雨の中の植物調査

10月22日、市内の絶滅危惧植物の生育環境を確認する調査を行いました。あいにくの雨模様でしたが、雨具を着て歩き回っていると、それはそれで色鮮やかな秋の色を堪能できました。まずは、緑区大島の相模川のカワラノギクです。

カワラノギク

まだまだこれからが花期のシーズンですが、数株、咲いていました。
植物ではありませんが、カワラノギクの保全圃場の脇に発生していたキツネノロウソクというキノコです。

キツネノロウソク

雨で傘のグレバ(灰褐色の部分)が流れ出ていましたが、この部分のニオイは強烈です。

こちらは、緑区内の市道法面の石積みに生えているツメレンゲです。市内では「なぜここに?」というような場所に生育しています。たくさんの株がつぼみをつけていました。

ツメレンゲ

そして、緑区のある林道に咲くカワミドリです。美しい花色が雨粒をまとって映えていました。

カワミドリ

こちらは相模湖の水位が下がったために出現した湖底(減水湿地)に生育していたタチヒメクグです。県内ではごく限られた場所にしか自生しないカヤツリグサ科の植物です。

タチヒメクグ

同じ場所にあったヒメミズワラビです。こちらは市内でこれまで確認されていないため、今回の調査で新たに発見できたシダ植物です。

ヒメミズワラビ

ずっと雨の中を歩くことになりましたが、新たな発見もあり充実した調査となりました。
(生物担当学芸員)

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【11月3日まで】立山博物館で当館資料を展示中です!

ブログタイトルのとおり、富山県[立山博物館]で来月3日(月・祝)まで開催中の特別企画展「英国から立山へ―『日本旅行案内』にみる立山―」にて、当館所蔵の「横浜近郊外国人遊歩規定範囲図」を展示しています。

この企画展では、駐日イギリス公使館書記官のアーネスト・サトウらが明治時代に著したガイドブックの『日本旅行案内』を中心に、当時の外国人による旅行事情や、記録に残された立山の様子などが紹介されています。

立山博物館 展示館(外観)

現代とは異なり、幕末~明治時代初めの日本では、外交官など職権で認められている場合を除き、外国人旅行者が自由に国内旅行を楽しむことが難しかったのです。こうした状況下で、一般の外国人による自由な旅行への要求が高まり、制度面の整備が進められるにつれて国内旅行が活発化していきます。外国人向けの日本版ガイドブックの必要性からアーネスト・サトウらが『日本旅行案内』の刊行に取り組み、やがて外国人読者のみならず、日本人にも大きな影響を与える書籍となりました。

当館の「横浜近郊外国人遊歩規定範囲図」(慶応3(1867)年頃)は、サトウとともに『日本旅行案内』を出版したイギリス海軍歩兵大尉のA.G.S.ホースの編集・作成で、当時の訪日外国人や居留民が自由に行くことのできる範囲を示した絵図です。企画展のなかでは、外国人による国内旅行が制限されていた時代から、旅行ブームへ移り変わる過程の導入に位置づけられています。

横浜近郊外国人遊歩規定範囲図(当館所蔵)

このブログでも他館への資料貸出しについて紹介することがありますが、やはり、当館の資料が全国津々浦々、いろいろな機会で活用されることは嬉しく光栄に思います。
さらに、アーネスト・サトウは明治5(1872)年1月23日の「旅行日記」において、甲州からの道中で市域の青根、青野原、鳥屋を経て宮ケ瀬へ至ったと記しており、今回の企画展に浅からぬご縁を感じました。

立山博物館は「立山の人間と自然とのかかわり方」をテーマに、野外展示や地域の景観からなる広域分散型の博物館で、豊かな自然と古来の文化、歴史が織りなすとても魅力的な場所です。
旅行ガイドブックを携えて、ぜひ訪れてはいかがでしょうか!

