カタハリウズグモの出のう

昨日紹介したカタハリウズグモ、ちらほらと卵のう(卵が入った袋)を見かけてはいたのですが、今日、子グモがわらわらと出てきているのに出くわしました。


茶色っぽいちょっとトゲトゲしたのが卵のう、白いのが子グモ。体長は1mmあるかないかです。
通常、クモは卵のう内で一度脱皮してから出てきますので、これでもたぶん2齢幼体という事になります。
既に親グモはおらず、網が壊れたのか、卵のうはクサグモの網にぶら下がっていました。子グモがあまりに小さいせいか、クサグモの捕食対象にはなっていないようです。
それでもほとんどの個体は大人になる前に死んでしまうに違いないと考えると、自然の不思議を感じます。
ところで、「出のう」というのは卵のうから出る事を指す言葉で、漢字では「出嚢」と書きます。パソコンで「しゅつのう」と打ったら「出納」という字が出てきました。やっぱり一般的な言葉ではないようですね。

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いつも渦巻きというわけでもありません


水平に張った円網に、渦巻き模様の白い飾り。
写真は博物館周辺でもよく見られるカタハリウズグモです。


クモは渦巻の下にぶら下がっています。

この渦巻き模様のように、網につけられた白い帯状のものを「かくれ帯」とか「白帯(はくたい)」と呼びます。
しかし、その機能については様々な説があり、はっきりわかっていません。
ウズグモに関しては「網の張り(テンション)を調節するため」という事が確認されています。
また「空腹時には渦状の白帯を、そうではない時には帯状の白帯をつける(あるいは何もつけない)」という事が経験上、知られています。

というわけで、このクモはあまりお腹が空いていないようです。


これはどっちなんだ(笑)!


白帯は普通ですが、めずらしいほぼ垂直の円網です。

クモの種類によって、おおむね垂直に近い網を張るか、水平に近い網を張るか決まっていますが、かなり柔軟性はあります。
とはいえ、ウズグモの仲間でこれだけはっきり垂直に見えるのは珍しい例です。
渦巻き模様も乱れていませんし、はて、どんな風に網の張りを調節しているのでしょう。
たった1種類のクモでも、生き物を見ていると次々に疑問が沸き起こってきて、飽きません。

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養蚕日誌(6/29)クワとヒメコウゾ

博物館で飼育しているカイコは、5齢になっています。担当者が数日留守にしたので、その間ちょっと展示をお休みして、カイコも低温の場所で静かに眠っていてもらいました。昨日(6月28日)から給桑、展示を再開しました。

5齢になったカイコ

さて、5齢になると、食べるクワの量が格段に多くなります。博物館で飼育している約200頭のカイコのエサをまかなうには、一日数回、枝ごといくつも採ってこないととても追いつきません。
調査や出張授業などで外へ出た時は、頭の中の「クワマップ」を頼りに寄り道をして、道端に伸びているクワを採ってきます。昨日もそんなクワポイントに寄ると・・

左右で別の種類の木が写っています

見事に瑞々しい葉がたくさんついていたのですが・・よく見ると左右で色合いが微妙に異なります。じつはこれ、右側の明るい黄緑がクワなのですが、左のやや暗い色はクワではありません。ヒメコウゾという、クワ科の近縁種なのです。下の写真は、上側がヒメコウゾで、下側がクワです。そっくりな葉です。

ヒメコウゾの葉

クワの葉

どちらも葉の形は多型で、一慨に特徴を分けられません。あえて言えば枝の色が、ヒメコウゾは赤紫っぽいのに対して・・

茎が赤紫のヒメコウゾ

クワは緑(1年枝)か、ベージュ色(2年以降の枝)です。

茎が緑色のクワの一年目の枝

果実はまったく見ためが異なるのですが、今の季節はすっかり落ちてなくなっています。

ヒメコウゾの果実

クワの果実

カイコにヒメコウゾの葉をあげると、少し食べます。はじめからヒメコウゾをあげていると、ある程度食べて育つのですが、クワで育てるのに比べると、とても成長が悪くなります。
結局、葉の質感や微妙な色合いの違いで私たちは見分けているのですが、「カイコのために」と思ってクワを探していると、なぜか識別はまったく難しくないのが不思議ですね。

