博物館収蔵資料紹介~猫行火(ねこあんか)と炬燵(こたつ)

前回は、布団(ふとん)に入れる暖房用の湯たんぽや行火(あんか)を取り上げましたが、次の写真は「猫行火(ねこあんか)」あるいは「猫火鉢(ひばち)」と呼ばれるもので、「猫」の名称は、元は招き猫の形を模して造られたことからと言われています。

中に見える鉢に炭や豆炭(まめたん)を入れて布団(ふとん)を掛けて使い、寝床に入れるほかにも動かすことが可能で、一人用の暖房として用いられました。写真のものは、昭和13年(1938)頃に寄贈していただいた方の近所の商店で売られていて、昭和20年(1945)代まで使っていました(収集地・中央区上溝)。

 

猫行火と同じようなものに「櫓炬燵(やぐらごたつ)」「置き炬燵」があり、木製の枠の中に火入れの鉢を入れてやはり布団を掛けます(緑区上九沢)。写真のようなものはどこでも動かすことができますが、古い家にあった囲炉裏(いろり)など、部屋の一部を掘った「掘り炬燵」の上側に乗せる大きな枠のものは決まった場所で使い、四方から暖まることができました。                  

 

次の写真は、掘り炬燵の中に入れる電気を熱源とする置き炬燵です。昭和30年(1955)代に東京で購入し、その後、南区上鶴間団地に引っ越してからも使用していたそうです(南区相南)。               

 

そして他の道具と同様に、次第に家電製品の炬燵が普及するようになります。次の写真は自然・歴史展示室で展示している電気炬燵で、前の櫓炬燵と同じ家で使われていました。しかし、かつてはどの家にもあった電気炬燵も、和室の減少などに伴って見られなくなっているようです。皆様の家ではいかがでしょうか。                 

 

行火や炬燵の他にも、暖房用具として火鉢などがあります。手をかざして暖まるほか、暖房だけでなく、お湯を沸かしたり食べ物を焼いたりすることもできます。写真の木製の角火鉢(かくひばち)は、内側にブリキを張っています(中央区上溝)。                 

 

火鉢にはさまざまな種類があり、次回は火鉢の火を扱う時に用いたいくつかの道具などを含めて紹介します。

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台風の後の森で

8月13日、台風8号の接近で相模原市も嵐となりました。翌14日は、台風一過という爽やかさは無いものの、晴れて蒸し暑い真夏が戻ってきました。こんな時は、博物館お隣の樹林地は生きものの気配が濃くなります。目の前を高速で何かが飛んだと思ったら、クズの葉の上にピタリととまりました。

キマダラセセリ

キマダラセセリです。一見地味で小さな虫ですが、よく見るとオレンジ色の翅(はね)と大きな目、モフモフの毛でおおわれた姿がかわいらしいチョウです。

キマダラセセリ 止まり方もカッコイイ!

すぐそばのクズのつる上では、オジロアシナガゾウムシが交尾していました。

オジロアシナガゾウムシ

なぜか、クズの葉の上にツクツクボウシの抜け殻がありました。セミの羽化は重力を使うので、地面に対して垂直か、または逆さまにならないと抜けません。葉の上面の、しかも頭を斜め下に向けているので、ふつうに見る抜け殻とは真逆の向きです。こんな姿勢ではうまく羽化できないように思いますが・・

通常と逆向きの抜け殻の理由は・・

これにはちょっと説明が必要です。クズなどのマメ科植物の多くが、葉の調位(ちょうい)運動をします。これは、光合成の効率を上げるために、太陽光との角度を調節するように葉の向きを変える運動です。おそらくこの葉は、ツクツクボウシの幼虫が羽化場所を求めて歩き回っている時は、葉が垂れ下がり、ツクツクボウシは地面と垂直にとまれたのでしょう。
調位運動は太陽の向きや温度などと関係するため、単純に夜は垂れ下がって昼間は開くというような動きではありません。写真の場所も林内で日陰になるため、どのような動きをしていたかわかりませんが、ともかく、ツクツクボウシが羽化するには好都合の向きだったことは間違いないでしょう。
そんなことを考えていたら、視界の隅に目線を感じました。

葉の影からこちを見ているのは

ニホンカナヘビが、こちらを伺っていました。そっと回り込んで、全身が見える位置から撮影できました。

ニホンカナヘビでした!

