博物館収蔵資料紹介~湯たんぽと行火(あんか)

前回、冬の寒い時に布団(ふとん)の足元に入れる湯たんぽを紹介しました。この湯たんぽはブリキ製でしたが、このような金属製になる前には陶器製のものが使われていました。

写真の湯たんぽは南区下溝の女性からの寄贈で、第二次世界大戦前に出産した際に、淵野辺の実家の父親が12月で寒いだろうということで持ってきてくれたものです。夜に布団に入れると、朝には湯たんぽの中の湯がぬるくなっていて、ちょうど顔を洗うのによかったそうです。                  

 

次の写真はいずれも緑区橋本の同じ家からいただいたもので、向かって右側が陶製、左側がブリキ製です。陶製の湯たんぽは円筒型のほかに、ブリキと同じく波のような形のものもあり、この方が表面積が広く暖かい部分が多くなります。                  

 

昭和30年(1965)代になると、こうした湯たんぽに代わって豆炭(まめたん)を入れた行火(あんか)が使われるようになります。写真の行火は、やけど防止の専用カバーが付いていて、湯たんぽと同じように行火が直接肌に当たるのを防ぎました(収集地・南区相模台)。カバーは子どもの古着などで、自家で作ることもありました。                 

 

次の写真は中に豆炭を入れたところです(収集地・中央区星が丘)。豆炭は石炭(せきたん)の粉を練り固めたもので、燃える時に煙(けむり)が出ず、また、一晩中暖かいという長所がありました。参考に、左側に豆炭を置いて撮影しました。                   

 

さらに電気で温める行火も使われるようになり、写真の製品名は電気こたつで、昭和30年代に購入して平成になる頃まで使用していたそうです(南区相模台)。                  

現在では電気毛布をはじめ、羽毛(うもう)布団なども登場して寝具の保温性を高めていますが、かつて寒い夜を暖かくして寝るために使われた道具にも移り変わりがありました。

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久しぶりの子ども鉱物教室 ー1日目

7月30日に子ども鉱物教室「鉱物のふしぎ」を、3年ぶりに開催しました!

2週連続の教室で、ミョウバンの結晶づくりと鉱物の硬さ比べをします。初日はミョウバンの結晶づくりを行いました。

準備作業はボランティアの方々にお願いしました。

最初に今日の作業の全体の流れと鉱物について簡単に説明しました。

まず、結晶のもとになる種結晶(たねけっしょう)を準備します。種結晶は小さなミョウバンの結晶です。エナメル線を種結晶に結び付けますが、種結晶は小さいので、意外と難しいです。

エナメル線に付けた種結晶は、ビーカーのちょうど良い位置にくるように調整して厚紙に固定します。

ミョウバンの粉末を熱湯に溶かして飽和水溶液をつくります。混ぜているうちにお湯の温度が下がり、溶けにくくなるので、ホットプレートで温めながら完全に溶かします。

適度な温度にまで冷めたところで、種結晶を入れます。あとは結晶が大きくなるのを待つだけです。

30分くらいたつと、少し結晶が大きくなっているのが分かります。

1週間、博物館の戸棚の中で保管しておきます。

8月6日に成長した結晶を取り出して観察します。どれくらい大きくなっているのか、楽しみです。

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考古分野ミニ展示開催中です!

黒曜石をご存じのかたは多くいらっしゃると思います。それではその出来方や具体的な産地についてはいかがでしょうか?
黒曜石とは、火山の溶岩が急激に冷えて固まったもので、鋭く割れる性質があることから、旧石器時代や縄文時代を中心に石器の材料として多用されました。

長野県和田峠産の黒曜石

黒曜石の産地は日本の北海道から九州まで80カ所ほどあり、近年の分析技術の進歩により、どこで採れたものか産地が推定できるようになりました。その結果、黒曜石の産地推定は、昔の人々がどこで採れた黒曜石を利用していたのか、当時の人々の動きや、黒曜石の流れについて考える一つの視点になっています。

縄文時代の原石・石核 こちらも展示中です!