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小さなマネキグモ

写真は、マネキグモの幼体です。

体の大きさは、足先まで含めて2mmくらい。
まるで踊っているように見えますが、実は両方の第1脚で1本ずつ糸をつかみ、第4脚2本で1本の糸を保持しています。この「Y字」スタイルは、大人になってからと同じ、獲物を待ち受けるポーズです。
小さいので、なんとなく可愛らく見えてしまいます。

そして、こちらは第1脚、第4脚とも1本の糸を持っている、まっすぐにのびたポーズ。
この姿勢でも、獲物を待ち受けます。

もはや、糸にひっかかったゴミにしか見えません。いつもながらほれぼれしてしまう擬態です。
5月にこの場所で成体を見かけたので、その子どもでしょう。
このまま無事に成長して、たくさんの成体を観察できるようになるのが楽しみです。

 

 


2018年5月25日に見かけたマネキグモ(メス成体)どこにいるかわかりますか?

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地質学講座第4回 岩殿山の岩石の観察

6月24日に地質学講座第4回目を実施しました。今年度の地質学講座の最終回です。
岩殿山で岩石を観察しました。

前日からの雨も上がり、暑いくらいの天気でした。

岩殿山に向けて出発!

まずは登山道の入り口で岩殿山の南麓に分布している岩石を観察しました。ここでは海底火山の噴出物が固まった岩石が観察できます。岩殿山をつくっている岩石よりも風化されやすい岩石です。

岩殿山の岩壁へ向かう前に小休止。ここから傾斜が急になります。

岩壁の近くで岩殿山をつくっている礫岩(れきがん)を観察しました。石老山の礫岩とよく似ています。

地質学講座としては、ここで終了。
岩殿山には戦国時代の山城、岩殿城がありました。ここからはオプションとして、当館の歴史担当学芸員による解説で城跡としての岩殿山を見学しました。

岩殿山をつくっている礫岩は侵食に強く、一方で岩殿山の北と南に分布する火山噴出物は侵食されやすい岩石です。長い年月の間に周囲の岩石が削られた結果、硬い礫岩の部分が削り残され、岩殿山ができました。その急峻な地形を利用してつくられたのが岩殿城です。
地質学と歴史学のコラボレーションで、ブラタ○リ風の観察会となりました。テーマは「なぜ岩殿山は堅牢な山城となったか?」といったところでしょうか。

梅雨の時期なので、天気が心配でしたが、充実した観察会を行うことができました。

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机の周りに来るクモ

机で仕事をしていると、視界の隅にピョンピョンと飛び跳ねているクモ見かけることがよくあります。
ハエトリグモの仲間です。

 
アダンソンハエトリ(オス)
名前からしてかっこいいですが、黒地に白い模様が目を引きます。

 
ミスジハエトリ(オス)
こちらもくっきりした縦筋と独特の斑紋に、目の上の赤い帯が特徴です。

実はこれら2種は、屋内に住んでいる種です。小さなカやハエなどを捕えて食べて暮らしています。いずれもメスはもっと地味な姿ですが、生活の仕方は同じです。
関東地方では、あともう一種「チャスジハエトリ」を覚えておくと、屋内性ハエトリグモの名前をほぼ言い当てることができます。
しかし、時々迷い込んでくるやつもいます。

 
アオオビハエトリ(メス)
基本的に屋外にいるクモなのですが、博物館の事務室では比較的頻繁に見かけます。
オスはきれいな青と赤の帯があるのですが、この個体はメスで、ちょっと渋めの色合いです。
アリを食べる習性があるので、外壁を歩きまわっているうちに、迷い込んでしまうのかもしれませんね。

どの種もみなさんの身近に出没しているかもしれません。
今度出会ったら、名前当てに挑戦してみてはいかがでしょうか。

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生きものミニサロン「カイコのふしぎ」実施しました!

6月23日、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。
今回のテーマは「カイコのふしぎ」。飼育中のカイコを使って、成長のようすや繭のこと、祖先が同じと言われるクワコや天蚕と言われるヤママユガのことなど、いろいろなお話をしました。

本物のカイコはやはり大人気

実際にカイコに触れていただこうと、手乗りカイコ体験も!

ちょっと緊張しながら手に乗せました!

