エナガのおしくらまんじゅう

鳥たちの繁殖期の話題、その2です。
博物館お隣の樹林地では、よく耳を澄ますと「チチッ」「チリ」という細く小さな声を聞くことがあります。そんな時は注意深く枝の上を探すと・・

枝の上にぎゅうぎゅうにとまっているのは・・

エナガの巣立ちビナがぎゅうぎゅうにとまっていたりします!
子育ての邪魔をしないように、そーっとヤブの影から撮影しているためちょっとわかりにくいのですが、いっちょまえに長い尾を数えると10羽います。同じ巣で生まれたヒナたちです。

ヒナのうちから尾が長いのが特徴です

鳥の多くは、巣立ってしまうと家族であってもくっつくのを嫌がるのですが、エナガは「おしくらまんじゅう」をしているかのようにくっつきあっていることがよくあります。いわゆる「めじろ押し」ですが、こちらは「エナガ押し」ですね。
こうして待っていると、親がせっせとエサを運んで来ます。食べたばかりの雛は目をつむって満足げですが、お腹が空いているヒナは懸命にアピール。

エサをねだるアピールのしかたで給餌の順番がわかるようです

10分ほど見ている間に、15回以上、エサを運んで来ました。子だくさんで親は大変!と思ってよく見ていると、給餌をしている成鳥が少なくとも3羽いました。この家族群にはヘルパーがいるようです。ヘルパーとは、つがいをつくれなかった若い個体や、その年に先に生まれた兄弟などが給餌を手伝うもので、エナガではよく知られている習性です。
このヒナたちも、次の繁殖の時にはヘルパーとして弟や妹の世話をしてくれるのかもしれませんね。

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コゲラの巣作り

野外では鳥たちの繁殖期真っ盛りです。ある日、森の中でコツコツコツ、コツコツコツ・・と音がするものの、音を立てているであろうキツツキの姿が見えません。音をたどって枯れかけた木をよく見ると、まん丸の穴が開いています。音がやんだと思ったら・・

穴から顔を出すコゲラ

キツツキの仲間のコゲラがひょっこり顔を出しました。
するとおもむろに、木屑をバッと振りまいたのです。

木屑を振りまくコゲラ

コツコツの音は巣穴を建築中で、木を削っている音だったのです。そして、たまった木屑を外へ出しているところに出くわしたというわけです。
コゲラは日本で最小のキツツキで、体はスズメくらいの大きさしかありません。枯れかけている木とは言え、小さな体で幹に穴を掘ってしまうのには驚きです。ところで、上の写真をよく見ると、目の色が真っ黒ではなく、青灰色です。その上の写真の目は真っ黒です。じつは、鳥には「まぶた」と眼球の間に「瞬膜(しゅんまく)」と呼ばれる薄い膜があり、青灰色に見えるのは瞬膜を閉じている状態なのです。水鳥が水に潜る時や、コゲラが木屑を飛ばす時のように、眼球を保護する時に使われます。下の写真は瞬膜を閉じかけているところです。

瞬膜を閉じかけているところ

まぶたが上下運動であるのに対して、瞬膜は水平方向に閉じます。鳥類のほかには魚類や両生類、爬虫類にも瞬膜はありますが、哺乳類の多くは退化しています(なぜかネコには残っています)。

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ウワミズザクラとイヌザクラ

先日、このブログでご紹介したウワミズザクラには、類似の近縁種であるイヌザクラがあり、同じ樹林内にあるということをブログの中でも書きました。
そう書かれると、どれくらい似ていて、どうやって識別するのか気になるところかと思いますので、識別点をご紹介します。
まずはこちらがウワミズザクラです。

ウワミズザクラ

そして、こちらがイヌザクラ。

イヌザクラ

よく似ています。
でも、花が咲いていれば決定的な違いがります。ウワミズザクラもイヌザクラも、水筒を洗うブラシのような花の集合(花序:かじょ)なのですが、この花序のついている枝に、ウワミズザクラは葉があります。

ウワミズザクラ 〇で囲んだ部分に葉がついています

しかし、イヌザクラの花序の枝には葉はありません。

花序の枝に葉はついていません

ただ、遠目にはちょっとわかりにくいですね。慣れてくると、イヌザクラの方が、花序の枝が葉が無いぶん短く、枝に花が埋もれた感じのうえ、花の白色度が低いので、より白く目立つのがウワミズザクラとわかります。
イヌザクラの花のアップです。

イヌザクラの花のアップ

すでに今、どちらも花期のピークが過ぎているので、そろそろ葉桜になってしまいます。そうなると、識別は葉に頼ることになります。ウワミズザクラはサクラらしい葉で、他のサクラとの見分けが難しそうです。