今回、考古分野のミニ展示では「遠くからやってきた黒曜石―旧石器・縄文時代の石器から―」として、旧石器時代や縄文時代の黒曜石を展示し、黒曜石の産地、産地分析の方法、黒曜石を利用した石器を展示しています。

入口から進んでいただいて、特別展示室入口近くです。

旧石器時代の狩りの道具であるナイフ形石器、石槍(いしやり)の鋭さや、産地ごとの透明度、光沢、白い粒子の具合など、じっくり見学していただければと思います。
7月30日(土)から9月25日(日)まで博物館エントランスで開催しています。

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セミの羽化の観察会

8月に入りました。本日1日は月曜日ですが、夏休み期間中なので開館しております(8月28日まで博物館は無休です)。
さて、7月30日に、大野南公民館主催の「セミの羽化観察教室」(場所:麻溝公園)に講師として参加してきました。最初に、セミの生態や、なぜ夜に羽化をするのかなどお話しした後、まだ明るいうちにセミの抜け殻探しをしました。

葉っぱの裏側についていることが多いね!

最初はなかなか見つかりませんでしたが、目が慣れてくると、次々と見つかります。壊さないように大事に持ってきてねとお願いしたら、「こうすれば壊れない!」と素敵な運び方を発見してくれた参加者がいました。

これなら壊れず持ち運べます!

みんなで持ち寄った抜け殻を見て、セミの種類を識別しました。今回はすべてがアブラゼミでしたが、これから季節が進むとツクツクボウシなど他の種類の抜け殻も見つけやすくなります。博物館特製の識別シートを配ったので、家でもチャレンジしてくれるでしょう。
そして、羽化観察の本番開始です。大人でも「動いているセミの幼虫を見たことがない」という方が多く、羽化の場所を探してゆっくり歩く幼虫を見つけると、とても感激していました。

どこまで登るのかな?

夏の夜なのでヤモリも活発に動いていて、観察することができました。

木の幹を走り回るヤモリもいました!

なかなか羽化が始まりませんでしたが、ついに参加者の小学生が、背中が割れているアブラゼミを発見してくれました。

羽化が始まったアブラゼミ

翅(はね)が出てきて、全身が青磁器のような美しい色の現れる様子に、みなさん息をのみます。

半身が出たところ

ただし、残念ながら終了時刻となり、駐車場の閉場時間の都合でこの日の観察はここまで。でも、身近な場所で夜の8時前後にセミの羽化を観察できることがわかったので、参加者のみなさんはきっとまた羽化観察にご近所へ出かけてくれることでしょう。そんなきっかけづくりになれば嬉しい限りです。
博物館へ戻り、帰りがけにお隣の樹林地をのぞいてみると・・

カラスウリの花

カラスウリがこの日も妖艶な姿で咲いていました。
真夏の夜の自然観察はやっぱりおもしろいですね。

セミの羽化の様子については、昨年公開した生きものミニサロンウエブ版で映像を見ることができますので、ぜひご覧ください!

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決めつけられない、植物の匂い

博物館お隣の樹林地では、クサギの花が咲いています。

クサギ

猛暑の中ですが、スッと立った雄しべと純白の花弁が爽やかな花です。近づくと、甘い匂いが漂います。

甘い匂いを放つクサギの花

芳香と表現できる香りなのに、どうしてクサギ(臭木)なのかというと、葉の方にちょっと強い匂いがあるからです。ただ、その匂いも人によっては「ピーナッツバターみたいな良い香り」だったり、「カメムシ臭い」だったり・・匂いの感じ方は人それぞれです。
ちなみに、クサギは秋の終わりにこんな果実を実らせます。

花の写真と同じ株の、昨秋の果実

萼片(がくへん)が星形に開いて赤く染まり、その中央に黒く熟した果実が配置されます。鳥に見つけて食べてもらおうという見事な造形です。クサギは花も果実も自然観察の素材として抜群の存在感です。
さて、博物館駐車場のフェンスでも、白い花が咲いています。ヘクソカズラです。

ヘクソカズラの花

こんなに可憐な花なのに、こちらも名前がいかにも臭そう・・。でも、この匂いも人によって感じ方は様々です。自然観察会などで匂いの感想を聞いてみると、どちらかというと好き、という人が一定の割合でいます。こうして考えてみると、クサギもヘクソカズラも、ちょっと罪深い命名ですね。

