浜辺で採集調査

6月13日、博物館で動物標本の作製などを行っているボランティアグループの動物標本クラブのみなさんと、茨城県南部の鹿島灘の浜辺へ標本採集に出かけました。

巨大な風車が林立する風衝地帯です

見慣れた相模湾や東京湾の浜辺とはスケールが異なり、広大な砂浜は外洋に面していることが実感できます。
ストランディング(イルカなどが陸地に打ち上げられ、身動きがとれなくなること)して息絶えてしまったのか、スナメリの遺体があり、みんなで観察しました。

スナメリの遺体を観察

これも、相模原では決して見ることのできない風景です。白波をバックに、シロチドリとトウネンのランデブーです。

トウネン(左)とシロチドリ(右)

胸ビレを広げると驚くようなエメラルドグリーンが広がる、ホウボウも打ち上げられていました。

ホウボウの胸ビレ

ふだん、見ることのできないさまざまな漂着物を観察しました。
動物標本クラブでは、こうした漂着物などからも標本を作製して、博物館の教材や資料にする活動を行っています。

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学芸員講話 第2回「石老山の成り立ち」

6月10日(日)に今年度の学芸員講話の第2回「石老山の成り立ち」を開催しました。

雨の中、多くの方にお越しいただきました。

石老山をつくっている岩石は、おもに礫岩(れきがん)と凝灰岩(ぎょうかいがん)です。

礫岩

凝灰岩

これらの岩石の特徴と形成過程、石老山がどのようにして山をになったのかをプレートテクトニクスの観点からお話ししました。身近にある山の成り立ちが、地球のダイナミックな動きに関係があることに、興味を持たれた様子でした。

次回の学芸員講話は7月8日(日)、民俗担当の加藤学芸員による「道祖神のまつりかた」を予定しています。お誘い合わせの上、ぜひご来場ください!お楽しみに!

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吉野宿ふじや企画展「吾が心の山ー山岳写真家 三宅 修の踏み跡ー」最終日イベントも大盛況!

緑区吉野にある博物館の所管施設「吉野宿ふじや」で開催されていた企画展「吾が心の山ー山岳写真家 三宅 修の踏み跡ー」が6月10日に終了しました。

企画展「吾が心の山-山岳写真家 三宅 修の踏み跡-」

三宅修氏は86歳になりますが、今なお山岳写真家として活躍されています。
6月10日の最終日には、緑区藤野地区在住の山岳写真家である三宅修氏ご本人による展示解説・ギャラリートークが行われ、50人ものお客様で会場内は満員状態でした。

今回の展示解説・ギャラリートークでは、三宅修氏が山岳写真家になるまでのエピソードなどを交えながら、今回展示した40点の数々の山々や藤野の里山の風景などについてお話いただきました。特に、三宅氏が中学生だった昭和20年8月の終戦直前に目の当たりにした高尾山付近の湯ノ花トンネルでの米軍機による機銃掃射の惨劇のお話は、非常に印象的でした。

今回のイベントの質疑応答にも参加者からも熱心な質問があり、最後には三宅氏のお孫さんから花束が贈られイベントは無事終了しました。

また、今回の展示の開催期間中、三宅氏はほぼ毎日のように吉野宿ふじやに来ていただき、自ら見学者に丁寧に対応してくださいました。「来ていただけるだけでありがたいので・・・」と、山岳写真家として著名な方にもかかわらず、とても謙虚におっしゃっていました。

今回の企画展には、三宅氏のお知り合いの方など遠方からも多く来場があり、合計880人もの方が訪れました。 三宅氏、そして企画・運営した地元のNPO法人「ふじの里山くらぶ」のみなさん 誠にありがとうございました。