ウワミズザクラの葉

一方、イヌザクラはちょっと頭でっかちな感じの葉で、サクラっぽくありません。

イヌザクラの葉

これ以外にも、幹などいくつか識別点がありますが、いずれもちょっと慣れないと難しく、花期を逃すと識別が難しくなるのは他のサクラと同様です。

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ズグロオニグモ

ズグロオニグモの円網(昼)

橋の欄干などで見かける直径20-30cm位の円網。クモは見えません。

ズグロオニグモの円網(夜)

夜になって、隠れ場所から出てきました。
ズグロオニグモです。体長10mm程度で、市街地でもよく見かけます。金属製の柵などに円網が並んでいるのを見かけたら、このクモかも知れません。

ズグロオニグモ(メス)。頭胸部の中程から前端にかけて黒いのが特徴です。

このように人工物を好む種というのは、元々どんな環境に住んでいたのでしょうか。不思議な事にそれ以外の場所では見かけないので、想像もできません。それはそれで、面白いと言えるのかもしれませんね。

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キビタキ渡来

4月22日、博物館お隣の樹林地にキビタキがやってきました。
キビタキのオスは、黒、黄色、朱色、白と抜群の色彩センスで色分けされた羽色を持ち、しかも美声の持ち主です。

キビタキ(オス)

喉の朱色から黄色へのグラデーションが美しいですね。
まだ囀(さえず)りはフレーズが短くて本格的なものではありませんが、木々の枝を飛び移りながら軽やかに鳴いています。

キビタキ(オス)

もともと低山のちょっと暗めの森の鳥でしたが、近年、平地林に進出しており、博物館周辺でも繁殖しています。平地林の木々が大木化、古木化してうっそうと茂り、巣を作る樹洞(じゅどう=うろ)も多くなってきたからと考えられています。もう一つ、平地林は巣材として好まれるシュロ(シュロ縄に使われる繊維の部分を巣材に使います)が多いことも一因かもしれません。
博物館敷地内でも、野生ランのエビネが咲き始めました。

エビネ

植栽された株ですが、徐々に増えて、敷地内のいくつかの場所で花が見られます。
自生のものは雑木林などに生育しますが、近年、盗掘によってとても数が少なくなっています。

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職員ブログに「タグ」をつけました

いつも「相模原市立博物館の職員ブログ」をお読みいただき、ありがとうございます。
これまで博物館やその活動の様子を伝えて来ましたが、気が付くと2012年1月の開設から、8年以上の年月が経ち、掲載記事も2700件を超えました。
内容はお知らせ、報告、身の回りの観察など様々ですが、ブログという性格上、一度読むとそのまま過去に置き去られてしまう事が多いのですが、せっかくの蓄積を何かに活用できないかと考え、少々機能を追加しました。追加した機能は次の2つです。

1.「アーカイブ」を、一覧表示からプルダウンメニューに変更しました。「月を選択」の右の▽をクリックすると、年月が表示され、過去の記事をたどりやすくなりました。

2.「タグ」を追加しました。画面を下のほうにスクロールして「QRコード」の下をご覧ください。「タグ」があります。これは、個々の記事についているキーワードで、ネット検索で見つけやすいようにするためのものです。使われた回数の多いワードから上位50位を表示しているので、興味があるワードをクリックしてみてください。関連する記事の見出しと書き出しが並びます。

以上、ちょっとした機能追加(変更)ですが、家で過ごす時間の多いこの時期、当ブログを気の向くままにお楽しみいたければ幸いです。

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博物館周辺に咲く花

4月18日、外は春の嵐です。
博物館は5月13日まで臨時休館中(4月18日現在)ですが、こんな日は、館内で雨漏りが無いかなど点検の必要があり、職員もバタバタと館内を歩き回ることになります。
さて、この風雨では文字通り家にこもらなくてはならない週末となっていますので、気分転換に今週、博物館周辺で撮影した植物の写真をご紹介します。
まずは、ヤマブキです。

ヤマブキ

本来なら、この花が咲くと春まっさかり、と言えるのですが・・。
こちらはジュウニヒトエです。数は少なくなりましたが、この株はしっかり今年も咲いてくれました。

ジュウニヒトエ

こちらはタチツボスミレ。花期が長く、早春から初夏まで咲き続けるたくましいスミレです。

タチツボスミレ

季節は滞ることなく着々と進みます。焦らずに、ゆく春を眺めていきたいですね。

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もう一つのサクラ

博物館のお隣の樹林地では、ソメイヨシノより3週ほど遅れて花盛りを迎えたサクラがあります。
ウワミズザクラという名のこのサクラ、ちょっと見たところではサクラに見えないかも知れません。

