石器づくりを実演しました!

4月30日(水)は休館日です。

4月29日(火・祝)に当館エントランスで石器づくりの実演を行いました。

家族で見学してくれました。

考古担当学芸員は、黒曜石を割って石器を作っており、
過去の人々が石器をどのように作っていたのか、体験を通じて勉強しています。
そっくりな石器を作ることはとても難しく、旧石器・縄文時代の人の技術は計り知れないものがあります。

さて、4月末からのゴールデンウィークで来館者が増加することが見込めますので、
土器×2タッチ以外にも考古分野の普及を行うことにしました。

テーマは「石器づくり」。
石器づくりの実演から伝えたいことは以下の2点です。
・角度を意識すると石以外にも、鹿角・硬木でも割れること。
・黒曜石の割れ口はとても鋭く、昔の人の刃物として使われたこと。

まずは場所。どこでやるか。イメージはなんとなく立ち止まって見てもらう感じです。
エントランスの正面に空いたスペースがあり、石器づくりのスペースとして十分です。

2畳程度あれば十分です。

次は安全管理。割る際に欠片が飛び散る場合があります。
その対策としてコロナの感染症対策として使用したアクリルボードを設置しました。

また、割れた黒曜石はとても鋭く、石器づくりの時に誤って手を切ってしまうことは日常的にあります。
口頭で説明するよりは、実際にモノを切るのが良いと考えました。切るのに、ハサミやカッターナイフを使うものとして、「ペットボトル」を思いつきました。
日常的に持ち歩き、切る場合にはカッターナイフが必要です。

黒曜石でペットボトルを切りました。

黒曜石がさわれないのは良くないので、考古担当学芸員が作った矢じり、石槍を近くに置いてさわってもらいました。作った石器だと、割れた欠片よりも安全です。

作った石器と鹿角を置いて、さわってもらいました。

当館に入ってすぐ、しかも黒曜石を割る音がするので、来館者の方はとても興味深そうに見てくれており、合計176名の方が見学してくれました。
鰻(うなぎ)屋さんは蒲焼を焼く匂いでお客さんを呼び込むそうですが、石器づくりの実演は音で呼び込みます。
常設展示にも黒曜石の石器はありますが、どこが特徴なのか直感的には分かりにくいです。
今回の実演では、黒曜石の割れ方やその切れ味を伝えることができます。まさに「百聞は一見に如かず」ですね。


以前紹介した「土器×2タッチ」と合わせて今後も取り組んでいきたいと思います。
(考古担当学芸員)

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クロオオアリの雄アリ

博物館の中庭にはクロオオアリの巣があります。
その巣の回りに羽アリがいると教えてもらいました。

クロオオアリの巣

クロオオアリは、ちょうどこの時期に「結婚飛行」と呼ばれる繁殖行動をします。
新たな女王となるアリと雄のアリが、出会いを求めて生まれた巣を飛び立つイベントです。

雄アリたち

雄アリが巣の入り口に並んでいます。
周囲の働きアリたちも、普段とは違うせわしない動きをしています。
観察時に出てきたのは雄アリのみで、新女王アリは見当たりませんでした。

続々と出てくる雄アリ

「結婚飛行」のあとに新たな巣を作り始める新女王アリと異なり、雄アリはやがて死んでしまいます。
この巣を飛び立った雄アリたちは新女王と出会うことができるでしょうか。
雄アリたちの、一世一代の大勝負が始まります。
(動物担当学芸員)

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土器を「さわる」ということ

27日(日)に土器×2タッチを行い、95名の方に参加していただきました。
参加者に「レプリカですか?」とご質問いただき、自信をもって「本物です!」と答えています。

さて、土器をさわることはどのような効果があるのか、考えてみます。
そもそも、ヒトはなにかをさわるとどう感じるか?
触覚を言語化すると以下のように考えられます。
冷たい・熱い 硬い・柔らかい ツルツル・ザラザラ 軽い・重い
分かりやすいのが「握手」。掌がゴツゴツなのか、細身なのか。何気ない人柄を間接的に感じる場合も。

ザラザラした石皿(手前)もあります。

立体的な装飾がある土器も。

来館者の年齢層は高齢の方が多く、お子さんは家族で来館される場合が多いです。
お子さんに遺跡を「歴史」の視点から、座学で理解してもらうのはなかなか難しいです。
小学校高学年なら学校で習いますが、それでも限界を感じます。

