玄関から20歩の自然 その5 オオイヌとタチイヌ

道端の野草を代表する存在とも言えるのが、オオイヌノフグリです。真冬から日だまりで咲き始め、秋遅くまで咲き続ける花期の長い植物です。

オオイヌノフグリ

名前の由来は、これも有名な話ですが・・

オオイヌノフグリの果実

果実を犬のふぐり(陰嚢)に見立てて付けられていますが、自然観察会などで紹介すると、大ウケするか、ドン引きされるか賭けのようなネタです。
さて、オオイヌノフグリにも、近縁の植物が隣り合って咲いていたりします。タチイヌノフグリです。

タチイヌノフグリ

パーツはそれぞれ似ているけど、サイズ感が異なります。
花はルーペが無いとわからないくらい小さく、直径2ミリメートルあるかないか・・

タチイヌノフグリの花

花は小さいのですが、タチイヌノフグリの果実はオオイヌノフグリとあまり変わらない大きさで同じような形のものが実ります。
近くに咲いていたもう1種。こちらは園芸植物が逸出した外来種で、ユウゲショウです。

ユウゲショウ

春風にそよぐ姿が美しいですね。この20年ほどの間に、芝生の隅や道端で増えてきた植物です。

カテゴリー: 玄関から20歩の自然, 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , | 玄関から20歩の自然 その5 オオイヌとタチイヌ はコメントを受け付けていません

玄関から20歩の自然 その4 蔦葉と松葉

今回は名前が似たもの同士です。
住宅の塀などにこんなふうに張り付いている植物を見かけました。ツタかな?

塀にはりつくように伸びています

いや、葉が小さいし、よく見るとかわいらしい花がついています。

ツタバウンランの花

これはその名もツタバウンランという外来植物です。蔦(つた)葉と言っても、ヘデラ(キヅタ)やツタとは葉の形もちょっと違いますが、むしろこうしてブロック塀などに張り付いて伸びる様子が似ているということなのでしょう
この外来種には、名前がよく似たマツバウンランという近縁種があって、同じように今、あちこちの道端で咲いています。

マツバウンラン

こちらはスッと細長い茎が立ち、下の方にだけある細く小さな葉を松葉に見立ててついた名です。

高さは20~30センチくらいになります

さて、この両種は、少し前の図鑑を見るとゴマノハグサ科という分類になっています。しかし、最新の図鑑を開くと、オオバコ科。オオバコ??あの踏まれてもへこたれない強い草ですが・・イメージが違いすぎますね。しかし、遺伝子配列の分析から進化の順番に沿った分類を行う系統分類学が発展し、世界中の植物分類学者たちが知恵を集めながら新しい分類系統を構築しています。そうした中で、オオバコ科は旧来のいろいろな科が合わさって大きなグループを形成しています。植物愛好家にすれば悩ましいところですが、受け入れざるを得ません。

カテゴリー: 玄関から20歩の自然, 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , | 玄関から20歩の自然 その4 蔦葉と松葉 はコメントを受け付けていません

シロカネイソウロウグモ

先日ご紹介したズグロオニグモは夜行性ですが、昼間、その網にキラキラと銀色に光るものがついている事があります。

ズグロオニグモの網にいるシロカネイソウロウグモ


シロカネイソウロウグモです。体長3mm程度で腹部が独特の色と形をしています。主にジョロウグモやオニグモなどの網に侵入して、餌をこっそり盗み食いをして暮らしています。
ズグロオニグモは夜行性で、網を昼間も放置している事が多く、かつ、造網場所は小さな昆虫がたくさんかかる川縁である事が多いので、昼間の居候先として最適かも知れません。
せっかくなので捕獲して少しアップで。

シロカネイソウロウグモ(メス)


よく見ると、頭部は黒く、腹部も一面銀色ではなくて、模様があります。
この銀色は、表皮の下の細胞にある色素が見えているもので、メタリックな昆虫のように、表面が光っているわけではありません。種によっては、外部から刺激を受けると、その細胞が小さくなって体色を黒っぽく変化させるものもいるのですが、シロカネイソウロウグモはそのような事はないようです。
それにしても、こっそり居候するというのに、なんでこんなに光っているんでしょうね。