ウワミズザクラ

「もう一つの」と表題に付けたのはそのためです。サクラの仲間はもう一つどころか、数え切れないくらいたくさんあります。しかし、園芸用に改良・作出されてきた歴史が古く、それらと野生種との交雑などもあり、識別は困難を極め、そもそも研究者によっても分類の見解が大きく異なります。
そんな中で、れっきとしたサクラの一種であるウワミズザクラは、県内に類似種はイヌザクラという同じ時期に咲く種類があるくらいで(この樹林地にも両方あります)、花期がワンテンポ遅いことも含めてなんだかスッキリした気持ちになれるサクラです。

ウワミズザクラ

花のアップです。

ウワミズザクラの花のアップ(ミツバチと大きさを比べてみて下さい)

アップにしても今ひとつサクラっぽくないですね。コップを洗うブラシのようなこのサクラ、新緑の木もれ日が似合うせいか、爽やかな気分になれる花です。

※相模原市立博物館は5月13日まで臨時休館中です。(4月16日現在)

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ホウチャクソウとオオミズアオ

博物館お隣の樹林地で咲く植物情報です。
樹林地のある一画に、ユリの仲間のホウチャクソウがたくさん生育しています。ちょうど今、花盛り。

ホウチャクソウ

と言っても、この仲間の花の多くは下向きにぶら下がるように咲き、しかも花被(かひ=花びら)がパッと開きません。ずいぶん控えめな咲き方ですね。
ホウチャクソウの写真を撮り終えて立ち上がると、視野の隅に何か美しいものの残像が残りました。

写真の左よりに・・

画面の左の方をクローズアップすると・・

草につかまる三角の物体が・・

大きな蛾の仲間の、オオミズアオでした。

オオミズアオ

なんという美しさ!
住宅地の公園などでも普通に見られる蛾ですが、夜行性ということもあって出会うのは夜が多く、外灯の下で見ると白く輝いて見えます。しかし、昼間樹林内で見たオオミズアオは淡い黄緑色に見えました。
目立ちすぎる色の蛾だと思っていましたが、昼間はこんなふうに新緑に溶け込むのですね。オオミズアオの意外な一面を知りました。

※博物館は5月13日まで臨時休館中です。

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民俗分野ブログ「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.1)

市立博物館は、平成7年(1995)11月20日に開館し、今年(2020年)で開館25年目を迎えました。正式に建設準備が始まったのは昭和56年(1981年)4月なので、開館まで実に14年7か月もの時間がかかりましたが、長い準備期間にも、調査や資料の収集など、建設に向けての諸活動が行われていました。
特に民俗分野では、地域の祭礼や行事をはじめ、そのほかにも畑や養蚕の作業、うどんや酒まんじゅう作り、社寺及び石仏など、さまざまな内容の調査とともに写真の撮影もしており、現在では見ることのできない貴重な写真が多く含まれています。

保管されているアルバム。実は保管する書庫はもう一つある

現在、この膨大な写真類の一層の活用を図るためにデータ化の作業を行っており、これから「職員ブログ」に、季節的な話題も含めながら写真を紹介していきたいと思います。さまざまなものを取り上げていく予定ですのでお楽しみに。

第1回目となる今回は、今から37年以上前の昭和58年(1983)3月5日に中央区淵野辺本町で撮影されたものです。保管されている写真は昭和57年からありますが、準備が始まった最初の頃のものは少なく、昭和58年3月はかなり早い時期に当たります。
ここで問題です。柄杓(ひしゃく)で茶色い液体を汲んでいますが何の作業を行っているのでしょうか。ヒントは今でも食卓に欠かせない調味料です。

正解は醤油(しょうゆ)作りです。かつて農家では味噌や醤油を自家で作りましたが、撮影した昭和58年当時では、自家で醤油しぼりをする家はかなり少なくなっていました。
醤油の原料は、小麦と大豆、塩、水で、炒った小麦にこうじ菌を混ぜ、蒸した大豆を加えた後、水を入れて一年間ほど仕込んでから、専門の業者を頼んで自家に来てもらってしぼりました。

フネで醤油をしぼり出す。フネの横側からしぼった醤油が注ぎ出ている。

しぼった醤油を火入れで鍋に入れて煮て出来上がり

醤油しぼりを専門にする人は各地にいて、醤油をしぼると独特の匂いがするため、近所でもどの家で醤油しぼりをしているかがわかりました。
こうした写真は、かつての生活において調味料まで自家で作っていたことを物語る貴重な資料と言えましょう。

 

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