それでは「体験」ではどうでしょうか?
小さいお子さんでも、硬い・柔らかい、ツルツル・ザラザラなどは理解できます。
歴史の認識は年齢を追うごとに深まりますが、体験は年齢に左右されずにみなさんが感じるものと捉えています。
そしてさわったから、気づくこと・わかることがあります。

5000年前の縄文土器の立体装飾 土器の口縁部についていました

土器・石器が歴史の断片であることは間違いなく、さわる体験から昔の生活の一部だけでも実感できればと考えています。
幼いころ何気なく博物館でさわった土器の思い出が、遺跡や地域史への関心を引き出す契機となるかもしれません。

ご来館し、ぜひタッチしてください!(今年度の開催予定日はこちら
(考古担当学芸員)

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ヤエムグラのトゲ

大型連休の2日目、抜けるような青空が広がりました。博物館周辺のミズキも開花して、森の中が急ににぎやかになりました。

ミズキの花

その足元へ視線を移すと、こんな植物がわさわさと生えています。

ヤエムグラ

見覚えのある方も多いはず。この草をちぎって友達の服へ投げると、ピタッとくっつきます。そんな遊び(いたずら?)をした記憶がよみがえります。この植物の名は、ヤエムグラ。衣服などにピタッとくっつくその秘密は、全草に生えているこのトゲです。

茎から下向きに生えているトゲ

このトゲは、ヤエムグラがお互いに、あるいは他の草へもたれかかって伸びていかれるように発達したものです。こうすれば、丈夫な茎を持たなくても上へ伸び上がれるというわけで、実際、ヤエムグラの茎はとても弱々しくすぐに折れたりちぎれたりします。
花は極小で、大きさは2ミリメートルほどしかありません。

ヤエムグラの花 下の球形のものは若い果実

果実のトゲトゲは“ひっつき虫”として他の動物の毛にくっついて運ばれるためのものです。同じ植物の中に、目的の異なるトゲが生えているのが興味深いですね。
さて、林内にはほかにも、目立たないけどかわいらしい植物が開花していました。ヒゴクサです。

ヒゴクサ

上にスッと伸びた部分が雄花の花穂(かすい)で、下の白いフワフワがついている部分が雌花の花穂です。目立つ花は無くても、なんとなくかわいらしくて写真を撮りたくなる植物です。
(生物担当学芸員)

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津久井湖城山公園で自然観察会

大型連休初日の4月26日、県立津久井湖城山公園で自然観察会「春の城山 森歩き」が行われ、当館生物担当学芸員が講師としてお手伝いしてきました。この観察会は、城山の多様な森の様子をのんびり歩きながら体感することを中心に企画されました。
ここ数日の中ではちょっと肌寒さを感じるくらいの気温で、つまり、山歩きには最高のコンディションです。同公園の「花の苑池」を出発し、「神奈川の美林50選」に選ばれた「江川ヒノキ」の樹林に入ります。クロツグミやキビタキ、オオルリといった夏鳥が美声を響かせていました。20名超の参加者全員で耳を澄まして堪能しました。

江川ヒノキの美林内で夏鳥のさえずりに耳を澄ませます

2週間前に下見をした際にはまだ咲いていなかった様々な春の花が咲いていました。こちらはイカリソウです。

イカリソウ

江川ヒノキの森を過ぎると、モミやカヤなどの針葉樹に、常緑広葉樹、落葉広葉樹などが入り混じり、森の様子が変化します。ナラ枯れによってコナラが伐採されたあとには、陽樹(日当たりの良い場所で早く成長する木)のカラスザンショウがたくさん伸びていました。カラスザンショウと言えば、葉痕(ようこん)のにっこりマークです。

昨年の葉が落ちた痕の葉痕(ようこん)が笑顔に見えるカラスザンショウ

参加者のみなさんも喜んで写真を撮っていました。こちらはハナイカダです。

ハナイカダ

葉の上にちょこんと乗った花がかわいらしく、人気でした。
途中、ミツバウツギやコバノガマズミなども咲きそろっていて、春が一気に進んでいるのを感じられました。ジュウニヒトエも満開です。

ジュウニヒトエ

城山は、美しい木々や草花が多い一方、危険な植物もあります。ツタウルシです。

幹にからみつくツタウルシ

特に瑞々しい新緑の季節は、毒成分も強くて危険です。参加者のみなさんにも、決して触れないよう注意を促しました。
山頂へは行かず、ふもとをぐるりと回るのんびりコースでしたが、しっかり山道を進み、たっぷり2時間半の行程を楽しく歩くことができました。
(生物担当学芸員)

