当館学芸員が新採用職員研修で講師を務めました!

10月4日(火)に、令和4年度10月期の相模原市新採用職員研修で当館の学芸員が研修講師を務めました。

テーマは「相模原の歴史」です。

皆さん熱心に受講しています。

本年6月から10月までに入庁した行政職、技術職合わせて15名の新採用職員に向けて講義を行いました。
研修初日最後の1コマでしたが、皆さん集中して熱心に受講していたため、講師の話にも熱が入ります。

30分間の限られた時間内で、地形の成り立ち、遺跡の分布、近世以降の新田開発や養蚕、軍都計画、終戦後の人口急増とまちづくり、そして旧津久井郡4町との合併により、平成22(2010)年に政令指定都市へ移行して現在の相模原市に至るまで、特徴的な歴史上の出来事を解説しました。

本市の歴史の中でも特徴的な軍都計画について解説しています。

当館では公民館等で催される各講座に学芸員を派遣することがありますが、実はこうした人材育成の場でも各専門分野の学芸員が講師を務めています。

郷土の歴史について知ることは、市民への対応やまちづくり等に役立つ知識として日々の業務に生かすことができます。
この日の講義が相模原市の将来を担う新たな職員にとって、市の歴史への興味・関心を深めるきっかけになればと思います。

カテゴリー: 学芸員のひとりごと, 考古・歴史・民俗 | タグ: | 当館学芸員が新採用職員研修で講師を務めました! はコメントを受け付けていません

博物館収蔵資料紹介~糸繭の商い

中央区上溝は横浜開港に関わり、明治3年(1870)に生糸及び繭などの取引を目的に市(いち)が開設されました。毎月三と七の付く日(月に六回)に開かれる市には糸や繭を売買する商人をはじめ、日用品や雑貨等を売る者が各地から集まり、大変な賑わいを見せました。

前回のブログでは蚕の種(卵)を専門に作る「種屋」の道具を紹介しましたが、博物館では、こうした糸や繭を扱う糸繭商(いとまゆしょう)の道具も保管しています。

最初の写真は、自然・歴史展示室の五テーマ「地域の変貌」に展示されているパネルで、右側には大正8年(1919)に行われた盛大な祭りの様子が写されています。この時に作成された書類によると、上溝に住んでいた糸繭商は29名にのぼり、そのほかに他地から来る者が63名というように、地元だけでなく、大変多くの糸繭商が上溝に集まってきました。                  

 

二枚目の写真は、「繭蚕糸売買証票(まゆさんしばいばいしょうひょう)」(収集地・中央区上溝)で、商人はこのような許可書を持参していました。ちなみにこの証票の発行日は明治20年(1887)4月1日です。                 

 

次の写真は、紙製の枡の「紙枡(かみます)」(収集地・中央区田名)です。枡と言うと穀物や酒などの液体をはかる木製のものを思い浮かべますが、こうした商人は市だけでなく農家を訪れて直接、繭などを買い付けることもあり、折りたたんで持ち運びできる紙枡は便利でした。紙枡は、大正時代後期に繭をはかる単位が容量から重さに代わり、使われなくなりました。写真の資料には一升五合と記されています。                 

 

糸繭商にも上溝に店を出しているところと、ソクザシなどと呼ぶ仲買いを専門にする者がいて、以下の三枚の写真は、いずれも糸や繭を扱う商店で使われていたものです。

最初と二枚目の写真は目方をはかるための秤(はかり)です。最初のものは皿に繭などを乗せ、二枚目の方が大きい秤で重いものをはかることができます。やはり農家に糸を買い付けに行く時に持って行きました。                                     

 

最後の写真はこの商家にあった大きな戸棚で、主に生糸を入れるのに使っていました。この戸棚は博物館の「地域の変貌」に展示しています。また、自然・歴史展示室の二テーマ「郷土の歴史」の明治時代のコーナーには、上溝市場開設に関わる書類なども展示されていますので、最初に紹介したパネルなどとともに見学いただければと思います。                 

カテゴリー: 考古・歴史・民俗 | タグ: | 博物館収蔵資料紹介~糸繭の商い はコメントを受け付けていません

意外ときらびやかな、イネ科の雑草

秋も深まり、博物館お隣の樹林地では、こんな植物が元気に咲いています。

人の目線では見過ごしてしまいそうな植物ですが・・

チヂミザサと言いますが、咲いている、と言っても、花がわかりにくいですね。それもそのはず、イネ科の植物なので、花弁はありません。しかし、ルーペを使ってよく見ると、この花は結構きらびやかです。

