ホソオチョウの調査

前回のブログの調査の主たる目的は、アゲハチョウのなかまの外来種、ホソオチョウの観察でした。
このチョウは県内での記録があまり多くなく、「神奈川県昆虫誌III」によると、相模原市では緑区を中心にぽつぽつと報告されているようです。
なかなか実物を見る機会がないチョウだったのですが、佐野川でいつもお世話になっている方から発見の情報を教えていただき、現地に急行しました。
結論から言ってしまうと、一頭の成虫がひらひらと飛んでいるのは確認できたものの、写真に収めることはできませんでした。
しかし、今回は成虫よりももっと面白い(!?)ものを観察することができました。

ホソオチョウの幼虫

ホソオチョウの幼虫です!
頭に近い部分の二本のツノ状の突起や、体のイボイボや黄色の模様など、とても面白い形をしています。

ウマノスズクサ

幼虫がいたのはウマノスズクサという植物です。
在来種のジャコウアゲハというアゲハチョウの幼虫もこの植物を食べるので、競合が心配されています。

茎を歩いています

こちらではお食事中

あまりの面白さに、何枚も写真を撮ってしまいました。
成虫を写真に収められたら、またブログで紹介したいと思います。

さて、調査地の周辺ではもう一種、面白い昆虫が観察できました。
ススキにとまっていた、アカハネナガウンカです。
濃いオレンジの体に長い翅(はね)。その名のとおりの体をしています。

アカハネナガウンカ

近づくとちょこちょこと動き回り、とてもユーモラスです。

白い複眼(ふくがん)が目立ちます

白い複眼(ふくがん)と、黒目のようにも見える偽瞳孔(ぎどうこう)のおかげで、まるでこちらを見ているかのような顔立ちをしていますね。
(動物担当学芸員)

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赤とんぼの季節へ

8月9日、緑区の佐野川地区へ外来昆虫の調査に行きました。猛暑の中で汗だくになりながらの調査だったのですが、たくさん飛び回っているトンボを見ていると、季節が着実に進んでいることがわかります。それは、「赤とんぼ」と呼ばれるトンボの体がだいぶ色づいてきているからです。
こちらはマユタテアカネ。顔にチョビひげのような黒斑があるのが特徴です。

マユタテアカネ

真っ赤になって成熟しています。

マユタテアカネ

こちらは、ミヤマアカネ。翅(はね)の先端付近に茶色の帯があるのが特徴です。

ミヤマアカネ

こちらは同じミヤマアカネですが、真っ赤にはなっていない個体です。この写真では、未成熟のオスか、メス(メスは真っ赤にはなりません)かわかりません。

ミヤマアカネ

真っ赤なトンボの割合が増えてくるころ、本格的に秋を感じられるでしょうか。まだまだ続きそうな猛暑も、そんなことを考えながら耐えて過ごしたいと思います。
(生物担当学芸員)

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真夏の花

8月7日は二十四節気の立秋でしたが、気温からは一向に秋の気配は感じられません。しかし、立秋あたりを境に、初夏に咲いていた花から、真夏や初秋に咲く花へと移り変わります。すでに少し前から咲き始めていますが、こちらはヘクソカズラです。

ヘクソカズラの花

全草に湛えた強めのにおいに由来しますが、それにしてもずいぶんとひどい名前です。見てのとおり、花はとても可憐です。
こちらはヤブランです。

ヤブラン

博物館の前庭に特に多く、もう少しすると一面、この薄紫色に染まりそうです。
そして、写真を撮ろうと待ち構えていたのに、うっかり忘れて花期を逃してしまったものもあります。オオウバユリです。梅雨の間が見ごろの花なので、もう花が散ってしまっていました。

咲き終わったオオバギボウシ

ここ数年、博物館の裏手(一般の方が入れない場所です)で株が増えてきました。わずかに咲き残っていた1輪が下の写真ですが、典型的な咲き姿ではないので、また来年に持ち越しです。

