カメムシ2種

昆虫調査の折、面白いカメムシを2種、観察しました。

キバネアシブトマキバサシガメ

まずは、キバネアシブトマキバサシガメ。
地面を素早く歩くカメムシで、「キバネ」の名がつきますが、この個体はオレンジの翅(はね)をしています。
見かける機会が多いカメムシではないので、嬉しい出会いでした。

イボヒラタカメムシ

続いて、イボヒラタカメムシ。
シロハカワラタケというきのこが好きで、そのきのこが生えた枯れ木の裏などでよく見つかります。
普通種ながら、武骨でとてもかっこいい種です。
同じ枯れ木に幼虫もいました。

イボヒラタカメムシの幼虫

成虫とは異なり、体色が白いのが特徴です。
(動物担当学芸員)

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天文企画展「プラネタリウムの歴史」

4月15日から当館1F特別展示室の奥側にて、天文企画展「プラネタリウムの歴史」が始まりました。

概要は(株)五藤光学研究所がこれまで製作したプラネタリウムの実物機器をはじめ、昨年12月まで当館で稼働していた光学式投映機「GSS-HELIOS」の本体や、日本におけるプラネタリウムの歴史を解説するパネルを展示しています。

「プラネタリウムの歴史」展示会場

これは当館プラネタリウムが現在リニューアル工事期間中(~令和7年7月中旬)であることや、世界で初めて誕生した光学式投映機(カールツァイス社製)がドイツ博物館に常設公開された1925年5月から、ちょうど100年を迎えたこの時期に、プラネタリウムのこれまでの歴史を知ってもらう内容となっています。

当館プラネタリウムで昨年12月まで稼働していた光学式投映機「GSS-HELIOS」本体の展示

さらに、当館プラネタリウムリニューアル工事の様子を知ることができる映像も大型スクリーンで紹介中です。

ドーム内側のスクリーンが新たに設置されている工事の様子

今回は関連行事として、5月18日(日)および6月21日(土)午前11時〜と午後2時〜の各30分程度で、プラネタリウム製造技術者による実物機器の解説を行うギャラリートーク「プラネタリウムの仕組み」を予定しています。お申込み不要(無料)ですので、ぜひお気軽に会場の特別展示室にお越しください。

4月19日に開催したギャラリートークの様子 (GSS-HELIOSのカバーを外し、恒星投映筒を取り出しています)

また、本企画展は6月29日(日)まで開催しています。

 

そして、プラネタリウムのリニューアルオープンの日程が決まりました!
7月17日(木)から一般公開となります。詳しくはこちらをご覧ください。

プラネタリウム改修後イメージ

4月末時点でのプラネタリウム内の様子(新たな投映機や座席はこれから設置予定)

たくさんのご来場をお待ちしております。

(天文担当学芸員)

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小山中でタンポポの授業

5月1日、市内緑区の小山中学校でタンポポの授業を行いました。これは、法務省矯正局が、同校と小山小学校が旧神奈川医療少年院跡地に隣接することから、少年院の敷地内にあった在来種のカントウタンポポを、再整備が終了するまで両校などへ避難させる事業の一環として行ったものです。

カントウタンポポ(写真は博物館お隣の樹林地の株)

小山中の環境委員会の生徒さん向けに、カントウタンポポと、現在路傍などに広く分布する雑種タンポポの見分け方を解説しました。

生育環境の違いなどを説明

雑種タンポポについては先月、このブログでも紹介しました。今年度の環境委員が発足して間もないため、今年初めてタンポポに関わる生徒さんもいます。そもそもタンポポってどんな植物なの?というところから始まり、雑種のできるしくみと、見分け方、そして、なぜこのような活動を進めているのかについて、生物多様性の観点から解説しました。その後、カントウタンポポを栽培している花壇で、花粉を採集します。

