バックヤードツアーを開催しました!

8月2日、博物館の「ウラ側」をお見せする、バックヤードツアーを開催しました。
バックヤードとは、普段は職員しか入ることのできないエリアのことで、資料が保管してある収蔵庫も含まれます。
今回は30分のコースで、1階と3階の収蔵庫エリアを中心にご見学いただきました。

まずは、大型の資料を収蔵している大型資料収蔵庫です。

大型資料収蔵庫の内部

実際に収蔵庫の中に入り、収蔵資料を見学してもらいました。
冷蔵庫だ!こっちは棚かな?と、様々な声が上がります。

生活資料収蔵庫では、中を覗いてもらいながら、満杯になりつつある収蔵庫の現状をご覧いただきました。

民俗学関連の資料を多く収蔵している生活資料収蔵庫

今回のツアーでは、そのほかに動植物資料収蔵庫と考古資料収蔵庫、特別収蔵庫・古文書収蔵庫・美術品収蔵庫の前室もご紹介しました。

そして、最後にご案内したのは写真室です。
資料を撮影する専用スペースがあることに驚かれた参加者の方もいらっしゃいました。

写真室にて

今回は午前、午後の2回ともに整理券がすぐになくなってしまう状況で、ご参加いただけなかった方には大変申し訳ありませんでした。
担当学芸員も、バックヤードへの注目度の高さを改めて感じる機会となりました。
バックヤードツアーは今後も企画、実施する予定です。
実施の際には改めて告知を行いますので、ご注目ください。
(動物担当学芸員)

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夏の白い花

季節によって咲く花の色の傾向があるわけではありません。でも、なんとなく、夏の花は白が目立つように感じられます。その一つがクサギです。

クサギの花

この花は香りも強めで、満開のときには甘い匂いが付近に漂います。秋に実る果実もまた独特で、萼(がく)が赤く星形に開き、その中央に黒紫色の果実がつきます。

クサギの果実(秋に撮影)

見事なコントラストで、野鳥たちに果実が熟したことを知らせます。このような色の組み合わせを二色効果と呼びます。
近くでは、こんなつぼみもありました。カラスウリです。

カラスウリのつぼみ

しかしこの花は、昼間は咲きません。夜になると、レースを広げたような見事な花が咲きます。

カラスウリの花

なぜ夜に咲くのかというと、この花は蛾を呼び寄せて花粉を運ばせるからです。スズメガの仲間などがこの花が放つ芳香につられてやってきて、蜜を吸いつつ花粉を体へつけます。闇夜にそんな営みが行われるのであれば、香りだけで花弁は不要なのでは・・と思ってしまいますが、香りだけではさすがに目立たせることが難しいのでしょう。スズメガからこの花がどんなふうに見えているのか、気になりますね。
(生物担当学芸員)

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マダニに注意!

先日、博物館の動物標本作成ボランティアの方からマダニの生体をもらいました。
マダニの仲間は人の血を吸うことで知られていますが、それだけではなく、病気を媒介することもある危険な生き物です。
ごく最近では、マダニが媒介し、重症化リスクの高い感染症である「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が神奈川県でも報告されており、注意が必要な状況です。
せっかく生体をいただいたので、今後の普及啓発の資料とするため、自然の中で写真を撮ってみました。

「バンザイ」をするマダニ

意外と俊敏で、スタスタと歩いていきます。
ところが、息を吹きかけるとぴたりと止まり、第一脚をバンザイの姿勢に持ち上げます。
獲物が近くにいると察知したのでしょう。なんとも恐ろしいです…。

大型の種類です

今回のマダニはタカサゴキララマダニという、マダニ類の中でもかなり大型の種類です。
この個体は体長8mmほどもありました。

メスの成虫です

このマダニはなんと、ご自宅のベランダにいたそうです。
どうやってベランダにたどり着いたのかは不明です…。

執筆している私も近年マダニと遭遇することが増えていると感じます。
野外での活動の際には、マダニ対策を十分にする必要があります。
また、マダニは野生動物だけでなく犬や猫などにも寄生し感染症を媒介させます。
そのため、例えば野良猫との接触なども大きなリスクとなるので、注意をしたほうがよいでしょう。
(動物担当学芸員)

