カイコ日記(6/4)眠と脱皮、カイコの授業

6月4日、給桑開始から5日目です。すべてのカイコが最初の眠(みん)に入りました。古い頭部の殻がだいぶ前へずれているのが、眠のしるしです。

眠のカイコ

ただし、午前の段階ですでに早い個体が2齢に脱皮していました。脱皮は、クワを探して頭を振っていることと、頭の大きさでわかります。黒くて大きな頭が目立ちます。

大きく真っ黒な頭部が2齢に脱皮したしるし

脱皮した2齢のカイコと、まだ眠のカイコの頭を比べると、こんなに大きさが違います。

1齢(眠)のカイコ(左)と、2齢に脱皮したカイコ(右)

早く脱皮したカイコには申し訳ないのですが、ほぼすべてが脱皮する明日から給桑を再開します。脱皮したそばからクワをあげてしまうと、成長のばらつきが大きくなってしまうためです。2齢の期間は短く、2~3日です。こんなに大きく見える頭部も、1日食べ続けるともう小さく見えてきます。
ところで、6月3日、市内の田名小学校の3年生へカイコの授業を行ってきました。

授業の様子

博物館から蚕種(カイコの卵)を提供する場合、必ず1時間、学芸員が授業を行うことにしています。カイコを飼うことが、ペットを飼うのとは異なり、農作業であることを伝えるためです。繭(まゆ)の収穫が最大の目的であり、そのためには中に蛹(さなぎ)がいる状態のまま、冷凍したり乾燥したりするため、それまでに命を扱う農作業という仕事を理解できるようお話しをします。また、観察のために成虫にするのであれば、必要最小限の数にすることをしっかりクラスと先生とで話し合ってもらうこともお願いします。3年生のみなさん、とても熱心に話をきいてくれました。これからたっぷり愛情をこめて育ててくれることでしょう。
(生物担当学芸員)

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河原探索~石器材料を求めて~

5月28日に相模原縄文研究会のメンバーと相模川へ行ってきました。
目的は石器レプリカの材料集めです。

当館の土器×2(ドキドキ)タッチでは、縄文土器のほかに、
「磨石(すりいし)・石皿」もさわってもらっています。

土器×2タッチでさわれます。大きいものが石皿、小さいものが磨石です。

この石器は、縄文時代の人々が木の実などを石皿に置いて、磨石で磨り潰したものです。しかし遺跡の出土品で博物館資料でもあるので、新たに傷をつけることはできません。
つまり実際に「磨れない」のです。

そこで「磨る」動作も体験してもらいたいので、レプリカを作ることにしました。
材料は相模川の河原で拾える礫のうち、石皿は富士玄武岩、磨石は閃緑岩を選びました。
遺跡からの出土品でも同じ種類の石を用いています。

みんなで集めた石の一部です

まず、どんな石の種類が磨石・石皿に使われたのか説明し、集めてもらいました。上の写真の赤丸が磨石、青丸が石皿の材料になります。

みんなで集めました。(左:磨石、右:石皿の材料)

集めたもののうち、石皿は土器×2タッチで使用する机の大きさを考慮し、直径20㎝程度のものを選びました。そして、出土品の石皿はやや窪んでいるため、コツコツと石で叩く必要があります。まだこの作業は行っていません。おそらく地道で時間がかかりますが、徐々に進めていきます。

完成したら、土器×2タッチで参加者に体験してもらいます。
相模川の河原から石器の材料を探す経験は初めてで、みなさん楽し気に取り組んでいました。
(考古担当学芸員)

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カイコ日記(6/3)飼育展示初日

5月31日の掃き立てから4日目、6月3日(火)の本日からいよいよ飼育展示を開始しました。

1階エントランス、休憩コーナー横に設置しています

まだ小さいので、ルーペを通して見られるようになっています

下の写真は、掃き立て(5/31)から半日後の様子です。孵化(ふか)直後のブログと比べてみてください。

給桑開始から半日後の様子

葉に空いた小さな穴が、食べ痕です。孵化直後と比べて、頭から後ろがだいぶ膨らんでいるのがわかります。

若齢期は、葉を真上から食べることができます

そして、丸2日経った6月2日朝の様子です。すっかりカイコらしい形になっています。

丸2日でカイコらしい形になっています

さらに、6月3日午前の様子です。上の写真と比べて頭が小さく見えているのは、それだけ体が大きくなったことを示しています。写真の個体はすでに眠(みん)に入っているかもしれません。葉脈などの上で頭を上げて静止しているのは、眠の時の姿勢です。

少し赤味が強いのは、この品種(かい・りょう×あけ・ぼの)の特徴です

眠に入ったカイコはこのまま食べずに静止した状態で過ごし、明後日には脱皮して2齢になります。
(生物担当学芸員)

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カイコ、間もなく始まります!