次回の吉野宿ふじや企画展は、7月14日から「藤野の昔の産業」展&博物館との連携「宇宙」展を開催予定です。
ぜひ、またご来場下さい。

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養蚕日誌(6/12)2齢に脱皮

掃立て(給桑開始)から6日目(6月12日)となりました。昨日の昼頃、概ね2齢への脱皮が完了したのを確認したので、給桑を再開しました。下の写真は、6月11日のようすです。下側はまだ1齢で、眠(脱皮前の休息期)の状態です。頭部の殻(黒い部分)がすでにはずれかかっています。頭部の大きさの違いがよくわかりますね。

上が2齢に脱皮後、下が1齢で脱皮直前のカイコ

脱皮直後の頭部はベージュ色ですが、時間が経つと黒くなります。
脱皮したての2齢のカイコです。脱皮殻が後ろに残っています。

脱皮直後のカイコ 後ろの黒いのは脱皮殻

脱皮してしばらくすると、モリモリとクワを食べ始めます。

2齢までは脱皮から少し時間が経つと頭部は黒くなります

頭部が黒くなるのは2齢までで、3齢からは時間が経ってもベージュ色のままです。
さて、2齢になったところで、恒例の飼育展示を開始しました。

飼育展示のようす(1階エントランス)

これから20日ほどですが、カイコの成長のようすを来館者のみなさまにご覧いただきます。

まだ小さくて、虫めがねがないと見えにくいかもしれません

カイコの状態や担当者の都合により展示を休止する期間もありますのでご了承ください。

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なぜか後翅(うしろばね)が出ています

通勤途中で、木の幹に鮮やかな色があるのが目につきました。
シタバという、後翅が美しい事で人気のある仲間です。


これはコガタキシタバのようです。
本当はこうなっていると木の幹によく擬態できるのに…と思って、ちょっと指先で後翅を見えなくしてみました。


素晴らしい擬態です。


でも、すぐに元に戻そうとします。
翅に故障でもあるのでしょうか。
目立ってしまわないか、ちょっと心配になります。

※後日「このガの種名は『フシキキシタバ』ではないか」というご意見をいただきました。

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植物学教室「花の観察と植物画」終了

先週6月2日と本日9日の2回にわたり実施した植物学教室「花の観察と植物画」が無事に終了しました。
午前10時から午後4時まで、みっちりと濃密な時間を過ごされたみなさん。

実物を前に集中して描いています

こちらが「筆を置いて休みましょう!」とお声かけしないといけないくらい、集中されていました。
でも、休憩時には講師の豊田路子さんやほかの受講生のみなさんが、なごやかに植物談議に花を咲かせました。

基本的に、みなさん植物好きの方ばかりです

きめ細かな指導もあり、みなさんしっかりと植物画を描かれました。

手元を凝視

客観的に見て、それが何の植物であるかはっきりわかることが植物画の一つの条件のようなものですが、全員の作品がその条件をクリアしていました。

今日の課題は樹木

時間の関係で、どうしても「完成」とはいきませんが、簡易のマット(枠紙)を置くことで、作品として成立します。

ヤマボウシ

ヤマモモ

植物画のはじめの一歩を体験する二日間でした。帰り際のみなさんの笑顔が、充実した時間だったことを感じさせてくれました。

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養蚕日誌(6/9)掃立てから3日目

掃立て(給桑開始)から3日目の朝、カイコはすでに毛蚕(けご)と呼ばれる毛虫のような状態から、いっぱしのカイコの姿になっています。

1齢3日目に突入のカイコ

大きさも、二日前とは1.5倍ほどになっています。1齢とは言え、食べる量もなかなかのものです。食べ痕の葉は、まるで葉脈標本のようです。

カイコが食べたあとのクワの葉

あと丸1日くらい食べ続けて、最初の眠に入る見込みです。さらに1日半ほどで脱皮して、来週月曜日から火曜日には2齢となるでしょう。

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二度目の春

博物館のまわりのミズキやクマノミズキはいま、二度目の春を謳歌しています。

“今ごろ”瑞々しい新緑のミズキ

なぜ今ごろ春なのかというと、新緑瑞々しいはずの4月には、キアシドクガの幼虫に食べられてこんな状態だったからです。

4月下旬のミズキ(左)