中庭の花壇で花粉を採集

花壇のように人の手が大きく加わっている場所では、雑種タンポポが入っいる可能性が高く、実際、この日に咲いていた花の特徴は雑種のものでした。
採集した花粉を室内へ持ち帰り、早速顕微鏡観察します。

中学生なので顕微鏡の扱い方は慣れたものでした

その結果、採集したすべての花の花粉の大きさが不揃いで、雑種と判断されました。

雑種タンポポの花(写真は博物館駐車場の株)

すでに咲き終わっている株も多く、花壇のタンポポがすべて雑種かどうかわかりません。カントウタンポポはすでに花期が終わっている可能性があるため、来年の早春にまた同じ確認作業を行うようアドバイスしました。生物多様性の保全のための活動は、常に科学的に検証しつつ進める必要があります。もし、花壇のタンポポがすべて雑種に置き換わっていたら、少年院跡地から補充する必要がありますし、どのような対策が必要か検討しなくてはいけません。今後、そうしたプロセスについても生徒さんたちと考えていきたいと思います。
(生物担当学芸員)

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ギンラン開花

5月1日、清々しい晴天と、5月らしい爽やかな風が吹く一日となりました。思わず五月晴(さつきばれ)と言いたくなりますが、この言葉の意味は、旧暦の5月の晴れ間、すなわち梅雨の晴れ間を指すため、誤用になってしまいます。ともかく、5月の初日はとても気持ちの良い晴天でした。そんな中、博物館前庭のギンランが開花しました。

ギンラン(5月1日)

里山を代表する野生ランの一種です。大振りで黄色い花が豪華に咲くキンランと比べると、ギンランは背丈がだいたい10~15センチメートルほどで、花も長さが1センチメートルほどと小さなランです。

博物館となりの樹林地内で咲いたキンラン(高さは約50センチメートルほど) 残念ながら、一般の方が入れないエリアに咲いています

それでもギンランはその清楚な佇(たたず)まいが人気のランです。花を拡大すると、ランの仲間らしく複雑で立体的な形態です。

ギンランの花のアップ

前庭のかなりわかりにくい場所で、しかも小さな植物なので、見つけるのはちょっと難しいかもしれません。そのぶん、こちらの拡大写真でお楽しみいただければと思います。
(生物担当学芸員)

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ツメレンゲの妖精

先日、ツメレンゲの自生地に調査に向かいました。
目的はツメレンゲと、とあるチョウの生息状況の確認です。
目的地につき目を凝らすと、崖にツメレンゲがあるのが確認できました。
少し距離があるので望遠で撮影します。

ツメレンゲ

その周囲で待つこと10分以上。
地面すれすれをひらひらと小さなチョウが飛んできました。
慌ててレンズを向けると…目的のチョウです!

クロツバメシジミ

このチョウはクロツバメシジミというシジミチョウのなかまで、幼虫がツメレンゲを餌(食草(しょくそう))にします。
神奈川県内では食草のツメレンゲ自体が少ないため、このチョウも貴重な存在です。

ボロボロの個体

その後も観察すると、ボロボロの個体も観察することができました。
今回確認できたのは、春になって蛹から羽化した第一化の成虫と考えられます。
今後も調査をする予定ですが、崖までの距離が遠いため、次回の調査には双眼鏡を持っていく必要がありそうです。

イタヤカエデのなかまの花

帰り道ではカエデの花が美しく咲いていました。

ミヤマカラスアゲハ

ミヤマカラスアゲハの給水も観察できました。
今の時期に見られる春型は、夏型よりも色鮮やかで美しいです。
(動物担当学芸員)

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カザグルマ(自生地)の開花

4月30日、市内中央区のカザグルマ(キンポウゲ科)の自生地で開花を確認しました。先日、博物館で系統保存のために栽培している本種の開花をお知らせしましたが、その株のもともとの出身地です。