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博物館収蔵資料紹介~寝る時の道具

今回は寝る時に用いられたものを紹介します。

最初の写真は「箱枕(はこまくら)」です。箱型の台の上に、布を袋にして籾殻(もみがら)などを入れたものを乗せています。袋の部分に和紙を巻き、また、台が高くなっているのは布団(ふとん)の外に置くためで、結った髪型が崩れないように首の付け根にあてがって使いました。女性の嫁入り道具などとしてあり、これも昭和17年[1942]に南区古淵から緑区下九沢に来られた方が持ってきたものの一つです。                 

 

次の写真は袖がついた着物のように見えますが、寝る時に上掛けにする「掻巻(かいまき)」です。中に綿が入り、肩口をすっぽり覆うため暖かく、防寒に優れていました。やはり嫁入り道具の一つで、女性の客用として持参し、自分たちが使うものは別にあったそうです。元々は東京にお住まいだった方からの寄贈です(収集地・中央区淵野辺本町)。                  

 

前回の蝿(はえ)とともに嫌がられたのが蚊(か)です。特に寝ている間に蚊に刺されないように部屋に吊る蚊帳(かや)は、かつて夏の暑い夜には戸を開けて寝ることも多かった生活ではなくてはならないものでした。なお、写真は収納してある状態です。

この蚊帳は南区東林間で使われたもので、昭和30年[1955]代の東林間はまだ林などが広がっていて蚊も多く、昭和35年頃に町田で購入されたものです。                  

 

そして次の写真は、博物館で毎年秋から冬にかけて実施している「学習資料展」において、実際に蚊帳を吊った様子です。見学した子どもたちに、この中に布団を敷いて寝ていたことが分かるように展示しました。なお、学習資料展で、毎年蚊帳を展示しているわけではありませんのでご注意ください。                  

 

冬の寒い夜に布団の足元に入れたのが「湯たんぽ」(緑区二本松)です。写真は金属製の湯たんぽで中に湯を入れ、やけどをしないようにタオルなどに包みました。また、風邪をひいたりした時にも使われました。                  

箱枕や掻巻に対して、蚊帳や湯たんぽは子どもの時に使った記憶がある方もまだ多いのではないでしょうか。今後ともさまざまなテーマのもとに収蔵資料を紹介していきたいと思います。

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真夏の夜の女王

博物館お隣の樹林地に、白くて華奢(きゃしゃ)なつぼみがついていました。つる植物なのですが、このつぼみは、昼間は開きません。

一見華奢に見えるつぼみですが・・

夜、真っ暗な中でこんな風に開きます。

カラスウリの花

カラスウリの花です。レースをまとったような独特の花は、昼間のつぼみからはちょっと想像できない豪奢(ごうしゃ)な咲き姿で、女王と呼びたくなります。ちなみに、カラスウリはその名のとおり、ウリの仲間です。晩秋に実る果実は、目の覚めるような朱色で、紅葉にも負けない華やかさです。

晩秋に実るカラスウリの果実

夏の夜の自然観察は、カラスウリのほかにもいろいろと見どころがあります。これから少しずつこのブログで紹介していきたいと思います。

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当館の土器・土偶が厚木市へ。

当館の考古資料が7月23日(土)からあつぎ郷土博物館で展示されます。

具体的な資料は、大日野原遺跡(おびのっぱらいせき)出土の人体文深鉢形土器、
寺原遺跡出土の線刻画土器、橋本遺跡出土の土偶(以上、市指定文化財)、川尻遺跡出土の有孔鍔付(ゆうこうつばつき)土器、田名花ヶ谷戸遺跡出土の土偶などです。いつもは常設展示室で展示している資料で、見覚えのある方もいるかもしれません。

大日野原遺跡出土の人体文深鉢形土器(当館寄託個人蔵)

寺原遺跡出土の線刻画土器(当館所蔵)

 

橋本遺跡出土の土偶(当館所蔵)

 

