くるりと一筆書き(ヨツデゴミグモ)


円網につけられた「の」の字のような白い一筆書き。
こんな網を見つけたら、そこにいるのはヨツデゴミグモの幼体です。
写真の個体は体長2〜3mm程度。
成体は体長4〜6mm、他のゴミグモ類のように、網に食べかすなどのゴミをつけます。
つまり、この網の形は幼体の特徴という事になります。
しかしこの細々とした一筆書きが、いったい何の役に立っているのでしょうね?

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ジョロウグモ成長中

いつも歩いている通勤路でも、最近、このクモが目立ってきました。

ジョロウグモです。
目の細かい円網の前後に不規則に糸を張り巡らせた、特徴的な網を張るので、遠目にもすぐわかります。
5月下旬頃に幼体が現れ始め、10月から11月頃に成体になります。
その間に、体長が1mm程度から20〜30mmにまで大きくなりますから、かなりの成長スピードです。

写真の個体は体長10mm程のメスの幼体。最近目につきやすくなったのは、体や網が大きくなった事もありますが、腹部の模様が変化したというのも大きな要因だと思います。

これは、今年の6月14日に撮ったジョロウグモ幼体の写真です。
模様が今とはだいぶ違います。
これから秋に向けてどんどん体も大きくなり、腹部の模様も変化しますので、継続して観察するのも面白いかもしれません。

因みに、これはナガコガネグモの幼体です。
ちょっと前まで、コガタコガネグモの幼体と間違えそうだと言っていたのに、すっかり長細くなって、見間違えようのない形に成長しています。
猛暑の日々が続いていますが、生き物はどんどん成長しているようです。

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生きものミニサロンを行いました!金魚がいっぱい!

7月21日(土)、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。いつもの月は第4土曜日なのですが、今月に限り、来週がJAXA相模原キャンパスの特別公開のため、第3週の実施です。
今回は猛暑のため、急遽館内で行いましたが、まずはこちらの観察・・

中庭に向けて望遠鏡を立てました

中庭に向けて望遠鏡を立てているのは、壁面に作られたアシナガバチの巣を観察しているところです。
写真を撮りそびれてしまったのですが、直径が15センチほどもある大きな巣でした。

アップで見るアシナガバチの巣は大迫力です!

ハチの巣を間近で見られることはあまりないので、安全な位置から望遠鏡でじっくりと見ていただきました。
さて、続いて本番の、シュロの葉で金魚づくりです。

シュロの葉の金魚

とてもシンプルな作りなのですが、これが意外と難しい部分もあります。親子で奮闘中!

意外と難しい!

お父さんも真剣です!

シュロの葉の主脈でつり下げて完成!全員上手に作れました!

かわいい金魚のできあがり!

次回は8月25日(土)12時からです。博物館実習生が新鮮なアイデアで楽しいミニサロンを実施してくれるはずです!お楽しみに。

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小中学生のための生物学教室 受付中です!

8月29日(水)午後実施の「小中学生のための生物学教室」のお申し込みを受付中です!

今年のチラシです!

この教室では、学校の理科の時間よりも少し専門的な生物学の実習をします。
例えば昨年は、本物の鳥の羽根を使ってその並び方や、羽根の特徴などを学びました。

昨年の教室のようす

今年はどんな実習になるでしょうか?博物館にあるハシブトガラスの骨格標本が登場するかも?!

ハシブトガラスの骨格標本

そして、後半は市内在住の生きものカメラマン、松橋利光さんの楽しいお話や、本物の生きものを使って生きものの扱い方や持ち方を学ぶ実習もあります!

デグーを持っているところ

ヘビ(ペット用のおとなしいもの)も登場するかも!?

お申し込みは7月31日までです。お申し込み方法など詳しくはこちらをご覧下さい。

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今週末は生きものミニサロン!暑いから館内で行います

7月21日(土)は、毎月恒例の生きものミニサロンを行います。
雨が降らなければ野外で自然観察をすることが多いミニサロンですが・・・週末も猛暑が予想されるため、館内で実施することにします。今回のテーマは、「植物で遊ぼう!」です。

ササ舟

できるだけ涼しげな内容で・・ササ舟や、金魚の工作などを行う予定です。

ヤブランの葉の金魚

4月にも似たテーマで実施しているので、今回はまたちょっと違った材料を用意する予定です。
涼しい館内で植物遊びを楽しみましょう!

