イワツバメのコロニー

エコーパークさがみはら(市立環境情報センター)の自然環境観察員制度の今年度の全体調査は、ツバメの巣の分布調査です。そこで5月29日、博物館近くの公共施設へ調査へ出向きました。ここはずっとイワツバメ、あるいはヒメアマツバメが営巣しています。
今年も1階の軒下部分に、イワツバメのコロニー(集団営巣地)がありました。

ヒナへ餌を与えるイワツバメ

巣内からはヒナが顔を出していて、この大きさならおそらく1週間以内に巣立ちそうです。

巣から顔を出すイワツバメのヒナ

営巣中の巣は建物の何カ所にも分かれてたくさんあり、少なくとも合わせて20巣以上ありそうでした。巣を作っている個体もいます。

巣を作っているイワツバメ

イワツバメの巣材は、泥です。これに植物の繊維などを混ぜながら巣を積み上げていきます。

巣材を集めているイワツバメ(別の場所で撮影)

ところで、かつて2階より上に営巣していたヒメアマツバメの姿はありませんでした。飛んでいる様子もなかったので、現在は営巣していないようです。
イワツバメの巣のそばには、ドバトと思われる巣もありました。

ドバトと思われる巣

敷地内では、メスにアピールするオスのドバトの姿も・・

メス(左)へ必死にアピールするオス(右)のドバト

メスはつれなくその場を離れていたので、オスの求愛は不成功に終わったようです。
イワツバメは現在、市内では限られた場所にしか見られないので、博物館近くで営巣しているのを確認できて少し嬉しく思いました。
(生物担当学芸員)

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稲城市で自然観察会-(おもに)野鳥編

先週に引き続き、5月26日に稲城市iプラザからの講師派遣要請で、当館学芸員が「街なか植物・鳥ウォッチング」の講師を務めてきました。今回は(おもに)野鳥の観察です。前回に引き続き、初めに少しだけ室内でお話しをしました。

室内で2種類のカラスについて説明

身近な野鳥の代表格である、スズメ、カラス、ヒヨドリについても、じつは私たちが見ているようで見ていないことや、じっくり観察するといろいろ楽しいことなどお話ししてから野外へ出ました。

みなさんの視線の先には・・

途中、野鳥だけでなく、ちょうど花が見ごろになっていたヤマホタルブクロを観察したり、昆虫が専門の学芸員が同行したので、カメムシやゾウムシの仲間なども観察したりしました。

ヤマホタルブクロ

若葉台公園の池から流れ出る水路では、2羽のカルガモがお食事中でした。

カルガモ(写真は別の場所で撮影したもの)

この時期はヒナを連れていてもおかしくないのですが、近くにはいないようでした。
最後に公園内の芝生の上で、ハクセキレイの親子を観察しました。

ハクセキレイの若鳥(写真は別の場所で撮影したもの)

時折、翼を震わせて餌をねだる巣立ちビナへ、親鳥が給餌するシーンを観察できました。野外へ出てすぐ、双眼鏡の正しい使い方もレクチャーしたので、全員で微笑ましい親子の行動が見られてとても印象に残りました。
(生物担当学芸員)

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サツキ自生地周辺の昆虫と動物

先日のブログでは、サツキの自生地の調査の様子を紹介しました。
ここでは、その際に観察した動物や昆虫を紹介します。

まず、砂利道の足元を歩いていた昆虫から。
スジアオゴミムシといい、市内ではよく見かけるゴミムシの1種です。

スジアオゴミムシ

頭部から胸部にかけての赤紫のメタリックな質感がよく目立ちます。

つづいて、葉の上にいたのはシラケトラカミキリ。

シラケトラカミキリ

黒と白の模様が入ったカミキリムシのなかまです。

サツキ自生地では、渓流沿いを何種かのトンボが飛んでいました。そのなかでも個体数が多く、ひときわ目立っていたのがミヤマカワトンボです。

ミヤマカワトンボ

「ミヤマ」=深山と名につくとおり、河川のある程度上流に行くとみられるトンボです。
ちなみに写真の個体は翅(はね)の先端に偽縁紋(ぎえんもん)と呼ばれる白い模様をもっています。この模様はオスにはないので、メスであるとわかります。

サツキの調査が終わり林道を歩いていると、斜面の上から「ガサガサッ」と動物の動く音が聞こえてきました。
音のした方向を探すと、木立の奥に大きな動物がいるのが見えました。
ニホンカモシカです!

