ジメジメの地面から

いつになくお天気がすっきりしないお盆を迎えています。
でも、生きものにとっては日照りの乾燥の厳しさに比べたら、だいぶ過ごしやすい夏のはずです。特に、この生きものにとっては楽園と言えるでしょう。

石畳の隙間から伸びるキノコ

ここ数日のしとしと雨で、きのこが元気に伸びてきました。博物館前庭のクヌギの根元です。これは!コナラやクヌギの林に出る食用菌のニセアブラシメジか・・と傘のぬめり方など見て一瞬思いますが、食べません。キノコは身近な生きものの中で、もっとも分類が難しいものの一つです。よく似た毒キノコがいくらでもあるので、「ここで初めて見た!」というキノコはむやみに食べたりすべきではありません。別の場所ではコナラの根元の落ち葉から頭を出しているキノコも・・

コナラの根元に出たキノコ

キノコというと秋のイメージが強いようですが、条件さえ合えばキノコはいつでも発生します。
さらに、植えられたオオバギボウシの下には、なにかの菌株が広がっています。

正体不明の菌株

何が原因でこうなったかはさっぱりわかりません。この他にもところどころに小さな菌株があるので、この天候が関係しているのは間違いないでしょう。このあとどうなっていくのか、しばらく観察したいと思います。
菌類の写真ばかりではジメジメしすぎなので、花の写真も。

ヤブランの花

ヤブランが咲き始めました。来週あたりには、前庭が一面薄紫に彩られることと思います。
その頃にはお天気も安定して、真夏らしい風景が戻ってくることでしょう。

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子ども鉱物教室「鉱物のふしぎ」2日目

8月6日、子ども鉱物教室「鉱物のふしぎ」2日目でした。

今回も相模原地質研究会の方々にボランティアとしてご協力していただきました。

今回はミョウバン結晶の観察と鉱物の硬さ比べを行いました。

一週間ミョウバンの飽和溶液に浸けておいたミョウバン結晶はどうなったでしょう?

\ででーん!/

典型的なミョウバン結晶ができました。大きさは約1.5cmです。

今年は例年よりきれいな結晶が多くできました。

参加者は、虫めがねとルーペを使い熱心に結晶を観察していました。ビーカの底にできた結晶も同様に観察しました。

 

そして、ミョウバン結晶が成長する過程を撮影した動画を見ました。

その後、学芸員が1年半かけて作った大きな結晶や硫酸銅の青い結晶も紹介しました。

観察し終わった大きなミョウバン結晶と底にできた結晶は持ち帰りました。

ミョウバンは薬局でも手に入るので皆さんもぜひご家庭でお試し下さい。

 

続いて、鉱物の硬さ比べを行いました。

6種類の鉱物と釘と自分の爪を使って硬さの順番に並び替えをしました。

硬さ比べは、違う種類の鉱物をこすりあわせて確かめます。

親子で話し合いながら順番を決めていきます。なかなか全問正解は難しいようです。

参加者の皆さんには、これをきっかけにさらに鉱物を好きになっていただければと思います。

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ズームアップ

お盆に入り、博物館は朝からたくさんの来館者で賑わっています。
この時期は、ハチや毛虫などの発生状況や落枝の確認など、時々安全確認のために博物館のまわりを歩きます。そんなとき、目につく生きものがいれば写真を撮るのですが・・今日も視野の片隅でカサコソと動くものが!

今年生まれのニホンカナヘビ

ニホンカナヘビです。まだ全長6、7センチメートルなので、今年生まれの個体でしょう。そーっとカメラを近づけましたが、逃げるようすがありません。さらにズームアップしてパチリ。

ニホンカナヘビをズームアップ

なかなかのハンサムです。
さらに、駐車場のフェンスにからまるヤブガラシの茎には、こんなものが。

アオバハゴロモの成虫

アオバハゴロモです。このブログにもたびたび登場する虫ですが、やっぱり思わずズームアップ!