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小雨の林道にて

4月23日、当初の予定では緑区の山へ登り、絶滅危惧植物の生育状況を調査する予定でした。しかし、この日だけ降水確率90パーセント予報になってしまったため、予定を変更して緑区内の、自動車で行かれる場所を回って絶滅危惧植物の現況調査を行いました。
小雨が降る中でしたが、むしろこうしたお天気では新緑の微妙な色の変化が際立ちます。

雨に濡れる新緑(緑区名倉)

そして、フジの存在感が突出する季節でもあります。

フジの花がいたるところで咲いていました

この色あいも、晴天よりも小雨くらいが際立ちます。

咲き始めのフジ

マルバウツギは・・雨に濡れて花がすべてうつむいていました。

マルバウツギ

そして、やっぱりこの天気でこちらも元気いっぱいでした。

ヤマビル

ヤマビルです。雨に濡れた山道を5分ほど歩いただけで、大小たくさんのヤマビルが足を伝って登ってきました。幸い、歩いた時間が短かったため、車道へ戻ってすぐにヤマビルチェックをしたおかげで吸血されずに済みました。
(生物担当学芸員)

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カザグルマ開花、エビネは花盛り

4月24日、市域自生株の系統保存のため、博物館で栽培しているカザグルマ(キンポウゲ科)が開花しました。先日、シロバナハンショウヅルの記事で紹介した、同じ場所です。

カザグルマ 駐車場のフェンスにからみついています

10個近いつぼみをつけていて、開花したのはまだ2輪なので、これから順次咲くでしょう。
エビネ(ラン科)も花盛りです。中庭(正面から入って右手の大きな方)の中央あたりで元気に咲いています。円形に株が咲きそろう様子は圧巻です。

円形に咲きそろったエビネ

特別展示室の出入り口の向かいからガラス越しによく見えるので、ぜひご覧ください。

まさしく“里山の女王”

そして、エビネの反対側の中庭(小さな方)には、着生ランのカヤランが咲いています。こちらは一昨年、市内緑区の林道で、強風で落ちてしまった株を相模原植物調査会の会員が見つけ、それを館内の樹木に水ゴケと共に縛り付けてあるものです。

カヤラン

花がとても小さいので、これは見つけにくいし、ガラス越しではちょっと見えないかもしれません。
どんどん花が咲き進んでいます。エビネは前庭にもちらほらとありますので、ぜひご覧ください。
(生物担当学芸員)

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土器×2タッチ、今年もやります!

博物館で遺跡に親しんでもらうために、当館では「土器×2タッチ」を一昨年から始めています。
以前、この記事でも紹介しました。
このイベントは市内出土の土器・石器に実際にさわってもらう企画です。

今年は博物館の考古のボランティアである「相模原縄文研究会」と一緒に、
さわれる土器の選定作業を行いました。



縄文土器と一言で表現しますが、すべてが唯一無二!
面白い土器をさわってもらいたいので、一生懸命選びました。


今年度は以下の日程で行います。時間は13:30~15:30まで、エントランスで行います。
4月27日(日)、5月25日(日)、6月22日(日)、8月23日(土)、9月14日(日)、
10月26日(日)、11月23日(日)、12月21日(日)、1月24日(土)、2月21日(土)
3月21日(土)

ぜひこの機会にタッチしてください!
ご来館をお待ちしております。
(考古担当学芸員)

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今年もエナガ団子

4月下旬に入ると、エナガの巣立ち期になります。巣立ち後10日間くらいは、ヒナたちはまだ十分に体力も無いため、時々枝上に並んで休息します。その時、エナガはくっつき合って休息する習性があり、ぎゅうぎゅうにとまるその状態を“エナガ団子”などと呼び、バードウォッチャーの「見たいシーン」の一つになっています。今年も市内緑区の相模川で、エナガ団子を観察することができました。
まず、エナガの家族群を探すところから始まります。この日も歩いて10分ほどで、小さな地鳴きの声が頭上から聞こえてきました。

エナガの巣立ちビナ

エナガの巣立ちビナです。親鳥について回りながら、自分たちでも食料を探しますが、まだまだうまくはいきません。親鳥から頻繁に給餌を受けています。

餌をねだる巣立ちビナ(左)

そして、30分近く群の様子を眺めていると、ある木の枝の中にヒナたちが集まりだしました。次々と体をくっつけ合って並び、エナガ団子が大きくなっていきます。ただし、団子の中へ入るのはかなり強引です。どの子も内側でぬくぬくしたいので、真ん中あたりへ飛び込んで無理やり入ります。

