オシドリの求愛

市内南区下溝の相模原沈殿池では今、オシドリの“華麗なる争い”が見られています。
オシドリをはじめとして、カモの仲間の多くは越冬地でつがいとなる相手を獲得しなくてはいけません。一般には春から夏にかけて美しい繁殖羽になる他の野鳥と真逆ですが、夏が短い北方で繁殖するカモ類の戦略なのでしょう。
さて、オシドリのオスはどのようにメスを獲得するのでしょうか。まず、オスが水面に浮かぶメスの前に回り込みます。

メス(左)の前へ回り込もうとするオス

すると、オスは首を伸ばして頭を少し下に傾けます、頭の飾り羽を膨らませて強調しているのでしょう。もちろん、翼の銀杏羽(いちょうばね)もピンと立てます。この動作を何度も繰り返します。

「キメ」のポーズ! しかしメスはそしらぬ顔・・

オシドリのオスが持つ、きらびやかな色彩と飾り羽がここで最大限に強調されるのですが、人間から見るとちょっとユーモラスです。1羽のオスがそんな風にしていると、当然、周りのオスも黙ってはいられません。次々のやってきてメスを取り囲みます。

複数のオスが取り囲んでポーズを決めます

メスは迷惑そう?にそっぽを向くのですが、オスは必死です。他のオスを追い払ったりしながら、懸命にダンスを続けます。
そのうち、こうしたオス同士の攻防を見て見ぬふりをしているメスも、ダンスのうまさか、飾り羽の大きさか、はたまた他のオスより強そうか・・判断基準はわかりませんが、1羽のオスとペアになります。そうすると2羽が連れ添って泳ぐようになります。優雅なその様子が仲の良い夫婦を指す「おしどり夫婦」の言葉になったのでしょう。
近くではウメも花盛りを迎えようとしていて、寒風の中にも春が近づいていることを感じさせてくれます。

ウメの花

蛇足になりますが、オシドリのオスが毎年、こうして求愛合戦を繰り広げるということは・・オシドリのつがい関係は1年限り、というか、メスが産卵を終えると解消されます。抱卵・育雛はメスのみが行い、オスは関与しません。そんな生態を知ってしまうと、おしどり夫婦という言葉も安易に使えなくなってしまいますね。
(生物担当学芸員)

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