1つだけ咲き残っていたオオバギボウシ

これから、キク科など秋の花が咲き始めます。樹林の中もまた賑やかになりそうです。
(生物担当学芸員)

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アカボシゴマダラのウラ側

先日のブログでも紹介した外来種のチョウ、アカボシゴマダラが博物館の中庭のガラスにとまっていました。

ガラスにとまっています

チョウのなかまでは、翅(はね)を開いたときに見える面(背中側)を「表面」と呼び、反対に、翅を閉じたときに見える面(おなか側)を「裏面」と呼びます。
つまり、この個体でいま見えているのは翅の「裏面」です。
表面と裏面は先日のブログの写真で見比べることができます。アカボシゴマダラについては表と裏で模様にほとんど違いがありませんが、シジミチョウのなかまなどでは模様が大きく異なる場合もあります。

さて、この個体はガラス面にとまっていたので、普段なかなか見ることのできない、チョウのもうひとつの「ウラ側」も見ることができました。

アカボシゴマダラのおなか側。下が頭です。

頭の黄色の部分がよく目立ちます。これは、アカボシゴマダラの口、「口吻(こうふん)」です。なぜ黄色なのか、とても不思議です。
ところで、脚(あし)の数は何本にみえるでしょうか?通常、昆虫の脚の数は6本ですが…。
実は、アカボシゴマダラを含むタテハチョウ科のほとんどの種では、前脚がとても小さく、体に沿ってたたまれています。そのため、見かけ上は脚が4本に見えるのです。
体をウラ側からみると、普段とは違う視点で体のつくりを観察できるので面白いですね。
(動物担当学芸員)

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気になる外来種

博物館周辺には様々な外来生物が生育、生息しています。これは都市部に限らず、今や全国の、人が住んでいる地域では一般的な状況です。環境が改変され、人や物の移動の距離、量とも大きな現代では避けがたいことです。
そんな中でも、近年目立ってきている外来種はやはり気になります。今の季節、植物ならシンテッポウユリです。もともと園芸種として入ってきているので、花が咲く前からなんとなくありがたいものが成長してきている雰囲気があります。

花が咲く前のシンテッポウユリ

そして、花も、目くじらを立てるのもどうかと思うくらい見栄えが良く、観賞用に残しておきたくなる気持ちもわかります。

シンテッポウユリの花

ただ、これを放っておくと大繁殖してしまいます。高速道路の法面などがこの大きな白い花で覆われているのをよく見ます。博物館の敷地に生えたものは、見つけ次第抜き取っています。
そして、チョウの仲間のアカボシゴマダラです。

アカボシゴマダラ

こちらは人為的に放蝶されたものが元で、野外で広がってしまったと言われています。こちらも大きくて美しいチョウですが、幼虫は在来のゴマダラチョウと同じくエノキを食べるので、その関係がちょっと気になります。

アカボシゴマダラ ひらひらとゆっくり飛び、葉の上にもよくとまります

何より、今現在、博物館周辺で最も目立つのがこのチョウです。大きいからという理由もありますが、晴れていれば必ずといってよいほど複数が飛んでいるのを見かけます。
外来種がすべて在来の生態系に対して大きな影響を及ぼすとは限りませんが、これだけ目立つと、やはり気になって仕方ありません。
(生物担当学芸員)

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真夏の昆虫レストラン

8月5日、月曜日ですが、博物館は夏休み期間中無休で開館しています。

さて、猛暑の毎日です。気のせいか、セミ以外の昆虫はあまり元気がないように感じられますが、いるところにはいます。そんな場所の一つが、ヤブカラシの花です。別名、昆虫レストラン。オレンジ色の花が蜜をたくさん出していて、ピンク色の花は営業終了のサインです。