気持ちのよい場所だったのか、カメラを近づけると目線は向けるのですが、逃げません。邪魔をしないよう、撮影後はそっとその場を離れました。

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シオカラトンボ

博物館の駐車場周辺に、水色のトンボがとまっていました。

シオカラトンボ(オス)

シオカラトンボです。ふつう、水田の周辺などに多い水辺のトンボです。水田も川も無い博物館周辺になぜいるのかというと、どうやら駐車場の周囲の排水溝で発生しているようです。ちなみに、近い仲間のオオシオカラトンボもよく見られます。

オオシオカラトンボ(オス)

腹部が太く、目が黒く見えるのがシオカラトンボとの識別点です。シオカラトンボは最初の写真のように、腹部が細く(正確には翅(はね)のうしろで急に細くなる)、目が水色に見えます。オオシオカラトンボという名前からは大きさに差があるように感じられますが、実際はほとんど同じくらいの大きさです。

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【現在展示中!】巡回ミニ展示「尾崎行雄の不戦運動」を開催しています。

緑区又野出身の尾崎行雄をみなさんはご存じでしょうか?
「憲政の神様」「議会政治」の父と呼ばれる明治~昭和の政治家であり、「2つのフセン」が有名な活動として知られています。「フセン」とはすなわち、「普通選挙」と「不戦」です。

尾崎行雄の不戦運動について、8月8日(月)から8月19日(金)まで、相模原市立総合学習センター1階の交流ラウンジに展示しています。

展示状況

右下は演説する尾崎

尾崎の貴重な肉筆を写真で紹介(右)

尾崎は、戦争にかかる予算を減らし教育や農業などの予算を増額せよ、と訴え、他国を侵略するのではなく、国民が住みやすい国となるような政策を行うべきだとしました。
終戦記念日を8月15日に控え、尾崎の不戦への強い思いを紹介します。

また、尾崎行雄について詳しく知りたい方は、又野にある尾崎咢堂記念館へぜひ足を運んでみてください。

尾崎咢堂記念館(相模原市の公共施設ページ)

尾崎咢堂記念館(博物館ホームページ)

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今週末も、セミの羽化観察会

先週に引き続き、8月7日、市内南区の公園で、地域のサッカーチームの小学生たちとセミの羽化の観察会を行いました。まずは西日の射す森の中で、セミの抜け殻を探します。

抜け殻探し

意外と高い場所に抜け殻があって、羽化が観察できるかちょっと不安になりましたが・・

手が届かないような場所に抜け殻が・・

抜け殻を探しているさなかに、すでに羽化を始めている幼虫を発見!ただし、良い場所を確保できなかったのか、地面に落ちてしまっていました。そこで、そっと拾い上げ、参加者の小学生に持ってもらいました。羽化は重力を使います。初めは上体を抜くために逆さの状態で頭を真下へ向けて反り返します。羽化しやすい姿勢に角度を保って持つのがちょっと大変です。担当してくれた小学生もさすがに疲れてきたので、交代しました。

羽化を慎重にサポート

腹部が概ね抜けてくると、今度は腹筋運動のように上体を持ち上げて、頭を上にしてつかまります。その状態でどこか良い場所へとまらせれば、安定させられます。じっくりその時を待っていると、セミがグイッと頭をもたげました。そこで、近くの杭に頭を上にしてつかまらせることができました。

翅がちゃんと伸びたので一安心 アブラゼミでした!

翅(はね)が伸びる様子は神秘的です。みんなで息をのんで観察しました。
他にも羽化途中のセミがいないか探すと、小学生が早速見つけてくれました。こちらはツクツクボウシです。

透明な翅が美しいツクツクボウシ

さらに探索していると、樹液の出ているコナラにカブトムシが!