チヂミザサの花

さらに拡大してみると・・

雌しべの柱頭が羽根のように広がります

花弁はありませんが、雌しべの柱頭が二又に分かれ、ふさふさと羽毛のように広がっています。拡大してみれば、という条件付きですが、この花を見ると思わず「ゴージャス!」と言いたくなります。
ところで、このチヂミザサは、ひっつき虫(果実が動物の毛などにひっついて運ばれる植物)です。花が終わり、果実が実ると、芒(のぎ:イネ科の花や果実につく針状の毛)などにベトベトした粘液がつきます。

実ったチヂミザサ 芒がベトベトしているのがわかります

靴や服につくと、払ってもバラバラになって落ちにくい、ちょっとやっかいなひっつき虫でもあるのです。

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , | 意外ときらびやかな、イネ科の雑草 はコメントを受け付けていません

博物館実習生による実習生展示が開催中です!

博物館には学芸員がおり、資料の収集保管・調査研究・展示教育普及に関わる専門的業務を行っています。
当館では6分野で9名の学芸員が在籍し、各学芸員ともに大学の学芸員課程を修了し、学芸員資格を持っています。

毎年、様々な大学からおおよそ20名の学生を受け入れ、8~9月の期間に9日間の学芸員実習を行っています。そしてその集大成が実習生による展示制作です。いわば学芸員の卵による労作です。

今年は特別展示室で10月16日まで展示中します。
いずれも各分野の学芸員が指導したもので、資料を主役として何を伝えたいのか、端的に分かりやすくするにはどのようにしたらよいのか。展示を見るのではなく、「見せる」ためにどの資料が適しているのか。適切な展示構成や資料の選択、パネル等の作成など、決めるべき項目が多数あります。

生物分野と考古分野です。

地質分野と天文分野です。

民俗分野です。

おおよそ3日間の期間で作成したもので、苦心の結果まとまりのある構成により、展示から伝えたいことがよく表現されています。
各分野の実習生のメッセージもありますので、ご来館の際にはぜひご覧ください。

カテゴリー: 天文, 生きもの・地形・地質, 考古・歴史・民俗 | 博物館実習生による実習生展示が開催中です! はコメントを受け付けていません

クサギの果実

7月末にこのブログで開花の様子をご紹介した、クサギが果実を実らせました。

クサギの果実

通常は10月に入ってから結実しますが、博物館お隣の樹林地で、1株だけ一足先に実っていました。萼片(がくへん)が赤く染まって星形に開き、黒紫色の果実が映えるしくみです。
まだ開いていないのは、果実が熟すのを待っているのでしょう。

開きかけている果実

すぐそばでは、オトコエシが咲いています。

オトコエシの花

ヤブマメも次々に開花しています。あまり風情のない種名ですが、花は秋晴れの青空がよく似合う、とても可憐な色合いです。

ヤブマメの花

台風の多い秋ですが、その台風にせかされるように季節が進んでいるように感じられます。

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , | クサギの果実 はコメントを受け付けていません

鳥のように飛ぶ蛾

9月26日、市内の公園に咲くタイワンホトトギスの花に、小さな鳥のように見える虫が飛んでいました。

タイワンホトトギスとホウジャクの一種

美しい色彩と顔つきが、アメリカ大陸に多くの種類が知られるハチドリのように見えます。しかし、これはれっきとした昆虫で、ホウジャクという蛾の仲間の一種です。ホウジャク(蜂雀)と名にあるように、実際はハチに擬態していると言われています。それでも、その動きはまるでハチドリのようで、高速で翅(はね)をはばたかせてホバリングしながら、タイワンホトトギスの花に長い口吻(こうふん)を差し込んで蜜を吸っていました。

長い口吻を花の奥へ差し込みます

ホウジャクの仲間にはいくつかの種類が知られていますが、この飛翔写真では種類までは確定できませんでした。また、この仲間は「空飛ぶエビフライ」とも言われることがあります。腹部の先が扇状になっていて、それがエビフライのしっぽのように見えるからです。