蛾やチョウのなかまではなく、セミやカメムシに近いなかまです

セミやカメムシに近いなかまであることがわかります。
さらにヒメジョオンにとまっていたのは・・

バナナムシとも呼ばれる虫です

子どもたちからは“バナナムシ”などと呼ばれて人気の、ツマグロオオヨコバイです。
ついでにこちらもズームアップ!

イネの害虫のツマグロヨコバイと似た名前ですが、違う虫です

色合いも形もぜんぜん違うのに、なぜかウルトラセブンの怪獣、メトロン星人を思い出します。
こんな写真を撮っていたら、コスズメバチらしき大きめのハチが1匹、足の周りをぶんぶん飛んでいました。来館者が往来する場所ではなかったので、刺激しないようにそっとその場を離れました。

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イラガ注意報(毛虫の写真あり)

博物館正面入口そばの細いクヌギの葉がなにやら怪しく食べられています。

クヌギの葉が食べられた痕

この時期、こんなふうな食痕があると疑わなければいけないのが、イラガという蛾の仲間の幼虫です。この幼虫の特徴は
毒針を持った毛虫ということで、注意が必要です。葉裏をよく見ると・・いました!

葉裏に集団で固まる性質があります

まだ1センチメートルほどの大きさですが、これからどんどん大きくなって倍くらいになります。その前に駆除する必要があります。

ナマコのような体型にサボテンのような刺毛が目立ちます

種類までは特定できませんでしたが、この黒い刺毛がイラガのなかまの証拠で、皮膚に触れると激しい痛みとかゆみを生じます。
来館者の多い時期なので、対処の手配をしました。

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虫は元気!

台風が去って、空はすっかり夏色です。

博物館の駐車場から空を見上げる

博物館周辺の樹林では、今年は最初、セミの鳴き声がかなり控えめでした。結局、ニイニイゼミはほとんど鳴かず、いきなり、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシが鳴きだした感じです。
写真はミンミンゼミの抜け殻です(写真ではわかりにくいのですが、触覚で確認済みです)。

ミンミンゼミの抜け殻

ススキの葉にはカマキリが待ち伏せしています。

まだ若いカマキリ

駐車場のフェンスでは、オオシオカラトンボがとまっていました。

オオシオカラトンボ 夏色のトンボです

暑さにうだる人間たちを尻目に、ムシたちはこれから本番とばかりに活発になっています。

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縄文土器づくり体験(第1弾)

先日(8月4日)、夏休み考古学教室「見て・触って・作ってみよう! 縄文土器づくり体験」を博物館で行いました。まずは博物館を探検し、普段は入ることができない考古資料収蔵庫などを見学しました。展示されている土器以外にも、たくさんの資料が保管してあり、みなさんキョロキョロ・ワクワクしながら興味深く探検していました。

考古資料収蔵庫には資料がまさに山積み

続いて、実習実験室で本物の縄文土器を使って説明した後、本題の土器づくりに入ります。今回は土器づくりの会の小島先生に、土器づくりを教えてもらいました。

縄文服を身にまとってやさしく教える小島先生

まずは、土器の素地づくりから。土器はもちろん粘土を使いますが、粘土だけではヒビが生じてきてしまいます。粘土と粘土をつなぎ合わせておくために、粘土に砂を混ぜ込みます。この素地づくりが一番体力を使いますが、みなさん、がんばっていい素地に仕上がっていました。

粘土に砂を混ぜてまずは素地づくりから(ガンバレー!)

土器の素地ができたら小分けにしておき、土器の底の部分を円盤状につくります。今回は径5~6㎝のものでつくっていきました。あとは粘土紐で輪積みにして、土器の底から立ち上げていく、成形の工程です。粘土紐を輪積みにして、つなぎ目をきちんと調整していきます。段々と積み上がっていくと、みなさん、バランスをうまくとりながら、思い思いの形にしていきました。

本物の縄文土器に近づけられるかな?