葉脈の主脈(中央の一番太い葉脈)だけを残して食べ尽くされた葉は、下の写真のように休眠芽を揺り起こして成長させ、ふたたび展葉しました。

中央から休眠芽が成長して新しい葉を伸ばしつつあります(5月)

とはいえ、キアシドクガの大発生が5年も続き、木自体には相当ダメージを受けています。すでに枯れてしまった株もあります。
そんな中、異様なほど緑が復活している株が駐車場にあります。
一見、何事もなかったかのような復活のしかたですが、よく見ると通常のミズキの樹形ではありません。
なんと、枝がすべて枝垂れ(しだれ)状になっているのです。

異様に緑の濃いミズキ

枝垂れがなぜ起こるのかはよくわかっていません。ただ、通常の枝は全体として太陽光を効率よく受け取るために枝が上向きに伸びるよう、枝の付け根では上側の組織が強く太く成長します(上側の組織が下側を引っ張り上げることになります)。実際、年輪を見ると上側が広くなっています。それに比べて枝垂れの場合、年輪が上側も下側も同じ幅で、上側の組織が引っ張り上げる強度が無いために枝垂れることがわかっています。さらに、枝垂れの性質がある株に植物ホルモンの一種であるジベレリンを処置すると、枝垂れなくなることがわかっています。

“シダレ”ミズキ?

どうやら、度重なる食害によってホルモンバランスが崩れたために、枝垂れてしまったのではないかと考えられます。ちょっと興味深い現象ですね。

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養蚕日誌(6/7)掃立て=給桑開始!

昨日、続々とカイコの孵化が進みました。写真は昨日のようすです。

卵から頭を出したカイコ

頭が見えてしばらくじっとしているかと思うと、モゾモゾ動き出して、体をくねらせながら数分で殻から出てきます。

8割くらい出ました!

カイコの孵化が概ね出そろったので、本日(6月7日)、掃立て(はきたて)ました。掃立てとは、孵化したカイコを蚕座へ移して給桑を開始することです。なぜ掃立てと言うのかというと、たくさんの毛蚕(けご)と呼ばれる小さな蚕を移動させるのに、羽箒(はねぼうき)を使って掃き落としたからです。博物館ではそれほどの量ではないので、いきなり、刻んだクワの葉をそばに置いていきます。すると・・

クワの葉を置いた直後 置いた瞬間に小さなカイコの頭が葉の方へ振られます

何もしなくても、自然とカイコが寄ってきます。においを感知しているのでしょうか。ものの5分としないうちに、クワを食べ始めます。

あっというまに、カイコだらけになります

20分後、もう葉は穴だらけです。食欲旺盛ですね。

20分ほどで、食べ痕の穴がたくさんあいています

今は黒い頭ばかりが目立ちますが、夕方にはもう体の大きさが二回りくらい大きくなっているはずです。

孵化直後のカイコは毛蚕(けご)と呼ばれます

これから3日ほど食べ続けて、最初の眠(みん)に入り、脱皮の準備に入ります。約25日間の養蚕の始まりです!

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地上の星

博物館お隣の樹林地の一画では、今年も地上に星が降り注いでいます。

地上に降り注いだ星

地上に瞬く星の正体は、アカメガシワ(トウダイグサ科)の雄花です。
ほかの花々と同じく、例年よりも10日ほど早めの降臨です。

拡大すると、こんな感じです

アカメガシワは雌雄異株(雄木と雌木が別々の植物)で、雄木の花はこんなふうに咲きます。

アカメガシワの雄花

拡大すると、星がついています。

アカメガシワの雄花

雌木の花はこんな形をしています。柱頭の紅色がオシャレです。

アカメガシワの雌花

河原など、攪乱(かくらん)の激しい場所に真っ先に育つ先駆植物の一つです。この樹林地でも、ミズキと競うように大きく育っています。ただし、このところミズキがキアシドクガの食害で痛めつけられているせいか、アカメガシワがいっそう勢いを増していると感じるのは気のせいでしょうか・・。

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