カブトムシを見つけてしまいました!

やっぱり昆虫の王、カブトムシは大人気です。3匹のオスがいて、樹液をなめる様子を観察したり・・

樹液に頭を突っ込んで舐めている様子を観察

戦わせてみたり・・

やっぱり最後はバトルを見たい・・

夜の自然観察を満喫して、終了しました。
身近な公園でもダイナミックな昆虫の観察ができます。みなさんもぜひチャレンジしてみてください。

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子ども鉱物教室2日目!! ~夏の鉱物硬さ比べ選手権大会開催!!!

こんにちは!!!地質分野の学芸員実習生です。

8月6日に実習実験室で2回目の「子ども鉱物教室」がありました。

1週間前につくっておいた結晶を取り出しました…!!!

さぁ~いよいよ一週間ぶりのミョウバンとのご対面。

1人1人取りに行きます。

「僕のミョウバンどうなってるかなぁ」緊張の瞬間…

エナメル線につけた種結晶(たねけっしょう)が大きく成長していました!種結晶が大きくなったほかにも、ビーカーの底に結晶ができていました。

結晶の大きさを比べてみたり、ルーペを使って結晶の形を見たり、成長したミョウバンをじっくり観察していました!

今回は1週間で取り出しましたが、何カ月も何年も保管するとこんなにも大きくなるんです!!

結晶との対面後は「鉱物の硬さ比べ選手権」の開催です!

6種類の鉱物と釘、つめの硬さを比べ順位をつけました。はたしてどの鉱物が1番硬かったのでしょうか⁈

みなさん一生懸命石をこすり合わせて、真剣に硬さを調べています。

そして緊張の答え合わせ。みんなの予想は当たったかなー??

学芸員からは「モース硬度(こうど)」と「誕生石」についてお話がありました。

2つの実験で、すっかり鉱物と仲良しになったみなさん。

身近な「石ころ」がもっと面白く見えてくるきっかけになるといいですね!

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星のストラップを作ろう

こんにちは。社会教育主事実習生です。

本日は中央エントランスにて、「博物館de夏まつり!伝統的七夕でワッショイ!」の最後のイベントとなる星のストラップ作りを行いました。

来場してくださった方の中には、七夕といえば7月7日であるのにどうしてまだイベントを行っているのか、と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。実は旧暦の7月7日は現在でいうところの8月上旬にあたり、当館では「伝統的七夕」をより身近に感じてもらうためにこのような企画を行っています。

博物館ではおなじみとなった、かわいいストラップ作り

星のストラップはシンプルな作りではあるものの、綺麗に形を整えるには少しコツが必要です。

このようなストラップができあがります!

60名の制限を設けたのにもかかわらず、年齢を問わず多くの方が参加してくれました。時に和気あいあいと、また時に真剣なまなざしで星を作っている皆さんの様子には何となく微笑ましさを感じました。

当館のプラネタリウムや天文展示室、またお隣の宇宙科学研究所に見られるように、この辺りには星や宇宙について学ぶことのできる展示や施設がたくさんあります。

今日「かわいい~!」と言いながら完成した星を見ていた小さいお友達が、いつか本当に星について興味を持ち、将来宇宙に携わる道へ進むようになることもそう遠い未来ではないように思います。

また、本日は博物館での最後の実習日でした。

学芸員資格を取る方々と共に博物館について学んだり、実際に企画の手伝いを行ったりしたことで、博物館の役割や地域とのつながり、またそこに携わる人々や参加する人々の声を生で聞くことができ、非常に大きな学びとなりました。

また、私自身地元がこの周辺であるため、小さい頃から目で、鼻で、肌で感じていたこの博物館に大学生になった今立ち返り、学べたことはとても嬉しく思います。

 

相模原市の歴史や文化財を収集・保管し、そして地域との交流を生み出す重要な立ち位置であるのはもちろん、静謐な空気をまとう常設展示コーナーの入口に立った時、ふと懐かしさを感じさせてくれるこの市立博物館に今度は職員として戻って来ることができるよう、これからも勉学に励みたいと思います。

