悩ましき特定外来生物

先日、仕事で鎌倉市を訪れました。緑の豊かな公園がそばにあったので、ついでに、ということでクリハラリスの写真を撮影しておこうとカメラを持参しました。公園のあちらこちらに、クリハラリスの古巣や・・

クリハラリスの古巣

樹皮のはぎ取り痕、

樹皮をはぎ取られたスギ

柑橘(かんきつ)類の食害の様子が見られました。

ナツミカンの食害

クリハラリスの鳴き声もずっと聴こえていたのですが、なかなか姿を現してくれません。そろそろ日も暮れてしまうので諦めて退園しようと駐車場へ向かうと、思いがけず駐車場脇の樹上にいました。

クリハラリス

クリハラリスは神奈川県東部の海沿いを中心に高密度で生息していますが、近年、徐々に分布を広げつつあり、相模原市内でも南部で目撃例があります。危機感を共有する大学の研究室や研究機関、行政などが手を組み、クリハラリス情報ネットを結成しているのはこのブログでもお伝えしたとおりです。
それにしても・・リスはやっぱりかわいい動物です。

シャッター音に耳をすますクリハラリス

生態系への影響や、様々な被害を頭に入れていても、動物としての魅力が相殺されることはありません。餌付けなどをするのは外来生物による被害を深刻化する原因になるので絶対にしてほしくないことなのですが、餌付けしてしまうその気持ち自体は理解できます。外来生物問題の悩ましいところですね。
(生物担当学芸員)

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生きものミニサロン「生きものビンゴ~冬~」を実施しました!

2月15日、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。今回のテーマは「生きものビンゴ~冬~」です。参加者のみなさんへ、4マス×4マス(=16マス)の格子と16問のお題が印刷された紙を配布しました。そのマスへ、ランダムに1~16の数字を書き入れてもらいます。

まずは1~16の数字をランダムに書き入れていきます

準備ができたら、館外へ出ます。お題は例えば「ドングリを2種類見つける」「カメムシを見つける」、「アリを見つける」、「ハトを見つける」といったものです。どれも博物館のまわりで観察できるものばかりですが、限られた時間の中でとなると、それなりに難しいものが含まれています。
それでも、あっという間に2種類のドングリを見つけてしまったお子さんや・・

数秒でドングリを見つけていました!

驚いたことに、3メートルほど離れた木の幹を歩いているカメムシを見つけてくれたお子さんも!

ツヤアオカメムシを見つけてくれました!

そのお子さんは、真冬に地面を歩くアリも見つけてくれました!大人顔負けというより、大人にはちょっと真似のできない探索眼です。

真冬でもアリが歩いていることにみなさん驚いていました

少し難しいお題は、サポートスタッフがやさしく手引きしてくれたり・・

樹名板の裏にはクモが・・

常連のお子さん同士、教え合ったりしていました。

コミュニケーション力を発揮して効率的に探しています

最後に、最大の難問だった「犬の足跡を見つける」は、今回のテーマを企画した動物担当学芸員がご案内しましたが・・

誰もクリアできなかった、イヌの足跡は・・

歩道沿いの土の上についたわずかな窪みに、参加者から「難しい~!」と声が上がりました。

これは難しい!わずかな窪みですが、肉球と指の痕がついています

最後に、たくさんビンゴがそろった方から順番に景品をお渡ししました。

景品の、さがみはら自然カード

景品となったこのカードは、もう何年も前に当館が作成した「さがみはら自然カード」です。どこにも売っていない、レアもの!参加者全員にお渡しすることができて、楽しくミニサロンを終えました。
次回は3月15日(土)12時~です。お楽しみに!

