目立つ花も目立たない花も

博物館周辺の植物開花情報です。
以前、つぼみをこのブログでご紹介したシロバナハンショウヅルは、綺麗に花を咲かせています。

シロバナハンショウヅル

こんなふうに、目立つ花もたくさん咲いていますが、人知れず咲いている目立たない花もたくさんあります。
こちらはクワの花です。この木は雌株なので、雌花だけが咲いています。

クワの花(雌花)

一昨年、近くにあった雄株の大木が台風や降雪で傷んだため伐採されてしまったので、風で花粉が飛んでくるかちょっと心配です。
こちらはドングリのなる木のコナラです。コナラは雌雄同株で、こちらは雄花です。

コナラの花(雄花)

よく見ると、雄しべが見えますが、花弁はありません。

コナラの雄花

雌花はこちらです。

コナラの雌花

拡大しても花なのかどうかもわからないほど小さく目立たない花です。

コナラの雌花

でも、これが秋にはドングリになるなんて、ちょっと驚きですね。

※当館は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、5月13日まで臨時休館となっております(4月15日現在)

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今年のキアシドクガ情報(その1)

相模原市内で大発生が続くキアシドクガは、博物館周辺では2014年に大発生が始まり、昨年にはもう終息といえるレベルまで発生数が減少していますが、それでもまだそれなりの数は見られました。今年はどうでしょうか。昨年は4月9日に若齢幼虫を確認したのですが、今年は今日、4月12日に確認しました。

キアシドクガ(若齢幼虫)2020年4月12日撮影

食べ痕は数日前には確認していたのですが、1本の木の中でも食べ痕のある場所に偏りがあり、手の届く高さにはあまり見られませんでした。キアシドクガは本来、若齢期はあまり低い位置にはいないのではないかと思われます。

ミズキの枝を下から見上げても、食痕はあまり見られません

こうした点からも今年も発生数は少ないものと考えられます。見える範囲で探しても、このように数匹がいる程度です。

2匹のキアシドクガの幼虫が葉裏にいます

ただ、木によって、ある程度食痕が目立つ場所もあり、そうしたところをよく見ると、葉を半分に折って縫い合わせたようなものが見られます。

キアシドクガの脱皮室(2018年撮影)

これは、キアシドクガの幼虫が脱皮の前に作る脱皮室です。おそらく、中では眠(みん:脱皮前の休眠状態)の幼虫がいるのでしょう。
これまでの発生状況と比較して考えると、今年はそれなりの発生は見られるものの、大発生は終息期の延長上(末期)に達していると予測されます。
大発生は博物館周辺や木もれびの森など市域中央部から始まり、徐々に周縁部へと拡大した経緯があります。そのため、市域北部や高尾周辺などは今年も相当の発生が見られるでしょうが、これもおそらくピークは過ぎていると考えられます。
今後の推移を見守り、また報告していきたいと思います。

※当館は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、5月13日まで臨時休館となっております(4月12日現在)

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カラフトオニグモ

カラフトオニグモ


この写真は一週間ほど前、博物館近辺で撮ったものです。
毎年のようにヤエンオニグモが網を張る場所だったので、ああ今年も出て来たのか、と思っていたのですが、よく見ると網に帯状の装飾(「隠れ帯」と呼びます)がついています。
改めてクモ本体を確認すると、カラフトオニグモでした。
垂直の網で、隠れ帯をつけていて、細長い腹部にこういう波型の模様がついていたら、ほぼこの種だと思って間違いありません。
と、偉そうに書いていますが、実は写真を拡大して見るまで気が付きませんでした。てっきりヤエンオニグモが隠れ帯をつけているのだと思いこんでいたのです(実際に幼体の時にはつける事があります)。ちゃんと見ればわかる事なので「ここにはアレがいるはず」という先入観はいけませんね。反省です。

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フデリンドウとビロードツリアブ

博物館は5月13日まで臨時休館中です(4月9日現在)。
そんな中でも博物館周辺の自然は着実に春の営みを進めていますので、このブログでも引き続きお知らせいたします。なお、不要不急の外出や3密(密閉・密集・密接)を控えるなどの要請が出されています(相模原市ホームページなど)。身近な自然観察を行われる場合も、こうした点にご注意いただきますようお願いいたします。