ヤブカラシの花と葉

四枚の緑色の花弁と、四本のおしべがついています

人家周辺では、無節操につるをのばすやっかいな雑草ですが、虫たちにとっては甘い蜜を安定供給してくれる大切な食事場所です。

夢中で蜜をなめるアリ

こんな昆虫も訪れていました。ヨツスジトラカミキリです。

ヨツスジトラカミキリ

花の蜜を吸うイメージはあまりないのですが、拡大してみると、しっかり蜜をなめていました。
さらに、別の日に撮影した写真ですが、ナミテントウです。

ナミテントウ

ナミテントウは、成虫も幼虫もアブラムシを食べることで知られています。糖分の栄養価は肉食の昆虫も引き寄せるのですね。じつは、ヤブカラシの花の蜜は、人間が舌先でなめても甘さを感じるくらい、糖分がちゃんと含まれています。
炎天下の昆虫レストラン、確実になにかしらの昆虫がいるので、熱中症に気を付けながらまた観察しようと思います。
(生物担当学芸員)

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相模大野でセミの羽化観察

8月3日、大野南公民館の青少年委員会主催のセミの羽化の観察会が行われました。
当館からは学芸員2名が参加し、セミのおはなしや羽化の様子の解説をしました。

公民館でセミについてのかんたんなお話からスタート!

セミの種類や一生についての説明を聞きつつ、セミの抜け殻を観察してもらいました。

抜け殻からセミの種類を見分けることができます

空がすこし暗くなり始めたのを見計らい、羽化の様子の観察のため相模大野中央公園に移動します。
公園につくとさっそく、参加者のお子さんが木を登るセミの幼虫を見つけてくれました。

幼虫発見!

みなさん、だんだんと目が慣れてきて次々にセミが見つかります。
羽化している最中のもの、もう翅(はね)が伸びきっているものなど、様々です。

みんなでセミ探し

こちらでは、見やすいところで羽化しているセミがいました!

観察できたセミのほとんどはアブラゼミでしたが、ニイニイゼミとミンミンゼミも見つかりました。

羽化途中のアブラゼミ。水色の翅がきれいです。

天候にも恵まれ、たくさんのセミを観察することができた一夜でした!
(動物担当学芸員)

★明日は月曜日ですが、博物館は開館しています!★
夏休み期間(8月25日まで)は休館日はありません。
酷暑の中ですが、涼しい博物館へぜひお越しください!

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【8/4まで】ステスクで当館所蔵のオリパラ東京2020大会資料を展示しています。

先日開幕したオリンピックパリ大会では、日本選手の目覚ましい活躍が連日のように報じられています。今大会は本市にゆかりがある選手も多数出場しており、スケートボード女子ストリートでは市内出身の吉沢恋(ここ)選手が金メダル獲得の快挙を達成しました。

オリンピックの幕開けとともに、「ステスク」の愛称でおなじみの相模大野ステーションスクエア(市内南区相模大野)で開催中の「相模大野サマーフェスタ~スポーツを学ぼう~」にて、当館所蔵のオリンピック・パラリンピック東京2020大会資料を展示しています。

相模大野サマーフェスタ(後援:相模原市教育委員会)

昭和39(1964)年の東京大会から実に57年ぶりに再び東京が開催地となった前回大会ですが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を受けて1年延期、さらに開会式をはじめ競技のほとんどが無観客で執り行われた異例の大会となったことは記憶に新しいと思います。

そのような苦い思い出がありつつも、東京2020大会は自転車ロードレース競技のコースのうち約30㎞の区間が相模原市域を通るなど、本市に関連がある大会でもありました。こうした経緯から、大会終了後に100点超ものオリンピック・パラリンピック大会関係資料をレガシー(=遺産)として当館が受け入れることになったのです。
今回、相模大野ステーションスクエアで展示している資料はその中のごく一部で、当館は博物館資料の館外貸し出しという形で相模大野サマーフェスタに協力しています。

大会ポスターや公式ガイドブック

街頭フラッグや自転車ロードレース競技のパンフレット・ポスター

展示は相模大野ステーションスクエアA館6階エスカレーター横(くまざわ書店側)、A館7階エスカレーター付近2か所(ダイソー側、レストランフロア側)で開催しています。
令和4(2022)年に当館のレガシー展でも展示した表彰台も出展していますので、大会公式マスコットキャラクターのミライトワ・ソメイティと一緒に表彰式の気分を味わっていただけます。

