「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No33・エビス講)

 今回紹介するエビス講は11月20日の年中行事です。このエビス講は1月20日にも行われ、エビスが1月20日に働きに出かけて、11月に帰ってくるという話は多くの地域で聞くことができます。市内でもエビス講は盛んで、各家で両日ともエビス・大黒を祀り、さまざまなお供え物をしました。

 最初のモノクロの写真は、平成元年度制作の文化財記録映画「相模原の年中行事」において緑区大島で撮影したもので、普段はエビス・大黒像を台所で祀っていますが、前日の19日の「宵(よい)エビス」に床の間に移します。そして、20日朝に小豆飯や煮物などをエビス(向かって左)と大黒(同右)に供えます。また、エビス講には尾頭付きの魚を供えることが多く、この家では、二匹の鯛を腹合わせにして藁で吊るしているのが特徴です(平成元年[1989]11月19・20日撮影)。

                           

                           

                           

 年に二回行われるエビス講の行事内容はほぼ同じで、次の写真はいずれも昭和63年(1988)1月20日の撮影です。最初は南区下溝で、木像の比較的大きなエビス大黒像を神棚の下に出し、やはり尾頭付きの魚や高盛りの飯・ケンチン汁などを供えています。次の写真は緑区大島の別の家で、魚は二匹ですが腹合わせではなく、木像のほかに掛け軸も飾っています。

                           

                           

                           

 先ほどエビス講では正月に働きに出かけ、11月に帰ってくるという伝承を紹介しました。そのためエビス講では金も供え、1月ではたくさん稼いでくれるようにお願いして、11月にはよく稼いでくれたということで1月より多くの金をお供えすることが見られました。
 最初の写真では桝(ます)に財布を入れて供えています(昭和59年[1984]11月20・南区当麻)。もう一枚は文化財記録映画「相模原の年中行事」での撮影で、左側に一升桝の桶が見えますが、この中に金や預金通帳を入れて、作物の収穫の感謝と預金増額のお礼をしました(平成元年[1989]11月20日・緑区橋本)

                           

                           

 ところで、この職員ブログで紹介している写真は博物館建設準備に伴うもので、合併以前でもあるため当時の津久井地域の写真はかなり少なくなります。それでも合併後やそれ以前に津久井地域で撮影された写真もあり、次の写真は緑区根小屋で、この家では他でもよく見られる尾頭付きのほかに、柿や大根・ニンジンなどの野菜の煮物の上に油揚げを載せたものを供えています。この油揚げを載せた野菜の煮物は、当家だけでなく比較的近所の家でも作っているものの、柿を供えるのはあまり見られないそうです(平成24年[2012]11月20日)。

                           

 11月下旬は忙しい農作業もようやく一息つく時期で、12月に入ると山仕事や藁細工などの冬場の作業があります。そして、新年を迎えるに当たっての準備も始まり、この職員ブログでも冬や正月がテーマとなっていくことになります。

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