(歴史担当学芸員)

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ガンクビソウ

秋の色が濃くなってきた林内を歩いていたら、ガンクビソウが花をつけていました。

ガンクビソウ(キバナガンクビソウ)

この花の種名にある、雁首(がんくび)とはなんでしょう。「雁首揃えて・・」などちょっと物騒な使い方をされますが、花の名はこうべを垂れた人の頭になぞらえたものではありません。その由来は、昔の煙草(たばこ)具である、キセルです。

キセル(煙管) 赤い丸印の部分が雁首

タバコの葉を乗せる皿の部分を雁首と呼んでいて、花がその形に似ているところからついた名です。なるほど、よく似ていますね。
近くには近縁のヤブタバコも咲いていました。

ヤブタバコ

こちらも名に煙草とありますが、キセルとは関係ありません。葉が植物のタバコに似ているからです。
ちなみにどちらの種も、タネが実るとベタベタしてくる、ひっつき虫です。これから季節が進むと、衣服にもひっついてなかなかやっかいな植物になります。
(生物担当学芸員)

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宇宙交差天、こちらも大盛況でした!

10月11日と12日の二日間にわたって開催された宇宙交差天、相模原市立博物館はメインの会場となり、11日はJAXA相模原キャンパス特別公開現地開催日との相乗効果で大盛況でした。
12日は宇宙交差天単独の開催となりましたが、多方面の音楽活動を展開するアーティスト、蓮沼執太(はすぬま しゅうた)さんのプラネタリウムライブと、ACIDMANの大木伸夫さん監修のプラネタリウム番組(2回)がすべて満席となりました。蓮沼さんのライブでは、満天の星の下にいるようでもあり、海底にたたずんでいるようでもある幻想的な音の連なりがドームに響きました。

蓮沼執太さんのプラネタリウムライブ

映し出される星々や惑星の映像などと見事にマッチした演奏が会場を魅了しました。

地球を背景に

演奏する蓮沼執太さん

そして、エントランスではプラネタリウム番組でもおなじみの「宇宙なんちゃらこてつくん」が登場!

交差点に宇宙なんちゃらこてつこんが登場!

宇宙交差天のキャラクターである「ぎゃみみ(地上バージョン)」は今日も登場。

ぎゃみみ(地上バージョン)

2日間で本当にたくさんの来場者をお迎えして、文字どおり宇宙に親しむ「交差天」となりました。

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図書館で縄文土器をみよう!【出張ミニ展示 11月12日まで】

10月10日から相模原市立図書館2階にて、勝坂遺跡に関する展示を開催しています。

階段上がって2階です。

勝坂遺跡は本市南区磯部に位置する縄文時代の遺跡です。
勝坂遺跡の名称は、縄文時代中期の土器の名称である「勝坂式土器」としても全国的に有名です。
今から51年前に縄文時代中期のムラ跡が良好に保存されていることがわかり、
国が定める重要な遺跡である「史跡」として保存され、現在では勝坂遺跡公園として公開活用されています。

写真パネルを配置中

ミニ展示では勝坂遺跡の紹介や史跡指定までの経緯、史跡公園の内容について解説しています。展示している土器や石器は、51年前の勝坂遺跡第1次調査出土のものです。
いつもは博物館の収蔵庫で収蔵保管しており、一般の方の目に触れることができないため、この機会に展示しました。

考古担当学芸員イチ押しの土器です。

 

また、11月3日(月・祝)には、勝坂遺跡公園にて「勝坂遺跡縄文まつり」が開催されますので、ぜひご参加ください。
勝坂遺跡縄文まつりのページ

(考古担当学芸員)

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JAXA特別公開現地開催、大盛況! そして宇宙交差天は本日も!