 

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梅にメジロ

ウメが満開になっています。
そのウメの枝から、チィチィと鳴き声が聞こえます。声の主はメジロです。

ウメの花の蜜をすうメジロ

一つ一つの花に嘴を差し込み、蜜を吸っています。

器用な姿勢で吸っています

いろいろな姿勢で蜜を吸う姿はとてもかわいいですね。
ところで、日本の伝統のカードゲームである花札には、梅に鶯(うぐいす)という絵札があります。そこに描かれた鳥は、緑がかった小鳥です。しかし、開花したウメにウグイスがとまるのはちょっと不自然です(絶対にとまらないとは言えませんが・・)。ウグイスはヤブを好む鳥ですし、そもそもウグイスの羽色には緑の要素はほぼありません。絵札の図案も、喉からお腹にかけて黄色いので、まさしくメジロの姿です。

ウグイス

おそらく、花鳥風月に馴染の鳥であるウグイスとウメを合わせたいというゲームの作者の思いがこのような絵札を作ったのではないかと思われます。日本の伝統色の「鶯色」は、下の図の左側です。一般に鶯色と誤解されている緑がかった色は「萌黄(もえぎ)色」です。

鶯色(左)と萌黄色(右)

ウメにメジロ。季節を感じる正しい組み合わせですね。


(生物担当学芸員)

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『甲州道中(相模湖・藤野・上野原)のおひな様』展を開催中です!(3月9日まで)

3月3日といえば、おひな様!
女の子の健やかな成長と幸せを願うお祭りです。

吉野宿ふじやでは、NPO法人ふじの里山くらぶと協力し、「甲州道中(相模湖・藤野・上野原)のおひな様」展を毎年開催しています。
今回は令和7年2月8日から3月9日まで開催しています。
(休館日:2月10日(月曜日)、2月12日(水曜日)、2月17日(月曜日)、2月25日(火曜日))

先日、展示の様子を拝見しました。

和室におひな様。

6段飾りのおひな様。圧巻です。

なんとなく楽し気です。

高年の人形も飾っていました。

今まで見たこともない豪華なものや、趣深いものまであり、とても見ごたえがありました。天候もよく晴れやかな日が続いていますので、この機会にぜひご覧ください!

また、おひな様スタンプラリーも同時開催ですので、こちらもご参加ください。(2月11日(火曜日)~3月4日(火曜日))
おひな様スタンプラリー:こちら(博物館HP)

吉野宿ふじや: https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/kurashi/shisetsu/bunka_shakai/library_etc/1002767.html(相模原市公共施設のページ)

(吉野宿ふじや担当学芸員)

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近・現代史講演会「バイオテクノロジーの父 高峰譲吉 その多様な人間像」を開催しました!

2月9日に当館にて近・現代史講演会を開催しました。
この近・現代史講演会は、地域の偉人である尾崎行雄にゆかりのある人物を取り上げています。以前、このブログでもご案内したとおり、今回のテーマは『高峰譲吉博士』。

高峰譲吉博士(高峰譲吉博士研究会提供)

高峰譲吉はアドレナリンやタカジアスターゼの発見者として有名であり、
アメリカからの桜寄贈の申し出を協力した人物です。

講師はNPO法人高峰譲吉博士研究会の理事長である清水昌(さかゆ)先生をお迎えし、高峰譲吉博士についてご講演をいただきました。

当日は30名の方にご参加いただきました。

 

講師の清水先生

講演会は、高峰譲吉博士の生い立ち、幕末~明治の激動期の様子、渡米後の活躍など、大変丁寧で分かりやすい内容でした。ご参加された方々も熱心に聞き入っているようでした。

尾崎行雄の桜寄贈は、本市の咢堂桜にも深く関係しており、地域の偉人の業績をいつもとは違った観点から改めて知る機会になりました。今後も、尾崎行雄の業績を講演会や、展示などからお知らせしていきます。

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神奈川県博物館協会の研修会

公立、私立を問わず、神奈川県内の100館を超える博物館が加盟する神奈川県博物館協会という団体があります。博物館(美術館、水族館、動物園、植物園などを含む)の横のつながりを密接にする交流や、年に5回程度の研修会を開催するほか、協会報など機関誌の発行を行っています。その今年度第5回研修会が2月8日に横浜市歴史博物館で開催されました。テーマは「博物館と学校連携について~博物館の使い方~」です。そこで事例報告として、当館の生物担当学芸員が「高校と博物館の連携 部活へ首を突っ込もう!」と題した事例報告を行いました。