形が出来上がると次は縄文土器の本領ともいえる文様付けです。本物の縄文土器を観察しながら、イメージをかためます。縄を転がしたり、細い粘土紐をくねくねと蛇行させたり、細い棒で線を引いたり、棒の先を押したり引いたり、細く尖った先で集合した線を引いたりと、全員が縄文風の個性溢れる土器に仕上げることができました。

土器の文様をつけるのに集中!

縄文土器といっしょに考古資料収蔵庫で乾燥中

土器の素地作りからはじまり、成形、整形、施文までいきました。土器は野焼きで焼き固めることによって、はじめて道具としての土器ができあがります。ただ、粘土には水分を多く含んでいますので、すぐに焼いたら急激な熱により粘土内の水分が水蒸気となって充満し、土器を破裂させてしまいます。ゆっくりと乾燥させてあげることが必要です。

今回はここまで。乾燥を経て次回8月20日に野焼きします。

今回の考古学体験教室は夏休みの自由研究や工作にも充てられるよう、縄文土器の簡易な折込冊子を参加者のみなさんに配布しました。しばらくは館内(エントランス)に配架しておきますので、欲しい人は博物館に遊びに来てください。

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「江戸から昭和の津久井」図書館出張展示&博物館実習歴史分野の活動

8/5(土)に淵野辺駅前の市立図書館にて、現在当館にて開催中の収蔵品展「江戸から昭和の津久井」の出張ミニ展示を行いました。

現在開催中の収蔵品展は、津久井郷土資料室にあった旧蔵資料の展示で、その内容は絵はがき、古文書、教科書、雑誌、観光パンフレット、1964年の東京オリンピック関係資料(相模湖がカヌーの競技会場)、ポスター、すごろくなど多岐にわたっています。
その中で、今回の図書館での出張ミニ展示では、東京オリンピックや相模湖の観光関係資料と、図書館にちなみ大正から昭和前半頃の郷土誌関係の雑誌や少年少女雑誌などを展示しました。

今回の展示作業は、博物館実習生の歴史分野の学生4人にも加わってもらいました。実習生には主に雑誌類の展示を行ってもらい、各々が相談しながら雑誌の並べ方、見せ方などを決めて展示しました。また、解説用のキャプションも実習生が制作しました。自分たちが関わったものが展示という形になって実習生もみな達成感に満ちた様子でした。

午後には、実習生と9/9(土)に行う「中世さがみはら探訪~上溝から番田周辺を巡る~」の下見を行いました。
当日特別に見学させていただける「安楽寺の板碑」を間近に見ることができ、感動していたようです。

市立図書館での出張展示は、当館の収蔵品展同様9/3(日)まで開催中ですので、ぜひご覧いただければと思います。
また、「中世さがみはら探訪~上溝から番田周辺を巡る~」は、実習生による案内解説も予定しています。

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博物館実習 共通実習

8月1日から博物館実習が始まりました。大学からの依頼に基づき、学芸員資格取得を目指す学生を受け入れています。今年度の実習生は18名です。

8月1日〜3日の3日間は共通実習で、全員が同じ内容で実習を行います。

初日の8月1日は講義と施設見学です。

学芸業務についての講義

機械室の見学

天体観測室の見学

2日目の8月2日は資料の取り扱い実習です。自然系資料と人文系資料の取り扱い、土器の梱包実習を行いました。

自然系資料の取り扱いでは、ボランティアの方々のご指導を受けながら押葉標本の作成しました。

人文系資料の取り扱いは掛け軸や巻物を扱いました。

土器の梱包の様子です。

3日目の8月3日は展示解説の実践です。常設展示室から資料を1点選んで、3分間の展示解説をします。実習生や学芸員の前で解説します。午前中は解説をする資料の選定をして、解説のシナリオを作成します。