表彰台と、ミライトワ(左)・ソメイティ(右)

会場スタッフによると、観覧者の中には大会ボランティアとして従事した方も複数名いらっしゃったようで、当時のことを思い出しながらじっくりと展示資料をご覧になっていたとのこと。

大会スタッフが身に着けていた靴と帽子

展示は8月4日(日)まで、また、8月3日(土)・4日(日)の2日間はパラスポーツ「ボッチャ」の体験イベントも開催するそうです。詳細はチラシをご確認ください。

貴重な東京2020大会レガシーをご覧いただける機会ですので、お買い物やお食事の際にお立ち寄りになってみてはいかがでしょうか?

(歴史担当学芸員)

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宮ヶ瀬湖畔で自然観察会を実施しました

本日は月曜日ですが、博物館は開館しています!夏休み期間(8月25日まで)は休館日無しで営業します。プラネタリウムも夏休み期間の特別上映を実施中。上映番組に関連したプレゼントなどもあります。特別展示室では民俗企画展「上溝番田の神代神楽」が好評開催中です。酷暑の中ですが、涼しい博物館へぜひお越しください!

さて、先週の7月27日には宮ヶ瀬湖畔園地で小学生向け自然観察会を実施しました。
内容は野外の危険生物についてのおはなしと小さな昆虫たちの観察です。

危険生物のおはなしでは、スズメバチやマダニの標本と生きたヤマビルを観察し、体の構造の違いに気づいてもらうとともに、対処法を一緒に考えました。

子どもたちは、はじめて間近で見るスズメバチをじっくり観察しています。
ヤマビルとマダニについては、保護者の方のほうがより興味をもたれていたようです。

昆虫の観察の時間では子どもたちと昆虫を探し、発見した虫をみんなで観察しました。
一見何もいないように見える木にも、じつは小さな虫たちがたくさんいます。

木の葉を網で掬(すく)うことで小さな昆虫を採集し、チョウやトンボのような大きな虫だけではない、より小さな虫たちの世界を少しだけ覗いてもらいました。

なお、当観察会は宮ヶ瀬ダム振興財団主催の小学生向けイベント「サマーアカデミーみやがせ2024」の一環として実施されました。
当ブログ記事で使用した写真もすべて同財団からご提供いただいたものです。
(動物担当学芸員)

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保育園でカイコの授業

本日は月曜日ですが、博物館は開館しています!夏休み期間(8月25日まで)は休館日無しで営業します。プラネタリウムも夏休み期間の特別上映を実施中。上映番組に関連したプレゼントなどもあります。特別展示室では民俗企画展「上溝番田の神代神楽」が好評開催中です。酷暑の中ですが、涼しい博物館へぜひお越しください!

さて、7月25日、南区のマミー保育園へカイコの授業に行きました。この保育園では年長クラスの園児たちがカイコを飼育して繭を収穫し、糸取り体験などをしたそうです。そこで、改めてカイコについて学ぼうということで、呼んでいただきました。

この日のために作ってくれた横断幕がとてもうれしかったです!

クイズなども交えた約30分のお話をとても熱心に聴いてくれました。カイコという昆虫について、そして、共通の祖先を持つ野生の蛾であるクワコについてもお話ししました。特に、クワコの終齢幼虫の擬態の様子や、カイコにも残る眼状紋(がんじょうもん)の話にはとても関心が高く、前のめりで聴いてくれました。

クワコの枝への擬態

刺激を与えると見せつける、クワコの眼状紋

黄色い繭や、日本の伝統品種のピーナッツ型の繭、そしてカイコの成虫も見てもらいました。

やはり実物は大人気

最後に、担任の保育士さんがご自身で調べた絹の道(神奈川往還)や横浜線のお話をわかりやすくして解説してくださり、楽しく授業を終えることができました。
(生物担当学芸員)

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