今、博物館周辺の樹林ではフデリンドウが花盛りを迎えつつあります。それに合わせるかのようにやってきている昆虫がこちら。

フデリンドウの花を訪れたビロードツリアブ(花の左上)

ビロードツリアブです。モフモフの毛に覆われた丸い体がとてもかわいらしいですね。
長い口吻(こうふん:ストロー状の口)で蜜を吸うのですが、フデリンドウは花が細長いラッパ状です。こんなふうに、モゾモゾ潜り込まないと蜜にありつけません。

蜜にありつくには花の中に体を突っ込まなくてはいけません

しかもラッパはビロードツリアブの体がやっと入れるくらいの直径です。その結果、ビロードツリアブのモフモフの毛に花粉が付き、別の花を訪れた時に花粉が媒介されるという仕組みです。

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博物館は5月13日まで臨時休館延長です

相模原市は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、市の施設の休止期間を5月13日まで延長することを決定しました。
博物館もこれに伴い5月13日まで臨時休館を延長いたします。

不要不急の外出はお控え下さい!!(写真はタカの仲間のツミ)

相模原市の公式ホームページでは、市の施設や主催イベント等休止情報の他、市民のみなさまへのお願いが掲載されております。
そちらもご覧頂き、感染拡大防止へのご協力をお願いいたします。

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走る春

春がますます加速しています。
博物館のお隣の樹林地では、いろいろな花が咲いています。まずはキイチゴの仲間のニガイチゴ。

ニガイチゴ(花は上向きに咲きます)

花を枝から上向きに咲かせます。名前に反して果実は特に苦みがあるわけではありません。
こちらが日本の山野でキイチゴと言えばコレ、と言える種類です。ただし、種名はモミジイチゴ。

モミジイチゴ(花は下向きに咲きます)

ニガイチゴは赤い果実ですが、モミジイチゴは黄色い果実が実ります。ただしキイチゴ(ラズベリー)とは、黄色いイチゴという意味ではなく、木イチゴ、つまり木になるイチゴという意味で、果物として売られている草本植物のオランダイチゴ(ストロベリー)と区別した呼び方なのです。
こちらはアケビ。秋に実る、紫色の大きな甘い果実が有名ですが、花も紫色でかわいらしい形をしています。

アケビ

こちらは花ではありませんが、ヌルデの若芽です。冬の初めの紅葉が美しい樹木ですが、若芽も同じような色に染まっています。

ヌルデの若芽

黄金色に光る常緑樹の若芽は、シロダモです。

シロダモの若芽

黄金色の正体は、若芽の時にだけある長く柔らかい毛です。この毛は葉が展開するうちに抜け落ちて、成葉になると照葉樹らしいツヤのある表面になります。

長い毛に覆われたシロダモの若芽

こちらはつぼみ。数年前にこの樹林では初めて生育に気付いた、シロバナハンショウヅル。

シロバナハンショウヅルのつぼみ

もうすぐ、清楚な白い花が楽しめそうです。
春の加速はまだしばらく続きます。

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ちょっと怪しいクモ

今朝ちょこまかと忙しそうに網を張っていたのは、シロカネグモの仲間。

白金グモの仲間(幼体)


体長3mmほどの、まだ幼体です。シロカネ(白銀)という名前の通り、腹部が銀色をしています。
これのどこが怪しいのかというと、もしかしたらまだ市内で記録されていない「チュウガタシロカネグモ」かもしれないという事。
まだ幼体なので、はっきりと種を区別するのは難しいのですが、よく模様を見ると…

腹部の肩の部分に黒い斑紋があります。これはチュウガタシロカネグモの特徴です。他の斑紋もなんとなくそれっぽい感じです。特に珍しい種ではありませんが、いわゆる「南方系」といわれる種で、比較的暖かい地方や海に近い地域などで見られます。もしかしたら、相模原にも分布を広げつつあるのかもしれません。
ただ、成体になったら見慣れたクモでした、ということも十分にあり得るので早とちりは禁物です。しばらく注意して見守りたいと思います。

