テイカカズラ

博物館お隣の樹林地で、あずき色の細長い鞘(さや)がぶら下がっているのに気づきました。

テイカカズラの鞘果

これは、テイカカズラの鞘果(さやか)です。すでに割れて中身の果実が見えています。

割れて中身が出かかっています

取り出してみました。いかにも風に乗りそうな見事な冠毛です。

テイカカズラの果実と冠毛

テイカカズラは春から夏にかけて花を咲かせるつる性の樹木で、花は風車を思わせるかわいらしい花です。

テイカカズラの花(初夏に撮影)

果実も繊細で美しいのですが・・じつは、盛大に育つとなかなか恐ろしい姿になります。木が弱って枝ぶりが悪くなってくると、日照を感じてか、急につるを伸ばして木を覆いつくしてしまいます。下の写真は、鞘果を撮影したすぐそばで茂っていたテイカカズラのつるで、一昨年の様子です。

テイカカズラに覆われたミズキ すでにミズキの枝が見えなくなっています

枯れかけたミズキにとりつき、おばけのような状態になってしまいました。昨年、このミズキは重さに耐えかねて途中で折れてしまったのです。
つる植物は、チャンスがあれば上へ上へと伸びていき、たとえ台になっている植物が枯れたり、もとろも倒れたりしても、その一時に大繁殖できればよいという戦略です。なんとも刹那的ですね。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , | テイカカズラ はコメントを受け付けていません

友の会サミット2025に参加しました!

大阪市立自然史博物館において「友の会サミット2025 博物館コミュニティの未来を考える」が11月29日~30日に行われ、当館学芸員が参加・発表しました。このサミットは、認定NPO法人大阪自然史センターが主催し、10年ごとに開催され、今回が3回目となります。

ポスター発表会場

全国の博物館の友の会やそれに類する組織のみなさんや、博物館学芸員など2日間でのべ約250人(オンラインを含む)、46団体が参加し、事例紹介や情報交換を行いました。基調講演では、美術館におけるアートコミュニケーションの現場から、コミュニケーターの養成課程や、そうした活動がICOM(国際博物館会議)が2022年にまとめた「博物館の定義」に呼応したものであることなどが紹介されました。

基調講演後のディスカッション

当館は友の会組織はありません。しかし、多数の市民グループが博物館の専門領域のすべてに参画していることを考えると、組織の形態に関わらず同様の活動が行われていると言えます。その全体像についてポスターで発表するとともに、その中の「さがみホネホネ団」の成り立ちなどについて口頭で紹介しました。

当館のポスター発表

分科会では、運営形態や世代交代の課題と事例紹介、ユニークな活動事例やグッズ開発の事例などの情報交換が行われました。全国の博物館関係者が集まる会議は毎年開催されていますが、博物館コミュニティと言える、友の会などのコアユーザーが集う機会は多くありません。参加者のみなさんが口々に、次は10年待てないとおっしゃっていたことが、充実した有意義なイベントだったことを物語っています。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 今日の博物館 | タグ: , | 友の会サミット2025に参加しました! はコメントを受け付けていません

晩秋の小倉山

11月27日、市内の希少な植生の状況を調査するため、相模原市の文化財審議会委員の方と、相模原植物調査会有志で緑区の小倉山へ入りました。
晩秋の山と言えば、この花。コウヤボウキです。

コウヤボウキの花

すでに紅葉は終盤でしたが、イタヤカエデの見事な紅葉が林内のあちらこちらで見られました。

イタヤカエデの紅葉

小倉山は、コンクリートの骨材を採取するため、現在、山頂を含む北側斜面全体が掘削されています。山頂も消失しているため、登山道は途中で立入りができなくなっています。入れる登山道の、元山頂があった場所に一番近い場所に、だれが置いてくれたのか、山名の書かれたかわいい石標がありました。

山名の書かれたかわいい石標

目指すは、この地域では珍しいスダジイ林です。西日本の暖地に多い植生ですが、なぜか小倉山には尾根筋にスダジイ林が残っています。アップダウンの多い道を進み、スダジイやタブノキ、イズセンリョウなど暖地性の樹木の多い林内を歩きました。

