学芸員によるリレー解説!

先日、市内緑区橋本を拠点に、地域の歴史を伝え、愛着を深めるためのPR活動をされている「橋本の歴史を知る会」の会員の方10名が展示見学にいらっしゃいました。

オリエンテーション中。これからリレー解説が始まります。

相模原市立博物館には、常設の「自然・歴史展示室」、「天文展示室」、時期によって様々な企画展を開催している「特別展示室」の3つの展示室があります。
会からのご要望ということもあり、今回は自然・歴史展示室の橋本地区に関わりが深い部分を重点的に、各専門分野3名の学芸員によるリレー形式で展示解説を行いました。

まずは、オリエンテーションとして当館の来歴をお話しした後、地質担当の学芸員が相模原の台地や、地層の成り立ちについて解説しました。
相模原の台地が、遠く離れた富士山や、それよりもさらに遠い九州地方から飛んできた火山灰が降り積もったことによりできていると知り、みなさん驚きのようでした。

地層のはぎ取り標本の前で展示解説しています。

次は、考古担当の学芸員による、橋本地区で発掘された橋本遺跡や、古代から中世までの埋蔵文化財についての解説です。
食料となる獲物を追って移住生活を送っていた時代に、石器やその材料をどのようにして手に入れていたのか、展示されている資料を見てたくさんの意見や質問が飛び交いました。

昔の人が使っていた石器にみなさん興味津々です。

最後に、民俗担当の学芸員から、江戸時代以降の新田開発や近代化、終戦後の爆発的な人口急増などによって移り変わってきた人々のくらしについて解説を行いました。
展示室の最後にある「地域の変貌」のコーナーでは、市内の工業地・住宅地・商業地が形成されていく様子を、定点観測のように500分の1のジオラマで再現しています。長く相模原市にお住まいの方は、当時の目まぐるしい変化に思いを馳せていたようです。

まちの様子はどのように移り変わっているでしょうか?

約2時間の長丁場でしたが、みなさん終始興味深そうな様子で学芸員によるリレー解説をお聞きいただきました。

当館では、このような展示解説の依頼を受ける場合、見学者のニーズに寄り添うため、必ず事前に打ち合わせを行います。いつでも同じ資料を見られることが魅力の常設展示ではありますが、どこに解説のポイントを置くかによって、違った見方や新たな気づきにつながると思います。
また、感染症対策に留意しながらも、こうした対面での展示解説も徐々に再開しつつありますので、学芸員の生解説により、展示をご覧の方の学びのお手伝いができれば嬉しい限りです。

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【麻布大学にて出張展示中!】大河ドラマ関連ミニ展示「鎌倉時代初めの相模原の武士団 横山党」

令和4年10月20日(木)から12月23日(金)までの期間、現在絶賛放送中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にちなんだミニ展示「鎌倉時代初めの相模原の武士団 横山党」を、市内中央区淵野辺の麻布大学いのちの博物館(※1)で出張展示しています。

麻布大学いのちの博物館

この展示は、大河ドラマの放送開始に合わせて今年の1月から相模原市立博物館で開催したことを皮切りに、当館所管施設の吉野宿ふじや尾崎咢堂記念館と市内各所を巡回して来ました。そして、年内に完結予定の「鎌倉殿の13人」放送期間中、最後の展示を縁あって麻布大学いのちの博物館で開催することになりました。

展示の様子

鎌倉時代初期に活躍した相模原の武士団「横山党」や、13人の御家人の1人で市内に伝承がある「和田義盛」ゆかりの地を紹介していますが、展示をご覧いただけるのは恐らくこれがラストチャンスになります!
横山党野辺氏館跡伝承地の「上矢部土塁」(中央区上矢部)は、麻布大学いのちの博物館から徒歩11分の場所にあるので、ご来館の際に併せて訪れてみてはいかがでしょうか?

上矢部土塁

当館と麻布大学いのちの博物館ではこのほかにも様々な場面で連携をしており、今週22日(土)のJAXA相模原キャンパス特別公開(※2)日には、展示解説サークル「ミュゼット」のみなさんとコラボイベントを予定しています。こちらもお見逃しなく!