内側へ入ろうとしてきょうだいの背中に乗ってすき間をこじあけるヒナ

この家族群の巣立ちビナは10羽でした。エナガでは標準的な数ですが、一つの巣から一度にこんなたくさん巣立つというのも驚きです。ある子は目をつむって眠り、ある子はまわりを気にしてキョロキョロ。そしてもちろん、親鳥が近づくとみんな揃って餌をおねだり。

一斉に餌をねだる巣立ちビナたち

こんな様子を映像でも撮影してみました。

ところで、給餌している個体を親鳥と書きましたが、この家族群には給餌個体が少なくとも3羽いました。オス親、メス親と、もう1羽はヘルパーです。ヘルパーとは、繁殖に途中で失敗したり、つがい形成できなかった成鳥が、子育てを補佐して給餌する個体のことです。エナガではよく知られています。これだけの数を数週間のうちに育て上げるには、ヘルパーの存在が重要なのかもしれません。
(生物担当学芸員)

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馬入水辺の楽校で自然観察入門講座を実施

4月19日、平塚市の相模川河川敷内にある「馬入水辺の楽校」で自然観察入門講座が実施され、当館生物担当学芸員が講師としてお手伝いしてきました。
水辺の楽校とは、市民団体や河川管理者、教育関係者などが一体となって、地域の身近な水辺における環境学習や自然体験活動を推進するため、国土交通省、文部科学省、環境省の3省が連携して進めているプロジェクトです。
今回は、自然観察をとおして水辺の楽校の仲間を増やすため、様々な自然観察の実践を紹介するシリーズの講座の初回でした。朝、集合して早速、たくさん飛んでいるクマバチの観察です。捕虫網で捕まえたい参加者のお子さんのはやる気持ちを少し抑えてもらい、すぐに捕まえずに、飛んでいる様子を観察しました。すると、何のために飛んでいるのか?飛んでいるのはオスか?メスか?などさまざまな疑問が沸きました。そこで、改めて、参加者に捕まえてもらいました。

ケースに入れてクマバチを観察

ケースに入れてじっくり観察すると、顔はかっこよくて、お尻はカワイイ、などの感想が聞かれます。そして、昆虫図鑑を持参していた参加者から、オスとメスの見分け方がレクチャーされました。結果、オスもメスも飛んでいることがわかりました。
この日はいろいろなミッションを用意して取り組んでもらったのですが、その一つが、タンポポの識別です。咲いているタンポポをよく観察して、在来種と雑種、シロバナタンポポなどを見分けたうえで、頭花を採集しました。

タンポポを採集してデータを記入

採集した頭花は、午後の室内実習の際に、花粉を顕微鏡観察しました。
さらに、ルーペを使わないと見つけられない小さな花の観察や植物の分類クイズなど、ふだんはあまり植物を扱わない子どもたちも積極的に参加してくれました。特に、このブログでも紹介したキュウリグサとハナイバナの違いの観察では、キュウリグサばかりの中で、ハナイバナを全員で探し回りました。結果、限られた区域にしか生えていなかったハナイバナを見つけた大人が本気で喜んで盛り上がっていました。
途中、コナラの枝が積んである下の腐葉土に、カブトムシの幼虫がいると子どもたちが教えてくれました。子どもたちは掘って幼虫を見たくてしかたありません。そこで、ここの幼虫をまだ見たことない大人の参加者に対して、子どもたちがレクチャーすることを条件に掘ってもらいました。

おっきい!カブトムシの幼虫

オスとメスの見分け方も大人へ教えてくれています。

子どもの説明に聴き入る大人たち

近くのエノキの大木では、枝が子どもたちの“ゆらゆらイス”になっていました。こんな光景を見ているだけで幸せな気分になります。

エノキの下は休憩所

お昼を挟み、午後は室内で自然観察会をどのような方針で企画するのかという大人向けのお話をしましたが、途中、室内でもできる自然観察のプログラムを入れて、子どもたちにも参加してもらいました。最後には飛ぶタネのモデルとして、ティッシュペーパーだけを使った落下傘作りをして終了。

のりもテープも使わず、ディッシュペーパーだけで作った落下傘

朝から午後までの長丁場の講座でしたが、自然観察は、まずはじっくり見て、それをみんなで共有することが基本であることが伝わったのではないかと思います。
(生物担当学芸員)

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