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【企画展コーナー解説①】相模原市立博物館のこれまで

7月12日(土)から、当館特別展示室にて市立博物館開館30周年記念企画展「相模原市立博物館 30年の歩みを未来へ」を開催しています。

会期初日今月21日(月・祝)には、本企画展の担当者でもある動物担当学芸員による展示解説会を実施しました。大変好評いただきましたが、限られた回数・時間内での解説となったため、このブログでも何回かに分けて企画展の見どころ解説を行います。
展示解説に参加できなかった方も、今一度じっくりご覧になりたい方も、ぜひ楽しんでいただけると幸いです。

この大きな看板と横断幕が会場の目印です。

初回となる今回は、「博物館のこれまでを紹介!」と題した、会場に入って一番初めに皆さまをお出迎えするコーナーを解説します。

オレンジ色のコーナーカラー!

ここではコーナータイトルのとおり、当館のこれまでの歩みについて紹介しています。まずは、当館の歴史から…。

当館は平成7(1995)年11月20日に開館しましたが、準備にあたってはその15年前から動き出します。この頃の市域では博物館建設の機運が高まり、現在の当館があるこの地に建設の検討が盛り込まれたのが、昭和55(1980)年4月のことでした。翌年には当時の市社会教育課に「博物館準備係」が設けられ、本格的に博物館設置が進められることとなります。

当館ができる前の建設予定地上空写真。中央向かって左側の白い建物がJAXA相模原キャンパス、そのはす向かいの建物が国立映画アーカイブ相模原分館です。

準備段階において特に難航したのが、建設用地の確保でした。当館ができる前、現在の市立博物館周辺は「キャンプ淵野辺」という米軍施設でしたが、昭和49(1974)年11月に全面返還された後、博物館用地としての跡地処分が決定するまでには実に6年の歳月を要しました。当時の担当者たちの苦心の末、「博物館をつくる懇話会」が提唱した「自然環境に恵まれた」用地を確保することができ、憩いと学びの“森の中の博物館”が実現したのです。

建設中の様子

用地処分が認められた平成2(1990)年から約2年半後、平成5(1993)年6月に博物館の工事が始まり、さらに2年後の平成7(1995)年7月に竣工しました。やや次のコーナーのネタバレになってしまいますが、地質分野の資料紹介では、博物館建設時にボーリング調査(=地盤の強度や地質を調べるために地面に穴を掘って行う調査)した際のボーリングコアを展示しています。ぜひ、ここで紹介したことを思い浮かべながらご覧いただきたいと思います。

博物館建設時のボーリングコア(地質資料)

完成当初の当館

そして、同年11月20日の開館を迎えてから、本当にたくさんの方々にお越しいただきました。入館者数は、開館から半年で10万人を突破し、10年以内に100万人を超えました(平成16(2004)年1月に達成)。

入館者数の推移

これは、30年間の入館者数の推移を表したグラフです。青い棒グラフは各年度の入館者数(目盛りはグラフ左側)、オレンジ色の折れ線グラフが累計数(目盛りはグラフ右側)を示しています。
突出して多いのが平成22年度ですが、これは小惑星探査機「はやぶさ」の帰還カプセルを当館で世界初公開した年です。年間で182,880人にご来館いただき、以降はJAXA連携企画展の開催も恒例となりました。

「はやぶさ」帰還カプセル世界初公開時の様子(平成22(2010)年7月30日)

平均すると1年間で約12万人にご来館いただいている当館ですが、令和2・3年度は新型コロナウイルス感染症拡大による影響を大きく受けました。この頃は全国どこの館園も苦しい時期だったと思いますが、当館も例外ではなく、令和2(2020)年4月1日~6月8日と令和3(2021)年1月13日~3月21日に感染症拡大防止のため休館、さらに同年8月6日~9月30日にも緊急事態宣言下での臨時休館を余儀なくされました。入館者数が最も少ない年で、平時の約4割まで激減していることがグラフから読み取れます。
令和5(2023)年5月からは新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、徐々に日常を取り戻しつつある令和6(2024)年11月に入館者数360万人を達成しました。

こうした困難を乗り越え、開館30周年を迎えられることに感謝の気持ちでいっぱいになります。

開館30周年記念ののぼりがはためきます。

会場では、より詳細な年表を大きく貼り出して展示していますので、ぜひご覧ください!