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フデリンドウがそろそろ見ごろです

博物館周辺に自生する春の花、フデリンドウの花がだいぶ目立ってきて、見ごろを迎えつつあります。

フデリンドウ

高さ5センチメートル前後の小さな植物なので目が慣れないと見つかりませんが、見つけやすい場所をお知らせします。
それは、博物館正面の、屋上に天体観測室の半球型のドームが見えるあたりの歩道沿いにあります。
当館の守衛さんが、踏まれないようにと、小枝を挿してくれています。

それぞれの株のまわりに、小枝を3本ほど挿してあります

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、博物館は4月13日まで臨時休館となっています(4月3日現在)。外出もままならない中ですが、公共交通機関など使わずに来られるお近くの方は、お散歩がてら探してみて下さい。
なお、フデリンドウは花が咲いて結実すると根ごと枯れてしまう越年草です。採ったりせずにその場所でお楽しみ下さい。また、晴れていないと花が開きませんのでご注意ください。

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春爛漫

前日の冷たい雨から一転、4月2日は爽やかな春の日差しが地面の隅々にまで行き渡るような一日でした。
緑区の早春植物の開花状況と、台風などによる生育地の被害状況を確認する調査を行いました。まずは植物ではありませんが、石砂山(いしざれやま)のギフチョウです。

サクラの花で吸蜜するギフチョウ

石砂山はギフチョウの生息地として県の天然記念物に指定され、県内で唯一残る発生地です。ちょうど満開になったサクラの花などへ吸蜜に訪れていました。
足もとでは、アマナが咲いていました。陽当たりの良い場所ではピークを過ぎていますが、ちょっと日陰の法面だったので花がまだ残っていたようです。

アマナ

場所は変わって、こちらはピークを過ぎたカタクリです。どうにかきれいに咲いている花を一つ見つけましたが、多くの株は花がすでにしおれていました。

カタクリ

写真を撮影した場所は植栽などされていない自生地で、訪れる人もなくひっそりとしていました。
カタクリを撮影してふと頭を上げると、斜面の上にシュンランが咲いていました。仲良く2つの花が並んでいました。

シュンラン

こちらは、オキナグサ。この場所は私たちが“楽園”と呼んでいる場所で、県内でもわずかに残る自生地です。昨年の台風による崩落痕が近くにありましたが、楽園は無事でした。

オキナグサ

同じ場所に咲く、オカオグルマです。

オカオグルマ

さらに別の場所へ移動して、こちらはイチリンソウです。

イチリンソウ

ここはスギ林ですが、やはり昨年の台風で倒木が多くあり、自生地が狭まってしまいましたが、木もれ日を受けてしっかりと咲いていました。
同じ場所で、もうヤマブキソウが咲いていました。

ヤマブキソウ(樹木のヤマブキとは異なる植物です)

例年より早めに咲いた花、例年どおりの花が入り交じり、いろいろな植物の開花を確認できました。

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雨の年度初め

4月1日、雨。博物館は臨時休館中の中、新年度を迎えました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で今年度の事業予定が定まりませんが、いつでも開館できるよう、職員も体制を整えています。
さて、野外では季節がどんどんと進んでいます。今日は雨なので、数日前に撮影した春の写真をご紹介します。
まずはカタクリ。緑区の各所で開花のピークを迎えています。

カタクリ(3月30日撮影)

同じ場所で負けじと咲くのは、ナガバノスミレサイシン。

ナガバノスミレサイシン(3月30日撮影)

さらに、ヤマエンゴサクも。

ヤマエンゴサク(3月25日撮影)

植物だけではありません。相模川で越冬していたカンムリカイツブリも夏羽に換羽し、間もなく北帰行が始まります。

カンムリカイツブリ(3月25日撮影)

雨が上がったら、もっともっとたくさんの春をお伝えできることと思います。

※博物館は4月13日(月)まで臨時休館となります(4月1日現在)。

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