アップダウンの多い山道でした

もうひとつ、暖地性のシダ植物であるホソバカナワラビも大群落を作っています。

ホソバカナワラビ

10年ほど前に、相模原植物調査会でこの樹林を詳細に調査しましたが、ほぼ、それ以来の訪問でした。枯死した樹木があったり、若齢木の背が伸びていたりと変化は見られたものの、スダジイ林がそこにあって安心しました。
ところで、帰りに林道から少し入ったところで、同行のお一人が思わぬ植物を発見しました。リンボクです。

リンボク

相模原市内では初めての確認であるだけでなく、県内では現在、県西部の湯河原にしか自生地が確認されていない希少な植物です。
幼植物もたくさん芽生えていたので、こちらも引き続き注目していこうと思います。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , | 晩秋の小倉山 はコメントを受け付けていません

秋祭り最終日 昼間の星の観望会!

秋晴れに恵まれたこの3連休は開館30周年記念イベント「博物館の秋祭り」を実施しました。3日目の11月24日は、いつもは閉じている、天体観測室のドームが開いています・・

 

天体観測室のドームが開いています!

そう、この日は「昼間の星の観望会」です。当館自慢の40センチ反射式望遠鏡で、快晴の空の星を見てしまおう!というイベントです。

40センチ反射式望遠鏡

10時30分からと、13時30分からそれぞれ1時間、観測室を開放して、うしかい座のアークトゥルス(うしかい座α星)という1等星を見ていただきました。

見えた!

午前の回は星が高い位置にあって見るのがちょっと難しかったかもしれませんが、全員がしっかりと赤っぽい星を見ることができました。午後は少し角度も低くなり(上の写真)、見やすくなったために順番の待ち時間も少なくて快適に見ていただくことができました。
それにしてもこの3連休のお天気は格別でした。博物館周辺の紅葉も見ごろです。天体観測テラス(屋上)から見た前庭付近です。

紅葉を上から見たところ

前庭に下りて、ツタの紅葉を見上げたところです。

ツタ(ナツヅタ)の紅葉

前庭のコナラ、クヌギ、ケヤキが黄金色に染まっています。

前庭の紅葉 館内のガラス壁越しに見てもとても美しいです!

開催中のポケモン天文台のメインポケモンの色に合わせたかのような見事な紅葉、あと1週間くらいが見ごろとなります。今のうちにぜひご来館ください。
(生物担当学芸員)

 

 

カテゴリー: 今日の博物館, 天文 | タグ: , , | 秋祭り最終日 昼間の星の観望会! はコメントを受け付けていません

博物館の秋祭り!バックヤードツアーを開催

三連休で開催中の開館30周年記念イベント「博物館の秋祭り!」では、日曜日の23日にバックヤードツアーを実施しました。
今年度4回目となるバックヤードツアーですが、前回までに引き続き、開館前から何名もの方に並んでいただく盛況ぶりでした。
今回は、地下のコントロール室と冷温水発生器の見学ののち、収蔵庫を見てもらうコースです。
地下のコントロール室では博物館全体の空調管理の様子を、そして冷温水発生器では、空調設備の心臓部を間近で見ていただきました。

コントロール室

つづいて、収蔵庫エリアでは生活資料収蔵庫や動植物資料収蔵庫にて、たくさんの資料が保管されている様子をご紹介しました。

生活資料収蔵庫には、手前にたくさんの農具があります

動植物資料収蔵庫では、ちょっとマニアックに剥製の作り方の違いについてもお話しました。

こちらは昆虫標本をご紹介!