また、今週末の8月2日(土)は、本企画展最後の関連事業「博物館バックヤードツアー」を実施します。各回20名の先着制ですので、ご興味のある方はお時間に余裕をもってお越しください。詳細は以下のとおりで、当館ホームページからもご確認いただけます。

《博物館バックヤードツアー

日時:8月2日(土) ①午前11時30分~正午(受付:午前11時~)②午後2時30分~午後3時(受付:午後2時~)
定員:各回20名(先着順)。エントランスで各回開始30分前から整理券を配布します。

みなさまのご参加、心よりお待ちしています。

(歴史担当学芸員)

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【市民学芸員かわら版】ここにあったロケ地

7月27日(日)、当館のボランティア「市民学芸員」情報発信チームによる『市民学芸員かわら版』の最新第18号が発行されました。題して、「ここにあったロケ地」です。

『市民学芸員かわら版』とは、テーマ選定から情報収集、記事のレイアウトまで全て市民学芸員が行い、自然・歴史・文化に関する様々なトピックスについて、市民目線を取り入れながらわかりやすく紹介している不定期刊行の壁新聞です。

『市民学芸員かわら版』第18号「ここにあったロケ地」

近年はシティプロモーション活動の一環として、自治体や地元観光協会などが連携をして映像作品の撮影支援や誘致をする動きが広まっています。今回の『市民学芸員かわら版』では、“都市と自然のベストミックス”が強みの本市が舞台となった映像作品について、市民学芸員による写真とイラストを添えて紹介しています。

味わい深いイラストは、すべて市民学芸員の手描きです!

本市の魅力とともに、様々な作品がロケ地マップ付きで紹介されていますので、お好きな作品の聖地巡礼をしてみるのも楽しいと思います!
ご来館の際は、当館1階情報サービスコーナー入口横が定位置の『市民学芸員かわら版』をチェックしてみてください。

(歴史担当学芸員)

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ウシカメムシ

先日の生きものミニサロンでのセミの抜けがらさがしの際、参加者の方が面白い形のカメムシを見つけました。

ウシカメムシというカメムシです。

ウシカメムシ

胸部の棘が牛のツノに見えることから、この名がついたようです。
背中の「小楯板(しょうじゅんばん)」という部分にある黄色の模様も、見方によってはなんだか目のように見えます。

前面から

前面からも撮ってみました。
じつは、ウシカメムシは大きさの割に体に厚みがあり、左右にツノもあるため体全体にピントが合いにくい、撮影者泣かせのカメムシです。
今回もうまく撮れずにいろいろと試しているうちに、ちょこちょこと歩いて飛んで行ってしまいました。
(動物担当学芸員)

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生きものミニサロン「セミの抜けがらを探して種類をしらべよう!」を開催しました

毎月第3土曜日に実施している生きものミニサロンですが、今月は3週目がプラネタリウムのリニューアルから最初の週末にあたってしまうため、第4週の7月26日に実施しました。
テーマは、セミの抜けがら探しです。ただ探すだけではなくて、種類も調べてみます。猛暑の中でしたが、少し暑さのしのげるお隣の樹林地で実施しました。

まだまだ少ないのですが、抜けがらが見つかりました

今回も20名近い参加者が集まってくれました

今年はセミの羽化が少し遅れ気味で、博物館周辺でもニイニイゼミとミンミンゼミ、アブラゼミ、ヒグラシは鳴いているものの、数はあまり多くありません。それでも樹林へ入ったとたんに抜けがらを見つけてくれた参加者もいました。

子どもの視線は低いので、抜けがらを見つけやすいのかもしれません

虫めがねで触角を観察

茶色くて大き目の抜けがらを見分けるには、触角を見ます。下から3番目の節が長ければアブラゼミ、少し短めならミンミンゼミです。

アブラゼミの抜けがらの触角 付け根から3番目の節が少し長め

見つけた抜けがらのほとんどがアブラゼミでしたが、1つだけ、ミンミンゼミがありました。

ミンミンゼミの抜けがらの触角 付け根から3番目の節が短め

ニイニイゼミは見つけることができなかったのですが、サポートスタッフの小田さんが、ニイニイゼミと、静岡県からとってきてくれたクマゼミの抜けがらをみなさんへ見せてくれました。

