女王への謁見

企画展の撤収を済ませ、カイコの上蔟(じょうぞく=繭を作らせる場所への移動)も完了したので、たまりにたまった振替休日をとって女王へ謁見してきました。
女王、それは、孤高の存在です。

高山植物の女王と称されるコマクサです。

気品のある咲き姿もさることながら、高山帯の激烈な風衝地にしか生育せず、他者を容易に寄せ付けない雰囲気こそ、女王の名にふさわしいと感じます。ここは北八ヶ岳と南八ヶ岳の中間に位置する根石岳(2603m)付近。北アルプスなどよりも一足先に咲くので、本格的な登山シーズン前にゆっくりと花を堪能できるのですが、当然ながら今は梅雨。前日、相模原動物標本クラブの有志と登山口から豪雨の中を登り、この日は濃霧の中まったく眺望のきかない稜線を、苦行のごとく歩きました。

そして、女王への謁見を済ませて強風と濃霧の中、来た道を戻ります。

東天狗岳(2640m)山頂への斜面に取り付いたところでなんとなくまわりが明るくなったように思い女王の居城を振り返ると・・

分厚い霧のカーテンが強風で瞬時に吹き飛ばされ、壮大なベールを勢いよくはがしたかのように硫黄岳の爆裂火口まで眺望が広がりました。

前日の雨も濃霧も、この一瞬のための舞台装置だったのかと思える絶景でした。
何度もこの場所に来ていますが、風景にここまで打ち震えるほどの感動を味わったのは初めてです。女王の魔法を味わえる山行となりました。
博物館の仕事とは関係ありませんが、もう少し八ヶ岳のことを書いていきたいと思います。
(生物担当学芸員 秋山)

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