バックヤードツアーでは、各回の担当学芸員ごとに少し違った視点から「博物館のウラ側」を紹介しています。
今後の開催の際もブログ等で宣伝しますので、ぜひご参加ください!
(動物担当学芸員)

カテゴリー: 今日の博物館 | タグ: | 博物館の秋祭り!バックヤードツアーを開催 はコメントを受け付けていません

ワークショップ縁日! 博物館の秋祭りから

開館30周年を記念して、11月22日から24日かけて実施している「博物館の秋祭り」、初日の「ワークショップ縁日」の様子をお伝えします。
このイベントは、大会議室全体を使い、各専門分野と市民学芸員がワークショップを縁日風に同時実施する企画です。

大賑わいの“縁日”会場

これまでも各分野でさまざまなワークショップを実施してきましたが、同じ会場で一斉に実施するのは初めての試みです。ポケモン天文台で多くの来館者をお迎えしていることもあり、終日、たくさんの方にご来場いただきました。
すべてのワークショップをお伝えできませんが、こちらは市民学芸員による「ぶんぶんゴマで遊ぼう」です。

ぶんぶんゴマで遊ぼう

ぶんぶんゴマのイベントは毎年何度か実施しているため、市民学芸員のみなさんはテキパキと、しかも和やかに参加者を楽しませてくれていました。
こちらは生物分野の相模原植物調査会による「葉っぱ工作にチャレンジ」。4種類ほどの葉っぱ工作に挑戦していただきました。

葉っぱ工作にチャレンジ

苦戦しながら見本のとおりに作る参加者もいれば、オリジナリティのある“作品”に仕上げてしまう方もいました。

シャガの葉でドラゴン!

同じく生物分野のもう一つのブースでは、「実演!昆虫標本づくり」を実施しました。動物担当の学芸員が実際に昆虫標本の作製作業をお見せしました。標本箱に並んでいる昆虫標本にも興味を持たれる方も多く、話が弾みました。

たくさんの昆虫標本に興味津々

考古分野の縄文研究会は、「縄文土器の拓本体験」。本物の土器片を使って拓本を取る作業は、考古ファンだけでなく多くの方が楽しんでいました。

縄文土器の拓本体験

歴史分野は「掛軸取扱体験」。こちらも本物の掛軸を使い、矢筈(やはず)を使って取り付けたり、巻いてもらったりしました。

緊張しつつ、掛軸を扱ってもらいました

他にも、地質分野の「地質資料を顕微鏡で見てみよう ミニ」や考古分野の「この穴、なんだろう?」、民俗分野の「チャレンジ!今と昔の道具マッチング」が行われ、たくさんの方にお楽しみいただきました。
23日にはバックヤードツアーが行われ(後日改めて紹介します)、明日、24日は天文分野による「昼間の星の観望会」(10時30分~、13時30分~、各1時間)が行われます。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 今日の博物館, 生きもの・地形・地質, 考古・歴史・民俗 | タグ: , | ワークショップ縁日! 博物館の秋祭りから はコメントを受け付けていません

小学校で生物多様性の授業

11月20日、市内中央区の上溝小学校で当館学芸員が3年生へ生物多様性の授業を行いました。

生き物の写真を見せながらお話ししました

相模原を特徴づけるの生き物のお話しと、相模原の絶滅危惧種として、カワラノギク、ギフチョウについて紹介し、さらに近年、問題になっているクリハラリスについてもお話ししました。さらに、学校の池などの水を顕微鏡で見ると・・ということで市内の学校で採水した水の中にいた、いろいろなプランクトンの動画を見てもらうと、とても盛り上がりました。
最後まで話を熱心に聴いてくれて、その後、未来の相模原の自然について、こんな自然があったらいいな、という絵を描いてくれました。

カワラノギクが咲き、ギフチョウが飛ぶ絵を描いてくれています

授業の合間には、持ち込んだクリハラリスとニホンリスの剥製(はくせい)に興味津々で集まっています。

リスの剥製に興味津々

生物多様性の概念はとても難しいのですが、まずは身近なところで、見えない生き物を含めてたくさんの生き物がお互い関係しあって生きている、ということを感じとってもらえたようです。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , | 小学校で生物多様性の授業 はコメントを受け付けていません

この週末は、博物館の秋祭り!