10月11日(土)に行われたJAXA相模原キャンパス特別公開現地開催は大盛況のうちに終了しました。大会議室で行われた特別講演「宇宙探査の“これから”」は午前中から午後までJAXAの宇宙探査の最先端のお話を聴けるとあって、多くの聴講者が訪れました。

トップバッターは吉川真先生(中央)と藤本正樹所長(右)が登壇

実習実験室で行われたワークショップ「宇宙飛行士に挑戦!コミュニケーションパズル」も毎回満席。

実習実験室で実施のワークショップ

スタンプラリーの景品交換コーナーは常に行列が

スタンプラリーの景品交換コーナー

あいにくの雨模様にもかかわらず、5000人近い来館者をお迎えしました。

本日は、JAXA相模原キャンパス特別公開はオンライン開催となります。どなたでも予約無しに視聴できます!
そして、昨日から本日10月12日に開催しているのが「宇宙交差天」です。

宇宙交差天

道路標識風のアート作品が演出

エントランスには“交差天”も出現!

交差点で記念撮影する人もたくさん!

クリエイターズマーケットも大盛況です。

特別展示室で開催のクリエイターズマーケット 宇宙をモチーフにしたグッズなど盛りだくさん

本日はプラネタリウムで蓮沼執太さんのライブ(事前予約制)や、大木伸夫さん(ACIDMAN)監修の特別番組の上映、キッチンカーの出店もあります。
秋らしく過ごしやすい1日になりそうです。ぜひ博物館へお出かけください。

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JAXA相模原キャンパス特別公開!相模原市立博物館も会場です!

本日、10月11日(土)はJAXA相模原キャンパス特別公開の現地実施日です。

相模原キャンパスは10~14時までが事前予約された方のみ入場できますが、14時からはどなたでも入場できます。そして、会場の一つである相模原市立博物館は、開館の9時30分からどなたでも入場可能です。
相模原市立博物館会場では特別講演「宇宙探査の“これから”」(事前申し込み制:大会議室)、女子中高生向け「進路で人生どうなるの?私の進路と今の研究」(ホワイエ)、「宇宙飛行士に挑戦 コミュニケーションパズル」(実習実験室)が実施されます。特別講演以外の事前予約は不要ですが、時間等詳しくはこちらのパンフレットをご覧ください。

さらに相模原市立博物館では、「宇宙交差天」(10月11日~12日)のメイン会場となっています。

これは、「宇宙交差天SAGAMIHARA」をコンセプトに、宇宙モチーフの雑貨の販売(特別展示室)やプラネタリウムの特別上映(12日)など盛りだくさんの内容が用意されています。どなたでも楽しめるイベントなので、お気軽にご来場ください。

なお、プラネタリウムは10月11日、12日については通常の上映スケジュールと異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

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タカの渡り

10月8日、市内緑区でタカの渡りを観察できるポイントに行ってきました。タカの渡りとは、夏鳥のタカの仲間、主にサシバやハチクマがこの季節に高空を滑空して渡る様子を観察するもので、バードウォッチャーの季節の風物となっています。
じつはこのポイントでは前日に100羽以上が飛んでしまっていたため、この日は待てども待てども飛びません。それでも1羽のサシバ(幼鳥)が旋回して高空へ昇るのが見えました。

サシバ 拡大したらお腹に太い縦の斑紋が見えたので、幼鳥です

複数のサシバが渡る時は集団で旋回するので、その様子を「タカ柱」と表現しますが、この日はとても遠い空で4羽がタカ柱を作ったのが見えただけで、前日見えたという壮大なタカ柱は見られませんでした。
それでもその後、成鳥が1羽、真上の空をスーっと滑空していきました。

サシバ こちらは成鳥です。青空に翼が透けてとてもきれいでした

これから何カ所か経由して翼を休めつつ、南西諸島まで飛んでいくはずです。「がんばれよ!」と観察ポイントにいたみんなで祈りつつ見送りました。
足元では、ツリガネニンジンや・・

ツリガネニンジン

カラマツソウが風になびいていました。

カラマツソウ

タカの渡りも終盤です。個人的には今年最後の観察になったので、数は少なかったものの、渡りのタカを見送ることができてよかったです。
(生物担当学芸員)