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , , , , , | シロカネイソウロウグモ はコメントを受け付けていません

玄関から20歩の自然 その3 似たもの同士

野草の中には違う種類なのに、やたらにそっくりなもの同士がいたりします。そういう難しい識別に喜んでチャレンジするのが野草マニアということになります。どの分野にも、他の人から見ればどうでも良さそうな違いを見つけて楽しむ愛好家がいて、それがマニアの世界と言えるでしょう。
さて、道端にもそんな植物が数え切れないくらいあります。まずはこちらの2枚の写真を見て下さい。

トキワハゼ

ムラサキサギゴケ

花はそっくりで、確かに近縁種ではあります。上はトキワハゼで下はムラサキサギゴケと言います。
何が違うかというと、見た目以上に生活史が異なります。トキワハゼは一年草、または越年草(おつねんそう)、ムラサキサギゴケは多年草なのです。越年草とは、前年の秋に発芽して冬を越し、春以降に開花、結実すると枯れてしまう植物のことです。トキワ(常葉)ハゼという名は、冬に葉を残して越冬し、花期も長いために一年中葉があるように見えるためについた名です。
一方、ムラサキサギゴケは多年草で、匍匐枝(ほふくし)と言って、翌年に根を張って株を形成するための茎が出るのが特徴です。

ムラサキサギゴケの匍匐枝

トキワハゼよりムラサキサギゴケの方が少し花が大きいという違いもありますが、この匍匐枝や、花茎も少し這うように伸びる点がムラサキサギゴケの特徴となります。
次はこちら。極小の花ですが、よく見るとワスレナグサに形も色もよく似たかわいい花です。キュウリグサと言って、今、あちらこちらの道端で咲いています。

キュウリグサ

ほんとうに似ているのはワスレナグサとではなく、下の写真の植物です。こちらはハナイバナ。

ハナイバナ

どちらも花は直径2ミリメートルほどの小さな植物ですが、キュウリグサは成長するとこんなふうに、花が咲きながら花茎を伸ばして10センチメートル以上になります。

キュウリグサの花茎

こうやって比べてみるとわかりやすいのですが、毎年春にこの二つの植物を見ると、どっちがどっちだったのか、頭の中で記憶を整理しなおしています。
ちなみにキュウリグサは、葉や茎を揉むとキュウリのようなにおいがするから、という名の由来なのですが・・今ひとつ首をかしげてしまいます。みなさんはどう感じるでしょうか。道端で見つけたらチャレンジしてみてください。

カテゴリー: 玄関から20歩の自然, 生きもの・地形・地質 | タグ: , , | 玄関から20歩の自然 その3 似たもの同士 はコメントを受け付けていません

玄関から20歩の自然 その2 街路樹の根元

玄関から20歩の自然のその2は引き続き街路樹の根元の話題です。今回も中央区のとある街路樹の根元です。
この数十年の間に急速に分布を広げ、今や住宅地の至る所に見られる外来雑草のアメリカフウロです。

アメリカフウロ

径1センチメートルあるかないかという大きさのピンクの花と、こちらの果実が特徴です。この特徴はフウロソウ科のもので、野草とも雑草とも薬草とも言えるような植物のゲンノショウコに近い仲間です。

アメリカフウロの果実

こちらは、見るからにアサガオの仲間ですが、花は径3センチメートルほどの小ささで、しかも地面を這っています。これは、このところ少しずつ分布を広げている外来植物で、コンボルブルス・サバティウスと言います。

コンボルブルス・サバティウス

なんだかいかめしい名前ですね。これは、グラウンドカバー・プランツ(芝生のように地面を覆う目的で植えられる園芸植物)として導入され、その流通名に学名が採用されたためです。コンボルブルスConvolvulusはセイヨウヒルガオ属で、サバティウスsabatiusは18世紀のイタリアの植物学者Liberatus Sabbati に献名されたものです。寒さにあまり強くない植物なのですが、このところの暖冬傾向のせいで広がっているのかもしれません。
そしてこちらはWANTED!まだ開花していませんが、見つけたらできるだけ小さいうちに駆除すべき外来植物、アメリカオニアザミです。