11月22日~24日まで、相模原市立博物館開館30周年を記念したイベント「博物館の秋祭り」を開催します。

 

22日はワークショップ縁日として、各専門分野と市民学芸員による様々なワークショップを行います。また、23日はバックヤードツアー、24日は昼間の星の観望会(晴天でない場合は天体観測室見学)と、盛りだくさんです。

◆11月22日(土) ワークショップ縁日
大会議室 10時~16時
★縄文土器の拓本体験(考古)
★この穴、なんだろう?(考古)
★掛軸取扱体験(歴史)
★チャレンジ!今と昔の道具マッチング!(民俗)
★地質資料を顕微鏡で見てみよう ミニ(地質)
★実演!昆虫標本づくり(動物)
★葉っぱ工作にチャレンジ(植物)
★ぶんぶんゴマで遊ぼう(市民学芸員)
※各ブースによって休止する時間帯があります。
※材料が終わり次第終了するブースもあります
◆11月23日(日) バックヤードツアー
先着15名様 10時、12時(各30分)
※それぞれ30分前から整理券を配布します。
◆11月24日(月) 昼間の星の観望会
天体観測室 10時30分~11時30分、13時30分~14時30分

皆様のご来館をお待ちしております!

※ポケモン天文台開催期間中のため、駐車場の混雑が予想されます。公共交通機関でのご来場にご協力をお願いします。

カテゴリー: 未分類 | この週末は、博物館の秋祭り! はコメントを受け付けていません

秋色深まる

博物館周辺の木々もだいぶ色づいてきました。

相模原市立博物館前の道路の様子

前庭のコナラの幹にくっついて伸びるツタも、真っ赤に紅葉しています。

ツタの紅葉

先日このブログでお伝えした、栽培中のカワラノギクは、ここ数年でも一番たくさん花を咲かせています。

満開のカワラノギク

また、別のブログで春の野草であるオキナグサが咲いているとお伝えしましたが、同じくキンポウゲ科のカザグルマも1輪、咲いてしまいました。

開花したカザグルマ

この株も、系統保存のために市内の自生株からの挿し穂で栽培しているものです。例年、春の大型連休の頃に開花するのですが・・どうやら季節を間違えているようです。オキナグサは結局ほとんどの株が花をつけて、今もまだ咲いています。この冬を無事に越して来春また咲くのか、だんだん不安になってきました。
いずれにしても、霜が降りたらふと我に返るのかもしれません。冬はもうすぐそこまで来ています。
(生物担当学芸員)

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , | 秋色深まる はコメントを受け付けていません

今年も開催しました! 川原石のふしぎ

相模原市教育委員会の旧石器ハテナ館が主催の「川原石のふしぎ〜自分だけのお気に入りの石図鑑をつくろう〜」が10月25日(土)に開催されました。相模原市立博物館の地質担当学芸員が講師を務めました。川原の岩石の実物を使ってオリジナルの図鑑を作成するイベントでです。

本来ならば旧石器ハテナ館近くの相模川で岩石を採集するのですが、この日はあいにくの雨で、時折強く降ることがあったため、旧石器ハテナ館の職員があらかじめ採集しておいた川原の岩石を使って図鑑を作成しました。

図鑑作りを始める前に、実物を見ながら相模川の川原の代表的な岩石の特徴を説明しました。

説明の後、岩石を観察しながら図鑑作りに使うものを選びました。多くの岩石が採集してあったので、実際の川原で採集するのと同じ様な感覚で選ぶことができました。

選んだ岩石を使って図鑑を作成しました。箱の中に木工用ボンドで岩石を貼り付けて作っていきます。相模川や山々をイメージした絵を描いたり、立体的に山を作ったりして、楽しみながらオリジナルの図鑑を作っていました。

今年も立派な図鑑が完成しました!

今回観察したのは、相模川の川原の岩石のほんのごく一部ですが、それでも岩石にはいろいろな種類のものがあることをご理解いただけたようです。外に出かけた時には岩石にも目を向けて、数えきれないほどたくさんの種類があることに気がついていただければと思います。

(地質担当学芸員)

カテゴリー: 報告, 生きもの・地形・地質 | タグ: , , | 今年も開催しました! 川原石のふしぎ はコメントを受け付けていません