事例報告を行う当館学芸員

当館がこの10年ほど進めている、動物標本を作製するサークル的な活動が、コロナ禍での休止期間を経て「さがみホネホネ団」として再起動した経過と、その活動に高校生を中心とした若い世代が博物館を利用している点を紹介しました。

さがみホネホネ団の活動

生物標本の作製や解剖などの作業に興味のある若い世代の活動の場を作るのは、決して人数としては多くはないのですが、博物館を利用する世代の中では希少な存在である中高生や大学生を博物館に呼びこめる活動は他館からの関心を引くことができました。もちろん、さがみホネホネ団には高齢者も参加していますし、年代の幅が広いのが特色です。

学びの収穫祭でのさがホネ団の発表

他の事例報告では、会場となった横浜市歴博から、日本一の規模の市である横浜市内の学校利用の受け入れ状況が報告されました。また、小田原市郷土文化館からは、学校に眠るお宝を“発掘”して企画展を行った事例、横須賀市自然・人文博物館からは、市民による様々な科学研究を中心として連携を広げる「みんなの理科フェス」の事例が報告されました。最後にパネルディスカッションが行われ、学校現場から、小学校と中高一貫校の先生方それぞれによるコメントをいただき、議論を進めました。

パネルディスカッションの様子

学芸員の限られた人員の中で、多数の学校の多人数の利用をどのように対応するか、学校へどのようにアプローチするのかなど、会場を含めて活発な議論が行われました。当館も他館の事例を参考に、学校との連携を深めていきたいと思います。
(生物担当学芸員)

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ウグイスカグラ開花

2月3日の立春を過ぎましたが、この冬一番の寒さが続いています。朝は霜柱を踏みつつ出勤しています。

博物館の近くで見た霜柱

そんな寒さの中でも、開花一番乗りはやっぱりウグイスカグラです。

ウグイスカグラの花

早い年は1月中から咲くのですが、今年は2月に入ってようやく咲き出しました。博物館前庭の株は、つぼみもたくさんつけているので、これからどんどん咲くでしょう。

ウグイスカグラのつぼみ

ウグイスカグラは花よりずっと後に葉が展開しますが、展開しながらも咲くので、春の中頃まで花を楽しめます。今は寒風の中、まずはしばらく一心に春を背負って咲いてくれるでしょう。
(生物担当学芸員)

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旧石器時代に関するミニ展示を開催中!【3/15まで】

現在、博物館エントランスにてミニ展示「旧石器時代のハンターと黒曜石」を開催しています。

これは中央区田名塩田にある田名向原遺跡が、史跡に指定されて25周年であることを記念したものです。田名向原遺跡からは旧石器時代の建物跡が発見され、人類の定住化を考える上で大変重要であることから、平成11年11月に史跡に指定されました。

遺跡の現地付近には田名向原遺跡旧石器時代学習館(愛称:旧石器ハテナ館)が建設され、同遺跡の重要性を伝えています。
旧石器ハテナ館:施設案内 史跡田名向原遺跡旧石器時代学習館(旧石器ハテナ館)|相模原市
旧石器ハテナ館でも旧石器時代のミニ展示を開催中ですので、こちらもぜひご覧ください。「遺跡の宝庫さがみはら~相模原の旧石器時代~」:chirasi_202502.pdf

当館でのミニ展示では、田名向原遺跡とほぼ同時期の2万年前の石器を展示しています。
2万年前は黒曜石を主な材料として石器を作っていたことが分かっています。

展示では遺跡から出土した信州や伊豆、箱根、神津島の黒曜石を産地ごとに紹介しています。
黒曜石は鋭利に割れるため、旧石器時代や縄文時代では貴重な刃物として重宝されました。

今回は旧石器時代のミニ展示なので、関連事業として学芸員による石器づくりを行います。展示のみではなく、石の割れ方や石器の作り方を実演から紹介します。
日時:令和7年2月11日(祝・火)、3月1日(土) 13:30~15:30まで
場所:博物館エントランス

この機会にぜひご覧ください!!
(考古担当学芸員)

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繭うさぎづくりを実施しました!

