市街地の猛禽

先日、相模原市役所の近くを歩いていたら、ドバトの羽根がまとまって落ちていました。

地面に散らばっていたドバトの尾羽と風切羽など

これは、猛禽類のタカなどの仲間が捕らえて、食事場所まで運ぶために大き目の羽根を抜き取った痕です。なぜそこまで判断できるかというと、上の写真の他の場所にも翼の羽根(風切羽)や尾羽が散らばっていたからです。ネコなどの哺乳類が鳥を捕まえると、翼を引きちぎったような痕や、内臓だけ食べたような食べ痕が残りますが、このように羽根がまとめて抜かれた状態で残ることはありません。
ところでこの場所は、付近に高層マンションやスーパーなどの店舗が立ち並ぶ場所です。いったい何の種類がハンティングしたのか知りたくて、翌日、早朝に現場へ行ってみました。すると、近くのアンテナに猛禽類がとまっていました。

アンテナにとまるツミのメス

ツミのメスです。日本で最小のタカで、オスはハトより小さく、メスでもハトと同じくらいのサイズです。近年、都市部への分布拡大が著しく、市役所周辺でも毎年繁殖しています。まず、候補となる猛禽の一つがあっさり見つかりましたが、ツミの食べ物としてドバトは少々大きすぎます。スズメやメジロをよく捕食していることは知られていますが、ドバトも捕食するのでしょうか。

飛び去る時のツミ

しばらく観察していると、ビルの谷間をスッと飛ぶチョウゲンボウが見えました。

チョウゲンボウ(別の日に別の場所で撮影)

チョウゲンボウも、ハトくらいの大きさのハヤブサの仲間です。これも、鳥を捕食することが多い鳥ですが、市街地ではスズメやツバメ、ハクセキレイなどを捕食するものの、ハトを捕らえたという記録は見つかりませんでした。チョウゲンボウは、ツミに先んじて都市化した鳥です。市役所周辺でも数十年前から見られていて、高層建築物で繁殖しています。ドバトを餌資源として活用していてもおかしくはないと思いますが、やっぱりちょっと大きすぎます。
ドバトを食料としている猛禽類の代表はオオタカやハヤブサです。冬は市役所付近でも見られることがありますが、この季節に見ることはあまりありません。結局、最初に見つけたドバトの羽根が、誰が捕らえたものかはわかりませんでした。いずれにしても、この季節にこの場所でドバトを捕らえた猛禽がいるという事実がわかったので、引き続き調べてみようと思います。
(生物担当学芸員)

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