毎年行っているカイコの飼育展示が間もなく始まります。今年の品種は「かい・りょう×あけ・ぼの」(大日本蚕糸会 蚕種科学研究所 作出)です。すでに孵化(ふか)が始まっています。

孵化が始まったカイコ

拡大してみると、毛蚕(けご)と呼ばれるとおり体に毛が生えているのがわかります。

中央左に、まだ頭だけ出かかっているカイコがいます

孵化の様子を紹介した過去のブログ記事はこちらです。
すべての卵が孵化するまで待ち、出そろったところでクワの葉を上げ始めます。これを「掃き立て」と呼びます。それは、毛蚕をクワの葉の上へ移す際に、毛蚕を傷つけないよう羽帚(はぼうき)を使って掃くように落とすからです。

養蚕用の羽箒 当館所蔵

飼育展示は、来週から1階エントランスでスタートする予定です。今年もカイコの成長をお楽しみください!
(生物担当学芸員)

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コミスジのランデブー

気持ちの良い晴天に恵まれた5月28日、博物館お隣の樹林地でコミスジというチョウを見かけました。

葉にとまるコミスジ

大柄で目立つ種類が多いタテハチョウ科の中では、比較的小型で、地味なチョウです。
しかし・・林内をゆったりと2頭で飛ぶのをよく見かけます。この日もついたりはなれたりしながらしばらく飛びました。

コミスジのランデブー

ランデブー飛行などと呼びますが、この2頭はどのような関係なのでしょうか。

近づいたり離れたりしながら飛んでいました

なわばり争いなのか、求愛なのか・・こんなふうに飛んでいると、ちょっと幻想的な雰囲気が漂います。
ふと目を下に移すと、里山の宝石がいました。アカスジキンカメムシの成虫です。

アカスジキンカメムシ

コミスジのランデブーに、アカスジキンカメムシ・・どちらも普通種なのに、一度に見られるとちょっと得した気分になります。
(生物担当学芸員)

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アステロイドデースペシャルトーク2025「地球衝突が指摘された小惑星、2024 YR4とアポフィスにフォーカス!」を開催します

毎年6月30日は、地球への衝突の可能性がある小惑星についての危険を認識し、地球上のすべての人の未来を守るための観測の重要性や対策などを考える「アステロイドデー」です。これに合わせて6月28日(土)、JAXAと日本スペースガード協会、当館が共催し、アステロイドデースペシャルトーク2025を開催します。今年のテーマは「地球衝突が指摘された小惑星、2024 YR4とアポフィスにフォーカス!」

©池下章裕

この二つの小惑星は近年、地球への衝突可能性が議論されています。特に2024YR4は昨年末に発見、2032年の地球への衝突可能性について確率が議論され、今年に入ってから世界的な話題となっています。また、アポフィスは2004年に発見され、2029年に衝突の可能性があるとされていました。しかし近年、軌道計算から衝突の可能性は極めて低いとされたものの、現在も観測が続けられています。今回のスペシャルトークでは、これらの小惑星に関する研究、観測の最新情報などを最前線の研究者が解説します。現在予定されているプログラムは次のとおりです。

【2024 YR4 セッション】
◆2024 YR4について何が起こったのか   吉川 真(JAXA)
◆2024 YR4の地球衝突確率        竹内 央(JAXA)
◆2024 YR4に「はやぶさ2」を向かわせる? 津田 雄一(JAXA)
◆NEOの観測と2024 YR4プレカバリー    浦川 聖太郎(日本スペースガード協会)

【アポフィス セッション】
◆アポフィスについてのこれまでの経緯  吉川 真(JAXA)
◆アポフィスへのミッション1:DESTINY+山本 高行(JAXA)
◆アポフィスへのミッション2:RAMSES 豊田 裕之(JAXA)
◆アポフィスへのミッション3:衝突実験で表面を探る 橘  省吾(東京大)
◆アポフィスの観測、掩蔽観測      吉田 二美(産業医科大学・千葉工業大学)
◆2029年のアポフィスの見え方      浦川 聖太郎(日本スペースガード協会)

なんとも豪華な顔ぶれによるトークセッションです。当日はYouTubeによるライブ配信もあります。

YouTubeによるライブ

そして昨年、JAXAでは小惑星の地球衝突問題について本格的に取り組むため「プラネタリーディフェンスチーム」が発足しました。そのプロモーション画像がこちらです!