 

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博物館の公衆電話、最後の日

8月5日朝、博物館1階エントランスの一画に公衆電話が設置されています。

8月5日の朝 1台の公衆電話がまだあります

かつて、駅の構内などにはずらりと10台以上の公衆電話が並び、商店の軒先に赤電話、街の歩道には電話ボックスがあるのが当たり前でした。しかし、携帯電話の普及により利用率が急激に低下し、今、公衆電話は街中からどんどん消えつつあります。
博物館には開館当初、2台の公衆電話が設置されていましたが、利用率の低下から1台になっていました。そして昨年、公衆電話を所管する総務省の設置基準が緩和されたこともあり、8月5日、ついのこの1台も撤去されることになりました。

※総務省の現在の設置基準:市街地以外の地域では、概ね2キロメートル四方に1台(緩和前は1キロメートル四方に1台)

カード挿入口とプッシュボタンがカッコイイと思えたのはひと昔以上も前・・

ここ数年は利用がゼロの月も多く、これも時代の流れと言えるでしょう。博物館の職員は、ぽっかり空いた公衆電話のスペースにちょっと違和感があります。

がらんと空いた公衆電話コーナー

でも、そのうちここに何が置かれていたのか、思い出す人もいなくなることでしょう。そういえば、まだあるうちに街中の電話ボックスの写真も撮っておかなくてはいけませんね。

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クイズラリーが始まりました!

みなさんこんにちは、社会教育主事実習生です。

社会教育士という資格を取るために市内の公共施設に伺い、地域の連携や事業について学んでいます。

さて、本日8月5日は市民学芸員の皆さんとクイズラリーのお手伝いを行いました。
博物館の常設展示内に設置されたパネルを見て六つのクイズに答えると、記念品や認定証がもらえる企画であり、館内では人気の定番企画となっているそうです。

クイズの答えは何かな?

クイズの内容はやりがいがあり、小さい子はもちろん大人の方でも楽しめるものとなっていました。また平日にもかかわらず、たくさんのお客さんが来てくれました!

全問正解!

クイズラリーは8月7日(日)まで開催します。どなたさまもぜひ参加しにいらしてください♪

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博物館実習が始まりました

8月2日から、博物館実習が始まりました。この実習は、大学で学芸員資格を取得するためのカリキュラムの中の、総仕上げともいえる必須科目です。今年度は県内外の大学から19名を受入れました。初日は、講義と館内の見学などが中心となり、相模原市立博物館の活動や施設の概要をみっちり学びます。

初日は講義と見学が中心です

そして、二日目の8月3日は資料取り扱いの実習です。人文系資料(掛軸など)、自然系資料(植物標本)、梱包作業(土器を用いた梱包)と、3班に分かれてローテーションしながら実習します。

掛軸の取り扱い 背中が緊張しています

押し葉標本の台紙貼り作業は、専門ボランティアの方から指導を受けます

本物の土器を梱包しています

三日目の8月4日は、展示解説実習です。各分野に分かれ、実習生が常設展示の資料の一つを選び、シナリオ作成から実際の解説まで行います。これがなかなか厳しい課題で、当館の展示解説は、資料を単に説明するだけではダメと、実習生へ初めに伝えられます。解説者と参加者(この場合は他の実習生)が時間を共有していることを実感できる方法と内容であることが求められます。

学芸員の指導を受けながら展示解説のシナリオ作り

1回リハーサルを行い、様々な改善点を受けて、再度、2回目に臨みます。

クイズやジェスチャーを交えながら解説を試みます

参加者との対話の中で、資料が内在する情報をどのように感じ取ったのかなど共有しながら進めば合格点です。

展示解説は、自分が心から伝えたいと思うことを伝えるのが一番大切です

緊張とプレッシャーの中でも実習生はがんばって課題をこなしていました。全体で同じ日程で動くのはここまでとなり、残りの6日間は8月下旬から9月下旬にかけて、各分野に分かれて実習を行います。

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