。

小原公園でスタート

黄色い花を探して、タンポポか、タンポポではないかを確かめます。配布したテキストにならい、葉がどこから生えているか、花は1本の茎にいくつついているかで、タンポポを見分けます。

これ、タンポポかな?

花以外の部分もしっかり観察しています

そして、タンポポを見つけたら、次に花粉を採集して観察します。現在、横浜国立大学の倉田薫子教授の研究室が、少年院の敷地内にあったカントウタンポポを、取り壊し前に一時避難させ、それを新しい少年院に戻す計画を進めています。そんな縁で、研究室の学生さんたちがサポートしてくれました。携帯式の顕微鏡を操作して、花粉を確かめています。

顕微鏡で花粉を観察中

花粉のつぶの大きさが揃っていたらカントウタンポポなのですが、小原公園内のタンポポはすべて外来種のタンポポとの雑種でした。

大きさが揃っていないので・・雑種!

それでは!ということで、ふだんは立ち入り禁止となっている少年院跡地へ特別に入ります。広い跡地は、広大な草原になっていました。

神奈川医療少年院跡地

カントウタンポポの花の季節は過ぎようとしていましたが、わずかに咲いている株もあったので、花粉を確認します。

倉田教授から、カントウタンポポの葉に住み着いている昆虫の説明を受けています

こちらではしっかりと花粉のつぶが揃ったカントウタンポポを確認できました!
ほかにも、虫がいなくては生きていくことができない植物のために、虫の居場所づくりを創出する取り組みの一つである「虫ホテル」について、倉田教授から説明を受けました。

早速「入居」している虫に興味津々

2時間ほどの自然観察会でしたが、こちらがびっくりするくらい、植物に関心の高い小学生や中学生が参加してくれていて、とても盛り上がって楽しい時間となりました。これからも地域のみなさんと、この場所のタンポポの様子を見守っていきたいと思います。
(生物担当学芸員)

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ハエトリグモ

5月10日、事務仕事をしていると、目の前に積んでいた書類の上を黒いものが走っていました。

八つの眼が鋭く光ります

ハエトリグモの仲間です。室内にいることが多い種類だと思いますが、まだ成体になっていないようで、種類はよくわかりません。
よく見ていると、走っては止まり、前足を上下させてバンザイをしているようです。

バンザイをしているみたい!

ちょっと動きが早くて見づらいのですが、動画もあります。

ハエトリグモの動画

この動作の意味はわかりませんが、ちょっとユーモラスな動きでした。この仲間の主食はコバエなどの昆虫です。人間にとって良いことしかしない生きものなので、これからもすくすく育ってたくさんコバエなどを捕ってもらおうと思います。
(生物担当学芸員)

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巣箱の壁に居候

10日ほど前、敷地内に設置している鳥の巣箱の壁に居候がいると教えてもらいました。

巣箱の正面に黒い何かが…!?

近づいてみると、何かが集団を作っています。

ヨコヅナサシガメというカメムシのなかまです。

ヨコヅナサシガメの集団

体が大きく、腹部が横に張り出し、白い模様がある個体は成虫です。
そして、少し小さい個体は幼虫。
カメムシのなかまの成虫と幼虫ではこのように大きさや姿かたちが異なるほか、成虫にはある翅(はね)が、幼虫にはまだありません。

ヨコヅナサシガメはサクラの樹が好きなようで、幹のくぼみなどにこうして集団を作っているところをしばしば見かけます。
この巣箱がかかっているのもサクラの樹です。
樹のどこかからみんなで移動してきたのでしょうか。
本日確認したところ、この集団はまたどこかへお引っ越ししていました。
どのように移動し、どのように集団を形成するのか、とても興味深いです。
(動物担当学芸員)

 

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【好評につき今年も開催!】市民学芸員による“こどもの日”イベント

5月5日は子どもの成長や健康を願う国民の祝日、「こどもの日」です。また、同日は「端午の節句」と言い、古来重要な節目だったものが江戸時代に幕府の式日となり、武家社会へ定着したのちに民間にも広まっていったとされています。

現代の「端午の節句」は男の子の健やかな成長を願い、初節句(赤ちゃんが生まれてから初めて迎える節句)に鯉のぼりや五月人形が贈られたり、柏餅やちまきを食べてお祝いしたりする行事として親しまれていますが、「こどもの日」は性別に関係なく子どもの幸福をはかる日と定められています。

五月人形展示の様子

当館では、今年もこどもの日を盛り上げるべく、博物館ボランティア「市民学芸員」による「五月人形展示」を開催しています。
さらに、5月5日(日・祝)と6日(月・祝)の2日間は、こどもの日にちなんだ特別なイベントを用意しました!

