博物館収蔵資料紹介~庶民の娯楽 地芝居~

前回取り上げた義太夫(ぎだゆう)とともに、庶民の娯楽として盛んだったのが地芝居(じしばい)です。昔の神社の祭りでは余興として芝居がよく演じられ、金を払って各地にいた芝居師を頼む一方で、そうしたなりわいとして芝居をした人たちとは別に、地元の人々が自分たちで歌舞伎(かぶき)や時代劇を習って、祭りに限らず芝居をすることが各地でありました。

次の三枚の写真は、いずれも町田市相原町で芝居をしていた内藤鶴吉さんの一座で大正10年(1921)頃まで使用していたものです。この方は、足袋(たぴ)や半纏(はんてん)などを扱う仕立て屋(したてや)を営みつつ、芸事が好きで芝居の座元(ざもと)としても活躍していました。一座は東京都の多摩地域を中心に、緑区橋本の祭りなどでも頼まれて芝居をしており、市外の方が保管していた資料をご寄贈いただきました。

最初の写真はきらびやかな舞台衣装で、こうした衣装も芝居をするのに必要なものは一そろいあったそうです。そして、芝居をやらなくなってからは、近所の青年たちが行った娯楽会に貸し出したりしました。二枚目は演者がかぶる鬘(かつら)、三枚目は小道具の刀(かたな)です。

 

次の二枚の写真は、山梨県の甲東村(こうとうむら・現上野原市)にあった素人歌舞伎の一座で女性や子どもも写っています。この写真は昭和21年(1946)頃のものではないかとされ、撮影場所ははっきりしません。一座は農閑期に各地を興行し、隣接する緑区日連(ひづれ)や牧野(まぎの)などでも演じていたということで、横浜市南区の方から本館に寄贈されました。                   

 

なお、前回も紹介した、平成22~28年度にかけて博物館の各分野の活動などを記した「博物館の窓・民俗の窓」では、平成24年度記事のNo.42「今年も藤野歌舞伎を楽しませていただきました」として、現在でも地域で行われている「藤野の村歌舞伎」(市登録無形民俗文化財)を取り上げています。https://sagamiharacitymuseum.jp/blog/2013/12/17/h24_minzoku/#minzoku24-9

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