クマゼミの抜けがらを観察

クマゼミの大きさにみなさん驚いていました。
暑い中でしたが、樹林地の中は風も通っていて、30分程度なら楽しく自然観察ができました。

一人で何個も採集してくれた“名人”

抜けがらがちょっと怖くてお母さんの手の上で観察

8月も、博物館実習の大学生が企画、進行する関係で、第4週(8月23日)の実施となります。お楽しみに!
(生物担当学芸員)

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セミの羽化観察会

本格的な夏を迎え、セミの季節がやってきました。
昨日は大野南公民館でセミの羽化の観察会が開催され、当館から学芸員2名が講師として参加しました。
公民館でセミについてのお話をしたあと、薄暗くなってきたころを見計らって近くの公園に向かいます。

いざ、観察に出発!

まず見つかったのはニイニイゼミの成虫です。
ニイニイゼミは、アブラゼミやミンミンゼミなどと比べると小型のセミです。
小さい!と声が上がります。

ニイニイゼミの観察

ぬけがら探しをしていると、「いた!」と声が。
羽化する前の幼虫が歩いているのが見つかりました!

地面から出てきたセミの幼虫

セミの幼虫は土の中にいて、羽化のために地上に出ると、木の幹などの羽化できる場所を探して歩き回ります。

7時半ごろになると、あちこちで羽化が始まりました。

アブラゼミの羽化

参加者の方がミンミンゼミの羽化も見つけてくれました。

ミンミンゼミの羽化

1頭の羽化を30分くらいにわたり観察していた方々もいました。
子どもも大人も、固唾をのんで見守ります。
おしりが抜けきると、「お~っ!」という歓声が響きました。

みんなでじっと観察…

暑い真夏の夜でしたが、じっくりと観察ができ良かったです。
(動物担当学芸員)

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【9/28まで】市史ミニ展示「戦時下の子どもたちの生活」開催中!!

現在、当館の自然歴史展示室内で、市史ミニ展示「戦時下の子どもたちの生活」を開催しています。

展示の様子

今回の展示では当館資料の中から当時の子どもたちの生活がわかる資料を選定しました。子どもたちが読んでいた少年倶楽部や、紙製の「のらくろ」のお面を展示しており、戦時中の子どもたちの娯楽が垣間見えます。

のらくろのお面と少年倶楽部

左から右の順に新しくなります。

少年倶楽部をみると終戦に近づくにつれ、徐々にページ数が削減され薄くなっています。

その他、当時の小学校への空襲に関して、現 緑区三井地区にあった三沢村国民学校の日誌を展示し、その詳細を解説しています。

この機会にぜひご覧ください。
(展示担当学芸員)

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サトセナガアナバチのゴキブリ狩り

住宅街の街路樹の幹を、美しい青緑色のハチが歩いているのを見つけました。
すぐに見失ってしまったのですが、あのシルエットはもしや…ということで、あわてて自宅からカメラを持ってきてもう一度探すと……

いました!しかも、ちょうど獲物を狩っています。

クロゴキブリの幼虫を狩ったサトセナガアナバチ

このハチはサトセナガアナバチという種です。
ゴキブリを狩って幼虫の餌とすることで、虫が好きな人々の間では有名なハチです。

観察していると、ゴキブリの頭部と胸部の間に針をつきたて、麻酔となる毒を注入しました。
とはいえ、すでにゴキブリはかなりおとなしい状態だったので、観察開始時点ですでに一度麻酔をされていたのかもしれません。

腹部を曲げて針をブスリ!

その後、ハチは麻酔がきいたゴキブリの触角を引っ張りながら後ずさり、どこかに運んでいきます。
巣穴となる場所を探しているようです。
ゴキブリはおとなしく、ハチの言いなりになって引っ張られていきます。
麻酔が完全に効いて動けないわけではなく、じっとしているものの足で歩くことはできる、という絶妙な状態です。
ハチの麻酔のコントロール、お見事です。

ゴキブリを引っ張っています

ゴキブリの触角をよく見ると、最初と2枚目の写真では長い状態ですが、3枚目の写真では短く切られています。
2枚目と3枚目の写真の撮影の間、カメラにストロボをつけるために目を離したのですが、その間にハチが切り落としたようです。

獲物の周りを歩きます

それにしても美しいハチです。
思いがけず興味深い場面に出会うことができた昼下がりでした。
(動物担当学芸員)

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