※1…麻布大学いのちの博物館の入館は事前予約制です。入館希望日の3開館日前までに042-850-2520(直通)へ電話予約をお願いします。その他、開館情報の詳細は麻布大学いのちの博物館ホームページをご確認ください。
※2…JAXA特別公開は、10月21日(金)・22日(土)で、21日(金)はオンライン開催、22日(土)は対面での開催となりますが、22日(土)の事前申し込みはすでに締め切られていますのでご注意ください。なお、当館への入場は通常どおりで、どなたでもご入館いただけます。

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今月の生きものミニサロンは麻布大学ミュゼットとのコラボです!

10月22日(土)はお向かいのJAXA相模原キャンパス特別公開の日です※。博物館でもいくつかのイベントが組まれており、たくさんの方のご来館が見込まれていますが、そんな中、毎月恒例の生きものミニサロンを実施します!そして、今回は、麻布大学いのちの博物館との連携事業の一環として、同博物館で展示解説などを行うサークル「ミュゼット」とのコラボレーションで行います。今日(10月20日)、なにやら巨大な骨が運ばれてきました。

ミュゼットの学生さんと、「いのちの博物館」館長の島津徳人先生が搬入してくださいました

さて、こんな大きな骨と言えば・・

ゾウの下あごの骨(実物)です

そうです、ゾウの下あごの骨です。ということは、上あごも・・こちらは当日のお楽しみとしましょう!
生きものミニサロンは、通常は1日1回ですが、今回は、「麻布大学いのちの博物館出張展示解説」として3回実施します。10時、12時、15時からそれぞれ30分を予定しています。1階エントランス内の、自然・歴史展示室入口付近です。いつもとちょっと違う場所で行いますので、お間違えのないようお願いします。なお、当日は駐車場が大変混みあいます。博物館駐車場が満車の場合は、JAXA特別公開の臨時駐車場が設けられますので、そちらもご利用ください。

※JAXA特別公開は、10月21日~22日で、21日はオンライン開催、22日は対面での開催となりますが、22日の事前申し込みはすでに締め切られていますのでご注意ください。なお、当館への入場は通常どおりで、どなたでもご入館いただけます。

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オキナワスズメウリ

博物館近くのフェンス沿いに、かわいらしい果実が実っています。
オキナワスズメウリです。

オキナワスズメウリの果実

未熟な果実は黄緑色に白い筋が入り、それもかわいらしいのですが、それが徐々に真っ赤に熟します。

熟した果実

白い筋はそのままで、果実の色の変化を楽しむことができます。

色のグラデーションを楽しめるオキナワスズメウリの果実

名前のとおり、もともとこのあたりに自生する植物ではないため、外来種です。食用にもなりません。でも、このかわいらしい果実を見ていると、なんだか気持ちが和みます。

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大学の見学実習を行いました

10月15日、市内南区にある北里大学海洋生命科学部の学芸員養成課程の学生さんたちが来館しました。学芸員資格を取得するための講座「博物館資料保存論」の現地授業(見学実習)のためです。毎年、こうした見学実習を何度か受け入れますが、今回のように60名を超える規模のものは大変珍しく、複数の学芸員で対応しました。まずは、大会議室で当館の活動や資料保存の概要について説明します。

前半の講義の様子

続いて3班に分かれ、バックヤードツアーを行います。1つの班は、搬入経路や空調設備を見学します。

空調機械室内

館内全体の空調を整えるための機械や、ずらりとならんだパイプ、バルブなどに圧倒されます。さらに写真で伝わらないのが音です。グオングオンとうなりを上げる様子は、建物が一つの生きもので、その心臓の中に入ったかのように思えて迫力があります。
もう1つの班は収蔵庫の見学です。普段入ることのできない収蔵庫に入り、単なる倉庫ではない収蔵庫の機能などを現地で学んでもらいました。

収蔵庫に入ります

残りの1班は展示を自由見学してもらい、ローテーションしていきました。
展示は博物館の一面であり、その裏側に様々な機能や、蓄積された資料が存在することを実感してもらえたと思います。

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【本日から開催!】市史ミニ展示「キャンプ淵野辺の返還」

本日10月15日(土)から、市史ミニ展示「キャンプ淵野辺の返還」を開催しています。

展示全体の様子

平成30(2018)年2月に完了した『相模原市史(※)の編さん事業ですが、その後も市史に関連する出来事や編さん過程で収集した資料を、市史ミニ展示という形で広くお伝えしています。