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クモを食べるクモ

先日、他のクモの網に入り込んで、餌を盗み取ったり、網の主を食べてしまうイソウロウグモについて書きましたが、クモを食べるクモはイソウロウグモだけではありません。
そのうちの一種類が、これ。

とてもクモには見えないと思いますが、オナガグモという種で、足をそろえて伸ばすと、一本の松葉のように見えるのが特徴です。成体は体長20-30mmになりますが、写真は幼体で体長10mm程。足を伸ばして20mm程度です。
棒状の姿勢で糸を一本伸ばして待ち伏せし、それを伝ってきたクモを襲って捕食します。

これは、オナガグモと糸でぐるぐる巻きにされたワカバグモの幼体です。
捕食の現場ではありませんが、状況証拠ですね。

オナガグモが正体を表す(?)とこんな姿。
なんとも不思議な形ですが、脚が生えているあたりが頭胸部で、後ろに長く伸びているのは、腹部です。
イソウロウグモの仲間や、オナガグモのように主にクモを餌とする種は、ほとんどがヒメグモ科というグループに属しています。
たぶん偶然ではないのでしょうが、どうして居候やクモ捕食という行動が同じグループ内でしばしば見られるのか、それもまた不思議です。

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カワラノギクのための、滝のような汗

7月18日、緑区の相模川河川敷にあるカワラノギク保全圃場(ほじょう)の草抜きを行いました。そこは、2004年に約10年ぶりでカワラノギクが発見され、その株を元手に増殖を行ってきた現場、つまり、左岸側保全圃場の一丁目一番地と言える場所です。

カワラノギクのロゼット株

上の写真は、現在のカワラノギクのロゼット株です。ロゼット株とは、花茎を伸ばさず伸長を止めている状態の株です。今秋開花予定の株はすでにシュートと呼ばれる茎を高さ70センチほどまで伸ばしています。
こうした株がほかの植物に埋もれてしまわないよう、ノイバラやテリハノイバラ、メマツヨイグサ、クサヨシ、コセンダングサ、オオブタクサ、ネムノキ、アカメガシワといった植物を伐ったり抜いたりしました。15メートル四方の狭い保全地ですが、なんとか目立つ株を除去できました。

きれいになった保全圃場

それにしても、この酷暑です。相模原植物調査会のみなさんと5名で、作業時間は30分のみと決めて行いました。それでも滝のような汗を流しました。「終了しましょう!」という号令とともに木陰に逃げ込みます。

木陰で休憩

みなさんそれぞれ、自家製の梅酢ソーダや、ご自分の畑でとれたキュウリ、トマトなどを持ち寄って下さいました。

水分、塩分、ミネラルを補給

ミネラルや水分を補給して、なんとかこれで生きた心地になりました。
元気を取り戻して、少しだけ河原を散策しました。ヒロハノカワラサイコが満開です。

ヒロハノカワラサイコ

1輪だけでしたが、カワラナデシコも咲いていました。

カワラナデシコ

毎年この時期に行う草抜き作業、いつもは梅雨時で雨の心配をしているのですが、今年は野外活動には危険な天候です。休止も考えましたが、カワラノギクのことを考えると草抜きをしないわけにはいきません。今年一番の汗をかきましたが、準備万端で行ったこともあり、みなさん体調を崩すことなく無事に作業を終えることができました。

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私はアオダイショウ(ヘビの写真あり)

今朝(7月13日)、出勤すると清掃担当の方が慌てたようすで呼んでいます。生物担当がこんな風に呼ばれる時はたいてい、招かれざるお客様が入館してきた時です。
果たして今日はこちらでした。

