トゲのある話

博物館お隣の樹林地へ行くと、遠目にもいかめしい姿の植物が堂々と咲いていました。

大きな花、大きな葉、大きなトゲが目立ちます

アメリカオニアザミです。この10年ほどで急激に広まった外来植物の一つで、その特徴は全身にまとう鋭いトゲです。

植物体全体に鋭いトゲがついています

アザミのなかまはどれも多かれ少なかれトゲがあります。しかし、これほど大きくて鋭いトゲをつけたものはそうはありません。早めに駆除しないと爆発的に増えるのですが・・この場所は現在、花ごよみ調査を実施している場所なので、とりあえずそのままにしておきました。
まわりをふと見ると、もう一つトゲトゲ植物が。一見して、ナス科の花ですね。

ワルナスビの花

こちらはワルナスビです。外来植物には不遇な名前のものが多くありますが、ワルナスビも、いかにもという名前です。実際、葉の裏や茎にたくさんのトゲがあります。

パッと見ると目立ちませんが、葉裏にはトゲがびっしり

アメリカオニアザミもワルナスビも、幼植物のうちに抜いておかないと、花の頃にはもう、うっかり手出しできないような武器を身につけてしまっています。
こうしてみると外来植物の武器のように感じられるトゲですが、じつは植物のトゲは在来植物にもふつうにあるものです。近くで育っているモミジイチゴもバラ科なのでしっかりトゲを持っています。

モミジイチゴのトゲ

香辛料でおなじみのサンショウも近くにたくさん生えていますが・・

香り高いサンショウの葉

立派なトゲを持っています。

茎に2本ずつ並んで生えるのがサンショウのトゲの特徴です

植物にとっては防御はもちろん、ほかの植物にもたれかかったり巻き付いたりするときのひっかかりなど、トゲにはいろいろな機能があります。うっかり触ると痛い目に遭いますが、どうしてこの植物がトゲを持っているのか?と考えながら見ていくと、植物の戦略を垣間見ることができてちょっとおもしろいと思います。

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カイコの繭づくりを観察できる「まぶし」

カイコの飼育のクライマックスである繭づくりで、カイコが繭をつくる場所を「まぶし(蔟)」と言います。
近年はボール紙を格子状に組み合わせたものが一般的で、博物館でもダンボールで作ったものを容器にはめ込んで使っています。

まぶしの上を歩き回る熟蚕

ところが上の写真のように、もともとカイコは上へ上へと登りながら繭をつくる場所を探していきますから、まぶしへ入れただけでは、上を歩くばかりでなかなか入ってくれない個体もいます。近代養蚕では、日本で開発された「回転まぶし」という優れた道具が爆発的に普及したのですが、蚕室の無い博物館ではそんなに大がかりなことはできません。そこで・・

5センチ径くらいの食品パックを使います

前の記事でもご紹介した食品パック式のまぶしを使うことがあります。ちょっと強引ですが、このパックに入れてふたをしてしまえば、半日くらいで繭を作り始めてくれます。これなら中身が見えるので、展示用にも都合がよいのです。透明ということであれば、ネット上などでもよく紹介されている塩ビパイプが良いのですが、コストがかかり、しかも基本的には使い捨てになってしまうのでもったいないように感じます。そこで食品パックです。そして、もう一つのコツは、底に尿抜きの穴をあけることです。

底の穴は低くなった部分に5つほど開ければ十分です

カイコは一生のうち2回だけ尿をしますが、その1回目が熟蚕期です(2回目は羽化直後)。これが食品パックの底にたまると、繭がよごれてしまいますし、ニオイもきつくなります。その穴の開け方は、下の写真のように必ず容器の内側から下へ開けます。

千枚通しで容器の内側から開けます

逆に外側から開けてしまうと、内側に土手ができてしまって尿がうまく排出されません。
穴を開けてカイコを入れたら、容器をティッシュペーパーなどの上に置きます。そうすると、尿をしてもうまく吸い出してくれます。

展示中の熟蚕

博物館でも今、このように展示してカイコの繭づくりを観察していただいています。
一昨日(6月30日)容器に入れたものは、もうこんなふうに繭がほぼ完成しています。

すっかり不透明になった繭(6月30日から作っていたもの)

ちなみに、小学校などで飼育して数匹ずつ配られた場合は、トイレットペーパーの芯を半分に切ったこのようなまぶしで十分です。

トイレットペーパーの芯で作ったまぶし

カイコが一心不乱に糸を吐いて繭を作っているところを見ていると、なんだかカイコが神々しく見えてきます。食品パックを使った透明まぶしは当館オリジナルのアイデアです。カイコを飼育中の方はぜひ試してみて下さい。

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いよいよ熟蚕!

