ミズキの恩恵が・・

博物館周辺の樹林で大発生しているキアシドクガは、蛹(さなぎ)になる場所を求めて激しく移動していたため、先週末の5月7日あたりは樹林に近づくと幼虫が枝から落ちる音と、フンの落ちる音で「ざーっ」と雨音のようでした。この数年の大発生でも、こんな現象は初めてのことです。
そんな移動も落ち着きつつあり、博物館駐車場のフェンスなどには大量の蛹がつき始めました。

キアシドクガの蛹(さなぎ)

5月20日前後には成虫になり、今度は真っ白な蛾が乱舞することでしょう。
さて、過去最大規模の発生で、ミズキが多い樹林内では葉が食べ尽くされ、木枯らしの季節に逆戻りしたように明るくなってしまいました。枝に残っているのは葉柄(ようへい)だけです。

葉が食べられて葉柄(ようへい)だけになったミズキの枝

ただ、これでミズキが枯れてしまうかというとそんなことはありません。この状態が何年も続くと樹勢が弱まって枯れてしまうこともあるでしょうが、おそらく、これだけの大発生は今年がピークになるはずです。幼虫が明らかに過飽和状態で、食料が足りているとは思えませんし、昨年よりも蛹のサイズがかなり小さめです。ミズキの葉も、こういうときのために休眠芽(きゅうみんが=虫害などで葉が失われたときのために準備されている芽)が控えていますし、キアシドクガは年1回だけの発生です。夏までにはまた緑の葉を回復するでしょう。

ミズキの休眠芽(写真中央の突起)

ただ、これだけ葉が食べ尽くされると、まわりの環境を含めていろいろな影響が及びます。まず、林内に光が届くため、林床(りんしょう=樹林の地上付近)の草が大きく育つはずです。いつになく林内が背の高い草で覆われるでしょう。そしてもう一つ気がかりなのが、ミズキの果実です。本来なら今ごろミズキはこんな花をつけていたはずです(昨年の写真)。

ミズキの花(昨年の写真)

5月中旬には近縁のクマノミズキも少し遅れて同様の花を咲かせるのですが、キアシドクガが花芽もろとも食べてしまったり、つぼみを食いちぎって落としてしまったため、今年はどの木にもまったく花がついていません。例年なら、花を咲かせたミズキやクマノミズキは、秋の終わり頃に黒紫色の果実をたくさんつけます(こちらも昨年の写真)。

ミズキの果実(昨年の写真)

この果実は、秋に北から渡ってきてお腹を空かせた冬鳥たちの貴重な食料になっています。実際、この時期に博物館周辺で野鳥の捕獲調査を行うと、ツグミ類などは紫色のフンをするので、ミズキの果実をたくさん食べていることがわかります。
今年の秋は、おそらくミズキの結実は期待できません。これをあてにして渡ってきた冬鳥たちがどうなるのか、今からちょっと心配です。
さらに、驚くべき行動を観察しました。キアシドクガの幼虫が、クワの葉を食べていたのです。

クワの葉にくらいつくキアシドクガ

あまりの食糧難で、本来はミズキとクマノミズキ以外の葉は食べないはずなのに、近くのクワを思わずたべてしまっているのでしょう。クワと言えば、カイコの食料です。このままキアシドクガがクワを食べ尽くすとは思えませんが、来月から始まるカイコの飼育にも影響が出るのではないかと、こちらもちょっと心配です。

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