解説のシナリオを作成中

午後からは、一人ずつ常設展示室で展示解説を行いました。

自然歴史展示室入り口にあるマンモスを解説しています。

皆さん、かなり緊張していたようです。それでも、クイズを出したりしながら工夫を凝らして解説を行っていました。

共通実習の後は分野別の実習となります。日程は分野によって異なります。

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カイコ在来品種の繭

博物館で現在飼育中のカイコ在来品種の小石丸は、順調に繭をつくっています。夏蚕(なつご)は気温が高い中で飼育するせいか成長期間が短く、5齢でもちょっと小さめのまま熟蚕(繭をつくる状態のカイコ)になりました。

繭をつくりはじめた小石丸

一足先につくりはじめた品種「乞食」の繭はすっかり完成しています。鮮やかな黄色のくびれ繭で、思わず見とれてしまう美しさです。

品種「乞食」の繭

この黄色は、簡単に言ってしまうと、クワの葉に含まれるカロテノイド系色素が、絹タンパクにしみ出したものです。カイコの繭のもともとの色がこちらと言えます。

くびれ型で黄繭の「乞食」の繭

では、白い繭はナニモノかというと、色素がしみ出さない性質を持った突然変異を固定したものです。たとえるならニワトリの白色レグホンのようなものです(原種はセキショクヤケイ)。日本では白い繭が好まれてきたようで、日本で育てられるカイコの多くが白繭ですが、中国大陸や東南アジアのカイコの多くは黄繭です。

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最近の話題の生きもの(ヘビの写真あり)

このところ、報道でいくつかの動物が話題にのぼっています。中でも一番取り上げられる回数が多いのは、おそらくヒアリでしょう。相模原市内では確認されていませんが、海外との物資のやりとりは港湾部に限りませんから、市内でも見つかる可能性はあります。
それ以外では、このブログでもおなじみのマメコガネ。

博物館のお隣にいたマメコガネ

スイス南部で発見され、農業被害が危惧されているとのニュースでした。日本固有のコウチュウ類ですが、じつは、北米ではすでに侵入してジャパニーズ・ビートルと呼ばれ、農作物へ害を及ぼす外来種として認識されています。もちろん、日本国内では固有種ですから、在来の生態系を構成する大切な一員です(ただし、日本でも農作物への害は広く知られています)。
続いて、ヤマカガシです。

ヤマカガシ

兵庫県で小学生が噛まれ、一時、意識不明となったことが報道されました。ヤマカガシは相模原市内でもふつうに見られるヘビです。毒ヘビであることは生きものを扱う人間の中ではよく知られているのですが、咬傷被害がマムシなどに比べて非常に少ないため、一般的にはあまり知られていません。奥歯に毒腺があり、よほど深く噛まれなければ毒が注入されることはありませんが、特に子どもさんが指などを噛まれると危険です。また、ニュースなどで映されたヤマカガシと、関東近辺にいるヤマカガシはやや色が異なります。関東のものは赤味が強いので、すぐに見分けられます。

ヤマカガシの胴体(背中側)

顔のあたりに黄色味があり、胴体に強く赤色が混じるこのような色合いのヘビは、関東ではほかにいません。毒ヘビだからといってすぐに人間に害を及ぼすものではありませんから、見つけても距離をとりつつそっとしておいてください。
次に、先月報道されたセアカゴケグモです。こちらは市内で確認されました。

セアカゴケグモ

外来種が侵入して広まること自体が問題ではありますが、毒グモという側面が強調されすぎると、過剰な予防や駆除が行われてしまい、かえって在来生態系のバランスを崩して予期せぬ生物が増えてしまうというような弊害も起こります。セアカゴケグモは口の構造上、通常の接触によって人を噛むということはありませんので、見つけても慌てず冷静に対応することが重要です。ヒアリを含めて、こうした生きものの防除や駆除には専門的な技術と知識が必要となります。似た生きものを見つけた場合、博物館でも生物担当の学芸員が在館であればそうしたご相談に対応していますし、市役所や保健所を含めてまずは専門の機関へご相談ください。

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