まずは、展示している鎧兜や鯉のぼりをバックに、兜を被って記念撮影。写真撮影を楽しんでいただけた方には、市民学芸員お手製の折り紙の独楽(こま)または鯉のぼりの飾りを先着順でプレゼントしています。

折り紙の独楽と鯉のぼりの飾り。市民学芸員の手作りです。

兜を被って、はい、ポーズ!

このほか、自分で選んだ色や柄で作るミニ鯉のぼり、実際に被れる大きさの兜作り(新聞紙製)など、市民学芸員による折り紙教室を行っています。折り紙が苦手なお子さまもご安心ください!市民学芸員が丁寧にレクチャーします。

市民学芸員に教わりながら、一生懸命作っています。

上手にできたね!

初日はたくさんのお子さまとご家族で賑わい、お楽しみいただけたようです。

明日5月6日(月・祝)も、午前10時から午後2時までイベントを開催します。ゴールデンウィーク最終日の思い出づくりに、ぜひ当館へお越しください。

(歴史担当学芸員)

※画像は全て了承のもと掲載しています。

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若葉の上で

5月3日、来月から始まる恒例「カイコの飼育展示」に向けて、博物館敷地内のクワの木の状態を見て回りました。
クワを利用するのはカイコだけではありません。瑞々しいクワの若葉の上には、いろいろな生きものがいました。まずはこちら、クワコです。

クワコの幼虫

カイコと先祖を同じくすると言われる野生の蛾です。すでに3齢(2回脱皮をした)幼虫ですが、色合いはまだ鳥のフンに擬態しています。終齢(5齢)になった時の変化を見逃さないようにして、また紹介したいと思います。
そして、その名もワカバグモ。ハエの仲間を捕らえてお食事中でした。

ワカバグモ

こちらはダイミョウセセリ。たまたまクワの葉にとまったところを撮影しました。幼虫の食草はヤマノイモ科の植物です。近くのフェンスにヤマノイモやオニドコロがたくさんからみついているので、この付近ではよく見られます。

ダイミョウセセリ

こちらはクワではなく、近くのセンニンソウの葉にとまったホソオビヒゲナガ。トビケラのような体つきですが、体の何倍もある長い触角が特徴の、蛾の仲間です。

ホソオビヒゲナガ

そして、この日もエレガントな姿を見せてくれたキビタキです。

キビタキ(オス)

長い時間、様々なフレーズでさえずっていました。
(生物担当学芸員)

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キビタキのさえずり

博物館お隣の樹林地には、毎年夏鳥のキビタキが渡ってきます。今年も元気に囀っています。5月2日には駐車場の近くで鳴いていたので撮影できました。

さえずるキビタキ(オス)

新緑の中でさえずる姿がとても映えますね。
さえずりながらも、獲物を探しては捕らえていました。

さえずりの合間に毛虫を捕らえたところ

動画も撮影したのでご覧ください。

キビタキのさえずり

姿も声も美しいですね。
ところで、ここ10年ほど、この時期になると博物館の前庭にギンランが咲きます。

ギンラン

高さ15~20センチほどの小さな植物ですが、れっきとした野生ランなので、拡大すると花が立体的でとても美しいです。

ギンランの花のアップ

次から次へと鳴いたり咲いたり・・春は忙しいです。
(生物担当学芸員)

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カザグルマが開花・・・したのですが

先日のこのブログで、中庭のカザグルマが開花したらお知らせしますと書いたのですが・・確かに開花はしました。

カザグルマの花(中庭)

ただ、つるがうまく近くの樹木に絡みつかず、地面に近いを這っていたため、低い位置に咲きました。そうした花はかなりの確率で、咲いたと同時に虫食いだらけになってしまいます。つぼみのうちから穴を開けて食べてしまうイモムシもいるのですが、上の写真を撮影した時、ちょうど花の上にダンゴムシが乗っていました。ダンゴムシは基本的に湿り気のある地面を好むので、こんな花の上に乗っかっている理由は一つしかありません。

花の上のダンゴムシ 雄しべの先端をもぐもぐ食べているように見えます

雄しべの先端をもぐもぐと食べているようでした。カザグルマはキンポウゲ科の植物で、この仲間の多くが花弁を持ちません。カザグルマも、白く花弁のように見えるのは萼です。この萼が穴だらけなのもダンゴムシのしわざかどうかはわかりません。しかし、地面に近いところに咲くとこうなりやすいところから、ダンゴムシの食べ痕であることが疑われます。引き続き、観察を続けたいと思います。
系統保存のために博物館の公用車駐車場脇で栽培している株は、きれいに咲いています。

公用車駐車場脇で咲いたカザグルマ

中庭の株も、少し高い位置につるを伸ばせるよう、花が咲き終わったらつるを調整しようと思います。
(生物担当学芸員)

 

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