ハムシの標本調査

先日、ハムシという昆虫の研究者の方が当館所蔵の標本の調査のために来館されました。
今回は当館の収蔵標本を概観し、現在取り組まれている研究に使える標本があるか検討される、とのことです。

研究中の種(しゅ)の標本があったそうです

当館には、市内で採集されたものを中心に4万点ほどの昆虫標本が所蔵されています。

ハムシとゾウムシの標本箱

それらの標本を、当館の研究・教育活動だけではなく、今回のように全国の研究者の方の調査研究にも活用いただくことで、相模原の昆虫に対する理解がより深まるといいな、と考えています。
(動物担当学芸員)

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アメリカオニアザミ

市内の住宅街の路傍などに、とても刺々(とげとげ)しい植物の巨大な株が目立っています。アメリカオニアザミです。

アメリカオニアザミ

その名から想像できるとおり、外来植物です(ただし、原産地はヨーロッパと言われています)。21世紀に入るころから各地で目立ち始め、特にこの15年ほどで急速に分布を広げました。

アメリカオニアザミの花 トゲはとても鋭い

アザミの仲間はどれもトゲがありますが、例えば春に明るい草原などに咲く在来のノアザミはこちらです。

ノアザミ(在来種)

アメリカオニアザミに比べると、むしろかわいらしく見えます。
アメリカオニアザミは乾いた路傍でも生育し、茎が伸びてくるころには鋭いトゲが全草から出ているため、うっかり手を出すと怪我をしてしまうので手に負えません。おまけに、たくさんの花からたくさんの種子を作るので、繁殖力も旺盛です。

種子をつけたアメリカオニアザミ

まだ特定外来生物法では指定されていませんが、同法で定める生態系被害防止外来種のリスト(現在指定について検討中、あるいは注意を要する種のリスト)に入っているため、近い将来、特定外来生物に指定されるかもしれません。いずれにしても、私たちの生活に直接影響を及ぼす植物なので、今後も市域の分布状況を注視していきたいと思います。
(生物担当学芸員)

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ニガイチゴの果実

6月13日、博物館周辺の樹林地では明るい朱色の果実が目立ってきました。ひとつは、ニガイチゴです。

ニガイチゴの果実

名前からすると苦くて食べられないのかな、と思ってしまうのですが、甘くておいしい、れっきとしたキイチゴの一種です。ただ、しっかりかみしめるとちょっと苦みを感じるため、その名の正しさを知ることになります。ちなみに、春に咲く花はバラ科らしく清楚な美しさがあります。

ニガイチゴの花(4月8日に撮影)

ちなみに、先日訪れた横浜国立大学のキャンパス内には栽培種のキイチゴ(ラズベリー)がたくさん自生していました。

正真正銘の?キイチゴ 美味しさも抜群でした

どこか近くで栽培していたものを、野鳥が食べてあちこちに広げたのでしょう。
そして、ニガイチゴと同じような場所にたくさん生えていて、色も形もよく似ている果実がこちら、ヒメコウゾです。

ヒメコウゾの果実

こちらはクワにとても近い仲間の樹木であり、果実はキイチゴに似てるし、いかにも美味しそうです。ところが食べてみると、確かに甘みは感じられるのですが、ねっとりとして、しかも固い毛など飲み込みたくない食感のものが口の中に残り後味が最悪です。鳥は気にならないようで、ムクドリなどが食べてフンから芽生えるので、伐採跡の林内が数年でヒメコウゾだらけになることがあります。
ワイルドの果実は見た目に惑わされないよう注意深く口にしなくてはいけませんね。
(生物担当学芸員)

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カイコ日記(6/12)4齢に脱皮

給桑開始から13日目、3齢以降は日々の変化がそれほど目立たないため、ブログの更新も少しお休みになりました。しかし、そうは言ってもカイコの成長は早いです。6月11日には3回目の眠(みん)に入りました。

3回目の眠のカイコ

早いカイコは、6月12日朝には4齢に脱皮していました。頭がまた大きくなっています。

4齢に脱皮したカイコ(6月12日朝)

まだ半分以上のカイコが眠のため、9割以上が出そろうまで給桑は休止しています。今日の夕方、様子を見て再開しようと思います。
4齢は5日ほど食べ続け、最後の眠に入ります。つまり、来週火曜日ころに眠に入り、木曜までには終齢(5齢)に脱皮します。現在、体長は25mmくらいですが、5齢の一番大きくなるころ(再来週)には約3倍の、70mm以上になります。ほんとうにすごい成長速度ですね。
(生物担当学芸員)

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梅雨空の下の植物

6月11日、緑区川尻の緑地へ相模原植物調査会のみなさんと植物調査へ行きました。
梅雨らしい天候となり、朝から雨模様でした。しかし、勾配の少ない場所なので傘をさしながら歩きました。歩けば何かしら見られるのが、フィールドワークです。ちょうど、イチヤクソウが満開でした。