まだ40センチほどの小さなアオダイショウ

アオダイショウの幼蛇です。正面入口の風除室に入っていたところを発見されました。
さて、アオダイショウは成蛇になると、大きいものでは1.5メートルにもなる大型のヘビですが、性質はおとなしいものが多く、古くから「家の守り神」として崇められてきました。その理由の一つは、このヘビが屋根裏などに入ってネズミをよく食べるからです。そして、ネズミは養蚕の大敵、カイコに病気を運ぶ、あるいはカイコをかじって殺してしまうということで、養蚕農家にとってまさに害獣でした。そんなネズミをたくさん食べてくれるアオダイショウが神格化されてきたのも当然といえます。
しかし、そうした生きものとのつながりが薄れ、今はただ嫌われる一方になってしまった感があります。さらにアオダイショウの幼蛇は下の写真のように斑模様が入っています。うすく縦縞が入り、青光りする成蛇とはだいぶ色合いが異なります。

アオダイショウ(幼蛇)の背中

これがどうやら、マムシに似ているということでよく間違われます。本物のマムシは下の写真のようにずんぐりしていて、いわゆる銭形模様が大きくて明瞭です。食べているものはそう変わらないのですが、どういうわけか、マムシが屋内に侵入することはまずありません。

ニホンマムシ(成蛇)

顔もだいぶ違います。マムシは黒い部分が多くて口先がするどい三角形、目はネコの眩しい時の瞳孔のように縦長なのに対し、アオダイショウはまん丸で、いわゆる「蛇の目」、口先は角張っています。

アオダイショウの顔 まさしく「蛇の目」です

といっても、ヘビが嫌いな方にはそんな詳しく顔まで見る余裕もないことでしょう。
ヘビを嫌いな方がいるのは当然です。でも、ヘビはそれほど攻撃的な生きものではないので、適度な距離を保つことが大切だと思います。

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ヒルガオ

博物館お隣の樹林地を囲っているフェンスに、アサガオのような花が咲いています。

ヒルガオの花

ヒルガオです。こんな色と形の花は、春からふつうに畑や街路の植込みなどで見てきたのですが、上の写真の花は少し大きめです。春からよく見ていた少し小さめの花は、だいたいコヒルガオという別の種類の花と思われます。こちらのヒルガオも珍しい花ではないのですが、じつは、典型的なヒルガオというのはなかなか見られません。花を支える苞葉(ほうよう)という部分の形やその付け根の茎の部分はこんな感じです。

ヒルガオの花の付け根

コヒルガオはこのように、苞葉が少し小さくて先が尖り、茎に縮れたヒダがあります。

コヒルガオのつぼみ

葉はこのようにやや細長くて上下の幅があまり変わらず、下(基部)が左右にあまり張り出さないのがヒルガオの特徴です。

ヒルガオの葉

こちらはコヒルガオの葉です。

コヒルガオの葉

今回ご紹介したヒルガオは比較的わかりやすい典型的な形なのですが、これがなかなか迷ってしまうような中間型の株が多く存在します。ヒルガオもコヒルガオも種子からよりも地下の茎から分かれて増える栄養繁殖で増殖するのですが、時に両者が交雑する場合があるようで、両種の特徴を持った株が珍しくありません。あまりにも身近な雑草ですが、識別が意外と難しい種類なのです。

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コガタコガネグモ

これは、今年の6月21日に撮影した写真です。

体長5mmほどの小さなクモが、きれいな「かくれ帯」をつけています。
コガネグモの仲間の幼体です。

次は、今日(7月11日)に、ほぼ同じ場所で撮影した写真です。

体長10mm程。コガタコガネグモのメス、たぶん成体です。
腹部に特徴的な模様があり、網にはきれいな「X」字型のかくれ帯をつけています。
図鑑に乗っているような典型的な姿ですので、間違えようがありません。
実はこの成体を見る前は、なんとなく「ナガコガネグモの幼体だろうな」と思っていたので、あやうく間違った情報をブログに書くところでした。
更に、数年前にもこのブログで「ナガコガネグモの幼体だと思い込んでいたら違いました」という記事を書いているのに気づきました。思い込みというのは恐ろしいものです。
毎日のように同じ場所で観察するというのは大切だな、とつくづく思いました。
因みに、コガネグモの仲間は、幼体の時には、皆似たような形のかくれ帯をつけるようです。網だけを見ても種の判別はできませんのでご注意を。

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