5/31 多摩川源流部地質調査

5月31日に多摩川源流部の地質調査を行いました。

山梨県甲州市から富士川水系の笛吹川の支流、重川に沿って遡り、柳沢峠を越えて、多摩川源流部に入りました。

柳沢峠付近には閃緑岩(せんりょくがん)が分布しています。
下の写真は柳沢峠南方の林道沿いの露頭(ろとう)です。
薄茶色の基質部分に白黒の閃緑岩の岩塊が礫(れき)として取り込まれているように見えます。まるで、閃緑岩の礫を含んだ礫層のように見えます。

薄茶色の基質に閃緑岩が取り込まれているように見えます。

閃緑岩の礫を含んだ礫層のように見えます。

これは礫層ではなく、露頭全体が閃緑岩だったものが風化により形成されたものです。閃緑岩の割れ目に沿って風化が進み、その部分が土壌化したものです。薄茶色の部分は風化が進行して土壌化した部分で、礫のように見える閃緑岩は土壌化を免れた部分です。
土壌化を免れた閃緑岩も風化しており、手で触るとボロボロ崩れてきます。

土壌化を免れた閃緑岩。

甲州市にある柳沢峠は富士川水系と多摩川水系の分水嶺となっています。

柳沢峠から見た富士山。手前の谷は富士川水系の重川。

柳沢峠の北側の谷は、多摩川の源流です。
多摩川源流部は閃緑岩しか分布していないので、川原の砂も閃緑岩を造っている鉱物の破片ばかりです。

多摩川源流部。

多摩川源流部の川原の砂。

高橋川が多摩川に合流するあたりには約1億2千万年前の砂岩や泥岩が分布しています。この砂岩や泥岩は熱による変性作用を受けてホルンフェルスと呼ばれる変成岩になっています。熱源は地下深くから上昇してきたマグマです。このマグマが冷えて固まってできたのが柳沢峠付近に分布する閃緑岩です。

ホルンフェルス化した砂岩泥岩互層。

多摩川と高橋川の合流点付近では、露出する岩石はホルンフェルスですが、川原の砂は閃緑岩を造る鉱物の破片ばかりです。閃緑岩は風化しやすく、大量の砂を供給します。一方で、ホルンフェルスは硬く緻密なため、閃緑岩に比べると砂の供給量は多くはありません。この辺りは閃緑岩が近くに分布するのでその影響が強く、川原の砂にホルンフェルスの破片はほとんど含まれていません。

多摩川との合流点付近の高橋川。

多摩川との合流点付近の高橋川の川原の砂。

ホルンフェルスは熱源に近づくほど変性作用の程度が強くなっていきます。今回はホルンフェルスを1カ所でしか観察できませんでしたが、機会があれば変性作用の程度が異なる場所で調査を行ってみたいと思います。

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