展示のタイトルは「令和4年度特別展 有孔鍔付土器と人体装飾文の世界」です。有孔鍔付土器(ゆうこうつばつきどき)を中心にその類例や人体装飾文(じんたいそうしょくもん)を紹介し、豊かな縄文文化を学びます。
ここでは資料の貸し出しの様子をお伝えします。

7月13日に資料の貸し出しが行われました。

資料の観察中

はじめに資料の状態を点検します。さらに土器の部分と石膏などで復元された部分なのか、しっかり確認します。資料のどこを守る必要があるのか、把握するためです。

その次は梱包(こんぽう)です。移動時に破損が生じないよう、「布団」で保護します。
ここでいう「布団」は綿を和紙で包んだもの、下の写真の白い長方形のものです。

丁寧に包んでいきます。

布団の固定は紙紐を使います。

資料が動かないよう隙間に布団を入れます

その後、コンテナに入れます。コンテナの内側にも布団が敷き詰められ、資料に衝撃が伝わらないよう対策されています。

無事、資料の貸し出しが終わりました。

どのように展示していただけるのか、大変楽しみです。皆さんもぜひご覧ください。

あつぎ郷土博物館:https://www.city.atsugi.kanagawa.jp/atsugicitymuseum/index.html

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オオヤドリカニムシ

7月16日、生きものミニサロンの参加者のお一人が、自宅の庭で拾ったというアカネズミを検体としてご持参くださいました。ネコが捕まえて持ち込んだようです。野生の哺乳類は、たとえネズミやモグラであっても許可なく捕獲することはできないため、こうした検体のご提供は博物館にとってとても重要です。ありがたくいただきました。その際に「カニムシのようなものがたくさんついていました」とのことだったので、早速検体を調べてみると・・

オオヤドリカニムシ 左側の脚に餌?のダニがついていました

まさしくカニムシ!土壌動物としても人気があり、観察会でカニムシが出現すると大変盛り上がります。それがなぜ、ネズミの遺体に?と疑問がわき、「がろあむし展」でもお世話になった土壌動物を得意とする写真家の吉田譲さんに問い合わせました。するとすぐに「オオヤドリカニムシです!」とのお返事がきました。“宿り”と名につく生物は寄生性のものが多いのですが、このカニムシは寄生するわけではなく、ネズミなどにつくダニを食べているのではないかと推測されています(吉田さんによると、実際は捕まえられるものなら何でも食べるとか)。そのため、食料が安定して供給されるネズミに、コバンザメのようにくっついていたようです。吉田さんも、ネズミの死体にたくさんくっついているのを見たことがあるそうです。それにしてもこのカニムシ、大きいです。

メモリは0.5ミリメートル刻みです

体長は4.5ミリメートルくらいあります。野外で見るものはこの半分くらいの大きさのものが多く、なかなか迫力のある姿ですね。カニムシの仲間は昆虫ではなく、4対の脚に、大きなハサミのついた触肢を持ち、大きな分類ではクモやサソリ、ダニなどと同じ仲間になります。
ふだんあまり見る機会の無い生物のうえ、メカニックな体つきがかっこよく、一緒に観察したミニサロンのスタッフのみなさんと大いに盛り上がりました。

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市史ミニ展示「学び再編-終戦直後の暫定教科書-」を展示中です。

7月16日(土)から、常設展示室内で暫定教科書(ざんていきょうかしょ)などをテーマとしたミニ展示を行っています。

聞き慣れない言葉ですが、これは終戦直後の教科書の一種です。
墨塗り教科書は比較的有名であり、墨塗り教科書の後に新聞用の更紙(ざらがみ)を用いて作られたものが、暫定教科書です。

こちらは墨塗り教科書です。

終戦直後は、占領軍による教育方針や内容について指令が発せられ、軍事的な内容が削除されました。その後、教育内容が変わり教科書が一新されますが、物資難のため新聞用の更紙が使用されました。その後、新教科書となり、次第に挿絵やカラー印刷が徐々に増加していきます。

 

展示の様子 ケース内中央が暫定教科書

戦後の社会情勢がよくうかがえる資料ですので、ぜひご覧ください。

 

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