アメリカオニアザミ

すでにこの大きさになると駆除がむずかしくなります。その理由はこの凶悪な刺・・

アメリカオニアザミの刺 全草にある

この15年ほどの間に急激に分布を広げています。市内では当初、国道の中央分離帯などでポツポツと見られていました。それがどんどんと住宅地や市街地へと広がり、今では全域で見られます。初夏から咲く花はこちらで、大きめのアザミです。

アメリカオニアザミの花(2018年に撮影)

うっかり触ると刺でケガをします。見つけたら、革手袋などで手を保護するか、スコップなどを使って植物体を触らないように堀りとり、ゴミ袋へ入れて処分してください。

カテゴリー: 玄関から20歩の自然, 生きもの・地形・地質 | タグ: , | 玄関から20歩の自然 その2 街路樹の根元 はコメントを受け付けていません

ハイイロゴケグモ

ハイイロゴケグモ(メス成体)典型的な色彩の個体。斑紋がはっきりしない個体や灰色っぽいもの、ほとんど黒いものなど変異があります。

ゴケグモ属の一種。学名はLatrodectus geometrics。
体長10mm程度で不規則な網を張ります。コンクリートブロックの隙間、エアコン室外機の裏、ベンチや遊具の下、墓石の周囲等、人工物に好んで造網します。

コンペイトウ型の特徴的な卵のうと母グモ

「ゴケグモ」というと、1995年に関西を中心に発見が相次ぎ「毒グモ」としてテレビや新聞を賑わせたセアカゴケグモ(Latrodectus hasselti)を思い出す人もいると思います。セアカゴケグモは、今では関西などに定着し、他の地方でも散発的に確認されています。外国から輸入された貨物についていたものが物流に乗って各地に分散したと考えられています。幸いな事に、このクモに咬まれた事が原因で、深刻な健康被害を被ったという報告は今のところありません。
日本中がセアカゴケグモ探しに躍起になっていた同じ頃、横浜のコンテナ埠頭で発見されたのが、このハイイロゴケグモです。その後発見例も少なく、あまり話題になりませんでしたが、ここ数年、相模原市内での発見が相次いでいます。
気になる毒性ですが、セアカゴケグモより弱いというのが定説です。ただし、ゴケグモ属の毒は「神経毒」と呼ばれるもので、咬まれた場所以外にも症状が出るのが特徴です。全身症状に発展する可能性もあるので、咬まれない事が大切です。
まず、クモがいそうな場所には不用意に手を入れない事です。攻撃的な生き物ではないので、握ったり押さえつけたりしなければ、咬まれる事はまずありません。屋外で物陰を清掃する時や、物を拾い出す時には注意しましょう。履物に潜んでいた例もあるので、放置してあった靴等も要注意です。もし疑わしいクモを見つけたら市役所や博物館にご連絡ください。
万が一咬まれてしまった場合は患部を水ですすぎ、皮膚科や内科などの病院を受診しましょう。駆除には市販の殺虫剤が有効です。特定外来生物に指定されているので、生きた個体を移動したり、飼育することはできません。
と、色々書きましたが、相手の正体を知って、正しい対処ができれば、やたらに怖がる必要はありません(最近そんな話を良く聞きますね?)。
こうした外来生物は人間の活動と密接に関連して生息範囲を広げていきます。例えば物流に運ばれたり、他の生き物がいない人工環境へ進出するのはわかりやすい例です。博物館は、その記録を残す事で、私たちの暮らしや環境について考える事に貢献できるのではないかと思います。

腹部腹面の赤い「砂時計型」の斑紋がゴケグモ類の目印

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , , | ハイイロゴケグモ はコメントを受け付けていません

「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.4・サツマイモ植え)

水田に乏しく、畑作が農業の中心であった市域では、特に五月節供の頃から畑や養蚕等の作業が本格的に始まり、6月にかけて多くの作業がありました。そのため、かつては「農の五月」などと言って「猫の手も借りたい」大変忙しい時期でした。

そうした時期の作業の一つに、サツマイモの植え付けがあります。冬場に作った苗床に種芋を伏せ込んでおき、そこから出たサツマイモの苗(芽)を五月節供過ぎに切り出します。