6月4日頃までにふ化、そして5日から給桑を開始してきたカイコがいよいよ熟蚕となりました。熟蚕とは、クワを食べきって繭を作り始める状態になったカイコのことを言います。それまで、どっさりクワをあげても数時間でぺったんこになるくらいに食べ尽くしてしまっていたのが、今日(6月30日)はお昼に給桑したのが夕方、まだ山のように残っています。

食べ残した山のようなクワのうえにのっかっています

なんとなく、体が黄色っぽいカイコが多いのがわかるでしょうか。そして、そんなカイコはだいたいのけぞって頭を振っています。

頭をぐるぐると振るのも熟蚕の特徴です

絵の具の白色のような色だったカイコの体が、少し黄色く汚れたようになり、サイズも少し小さくなっています。

左がまだ熟蚕になっていないカイコ、右が熟蚕です

右が熟蚕、左がまだ熟蚕になっていないカイコです。
博物館では、ダンボールを切って作ったまぶし(繭を作らせる部屋)へ移しますが、一部は展示用にこのようなまぶしへ入れます。

食品パックのまぶし(当館オリジナルの方法です!)

これは、小さめの食品パックです。こうすると、繭をつくるようすを観察することができます。
この方法、じつは当館のオリジナルです!ちょっとした工夫もあるのですが、それはまた後日詳しく説明いたします。
ところで、一足先に2週間ほど早く飼育していたものが今朝、羽化していました。

一足先に飼育していたカイコの成虫です!

カイコの成虫です。まるでぬいぐるみ!かわいいですね。
これから明日にかけて、熟蚕を見極めてはまぶしへ移す作業に追われますが、これでカイコの飼育もラストスパートとなります。

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縄文土器の中からマメ?

昨日(6月28日)は、博物館の考古ボランティアの相模原縄文研究会(通称“縄文研”)メンバーといっしょに資料の調査と整理作業を行いました。

午前中は、国指定史跡でもある勝坂遺跡から出土した縄文土器の資料調査です。何を調査しているかというと、縄文土器づくりの際に、粘土にたまたま紛れ込んだりする植物種子などの圧痕(インプリントされた穴)です。

縄文研の皆さんで縄文土器の植物種子圧痕探し

既に勝坂遺跡からは、約5,000年前の縄文時代にダイズやその原生種とされるツルマメのマメ類を利用していたことがわかっています。ダイズは現代人の私たちも、ビールのおつまみの枝豆や納豆、豆腐など、たいへん身近な食材です。「縄文人がダイズを食べていた」と聞くと、会ったこともない「縄文人」に何となく親近感が湧きませんか?

午後からは下溝の下中丸遺跡で発見された縄文土器や石器の洗い作業です。土がこびりついている資料を、水をかけながら刷毛ブラシでやさしく洗い流していきます。遺物の洗い作業は実は一番楽しい作業で、洗っていると縄文土器のおもしろい文様が浮かび上がってくるわけです。どの時期のものなのか、何の型式なのか、資料を良く見る一番の機会になります。

水道に一列に並んで土器洗い作業

刷毛ブラシで♪トントントン♪と叩くように洗い流します

洗っている中で、興味深い土器がありました。割れていた勝坂式土器の破片が接合したのですが、それはよくある事です。

接合する勝坂式土器

土器の接合部の隙間に何やら黒いものが・・・

割れ口と割れ口のところを良く見ると、真っ黒になった圧痕(あっこん)が両方にあるではありませんか!