©JAXA ©TSUBURAYA PRODUCTIONS

地球を守る!イメージにぴったりキャラクターです。
6月28日、多くのみなさまのご来場をお待ちしております。

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スズメの子、ツバメの子

5月下旬になり、クワの果実が実っています。

ヤマグワの果実

南区のある場所で、クワの木の下でスズメが鳴いていました。よく見ると、巣立ちビナを連れた家族群でした。枝にたくさんのクワの果実が実っているのに、スズメは地面に落ちた果実を好んで食べています。そして、巣立ちビナが翼を震わせて食べ物をねだると、親がクワの果実を与えていました。落ちている果実を食べるのなんて、ヒナでもできるはずですが、このように親から与えられる餌をとおして食べるべきものを学んでいくのかもしれません。

巣立ちビナへ落ちたクワの果実を与える親スズメ

近くでは、ツバメの巣立ちビナも飛び回っていました。でも、体力がまだあまりないのか、時々フェンスにとまって休息します。

ツバメの巣立ちビナ

考えてみると、ツバメが4月下旬に営巣を始めてから抱卵に約2週間、孵化して巣内で成長して約3週間で、巣立ちます。卵からたった1か月で、親と同じ大きさに育ち、飛び回っているというのはものすごい成長速度です。初夏へと移り変わるこの時期は、野鳥の成鳥の速さに驚く日々です。
(生物担当学芸員)

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ホタル観察会を実施

5月23日、市内田名のゲンジボタルの発生地で、県立上溝南高校地域連携実行委員会主催のホタル観察会が行われ、当館学芸員がご案内してきました。
例年、80~100名くらいが参加します。水路沿いの細い遊歩道を歩くこともあり、シーズンの初めに実施しています。ゲンジボタルの発生のピークは、ソメイヨシノの満開から2か月後が一つの目安です。そうすると、ソメイヨシノの開花が遅めだった今年はゲンジボタルの発生ピークもやや遅めになりそうなので、この日に発生しているかちょっと不安でした。
やはり、歩き始めてもホタルはまったく飛んでいません。今年はゼロか!?と不安がよぎりつつ、遊歩道の折り返し地点まで来ると・・飛んでいました!(下の写真は昨年のものです)

昨年のゲンジボタルの様子(長時間露光)

昨年は水路でも多くのゲンジボタルが光っていましたが、やはりこの場所で一番数多く見られました。数は10数頭でしたが、諦めかけた後の出現に生徒のみなさんも大変盛り上がっていました。恒例の“スマホでホタル”の記念写真です。

ゲンジボタルを見られてテンションも上がりました

結局、復路も水路上には飛んでいなくて、出発地点で数頭見られただけでした。引率の先生のうちわにとまったゲンジボタルです。

うちわにとまったゲンジボタル

数は少なかったものの、生徒のみなさんは水路の反射や蛾などをホタルと見間違えては笑ったりして、楽しそうに観察してくれました。4月に事前学習として、動物担当学芸員からゲンジボタルとその生息環境について話を聴いているので、この場所が地域の自然環境を語る上でとても重要であることも実感できたと思います。
(生物担当学芸員)

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当麻田小で縄文土器の講座を行いました。

先日、当麻田小にて、縄文土器を活用した講座を行いました。
これは、緑区にお住まいの方から、ご自身がみつけた土器をもとに、
学校で遺跡のお話ができないか相談をいただいたことがきっかけでした。

いつも土器×2タッチで多くの方に土器をさわっていただいており、
「さわる体験」を重視していますので、このお申し出に賛同し、開催することとしました。

当麻田小の近くの遺跡や、土器の特徴を解説

対象は5・6年生で、合計100名と人数が多いので博物館から持参した縄文土器・石器もさわってもらいました。

博物館から持参した縄文土器

はじめて土器をさわる児童が大半で、とても熱心にさわっていました。
写真や図面とは異なり、質感や重さ、土器の模様など注目する点を説明しました。

いろいろな疑問が尽きません。

昼休みもさわってもらう時間に充てて、5・6年生以外にも2~4年生にも体験してもらいました。

今回、印象的だったのはこちら。説明に使った図の1枚です.

オレンジの線は、昔の住居などがある可能性が高い地域(遺跡の範囲)です。赤星は当麻田小です。児童が、自分の家が遺跡の範囲なのかどうか、地図を見て調べていました。自分の住む場所が遺跡に含まれるのか、自発的に調べる視点はとても重要です。

今後も、土器を活用したわかりやすい講座になるよう経験を積みつつ取り組んでいきます。
(考古担当学芸員)

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サイハイラン

5月23日、博物館お隣の樹林地の林内でサイハイランがひっそりと咲いていました。

サイハイラン

れっきとした野生ランなのですが、平地や低山の林内で普通に見られること(時に大きな群落を作ります)や、全体的にちょっと地味な印象が強いため、ランにしてはあまり注目されません。でも、花を拡大するとやっぱりランの仲間らしい華やかさがあります。

花を横から見たところ

種名は武将が戦場で持つ采配(さいはい)にちなんでいます。武者人形が弓矢などと共に持っている、アレです。

正面から見た花

花がちょっと下向きに群れて咲く様子は確かに采配を思わせます。
薄暗いヤブのような場所でも咲くので、せっかく開花しても見落としてしまいがちです。今回は、蚊の襲撃に耐えながら写真を撮ることができました。
(生物担当学芸員)

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