イチヤクソウ

下向きの丸い花がきれいに並び、雨の滴が似合う花です。

イチヤクソウの花

近くではギンリョウソウも咲いていました。

ギンリョウソウ

菌従属栄養植物といって、樹木の根などに着いて樹木と共生している菌根菌に寄生するという、なかなかすごい生態の植物です。葉緑素を持つ必要が無いため全草が透き通るような白色です。キノコと言った方がしっくりくる姿で植物に見えませんが、れっきとした種子植物です。
開けた場所ではネジバナもたくさん咲いていました。

ネジバナ

帰りに近くの大戸緑地へ寄りました。町田市の緑地ですが、市内には見られないちょっと珍しい木、ユクノキが開花しているという情報を得たからです。

ユクノキ

今年はそれほど花つきが良くないようですが、しっかり咲いていました。
雨の中、半日だけでしたがしっかり植物を観察して終了しました。
(生物担当学芸員)

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博物館の「はやぶさWEEK」実施中!

小惑星探査機「はやぶさ」が幾多の困難を乗り越えて地球に帰還した偉業を記念し制定した「はやぶさの日(6月13日)」を中心に、相模原市では毎年様々なイベントを展開しています。今年度も盛りだくさんの内容となっています!
博物館でも6月8日にはエントランスに、5月28日から6月1日まで「大阪・関西万博2025」で行われた、内閣府主催イベント「地方創生SDGsフェス」へ実際に出展した銀河連邦ブースが再現されました。そしてその前では、「マインクラフトで月面レース」や・・

マインクラフトで月面レース

「宇宙VR体験」・・

VR体験

そして、その横では「宇宙飛行士訓練服試着」コーナーが。この時は「宇宙なんちゃら こてつくんグリーティング」で現れたこてつくんが飛び入り!

宇宙なんちゃら こてつくんと一緒に!

2階の実習実験室では、「キッズワークショップ 月のレジンチャーム作り」

紫外線をあてて固めています

午後は、はやぶさ2プロジェクトのサンプリング装置(試料回収装置)の開発責任者であり、現在は火星衛星探査機計画MMXの運用や、サンプリング装置など重要機器開発のとりまとめを担うMMXプロジェクトファンクションマネージャの澤田弘崇さんをお招きして、MMX計画の最新情報をわかりやすく解説していただく講演会が行われました。

講演会は満席!

さらに、淵野辺駅北口では、にこにこ星淵野辺商店会による「にこにこバザール」の一環として、当館天文担当学芸員による講演会や・・

くつろいだ雰囲気で街かど講演会

当館で活動する市民学芸員紙芝居チームによる宇宙紙芝居の実演が行われました。

宇宙紙芝居の実演

はやぶさWEEKはまだまだ続きます。博物館では6月15日までミニプラネタリウムで、「HAYABUSA BACK TO THE EARTH 帰還バージョン」を上映します(6月9日は休館)。詳しくはこちらをご覧ください。

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カイコ日記(6/8)3齢に脱皮しはじめました!

給桑開始から9日目、前日までにすべてのカイコが眠(みん)に入り、6月8日朝には多くのカイコが3齢に脱皮しました。

3齢に脱皮し、頭がベージュ色になったカイコ

頭がベージュ色になり、すっかりカイコらしい色合いになっています。
ただ、まだ2齢の眠のカイコが2~3割ほどいるので、まだ給桑は再開していません。

2眠のカイコ 黒く古い頭部の殻がすでに前へずれています

今日の夕方の状況を見て、9割以上が脱皮を済ませていたら給桑を再開しようと思います。
(生物担当学芸員)

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横浜国立大学で野鳥観察

6月7日、梅雨入り前の晴天の中、横浜国立大学(横浜市保土ヶ谷区)のキャンパス内で学生さんたちと野鳥観察を行いました。横浜国立大学は広大なキャンパス全体が常盤台と呼ばれる丘陵地にあり、多くの樹林が残されています。その樹林は昨年、環境省が進める自然共生サイトへ「ときわの森」として認定されました。今回、ときわの森の生物相を調べる地域課題実習「ときわの森生物調査団」のメンバーに対して、野鳥観察の初歩的な実習を行いました。
はじめに室内で簡単なレクチャーを行い、その後、シジュウカラのさえずりが響く野外へ。クマノミズキが満開だったので、秋には果実が実り、渡り鳥の重要な食料となるので、こうした樹木もチェックしておくことをおすすめしました。

クマノミズキ

歩き始めてすぐに、カラ類の混群(シジュウカラを中心とした異種混群)に出会いました。エナガの家族群も混じっていたので、じっくり観察。

エナガ(親鳥)