腹部の先は、鳥の尾羽のようにも見えます

眼もちょっと鳥のように見えますが、これは偽瞳孔です。複眼が、その構造上、瞳孔のように見えているもので、カマキリやキリギリス、ナナフシの仲間などでもよく知られています。
蛾のイメージを根底から覆すようなホウジャクや、近縁のオオスカシバなどの蛾の仲間は、意外と身近な昆虫です。穏やかに晴れた日中などに公園や花壇の花をよく訪れるので、探してみてはいかがでしょうか。

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: | 鳥のように飛ぶ蛾 はコメントを受け付けていません

博物館収蔵資料紹介~蚕の種屋の道具

相模原は古くから養蚕が大変盛んで、博物館の自然・歴史展示室でも蚕が桑(くわ)を食べて成長して繭(まゆ)を作り、その繭から生糸にするまでの道具を展示しています。次の写真は、展示室の「くらしの姿」コーナーの展示の様子で、多くの養蚕用具が見えています。                 

 

博物館では展示してある資料のほかにも、多くの方から寄贈いただいた、養蚕に関わる道具をはじめとした資料を保管していますが、その中にあまり見慣れないものとして、蚕の種屋(たねや)で使われた道具があります。

蚕の卵のことは種(蚕種・こだね)と呼ぶことが多く、この蚕種は、当時の法律によって一般の農家で作ることはできず、専門の種屋(たねや)で作った蚕種を買って蚕を飼いました。種屋は各地にいて、次の写真は、いずれも中央区上溝で大正時代から昭和10年代まで営業していた「国富館(くにとみかん)」の資料です。

蚕の卵は、古くは紙に産み付けさせましたが、次の写真の一番左がヒラヅケ、その隣りがワクセイです。ヒラヅケは紙一面に卵があり、ワクセイは28ある枠の中に産み付けてあります。ワクセイの隣りのバラダネは、薄い種箱の中に卵が一つずつバラの粒になって入っています。ヒラヅケやワクセイから次第に、種箱のバラダネに変わっていきました。なお、一番右側は、国富館でこうした種紙を入れて運ぶのに使った箱です。                 

 

種屋では、雄(おす)と雌(めす)を分けて交配させる必要がありますが、繭を見ただけではなかなか雌雄が分かりません。しかし、雌の繭の方が雄より大きいため、雌雄鑑別機(しゆうかんべつき)にかけて雌と雄を分けました。この雌雄鑑別機は回して使い、その動力として使ったのが二枚目の写真の原動機(げんどうき)です。ただ、これでは正確に分けられないので、第二次世界大戦後には使われなくなりました。                 

 

次の写真は、国富館ではなく座間市で種屋をしていた方からいただいたもので、近在では座間は種屋が比較的多くいた地区でした。蚕の種を洗う道具で、卵を入れて洗うと悪いものは浮いてきて良い卵だけ残ります。セルロイド製で細かい穴がたくさん開いており、水が切れるようになっています。

この家では、昭和12年(1937)の陸軍士官学校の移転に伴って、所有する桑畑が用地にかかって養蚕ができなくなり、蚕種屋もやめざるを得なくなったそうです。寄贈当時は市内中央区相模原二丁目にお住まいでした。                  

 

今回取り上げた資料は、一般の農家で使うものではなく蚕種屋用の特別な養蚕道具ですが、博物館では地域で大変盛んだった養蚕を知り、伝えるために、幅広く関連する資料も収集してきました。今後ともそうした資料を含めて紹介していきたいと思います。

カテゴリー: 考古・歴史・民俗 | タグ: | 博物館収蔵資料紹介~蚕の種屋の道具 はコメントを受け付けていません

生きものミニサロン「きれいなクモと、クモの巣を観察しよう!」を実施しました

9月24日、恒例の生きものミニサロンを実施しました。今回のテーマは、「きれいなクモと、クモの巣を観察しよう」です。ただし・・・外は台風15号の接近で強い雨が降っています。そこで、前半は生きものの体のつくりについて、タヌキとハシブトガラスの標本を使ってミニレクチャーを行いました。

私たちのヒザはここかな?

タヌキのヒザはどこにあるのかな?かかとはどこ?そんな質問やクイズを出しながら私たち人間とタヌキの、骨や関節の使いかたの違いなどを確認しました。

タヌキのヒザはここ!

続いて、今回の主役であるクモの観察です。まず、参加者のみなさんにクモの絵を描いてもらいました。描くときのルールは「丸と線だけで描く」です。つまり、略式的に描くことで、体のつくりを明確に表現することになります。

描けました!