ニホンカモシカ

じっとこちらの様子を見ています。このまましばらくこちらを見たあと、ゆっくりと斜面の上に登っていきました。
今年4月に博物館に着任したばかりの私(執筆者)はこれまでカモシカを見たことがなかったので、とても嬉しい出会いでした。
(動物担当学芸員)

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ゲンジボタル観察会

5月24日、今年も農業用水路沿いで県立上溝南高校のみなさんと、ゲンジボタルを観察してきました。
中央区のこの場所は、過去から現在まで養殖のホタルや、餌のカワニナなどを移入していない、正真正銘、地元のホタルです。

美しく光るゲンジボタル

ゲンジボタルの発生時期は、ソメイヨシノの満開から2か月後というのが一つの目安です。今年はソメイヨシノの開花が遅れたため、5月下旬ではまだ早いかな、と思っていたのですが、無事に観察することができました。

昨年の同時期よりも少し多く飛んでいました

水路沿いで約150頭の飛行を確認できました。
観察終了後、元気な高校生たちにスマホをかざしてもらって「人間のホタル」で記念写真。

恒例の記念撮影

ゲンジボタルは、水田耕作用の水路に年間を通して水が流れていることが生息の条件です。冬の水路清掃など、地元のみなさんの地道な作業に感謝しつつ、美しい光を眺めました。
(生物担当学芸員)

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メジロの大げんか

5月21日、サツキの自生地の調査へ行った際、現場近くで調査の同行者と待ち合わせをしていたら、いつになく激しいメジロの声が聞こえました。目を向けると4羽のメジロが激しくけんかしていました。

にらみ合う2羽

そのうちの2羽は特に、空中で体当たりしてもつれるように地面へ落ちたりと、ガチンコ勝負です。

オス同士?でしょうか

お互いに上を取ろうとしています

おそらく、2組のつがいが縄張りをめぐって争っているのだと思いますが、ふだんはチィーチィーとかわいらしく動き回っている小鳥なので、こんな激しい一面があるのかとちょっと驚きました。

取っ組み合いです

そばではコゲラがギィーと鳴きながら、何食わぬ顔で採食していました。

コゲラは我関せず、日和見の様子です

このけんかは見ている間ずっと続いていて、待ち合わせ時間になり、そこを離れる時もまだやりあっているようでした。いったいいつまで続いたのでしょうか。成り行きが少し気になりました。
(生物担当学芸員)

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近世絵図がテーマの講演会を開催します【博物館資料の特別公開も!】

5月26日(日)、令和6年度相模原市文化財研究協議会公開講演会「近世絵図から読み解く相模原の歴史」を当館地階の大会議室で開催します。

公開講演会「近世絵図で読み解く相模原の歴史」

主催者の相模原市文化財研究協議会は、相原の歴史をさぐる会・相模原郷土懇話会・旧笹野家住宅を考える会の3団体で構成され、公開講演会や文化財探訪の実施等を通して、郷土の文化財の普及や愛護等の活動を行う組織です。

今回開催する講演会では、市立公文書館職員を講師に迎え、相模原が描かれた近世絵図を題材に、絵図が描かれた背景や絵図から語られる地域の歴史を読み解きます。さらに、当館所蔵の絵図資料を特別公開し、講演会後にじっくりと観覧いただく機会を設けます。

幅2m以上もの巨大な複製資料も展示します!

また、本講演会は相模原市教育委員会(文化財保護課、市立博物館)との共催事業のため、特別公開における展示では当館学芸員が協力しています。

江戸時代中期から幕末まで、相模原市域や神奈川県ゆかりの絵図資料を選りすぐり、この機会にのみご覧いただけるラインナップとなっております。参加希望の方はこちらから詳細をご確認のうえ、当日会場へお越しください!申し込み不要、先着順のご案内です(定員150名)。
皆さまのご来場を心よりお待ちしております。

(歴史担当学芸員)

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サツキの自生地

5月21日、市内緑区の渓谷へ、サツキの自生地の現況確認に行きました。サツキは街路樹や庭木としてごく普通に見られる植栽樹ですが、本来の生育環境はなんと、渓谷の岩場です。つまり、岩場の過酷な土壌条件で生育可能なので、コンクリートジャングルの市街地でも生育できる、というわけです。

人を寄せ付け難い風景の渓谷

この場所は、令和元年東日本台風(台風19号)で大きな被害のあった場所だったものの、その後訪れていませんでした。自生地がどうなっているか心配でしたが、無事に開花を確認できました。

流れの水面から1.5メートルほどの高さに咲いています

まだ花期のピークではなかったのですが、ざっと周辺を探したところ、株自体はかなり残っているものの、つぼみを付けている株が少ないように感じられました。若干、まだ台風によるダメージが残っているのかもしれません。

近づける岩場に咲いていたサツキ

一方、同じく渓谷を代表するシダ植物であるヤシャゼンマイは、元気に茂っていました。

ヤシャゼンマイ

渓谷の植物らしく、スッキリとしたフォルムと色合いが美しいシダです。
ほかにも、渓谷特有というわけではないのですが、カナウツギが開花していました。

カナウツギ

シラキも花穂がたくさんついていました。

シラキ

サツキは、相模原市のこの場所が、分布の東限と言われています。株が残っているのを確認できて、ひとまず安心しました。
(生物担当学芸員)

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稲城市で自然観察会-(おもに)植物編

5月19日、東京都の稲城市iプラザからの講師派遣要請で、当館学芸員が「街なか植物・鳥ウォッチング」の講師を務めてきました。2回連続の講座の1回目は、「(おもに)植物編」です。まず室内で、身近な自然観察を楽しむようになると、365日毎日楽しくなりますよ、というお話しから始めました。なにしろ、私たちが通常行く可能性のある地球上のあらゆる場所に、植物、または野鳥がいるからです。