今回のテーマは、ここ、相模原市立博物館の現所在地にもゆかりがある「キャンプ淵野辺の返還」です。

博物館の周辺一帯は、軍都計画の一環で東京から移転してきた「陸軍機甲整備学校」が第二次世界大戦後にアメリカ軍に接収されて「キャンプ淵野辺」となりました。その後、昭和40年代からさかんに行われた返還活動が結実して昭和49(1974)年に返還され、現在の姿になります。
展示では、「キャンプ淵野辺」の当時の様子や、返還活動が行われた際の相模原市の取り組みについて紹介しています。市内の身近な場所がかつては全く異なる施設として利用されていたことや、現在に至るまでの歴史的背景等をこの展示を通じて知っていただければと思います。

普段は市立公文書館が管理している歴史的公文書(昭和51(1976)年)の現物は見どころのひとつです!

来年1月9日(月・祝)までご覧いただけますので、多くの方のご来館を心よりお待ちしております。(毎週月曜日と、11月4日(金)、24日(木)、12月28日(水)~1月3日(火)は休館日です。)
また、展示をご覧になってさらに相模原市の歴史に興味をお持ちいただいた方は『相模原市史』も是非お手に取ってみてください。

※『相模原市史』は、博物館2階市民研究室や市内の図書館等でご覧いただけるほか、市役所行政資料コーナー(郵送対応可)、市内一部書店(相模原市書店協同組合加盟店)でお買い求めいただけます。

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博物館収蔵資料紹介~電話機の移りかわり

電話というと、ほんの少し前には一家に一台もしくは複数の電話機がありましたが、今では個人がスマートフォンを持ち、固定電話がない家も多くなっています。

ちなみに中央区上溝で電話交換業務を開始したのは大正10年(1921)で、当時の加入は55戸、また、南区下溝の古山(こやま)地区では、昭和8年(1933)頃にサツマイモを共同で出荷するための組合を結成したのに伴って電話が引かれ、電話番号は麻溝11番だったそうです。

最初の写真は、有線放送の電話機です(収集地・中央区上溝)。有線放送は特定の地区を対象として放送するもので、地区内に電話することもできました。上溝では昭和32年(1957)に上溝農協の運営で始まり、農協からのお知らせや地域の学校の運動会などの情報も流されました。有線放送は、電話機が広く普及する昭和40年代まで市内各地で見られました。                  

なお、この電話の側面には、地元にある観音堂から出されていたお札が張ってあり、それだけ大事なものだったことがうかがえます。                  

 

次の写真は、昭和37年(1962)12月製造のダイヤル式の黒電話です(中央区田名)。最近の子どもたちは、指をダイヤルに入れて回してかけることが分からない、という話もよく耳にします。                  

 

ダイヤル式から押しボタンに変わったのがいわゆるプッシュホンで、この電話を寄贈していただいたお宅では、平成元年(1989)頃に使っていたそうです(中央区由野台)。そして、二枚目の写真は電話にファックス機能が付いたもので、こうした電話も広く普及しました(南区磯部)。皆様の家にあった電話はどのようなものだったでしょうか。                  

 

最後の写真は同じ方から寄贈された携帯電話で、右側のものは充電器の卓上ホルダーが付いており、平成11年(1999)11月の購入です(緑区原宿南)。電話は家庭にあるものから携帯電話の名の通り、個人で持つものに変わっていきましたが、まだ高速データ通信や多機能化までは至っていません。                   

 

今回紹介した電話機のように、近年は、私たちの身近な生活や道具の変化の速度がかなり早くなっています。こうした状況を、具体的な資料を通じて示していくことも博物館の役割の一つであり、今後も必要な資料を収集していきたいと思います。

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秋の深まりを感じる鳥、ノビタキ

市内の畑地を歩いていたら、杭やススキの茎から小さな鳥が、飛んでは止まる動作を繰り返していました。秋が深まるこの時期、そんな行動をするのは、渡り鳥のノビタキです。

ススキにとまったノビタキ

標高1000メートルを超える高原や北日本の草地で繁殖し、冬は南の地域で過ごす鳥です。その渡りの途中に市内の河川敷や、広く開けた耕作地などに立ち寄ります。この場所では、2羽のノビタキが地面に下りて採食したり、近くの有刺鉄線にとまって羽づくろいをしていました。