これは、じつはとても難しいお題で、大人でもほとんどの人が正確には描けません。絵を描いたところで、実際に外へ出て観察します。

ジョロウグモを観察

観察するのは、入口の、屋根のあるコリドー沿いに網を張るジョロウグモです。

ジョロウグモがたくさん巣を張っています

観察してみると、体がどんなふうに分かれているのか、脚の本数とそれがどこから出ているのかなどいろいろなことがわかります。
観察した結果を再び描いてもらい、それを室内にもどって確認します。

マグネットを使って確認

マグネットで正しい構成を確認します。
ふだん、じっくりと観察する機会の少ないクモですが、今回はじっくりと見ていただきました。そして、家の中にいるクモの多くが、ハエやカ、ゴキブリなどの衛生害虫を食べてくれることを紹介して終了しました。終了後、ふだんあまり間近でみることのない標本に、みなさん興味津々でした。

標本に興味津々

次回は10月22日(土)の実施です。市内にある麻布大学いのちの博物館の展示解説サークルであるミュゼットとコラボレーションして実施します。また、この日はお向かいのJAXAが特別公開を開催し、当館も会場となります。対面でのリアル会場の開催は3年ぶりとなり、かなりの人出が予想されますので、事前にホームページで駐車場などご確認の上ご来館ください。

カテゴリー: 今日の博物館, 生きもの・地形・地質 | タグ: , | 生きものミニサロン「きれいなクモと、クモの巣を観察しよう!」を実施しました はコメントを受け付けていません

地質分野実習 ~展示制作編~

こんにちは!地質分野の実習生です。

野外実習から始まった展示制作ですが、いよいよ展示が完成し、9月17日から一般公開がはじまりました!

実習生同士で相談、協力しながら無事に皆さんに見てもらえる展示を作ることができました。

展示を作ることは初めてなので、完成するまでどのようなものになるのか不安でした。しかし、企画時にイメージしていたものを上回る展示を作ることができて、達成感と嬉しい気持ちでいっぱいです。

地質分野の展示では、主に3つのことを意識しました。

1つ目は、資料を採集した場所の環境をイメージしてもらうために写真を多く使用しました。

2つ目は、展示資料の関係性を分かりやすくするためにリボンを使いました。

3つ目は、手書きの解説パネルを使用し親しみやすく興味を引くような工夫をしました。

実習最終日には、実際にお客さんに向けて私たちの展示の解説を行いました。伝えたいことが正しく伝えられるのかとても緊張しましたが、お客さんとの会話を大切に解説を行えたのではないかと思います。

ぜひ、私たちが制作した展示『層って面白そう!~上の方が古い相模原のふしぎな地層~』を通じて、地質という「足の下の世界」にも注目してもらえると嬉しいです。

カテゴリー: 生きもの・地形・地質 | タグ: , , , | 地質分野実習 ~展示制作編~ はコメントを受け付けていません

豪雨の合間に

9月19日、本日は月曜日ですが、祝日のため開館しています。相模原市内も台風14号の影響で断続的な豪雨に見舞われていて、交通機関などへの影響が心配です。
そんな中、突然空が明るくなって雨がやむ瞬間があり、博物館の前庭の様子を見に行きました。春先に咲いたコブシが、その名のとおり、拳(こぶし)のようなゴツゴツした果実をつけています。

コブシの果実

今、ジョロウグモが脱皮を繰り返しながら大きく成長しているところです。大きくて黒、黄、赤の三色が目立つのはメスです。

ジョロウグモ(メス)奥に小さく見えているのがオス

さすがにこの雨の強さに、網がだいぶ壊れています。修復している個体もいれば、じっと雨に耐えるように網の中心にたたずんでいる個体もいます。ジョロウグモの網は何層かの立体構造になっていて、その一つにはたいていオスの個体がいます。上の写真でも、奥に小さなオスが見えます。
博物館の建物の軒下に作られた巣は、あまり壊れずに雨粒をまとっていました。

雨粒をつけたジョロウグモの巣

これから風雨がさらに強まる可能性があり、この網も耐えられるかわかりません。それでも毎年、台風のシーズンを乗り越えて秋の終わりまで大きな巣が見られるので、台風で壊れてもへこたれないようですね。
博物館は、明日20日は祝日の翌平日のため、休館となります。

カテゴリー: 未分類 | 豪雨の合間に はコメントを受け付けていません