サツマイモの苗床
 苗の切り出し

 この苗を畑に植え付けるのですが、畑はまだ麦の刈り取り前で麦が高く育っており、麦刈りが行われるのは約一ヶ月後となります。

                  一面の小麦畑

 それではどこに植えるのかというと、麦のかたわらの少し高くなったところに、苗を「フナゾコ」といって船の底の形にさして、上から押したりしました。

                  サツマイモの植え付け
小麦の際(きわ)に植える

 実は、オカボ(畑で作る陸稲)も麦の間に蒔きました。

                  古くは肥料と混ぜてオカボの種を麦の間に蒔いた

 今回紹介した写真は、文化財記録映画第六作目の「相模原の畑作」時において、昭和62年(1987)5月24日に中央区田名で撮影されたものです。
映画では、基本的に稲だけを作る水田と違い、一つの畑で作物を組み合わせる畑作として、かつて作物の中心であった小麦とサツマイモ・陸稲の作業の流れを追っています。

それにしても、今の感覚からすると、まだ前の作物が残っている中に次のものを植えてしまうというのは少し驚きでしょうか。

カテゴリー: 民俗むかしの写真, 考古・歴史・民俗 | 「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.4・サツマイモ植え) はコメントを受け付けていません

玄関から20歩の自然 その1 街路樹の根元

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、不要不急の外出をしないよう求められています。
家から出ないという生活が安全ではありますが、外気にまったく触れない生活を続けるわけにもいきません。そんな中で、お買い物途中などに少し立ち止まって見るだけで楽しめる自然観察について、少しご紹介します。題して「玄関から20歩の自然」。厳密に家の出入り口から20歩以内ということではないのですが、それくらいの場所にもこんな自然がありますよ、という意味でとらえてください。大人の足で約15メートル、子どもで10メートルくらいの距離です。
その1は、街路樹の根元です。実際に4月26日、市内中央区の歩道の街路、植込みの1カ所で見た植物です。まずはこちら、シロバナマンテマ。

シロバナマンテマ

花そのものは直径1センチメートルあるかないかの小さな植物で、花の付け根がぷっくりと膨らんだ独特の形をしています。形も不思議ですが、名前も不思議・・マンテマってなんでしょう?これには諸説あり、学名(ラテン語)がなまったという説が有力であるものの・・植物愛好家の中でも、謎の一つです。
シロバナマンテマに混じって生えていたのは、コバンソウです。

コバンソウ

イネ科の雑草で、穂の形が小判に似ていることから名が付きました。それにしても、穂の付き方がおもしろいですね。ネコに小判と言いますが、ネコがじゃれつきそうな雰囲気です。
こちらはその植込みの隅に咲いていたヒルザキツキミソウ。

ヒルザキツキミソウ

誰かが植えたのかな?と思うくらい可憐な花です。でも、これも雑草です。もともとは園芸植物でしたが、こうして路傍で勝手に力強く咲いています。
植込みの植物はまだまだおもしろいものがたくさんあるので、引き続きご紹介していきたいと思います。

カテゴリー: 玄関から20歩の自然, 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , | 玄関から20歩の自然 その1 街路樹の根元 はコメントを受け付けていません

民俗分野ブログ「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.3)

5月はまさにお茶の季節です。今回紹介するのは、昭和59年(1984)5月25日・南区古淵での製茶の様子で、撮影をさせていただいた家だけでなく、この家と親しかった中央区上矢部と淵野辺の方も加わって行われました。

 かつての農家の生活では、毎食後やおやつの時には必ず茶を飲み、客が来てもまずお茶を出しました。そのため茶はなくてはならないものでしたが、購入するものではなく、屋敷内や道路と畑の境などに茶の木が植えられ、1年分の茶を賄いました。

                   

 通常は、五月節供の頃に女の人が茶摘みをします。特に、2月の立春から88日目の八十八夜に摘んだ茶は喜ばれました。

                  

 積んだ茶葉は、かまどで蒸します。写真ではハヤブカシと呼ばれる丸い蒸かし器を使っています。

                  