大きく開いたカザグルマの花

カザグルマは、神奈川県内では横浜市内の1か所と、相模原市内の中央区と緑区に数カ所の自生地が残るだけとなっており、県のレッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類にランクされています。この自生地でも、フジなど他の植物の繁茂により存続が危ぶまれるため、移植や補植を何度か試みていますが、なかなか思うようには成功しません。ちなみに写真の株は、補植によって殖えた株ですが、もともとの自生株は現在、開花が確認できない状態です。

つぼみを合わせて10数花ついていました

つる性の樹木であるカザグルマは、樹林の林縁部や崖地の株など、ある程度日当たりが良く、なおかつ湿った環境を好むようです。栽培下で育てるのはそれほど難しくありませんが、自然の中では環境改変などの影響を受けやすい場所のため、保全が難しい植物です。今後も系統保存と共に自生地の状況を見守っていきたいと思います。
近くでは、タブノキの新芽が伸びていました。優しい色合いです。

タブノキの新芽

また、自生地に面した畑地では、オスのキジが「ケーンケーン」と鳴いてほろ打ち(翼を打ち叩いて音を出す、なわばり誇示の行動)をしていました。

キジのオス ほろ打ちの瞬間は撮影できませんでした

野鳥の繁殖期も本格的になっています。
(生物担当学芸員)

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石器づくりを実演しました!

4月30日(水)は休館日です。

4月29日(火・祝)に当館エントランスで石器づくりの実演を行いました。

家族で見学してくれました。

考古担当学芸員は、黒曜石を割って石器を作っており、
過去の人々が石器をどのように作っていたのか、体験を通じて勉強しています。
そっくりな石器を作ることはとても難しく、旧石器・縄文時代の人の技術は計り知れないものがあります。

さて、4月末からのゴールデンウィークで来館者が増加することが見込めますので、
土器×2タッチ以外にも考古分野の普及を行うことにしました。

テーマは「石器づくり」。
石器づくりの実演から伝えたいことは以下の2点です。
・角度を意識すると石以外にも、鹿角・硬木でも割れること。
・黒曜石の割れ口はとても鋭く、昔の人の刃物として使われたこと。

まずは場所。どこでやるか。イメージはなんとなく立ち止まって見てもらう感じです。
エントランスの正面に空いたスペースがあり、石器づくりのスペースとして十分です。

2畳程度あれば十分です。

次は安全管理。割る際に欠片が飛び散る場合があります。
その対策としてコロナの感染症対策として使用したアクリルボードを設置しました。

また、割れた黒曜石はとても鋭く、石器づくりの時に誤って手を切ってしまうことは日常的にあります。
口頭で説明するよりは、実際にモノを切るのが良いと考えました。切るのに、ハサミやカッターナイフを使うものとして、「ペットボトル」を思いつきました。
日常的に持ち歩き、切る場合にはカッターナイフが必要です。

黒曜石でペットボトルを切りました。

黒曜石がさわれないのはあまり面白くないので、考古担当学芸員が作った矢じり、石槍を近くに置いてさわってもらいました。作った石器だと、割れた欠片よりも安全です。

作った石器と鹿角を置いて、さわってもらいました。

当館に入ってすぐ、しかも黒曜石を割る音がするので、来館者の方はとても興味深そうに見てくれており、合計176名の方が見学してくれました。
鰻(うなぎ)屋さんは蒲焼を焼く匂いでお客さんを呼び込むそうですが、石器づくりの実演は音で呼び込みます。
常設展示にも黒曜石の石器はありますが、どこが特徴なのか直感的には分かりにくいです。
今回の実演では、黒曜石の割れ方やその切れ味を伝えることができます。まさに「百聞は一見に如かず」ですね。


以前紹介した「土器×2タッチ」と合わせて今後も取り組んでいきたいと思います。
(考古担当学芸員)