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紅白のミズヒキ

水引(みずひき)というと、祝儀袋などに結ばれた紅白、あるいは金銀の紐のことを指します。植物にもこの名が使われていて、ミズヒキというタデ科の植物が博物館のまわりにもたくさん生えています。花はとても小さいのですが、紅白のツートンカラーが美しく、長く伸びた花序(かじょ=花の配列の様子)を水引に見立てたものと思われます。

水引の花

花後に実った果実は、紅白が上下に分かれるので、上から見ると紅色ですが、下から見ると白く見えます。

ミズヒキ 上から見たところ

同じ株の花序を裏返して見たところ

このミズヒキには白花の品種も知られています。花に紅色の部分が無く、純白の花です。

ギンミズヒキの花

品種名は、ギンミズヒキと呼ばれます。こちらは上から見ても白いのが特徴です。

ギンミズヒキ 上から見たところ

さて、ここで少々紛らわしい種名を紹介します。キンミズヒキ(バラ科)です。ギンミズヒキのすぐそばで咲いていたキンミズヒキの花はこちらです。やはり、長く伸びた花序にたくさんの黄色い花がつきます。

キンミズヒキの花

植物の世界では、黄色をしばしば「金」と表現します。やはり金と呼んだ方が縁起が良さそうだからでしょう。いま、芳香を放っているキンモクセイもその一つです。それにしても、水引では金銀とセットで扱われるのに、キンミズヒキとギンミズヒキは属する科が異なる縁遠い植物です。一方で、どちらの植物も“ひっつき虫”でもあります。キンミズヒキは果実が実るとこんな感じです。

キンミズヒキの果実

動物の毛や衣服にしっかりひっつきます。ミズヒキやギンミズヒキはというと、ひっかかる程度であまりひっつく意思を感じません。

ミズヒキの若い果実

いずれにしても、古くから身近で親しまれてきたからこその種名なのは間違いありませんね。
(生物担当学芸員)

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大学の野生動物学実習を実施

10月4日、毎年恒例となっている、麻布大学動物応用科学科の実習「野生動物学実習」を当館で実施しました。麻布大学と相模原市は包括連携協定を結んでおり、こうした実習を積極的に受け入れています。
博物館での実習ですから、まずは生物多様性情報の蓄積のための地域博物館の役割と標本の意義について室内でレクチャーを行いました。その後、野外へ出て昆虫採集を行います。

昆虫採集の基本について説明を受けて、虫採りに出発!

捕虫網を振るのは小さな頃以来、という学生さんも多く、楽しみながら採集をしました。

捕虫網の扱いにもだんだんと慣れていきました

恐る恐る網から取り出します

小さなものから大きめのものまで、いろいろな昆虫を採集できました。

ヒメクダマキモドキ 見事な保護色ですが、この後採集されました

午後からは、採集した標本を使っての実習です。形態をよく観察して、同じ仲間と思われるものの組み合わせを作ります。そして、その共通点に着目してスケッチをしました。

班の中でディスカッションしながらより分けていきます

真剣にスケッチしています

科学的なスケッチとは、見栄えよりも、客観的な視点、つまり、その特徴をしっかりととらえて表現することが求められます。そしてその観察から導かれた特徴や着目点について、班ごとに発表してもらいました。

着目した共通点などを発表

図鑑やインターネットなどで調べた知識ではなく、目の前の標本から得られた情報に絞り込んで発表するのが重要なところで、みなさんそれをしっかりとこなしてくれました。
その後、当館の動物分野の学芸員から、自身が昆虫で新種記載した論文を紹介してもらい、じつはこの実習の内容の延長線上にそうした研究があることを示しました。
最後に収蔵庫を見学し、標本を永久保存する環境や施設を実際に体感してもらいました。

収蔵庫の見学

科学的な観察眼で標本を扱うことについて、地域博物館の使命とともに学べたことと思います。
(生物担当学芸員)

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