 蒸かした茶葉を揉むのにはホイロを用います。移動式のホイロもありましたが、当家では土を練った固定のものを使っていました。このホイロの中で、炭を燃やして温度を取ります。写真では炭の上に藁を乗せて燃やしています。

                  

 実際に揉むには、ホイロの上に、木製の枠に和紙や後にはブリキを張ったジョタンと呼ばれるものを乗せ、それに茶葉を入れて両手で力を込めて揉んでいきます。アクで手が汚れる茶揉み作業は男の担当でした。

                  

揉んだ茶はフルイに掛けて選別し、その後、仕上げとして火入れをして完成です。できた茶は、乾燥しないように缶などに入れて保存しました。

                  

これまでは茶作りの様子ですが、新茶は仏壇に供えました(この写真はモノクロです)。また、かつて自宅で行われた結婚式では、嫁が来客者に茶をふるまう「嫁のお茶」で終わりとなり、結婚式の翌日などに、近所の家々に嫁を紹介する際にはお茶を持っていくなど、茶は嗜好品としてだけではなく、さまざまな生活の場面で登場する大切なものでした。

                  

第1回目で紹介した醤油作りのように、こうしたものを自分の家で作ることが長く行われていたことも、地域の歴史や文化を考える上で忘れてはならないことでしょう。

カテゴリー: 民俗むかしの写真, 考古・歴史・民俗 | 民俗分野ブログ「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.3) はコメントを受け付けていません

民俗分野ブログ「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.2)

5月に入っての年中行事というと、「端午(たんご)の節供」が思い浮かびます。第2回目は、平成元年(1989)の五月節供の写真を掲載します。なお、年中行事も神にお供えものをする機会ということで、ここでは「節句」ではなく「節供」と記します。

 教育委員会では、昭和57年(1982)度から平成6年(1994)まで、毎年さまざまな民俗を映像で記録する「文化財記録映画」を製作しており、毎回、多くの市民の皆様のご協力を得て撮影されました。
今回はその第8作目「相模原の年中行事」での撮影です。記録映画では、映像とともに写真も撮影しましたが、当時は記録用にモノクロ(白黒)のフィルムを使うことも多く、今回の紹介はカラー写真ではないことをお断りします。

下の写真は中央区上溝で、当時、ごくわずかに残っていた草ぶき屋根の家をお借りして撮影が行われました。梯子を上った人が、草ぶき屋根の上に何かをさし込んでいます。

さしているのは植物の菖蒲(しょうぶ)です。五月節供では風呂に菖蒲の葉を入れることが有名で、このほかに「菖蒲屋根」といって、菖蒲を屋根にさしたり、軒先に付けたりすることがありました。津久井地域からの報告もあり、広く行われていたようですが、撮影当時はすでにそうした言い伝えはかなり薄れていて、この写真は再現です。上溝などでは、昭和の初めころまではそうした風習が見られたと言います。

五月の節供というと、何といっても外に飾る幟(のぼり)です。よく見られる鯉幟のほかに、縦に長く、勇ましい武士などが描かれた外幟もありました。写真の中の小さいものは、悪霊や病気を払う神とされる「鍾馗」(しょうき)が描かれています。こうした鯉幟や外幟は男の子が生まれると、嫁の実家や親戚から贈られました。撮影は南区上鶴間本町です。

年中行事にはいろいろな食べ物を作り、五月節供を代表するのが柏餅(かしわもち)です。米粉を練り、小豆餡(あん)を入れて蒸した柏餅は、食べるだけでなく、これも親戚などから贈られた五月人形にも供えます。
上側の写真では柏の葉で包んでおり、下側はできた柏餅を人形にお供えしているところです。店舗で売られることも多い柏餅ですが、当時、手作りしていた緑区下九沢の方にお願いして撮影しました。

文化財記録映画は全部で13作品あり、そのテーマや内容は撮影当時に実際に行われていたものから、今回の菖蒲屋根のようにかつての様子を再現したものなど、さまざまです。
※文化財記録映画は、博物館でビデオテープでの視聴が、また、視聴覚ライブラリーでDVDでの視聴・貸し出しができます(現在休館中)。

カテゴリー: 民俗むかしの写真, 考古・歴史・民俗 | 民俗分野ブログ「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.2) はコメントを受け付けていません