最初は室内の講義から

15分ほどのお話しの後、早速野外へ出ました。普段通り過ぎている歩道の植込みなどにも、じっくり観察すれば楽しい植物がたくさん生えています。視点を落として、小さなかわいらしい野草の姿をみなさんで楽しんでいます。

視点を落とすと見えてくる、小さな植物を観察

そして、こんな植物の紹介も。ネズミムギの開花の様子です。花のようには見えませんが、雄しべが垂れているこの状態が、開花です。イネ科の植物なので、花びらはありません。

ネズミムギの花

ただし、ネズミムギは花粉症の原因植物です。取り扱いに注意しながら観察しました。
最近目立つようになった外来植物や、タイトルにあるように植物だけでなく、花を訪れている昆虫、さらには姿を見せてくれた野鳥(翌週はおもに野鳥を観察する予定ですが・・)などにも目を向けながら、再びiプラザの前まで戻って来ました。最後は、街路樹として植えられているカツラについてお話ししました。

カツラの木の下で終了

カツラは落葉の頃、甘い匂いを発します。若葉には無い匂いなので、秋の落葉も楽しみですよ、と予告して終了となりました。来週も身近な自然をみなさんと楽しもうと思います。
(生物担当学芸員)

※この観察会は申し込み制で、すでに締め切られています。

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生きものミニサロン「桑の木でくらす生き物観察」を実施しました!

5月18日の国際博物館の日に合わせて、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。今回は「桑(くわ)の木でくらす生き物観察」というテーマです。桑の木はカイコの幼虫の餌として有名ですが、野外でも実は様々な生き物の生活の場となっています。そこで、博物館の敷地に生えている桑の木を舞台に小さな虫たちを観察しました。

本番の桑の木の観察のまえに、まずは肩慣らし。コナラの樹になぜかたくさん集まっている小さなアリたちを観察します。

葉の上にアリがたくさん

虫めがねでよく見ると、緑色の小さなアブラムシがいるのが分かりました。アリたちはどうやらアブラムシに蜜をもらっていたようです。

アリとアブラムシ

観察を続けると、皆さんも小さな虫たちの世界に目が慣れてきたようです。

小さい虫たちを観察

 

次は本番。桑の木の生きものを探してもらいます。
白いふわふわとしたものを背負った不思議な生き物が葉っぱの裏に隠れています。

白いふわふわ

これは、クワキジラミという昆虫の幼虫です。

クワキジラミの幼虫

シラミと名前につきますが、じつはアブラムシに近い仲間の昆虫です。白いふわふわはロウ状の物質で、幼虫だけが背負います。成虫は茶色っぽく、小さいセミのような見た目をしています。

クワキジラミを観察中…

 

つづいて観察したのは、枝先の茶色い生き物。

クワコの幼虫

クワコという蛾の幼虫です。
下見では1頭しか見つからなかったのですが、参加者の皆さんと探したところ、3頭を観察することができました。

そして、参加者の方がなんとクワコの繭(まゆ)を見つけてくれました!

クワコの繭

黄色くてとてもきれいな繭です。
じつはクワコは、カイコととても近い仲間です。
カイコは繭から糸をとるための品種改良によりもっと大きい繭を作りますが、繭の形じたいはクワコととてもよく似ています。
繭からも、同じなかまだということが見てとれます。

たくさんの目で観察すると、より多くの発見があることを実感した1日でした。

(動物担当学芸員)

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大学生の実習

相模原市立博物館では毎年夏に大学生の博物館実習を行っています。しかしそれ以外にも、大学の学芸員課程の授業の一環として当館を利用した見学や実習も受け入れています。5月18日午後、その一つとして、博物館から最も近い場所にある大学、青山学院大学から学生が実習のために来館しました。「博物館実習Ⅰ」という、上記のような本格的な学外実習の前に、必要最低限の知識とスキルを得るための講座です。
まずは、掛け軸の取り扱いです。

掛軸の取り扱い

当館の歴史担当学芸員から、掛け軸を広げて、掛けて、外して、収納するまでの手ほどきを受けます。
使用するのは本物の掛軸なので、やや緊張しながらの作業です。

丁寧な取り扱いが求められます

そして、こちらは梱包実習です。資料を安全に運搬するために必要不可欠な技術です。

過不足のない梱包を考えながら取り組んでいます

梱包方法は、ただ一つの正解があるわけではなく、資料の形状や状態に合わせた梱包を行う必要があります。資料をよく観察した上で、方法を考えながら作業します。
こちらでは、展示の際の資料の固定方法を紹介しています。

虫ピンとチューブを使った固定

不自然ではない形で、なおかつ資料へダメージが無いように固定する工夫について解説しました。
最後に、収蔵庫の見学です。

動植物資料収蔵庫を見学

博物館の収蔵庫の様子だけでなく、資料を保管する上での方針や意義についても説明しました。
事前にこうした博物館の専門技術やバックヤードを見ておくことで、実習先の博物館でどのような立ち振る舞いをすべきか、イメージしやすくなることでしょう。
(生物担当学芸員)

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