「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No61・文化財記録映画「祭礼行事」)

今回、取り上げる文化財記録映画は、昭和63年(1988)度制作の第七作「相模原の祭礼行事」で、相模原地域の神社などで行われてきた祭礼や、その際に行われる芸能などを撮影したものです。本ブログでは、うどんや酒まんじゅう作りの回でも、祭りに伴うご馳走作りとして写真を掲載しましたが、ここでは中心となる祭礼行事を紹介します。

最初の写真は、緑区下九沢・九沢地区のお天王様(おてんのうさま)の山車(だし)です。市内でお天王様の祭りというと、中央区上溝や緑区中野が有名ですが、この夏祭りは各地で行われており、山車をひいたり神輿(みこし)をかついだりします。映画では上溝地区とともに下九沢の様子が撮影されました(7月23日撮影)。

 

お天王様の祭りの際に、山車に乗って祭りを賑やかに彩るのがお囃子(はやし)です。笛や太鼓の音とともにヒョットコやオカメ、獅子などがユーモラスに踊る姿は、祭りに大切なものと言えます。祭り囃子は各地で行われていますが、次の写真は市内でも古くから行われてきた所の一つとされる、中央区上溝・丸崎地区で撮影されました。なお、ここでは映画用として特別に部屋の中で撮影しています(7月24日)

 

また、夏場の民俗芸能として忘れてはならないのが三匹獅子舞です。現在、相模原では、緑区鳥屋(とや)・大島・下九沢と中央区田名で行われており、この写真は大島地区のものです。三匹の獅子とともに鬼も一緒に踊っています(8月27日)。

 

祭りでは、鳥居の横などに幟(のぼり)を立てますが、現在では機械で作業が行われます。南区磯部の御嶽(みたけ)神社では、当時、地域の人々が集まって人力で幟を立てていました。映画ではその様子も撮影させていただきました(8月28日)。

 

中央区上矢部の御嶽神社で行われるのが湯花(ゆばな)神事です。湯立てとも言われ、境内にすえた大釜で湯を沸かし、その湯を神職が笹で四方に撒きます。全国的に見られるものですが市内では珍しいとして取り上げられました(9月10日)。

 

祭りは、餅や魚・野菜などさまざまなものを神前に供え、式典後には人々もいただきますが、南区当麻・芹沢の三島神社では、祭りに大根を削って酢漬け(すづけ)した大根なますを作って食べます。写真はなますを作っているところで、祭り自体の名称も「なますまち」と呼ばれ、ほかにも例えば神社の祭りにもかかわらず寺の住職も祭りに参列するなど、特徴的な内容となっています(11月6日)。

 

最後の写真は、中央区田名の的祭(まとまち)に関わるもので、的祭は1月6日に子どもが大きな的に矢を射る行事として有名です。映画では、もちろん祭礼当日とともに、的や弓矢作りの様子も撮影しています。この的作りは的踏み(まとふみ)と言い、作る家が決まっています(12月19日)。

 

以上、映画の内容にあわせて紹介してきましたが、このほかにも映画に撮影されている祭礼行事があり、また、撮影に至らなかったものもあります。地域の中に、こうしたさまざまな祭礼行事が見られるのを示すことを主な目的とした映画と言えましょう。

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