パカッと出てきたのは真っ黒になった植物種子圧痕

土器づくりの際に植物種子が混入して土器の焼成がされると、土器の器壁(きへき)に閉じ込められた種子は中で炭化して、圧痕も真っ黒になることがよくあります。まさにその状況で、炭化したマメの表皮らしきものも見られました。

左の炭化した種子圧痕

右の炭化した種子圧痕

その大きさも、粒の長さが10mm、厚さ4mm程で、「これはもしやダイズか?」と胸が高鳴ります。勝坂遺跡で見つかっていたダイズの圧痕レプリカは、長さ9.5mm、厚さ3.4mmです。シリコンでレプリカをとって、分析してみないと確実なことは言えませんが、興味深い資料と出会えた一瞬を、縄文研メンバーといっしょに味わうことができました。

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春から姫へ

博物館の駐車場周辺では、毎年のことながらこんな植物が目立ってきました。

ヒメジョオンの花

古典的な(?)外来植物で、“雑草”のスタンダードと言えるヒメジョオンです。
でも、こんな花なら春からいっぱい咲いていますね。よく似ていますが、こちらは、ハルジオンです(チョウチョは、ウスバシロチョウです)。

こちらはハルジオン

春に咲くハルジオン(あえて漢字を充てるなら、春紫菀)と、初夏から真夏に咲くヒメジョオン(姫女菀)は、梅雨の初め頃には開花時期がオーバーラップします。見分け方は図鑑を見るといろいろ書いてありますが、一番わかりやすいのは、葉の付け根です。付け根が耳のように張り出して茎を軽く抱くのがハルジオン。

葉の付け根が茎を抱く(茎に沿って回り込む)ハルジオン

まったく抱かないのがヒメジョオンです。

葉の付け根はあっさりとしているヒメジョオン

そして、一見そっくりな花も、よく見ると違います。糸のように細い花弁ですが、ハルジオンの方がさらに細いのです。こちらはハルジオン。

糸のように見えるハルジオンの花弁

少し幅広いヒメジョオン

少し幅広い花弁のヒメジョオン

図鑑では「ハルジオンの花やつぼみはピンク色を帯びることが多い」と書かれていますが、上の写真のようにヒメジョオンも花期の始めの方では結構ピンク色のものがあり、この見分け方はアテになりません(しかも初夏のハルジオンはほとんどピンク色になりません)。
そして、茎が中空(ちゅうくう=ストロー状)なのがハルジオンで、詰まっているのがヒメジョオンなので、茎をつぶすように押すとわかる、ともあります。でも、中身が詰まっているといってもスポンジ状の組織なので、ヒメジョオンも若い茎だと押せば簡単につぶれます。これは、ちゃんと切断面を見ないとわかりません。
こちらがハルジオン。

茎が中空のハルジオン

こちらがヒメジョオンです。

スポンジ状の組織で中身が詰まっているヒメジョオン

ハル(春)からヒメ(姫)へ、季節とともに植物も置き換わります。梅雨も本番となり、博物館のまわりでも夏の植物がどんどんと咲き始めていますので、またそちらもご紹介していきたいと思います。

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ヤツボでヒンヤリ

梅雨らしい日和になってきました。梅雨明けは、過去の平均では7月21日頃のようで(気象庁HPより)、市内の小中学校の多くがちょうど夏休みに入る時期です。梅雨が明ければ夏本番。

ヤツボの測量調査

梅雨が本格化する前の6月23日、大島の「ヤツボ」調査に行ってきました。ヤツボとは、主に大島から田名地区にかけてみられる湧水の施設です。相模川沿いの崖から自然に湧き出る地下水を、岩盤を削り込んだり石垣で囲うなどして水を溜める施設で、地元では「ヤツボ」と呼ばれています。古くは江戸時代からあり、地域の人々の生活の水場として大いに利用された土木的遺構です。大島では中ノ郷、水場、古清水の3地域のヤツボが市の登録史跡として登録され、地域の人々によって大切に守られ、見学することもできます。

大島中ノ郷のヤツボ(市登録史跡)

大島水場のヤツボ(市登録史跡)

大島古清水上組のヤツボ(市登録史跡)

現在、博物館では市文化財保護課と共同でヤツボの調査を進めており、この日はヤツボが、段丘面からどのくらい下がった崖に造られているのかを測る測量調査を行いました。太陽に照らされると非常に熱い日でしたが、ヤツボ測量中は清らかな水の流れでヒンヤリとして、心地よい癒しの空間でもありました。