2月1日(日)、当館地階の大会議室はたくさんのお子さまやそのご家族で賑わっていました。先日のブログでもお知らせしたとおり、「繭うさぎづくり」のイベントに参加いただいた皆さまです。

見本を確認しながら、切り取ったパーツを組み合わせます。

この日は初めて繭うさぎづくりに挑戦する参加者も多かったようですが、市民学芸員の指導のもと、それぞれ力作を完成させていました。定例ミーティング終会後に繭うさぎづくりを練習した成果が存分に発揮されています。

どのテーブルでもほぼマンツーマンで市民学芸員による指導を受けられます。

カッターを使用したり、少し難しかったりする部分は大人がサポートしつつ、塗る色や顔のパーツの配置などを工夫して、思い思いのかわいらしい繭うさぎが出来上がっていきます。

黄色いお耳がかわいい!

お持ち帰り用の袋までかわいくデコレーションしてくれました!

また、会場内では「カイコの一生」のパネル展示を行い、材料の繭がどのように作られているのかを写真とともに紹介しました。今回の繭も昨年初夏に当館で飼育したカイコが作り出したもので、卵をふ化させるところから生物担当学芸員がお世話をしました。飼育の様子はこのブログでご覧いただけます。( ※繭ができる様子は⑧・⑨で紹介しています。)

「カイコの一生」パネル展

今では市域に養蚕農家が残っておらず、あまり馴染みないのない方もいるかもしれませんが、江戸時代以降の相模原では養蚕がさかんに行われていました。
イベントをとおして相模原とカイコとのつながりやカイコのライフサイクルを知り、地域のことに興味を持っていただけると嬉しく思います。

(歴史担当学芸員)

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残るヤドリギの果実

先日、市内南区の川沿いに立つケヤキに着生した、大きなヤドリギの株を見ました。ヤドリギは自ら光合成も行いますが、こうして大木の枝と根元を融合させ、水分や養分を吸収する「半寄生植物」です。

ヤドリギの大きな株

写真を拡大してみると、まだ果実がたくさんついていました。「まだ」というのも、例年、この時期には果実がヒレンジャクという野鳥に食べられてほとんどなくなるです。

ヤドリギの果実を食べるヒレンジャク 2020年撮影

ヒレンジャクは関東地方では年によって飛来数が大きく異なり、より北の地方の雪や食料の状況によって(つまり、北方の食料事情が良いと)、まったく飛来しない年もあるのです。今年はまだ近隣の地域からヒレンジャクの情報が聞かれません。ここ数年はヒレンジャクの当たり年が続いていたのですが、今年はどうでしょうか。
ヒレンジャクを含むレンジャク類とヤドリギは、じつは深い関係があります。ヤドリギの果実はこのように明るい色をした美しい果実です。

ヤドリギの果実

この果実をつぶしてみると・・

粘り気のある果肉

果肉に強い粘り気があります。
レンジャク類はこのヤドリギの果実を食べると、納豆のような粘り気のあるフンをします。そのフンに交じった種子が枝に粘着し、芽生えて新たにヤドリギの株を増やしていくという生態です。

納豆のような粘り気のあるフンをするヒレンジャク 2020年撮影

ヤドリギの果実は、レンジャク類以外ではヒヨドリが少し食べる程度で、他の鳥にはあまり好まれません。今年はヤドリギもちょっと寂しそうです。果たしてこれからやってくるのか、バードウォッチャーも少し気をもんでいます。
(生物担当学芸員)

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