でも、参加した学生さんが「エナガってもっとモコモコした感じじゃなかったかな?」と疑問の声が・・そうです、子育て真っ盛りのエナガの親鳥は、ちょっとやつれた感じに見えてしまうのです。なにしろ、一回の繁殖で10羽以上のヒナが巣立つのですから。
キャンパス内は植栽木も多いのですが、そのひとつ、青々としたトチノキは下から見上げると美しさに見とれてしまいます。

トチノキ

外来種も多く、クリハラリスの鳴き声に惑わされたり、ウグイスのさえずりを堪能していたら、ガビチョウが近寄ってきて大きな声でさえずったり・・どちらも特定外来種です。

ガビチョウ

お天気が良かったため、昆虫にもたくさん出会いました。こちらは交尾しながら飛んでいたチャイロオオイシアブです。

チャイロオオイシアブ

キャンパス内を一回りして戻ってきたら、ハシブトガラスが施設の脇のすき間をのぞいていました。何か気になるものがあったのでしょう。カメラを向けると「なに?」という感じでこちらを見たのですが、あまり気にしない様子で探索を続けていました。

ハシブトガラス

この日はずっと上空をハシブトガラスが飛び交っていました。調査団を指導する倉田薫子教授によると、平日はこんなにハシブトガラスが目立たないそうです。週末など学生さんがあまりいない日は、キャンパス内を自由に闊歩しているのかもしれません。
生きものの観察は、まずは楽しむことが大切、ということをお伝えして、観察を終了しました。
(生物担当学芸員)

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カイコ日記(6/5)2齢になったカイコと、大きなテントウムシ

脱皮前の眠(みん)に入っていたカイコは、6月4日の夜までに大方が脱皮したため、給桑を再開しました。6月5日の朝にはクワの葉にたくさんの食べ痕がありました。

くり抜いたような食べ痕

カイコがクワの葉を食べる様子は、胸脚(きょうきゃく)で葉の縁をつかんで頭を上下しながらむしゃむしゃ食べるところがイメージされますが、上の写真では、葉にくり抜いたように穴があいています。じつは、2齢幼虫までは葉の表面を削るように食べますが、3齢になると、葉の縁から食べるようになります。頭の色が黒からベージュへ変化するのと同時に、口器の向きもそれに合わせて変わるようです。

頭の色は、2齢までは黒く、3齢からはベージュになる

下の写真は1齢の脱皮殻です。眠に入るころに腹脚を糸(カイコは孵化直後から、吐糸口(としこう)という口から糸を吐いています)で固定し、脱皮するときは前へ進みながら古い皮膚を脱いでいきます。

1齢の脱皮殻

土曜日には再び眠に入り、来週月曜日までには3齢に脱皮します。
ところで今日、クワの葉を採っていたらハラグロオオテントウの成虫を見つけました。

ハラグロオオテントウの成虫 前についているのは脱皮殻

脱皮殻の前にいたので、脱皮直後だったのでしょう。おとなしく葉裏に静止していました。先月のブログで幼虫の姿を紹介しましたが、美しく大きなテントウムシになりました。
(生物担当学芸員)

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令和7年度地質学講座「富士山の溶岩と湧水」2回目

6月1日(日)に地質学講座の第2回目を開催しました。今回は山梨県都留市で富士山の溶岩や泥流堆積物を観察しました。

富士急行線東桂駅に集合して野外観察に出かけました。

まず、富士山の溶岩流の一つである桂溶岩(約8,800万年前)がつくる溶岩台地末端の崖を観察しました。高速道路の高架橋のあたりが溶岩台地末端の崖です。

次に、桂川の支流である柄杓流川(しゃくながれがわ)へ向かいました。柄杓流川へ流れ落ちる太郎・次郎滝では富士相模川泥流堆積物(約2万2千年前)が見られます。

上の写真では木や草が茂って見にくいですが、緑の少ない時期はこんな感じで泥流堆積物の地層を見ることができます。

溶岩台地上に戻り、桂川の川原に露出している桂溶岩を観察しました。川原に降りることができないので橋の上から観察しました。

溶岩表面の割れ目が竜のウロコのように見えることから、この付近の渓谷は蒼竜峡と呼ばれています。

最後に、桂川の支流、鹿留川(ししどめがわ)のおなん淵の滝で猿橋溶岩と富士相模川泥流堆積物を観察しました。猿橋溶岩には柱状の割れ目である柱状節理が見られます。富士相模川泥流堆積物は滝壺の水際にわずかに見られます。猿橋溶岩の年代ははっきりわかっていませんが、積み重なった順番を見ると、富士相模川泥流堆積物より新しく、桂溶岩より古いことは明らかです。

3日目は6月15日(日)に都留市の東桂駅〜十日市場駅周辺で地層などを観察します。梅雨入りしている可能性が高く、雨が降らないことを願うばかりです。

(地質担当学芸員)

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