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砂展展示解説6/25

企画展「砂展〜日本の砂・海外の砂〜」の展示解説を6月25日に行いました。

はじめに、相模川水系の川原の砂の元となる岩石について説明しました。

サハラ砂漠や南極の砂など、海外の砂に皆さんの関心が集まります。

海外の砂を説明しているところです。

神奈川県内の砂も、並べてみると場所ごとに違っているのがよくわかります。

神奈川県内の海岸の砂の違いについて説明しています。

砂の中の有孔虫がどれくらい小さいかを実物で、また、小さいけれど種類によって形が違うことを顕微鏡写真で説明しました。

今回も多くの方に聞いていただきました。ありがとうございました。

これで、砂展の関連事業は全て終了しました。

砂展も最終日の7月2日まで残りわずかです(6/27、28は休館日です)。少しでも多くの方にご覧いただければ幸いです。

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不思議でかわいいカイコ!

今日(6月24日)は毎月恒例の生きものミニサロンでした。お題はこちら!

5齢になったばかりのカイコ

「不思議でかわいいカイコ!」

素敵な看板でお出迎えしました

サポートスタッフさんによる素敵な看板のおかげで、たくさんの方にお集まりいただきました。

ぐいぐいと前のめりになってきいてくれました

まず、博物館で飼育中のカイコをじっくり観察して、カイコの絵を完成させてもらいました。

すごい集中力で観察!

最初は容器ごしに見ていたお子さんも、だんだん慣れてきて手乗りカイコで観察!

手乗りカイコ!

カイコの目や脚のおはなし、繭や成虫、そしてカイコに近縁な野生の蛾であるクワコのことなど、いろいろなお話をきいてもらいました。手に乗せたときのひんやりした感触や、一心不乱に食べ続ける姿にみなさんとても関心を持たれていました。来月は7月22日(土)の12時から実施します!

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明日のミニサロンはカイコです!

明日(6月24日)は毎月恒例の生きものミニサロンを実施します。
博物館で現在飼育展示しているカイコについてじっくり観察する予定です。

5齢になった飼育中のカイコ

カイコの体のつくりや成長のようすなど、手にとってじっくりと見ていただこうと思います。
そして、こんな繭もお見せします。

カイコの繭にはもともと黄色いものがあります

左は実用品種の「かいりょう・あけぼの」の繭ですが、右は黄色い繭をつくる系統の交雑品種です。
ほかにも形の違う繭などご紹介します。お申し込み不要ですので、正午に博物館1階エントランス付近にお集まりください!

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花5題

最近の市域での植物分布調査中に、発見!というほどではないけれど、思わず写真を撮ってしまった花についてご紹介します。まずはこちら、カワラナデシコです。通常は梅雨の終わり頃に見ごろとなる花ですが、一足早く満開となっていました。

カワラナデシコ

これが相模川の河原なら普通のことなのですが、河原でもなんでもない、中央区の市街地内の、ある場所で撮影しました。カワラナデシコは、いわゆるナデシコです。つまり、なでしこジャパンのナデシコということになります。見事なピンク色ですね。
さらにもう1種、カワラとつく植物で、こちらはヒロハノカワラサイコです。

ヒロハノカワラサイコ

おそらくこの場所が、かつて相模川の河原から客土して造成されたのではないかと考えられ、その証拠の植物がこうして見られるようです。
一方でこちらは外来植物ですが、同じ場所で見られたハルシャギクの大群落です。

ハルシャギク

特定外来生物のオオキンケイギクに近縁の植物ですが、市内ではこんな大群落はほかにありません(といっても、この写真を撮影している時はすでに草刈り中でした)。
そしてこちらは中央区の別の場所のセイヨウフウチョウソウです。

セイヨウフウチョウソウ

園芸用として人気の植物ですが、こうして建物が撤去された後の更地に突如群生することがあります。
最後に、博物館お隣の純林地で今見られる、地上の星です。

アカメガシワの雄花

アカメガシワという樹木の雄花です。満開の後、地面に花を落としています。花びらが無く、黄色いおしべが星の瞬きのように見えますね。

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