つかず離れず行動していた、2羽のノビタキ

色合いは地味ですが、ヒタキの仲間らしく、大きな目と長めの脚が特徴です。
そして、この色合いは日没近くの西日が似合います。

ノビタキ

これからまたどれくらいの距離を旅するのでしょう。しっかり栄養をつけて、この先の長旅に備えてほしいですね。

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今年も開催しました,「川原石のふしぎ」

10月8日に「川原石のふしぎ〜自分だけのお気に入りの石図鑑をつくろう〜」を開催しました。このイベントは相模原市教育委員会の旧石器ハテナ館の主催事業で,相模原市立博物館の学芸員が講師を務めました。

まずは,旧石器ハテナ館近くの相模川の川原で石の説明です.

一通り説明が終わったら図鑑用の石を採集します。図鑑はA4サイズぐらいの箱に石を貼り付けて作ります.大きな石だと収まりきらないので,小さめの石を採集します.手頃な大きさで,特徴が表れている石を探すのは,意外と難しいです.

旧石器ハテナ館に戻り,箱の中に石を木工用ボンドで貼り付けていきます。川原の石は上流から運ばれてきたものなので,そのふるさとの山々をイメージした絵を描いて石図鑑を作ります。

今年も,それぞれ,素晴らしい図鑑ができました。

参加された皆さんはそれぞれに工夫して図鑑を作っていました。

今回の図鑑作りをきっかけにして,いろいろな場所にある岩石に興味を持ってもらえればと思います.

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身近で楽しい自然観察を

10月8日、博物館で「さがみはら緑の風(自然観察指導員相模原連絡会)」の観察学習会が行われました。博物館で毎月実施している生きものミニサロンのサポートスタッフを務めてくれている自然観察指導員もいることから、指導員初心者を対象に定期的に開催する学習会に協力し、学芸員が講師を務めています。
今回は、「得意な”定番”を持とう!」を合言葉に、観察会のプログラムとして「すぐにできる持ちネタ」を身に着けてもらうことをテーマにしました。40分ほど室内学習を行った後、早速博物館の駐車場へ出ます。まずは、定番プログラムの「落ち葉のグラデーション」を体験してもらいます。

全員で力を合わせて葉っぱの環を作ります

これは生きものミニサロンでも度々取り上げているテーマで、参加者が拾い集めた落ち葉を、似た色を隣同士に置いて、環(わ)を作ってもらいます。その手順を少し工夫することで、スムーズに、「落ち葉の形や色の多様性を感じ取ってもらう」という主旨が参加者へ伝わります。完成はこちら。

マンホールに合わせて環を作りました

立ち上がって真上から見ると、ハッとするほど美しい環ができています。
じっくり見ても、中にはこんな複雑な色合いの落ち葉もあることに驚きます。

複雑で鮮やかな色合いに驚きました

他にも、季節ネタということでドングリやジョロウグモをテーマに観察をしました。
そして、午後は受講者が自分で考えたプログラムを披露します。その一つは、葉っぱに描かれた不思議な模様についての観察です。

“字書き虫”に模様が付けられた葉

「字書き虫」などと呼ばれる、昆虫の幼虫の食痕です。これもよく見てみんなで意見を出し合うことで、食べ方や、幅の変化など、様々な気づきがありました。中には、字書き虫(ハモグリバエの仲間)の正体を見つけた人もいました。

法則性が無いようで、ある?

さらに別の受講者は、つる植物をテーマに観察しました。いろいろな巻き付き方がある中で、ヤブカラシの巻きひげに注目してみると・・

中央で巻き方向が逆転!

なんと、コイル状の巻きひげの真ん中で、巻き方向が逆転しています。これは偶然そうなったのではなく、どの巻きひげも同じように逆転していました。どのようにコイルができるのか、なぜ逆転しているのかなど、全員で考えました。
もちろん、答えは人間の想像の域を出ませんが、そうして身近な自然の不思議に気づくことが大切なのです。それぞれのプログラム終了後には、全員で感想や改善点など話し合い、どうやったら参加者にもっと楽しんでもらえるか検討しました。
学習会終了後、全員が「ほんとうに楽しかった」と感想を述べてくれました。その楽しさを、これから地域の自然観察会や生きものミニサロンで再現してくれたら嬉しいですね。

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