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クロオオアリの雄アリ

博物館の中庭にはクロオオアリの巣があります。
その巣の回りに羽アリがいると教えてもらいました。

クロオオアリの巣

クロオオアリは、ちょうどこの時期に「結婚飛行」と呼ばれる繁殖行動をします。
新たな女王となるアリと雄のアリが、出会いを求めて生まれた巣を飛び立つイベントです。

雄アリたち

雄アリが巣の入り口に並んでいます。
周囲の働きアリたちも、普段とは違うせわしない動きをしています。
観察時に出てきたのは雄アリのみで、新女王アリは見当たりませんでした。

続々と出てくる雄アリ

「結婚飛行」のあとに新たな巣を作り始める新女王アリと異なり、雄アリはやがて死んでしまいます。
この巣を飛び立った雄アリたちは新女王と出会うことができるでしょうか。
雄アリたちの、一世一代の大勝負が始まります。
(動物担当学芸員)

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土器を「さわる」ということ

27日(日)に土器×2タッチを行い、95名の方に参加していただきました。
参加者に「レプリカですか?」とご質問いただき、自信をもって「本物です!」と答えています。

さて、土器をさわることはどのような効果があるのか、考えてみます。
そもそも、ヒトはなにかをさわるとどう感じるか?
触覚を言語化すると以下のように考えられます。
冷たい・熱い 硬い・柔らかい ツルツル・ザラザラ 軽い・重い
分かりやすいのが「握手」。掌がゴツゴツなのか、細身なのか。何気ない人柄を間接的に感じる場合も。

ザラザラした石皿(手前)もあります。

立体的な装飾がある土器も。

来館者の年齢層は高齢の方が多く、お子さんは家族で来館される場合が多いです。
お子さんに遺跡を「歴史」の視点から、座学で理解してもらうのはなかなか難しいです。
小学校高学年なら学校で習いますが、それでも限界を感じます。

それでは「体験」ではどうでしょうか?
小さいお子さんでも、硬い・柔らかい、ツルツル・ザラザラなどは理解できます。
歴史の認識は年齢を追うごとに深まりますが、体験は年齢に左右されずにみなさんが感じるものと捉えています。
そしてさわったから、気づくこと・わかることがあります。

5000年前の縄文土器の立体装飾 土器の口縁部についていました

土器・石器が歴史の断片であることは間違いなく、さわる体験から昔の生活の一部だけでも実感できればと考えています。
幼いころ何気なく博物館でさわった土器の思い出が、遺跡や地域史への関心を引き出す契機となるかもしれません。

ご来館し、ぜひタッチしてください!(今年度の開催予定日はこちら
(考古担当学芸員)

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ヤエムグラのトゲ

大型連休の2日目、抜けるような青空が広がりました。博物館周辺のミズキも開花して、森の中が急ににぎやかになりました。

ミズキの花

その足元へ視線を移すと、こんな植物がわさわさと生えています。

ヤエムグラ

見覚えのある方も多いはず。この草をちぎって友達の服へ投げると、ピタッとくっつきます。そんな遊び(いたずら?)をした記憶がよみがえります。この植物の名は、ヤエムグラ。衣服などにピタッとくっつくその秘密は、全草に生えているこのトゲです。

茎から下向きに生えているトゲ

このトゲは、ヤエムグラがお互いに、あるいは他の草へもたれかかって伸びていかれるように発達したものです。こうすれば、丈夫な茎を持たなくても上へ伸び上がれるというわけで、実際、ヤエムグラの茎はとても弱々しくすぐに折れたりちぎれたりします。
花は極小で、大きさは2ミリメートルほどしかありません。

ヤエムグラの花 下の球形のものは若い果実

果実のトゲトゲは“ひっつき虫”として他の動物の毛にくっついて運ばれるためのものです。同じ植物の中に、目的の異なるトゲが生えているのが興味深いですね。
さて、林内にはほかにも、目立たないけどかわいらしい植物が開花していました。ヒゴクサです。

ヒゴクサ

上にスッと伸びた部分が雄花の花穂(かすい)で、下の白いフワフワがついている部分が雌花の花穂です。目立つ花は無くても、なんとなくかわいらしくて写真を撮りたくなる植物です。
(生物担当学芸員)

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