一足先に飼育して、成虫のカイコガもどうにか間に合って見ていただくことができました。

カイコガは大人もあまり見たことのない方が多かったようです

手乗りカイコガも大人気!モフモフのぬいぐるみのような外見と、足でしっかりと指につかまってくるようすがたまらなくかわいい!

スター並みのカメラ攻勢にあってます!

雨の景色をガラス越しに見ながら、梅雨のひとときを楽しくカイコの話題で盛り上がりました。
次回は7月21日(土)12時からです。7月はJAXA特別公開(7月27日、28日)の関係で第3週の開催となります。お間違えのないようお願いいたします。

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養蚕日誌(6/22)明日の生きものミニサロンに登場!

博物館で育てているカイコは、4齢の4日目となりました。いよいよ、今晩あたりには眠に入り、週明けまでには終齢(5齢)になりそうです。

4齢のカイコ

そんな中、明日(6月23日)は毎月恒例の「生きものミニサロン」の日です。梅雨時ということもあり、6月は毎年室内でカイコのお話しをします。明日もカイコや繭のお話を、飼育中のカイコを前に行う予定です。
ご希望の方には、「手乗りカイコ体験」も!

手乗りカイコ

眠に入ったカイコをいじり回すと可哀想なので、明日、まだモリモリ食べているカイコを選抜してみなさんに見ていただこうと思います。1階エントランスで12時から実施します。どなたでもご参加いただけますので、お気軽にご来館ください。

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雨に濡れる谷戸

6月20日、緑区のとある谷戸へ行きました。
入梅以降、最大の降水量と言われる大雨の中でしたが、その合間を縫って踏査したのは、ここがいくつかの絶滅危惧種の生育地だからです。

谷戸の全景

ここは巨大な開発計画があり、埋め立てられる予定のその谷戸は、この1,2年、草刈りがされていないようすです。放棄水田だったところが、植生遷移が進んでヨシ原に変わっていました。降る雨よりも植物についたしずくでびしょ濡れになりながらヨシの中をかき分けると・・

ミズニラ

ミズニラ(神奈川県では絶滅危惧2類)の元気な株がありました。
ほかにも、オニスゲやシカクイなど、低湿地らしい植物がたくさん見られました。

オニスゲ

ただ、植生遷移が急速に進んでいることは間違いありません。これから秋にかけて成長してくる絶滅危惧種がほかにもあります。その中には県内ではほぼ、この場所にしか見られないというような種もあるので、これから動向をしっかりと確認していこうと思います。
谷戸の野みちでは雨に濡れたホタルブクロやネジバナがきれいに咲いていました。

ホタルブクロ

ネジバナ

クサボケの果実はもう少しで熟し、芳香を漂わせてくれそうです。

クサボケの果実

消えゆく谷戸とは言いたくないのですが、とにかく今残せる標本やデータはしっかりと採集、記録していきたいと思います。
それにしても、谷戸から出て駐車場へ戻ると、ヤマビルがあちこちに張り付いていました(髪の毛にも・・)。血は吸われずに済みましたが、梅雨時はいつでも元気なヤマビルには気をつけないといけませんね。

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亜麻色のサギ

相模原川の近くの水田地帯に、アマサギが群れで飛来しているとの情報があり、行ってみました。
田植えから数週間経った緑濃い水田に立つに、梅雨がもっとも似合う鳥・・という称号を与えたくなります。

アマサギ

アマサギは、亜麻色(あまいろ)の羽を持つサギという意味です。しかし、亜麻色の微妙な色合いよりも、オレンジに近い色に見えますが・・やはり種名はアマサギがきれいですね。西日本や南西諸島ではごく普通に見られる水田の鳥で、特に八重山諸島などでは水牛の背中にとまっている姿が定番の風景として知られています。しかし、神奈川県内では近年、めっきり少なくなりました。

飛ぶと白さが目立ちます

広い水田地帯が減少していることや、もともと夏鳥で、ほかのサギ類と共に集団繁殖していたのですが、フン害や鳴き声が嫌われて、住宅地周辺から繁殖地がことごとく追い払われてしまいました。

奥の白い頭の個体もアマサギです

アマサギは、姿はシラサギのなかまとよく似ているのですが、分類上は独立したアマサギ属とされ、1属1種の鳥です。
田んぼに溶け込んだアマサギの姿は、美しい梅雨の風景です。

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