楽園の春

4月18日、緑区のある場所へ希少な植物の試料採集に行きました。
ここはまさに楽園。いくつかの絶滅危惧植物が自生し、そのうちの一つであるオカオグルマのDNA分析用の試料を採りました。これは、キク科の系統分類の研究を進めている大学からの要請なのですが、県内の絶滅危惧種の分類研究の進展はそのまま保全の基礎資料としてフィードバックされますから、こちらもできるだけ協力しています。

落ち着いた黄色の花のオカオグルマ

ちょうど花盛りで、澄んだ黄色の花が見事に咲き乱れていました。
こちらは絶滅危惧種ではありませんが、ヒメハギの花です。小さくてしゃがんで見ないと気付かないほどですが、見事な色合いです。

派手そうな形なのに1センチほどの小さな花のヒメハギ

サンプリングの後、近くの沢沿いの林道を歩きました。エイザンスミレがスミレにしては大柄な花を咲かせていました。

スミレらしからぬ葉のエイザンスミレ

こちらはミミガタテンナンショウ。まるで仲むつまじく語り合っているかのような咲き方でした。

たまたま向かい合わせに咲いていたミミガタテンナンショウ

少し足を伸ばして、石砂山の麓へ。満開のミツバツツジにギフチョウが訪れていました。もうシーズンも終盤となり、翅がだいぶ痛んでいますが、元気に飛び回っていました。

ミツバツツジにとまるギフチョウ

ミツバツツジは旧津久井町の花だったこともあり、この時期の津久井地域は家々の庭先が薄紫色に彩られます。
そして、前日の雨でできた水たまりのそばでは、ツバメが巣材の泥をせっせと集めていました。

巣材の泥を集めるツバメ

日々刻々と新緑が濃くなり、青葉の季節まであと少しです。

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環境学習セミナーを開催しました

博物館駐車場のヤマザクラが満開となりました。好みの問題ではありますが、青空が似合うのは、ソメイヨシノよりもヤマザクラだと思っています。ヤマザクラの桜吹雪の下に立つと、春爛漫のウキウキ感とはちょっと異なる、ザワザワとした不思議な感覚にとらわれます。まさに「桜の森の満開の下」(坂口安吾)の世界ですね。

赤く色づいた若葉とともに花が咲くヤマザクラ

さて今日(4月15日)は、相模原市環境情報センターが実施している自然環境観察員制度の環境学習セミナーを博物館大会議室で実施しました。最初に、桜美林大学リベラルアーツ学群の片山博文さんによる「ビッグ・ヒストリーと生物多様性」と題したご講演をいただきました。

新しい概念であるビッグ・ヒストリーのお話にみなさん引き込まれています

これまでそれぞれの時間軸で語られることの多かった宇宙の歴史と生命の歴史、そしてその未来について統合して考えていくという非常に刺激的な内容のお話でした。生物多様性の概念にも深く関わるため、みなさんとても熱心に聴き入っていました。
そして、このセミナーを博物館で行った理由でもあるのですが、今年度から自然環境観察員制度の定期的な植物調査として、「花ごよみ調査」を毎月1回、博物館周辺の樹林で実施することになったのです。その第1回調査と調査ガイダンスを今回行いました。調査の説明の後、大会議室を出てお隣の樹林地へ。

花を一つずつ確かめながら記録していきます

主役はもちろん、この時期にしか見ることのできないフデリンドウです。

満開となったフデリンドウ

ただ、実際に歩いて見ると、ほかにもたくさんの花が咲いていることにみなさん驚かれていました。しゃがむだけで数種類の花が見えてきたり、木々の枝先にも目をやると・・・

目立たないけどよく見ると美しいアオキの雄花

アオキの雄花です。
ちょっと不安定な雲が出てきて、最後はぽつりぽつり降ってきた雨を気にしながらの調査になりましたが、たくさんの目でたくさんの春の花を確認できました。これから月1回調査を実施して、この樹林地の花ごよみを作っていきたいと思います。

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フデリンドウが見ごろになりました!

断続的な低温や冷たい雨に当てられて遅れ気味でしたが、博物館お隣の樹林地でフデリンドウが見ごろを迎えました。

青空の色に咲くフデリンドウ

遊歩道沿いにもたくさん咲いています。博物館へお越しの際には、踏みつけないように気をつけながらぜひご覧下さい。フデリンドウは越年草(おつねんそう)です。今咲いている株は昨秋、発芽して冬を越したもので、間もなく結実するとあっという間に枯れてしまいます。はかなさというより、この潔さが魅力の花でもあります。
こちらは、ミミガタテンナンショウ、カントウタンポポ、フデリンドウの春の花3種。

上からミミガタテンナンショウ、カントウタンポポ、フデリンドウ

同じアングルに入れるのはちょっと無理がありますね。
ニガイチゴの花も咲いています。梅雨の頃には赤い果実が実るでしょう。名前は苦そうですが、ふつうに甘い野いちごです。

野いちごのなかまのニガイチゴ

ミツバツチグリも元気に咲いています。

まぶしいほどの黄色の花のミツバツチグリ

木々の葉が開く前の今の時期、明るい林床で咲く背の低い植物がいろいろと見ごろです。是非お立ち寄りください。

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瑞々しい春の色

今日(4月12日)は、相模原植物調査会のみなさんと緑区の三井地区で植物調査を行いました。断続的とはいえ、このところの陽気で植物も一気に開花、展葉(てんよう=葉が開くこと)をはじめていました。おくゆかしく、下向きに咲くモミジイチゴです。

モミジイチゴ。果実はキイチゴと呼ばれます

でも、うっかり枝に触れると鋭いトゲで痛い思いをします。
こちらは、スミレ2種の競演。タチツボスミレ(薄紫)とケマルバスミレ(白)です。

タチツボスミレ(左)とケマルバスミレ(右)

図鑑を見ているとキンポウゲ科という大きなグループがありますが、こちらはキンポウゲの中のキンポウゲと言えるウマノアシガタです。

いわゆるキンポウゲです

奇妙な名ですが、この花の八重咲き品がいわゆる「キンポウゲ」と呼ばれるものです。
目立つのは花ばかりではありません。ホオノキの巨大な冬芽も仰々しく開いていました。

ホオノキは葉も巨大なので、冬芽も特大です

アオキは常緑樹ですが、やはりこの時期に開花、展葉します。子どもが両手のひらを合わせたようなやさしげな葉です。

アオキの瑞々しい若葉

瑞々しい花々には、活動を始めた昆虫たちも集まります。ミツバツチグリの花を訪れていたのは、モモブトカミキリモドキでしょうか。

マッチョな姿のモモブトカミキリモドキ

冗談のようなマッチョな形を見ると、いつも笑ってしまいます。
暑くもなく、寒くもなく、気持ちの良い野外調査でした。

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春の冷たい雨

今日(4月11日)はこれまでの春らしい陽気が幻だったかと思うような冷たい雨模様です。
でも、幻でないことは春の証拠があちこちにあるのでちょっと安心します。その一つ、博物館前庭のヒトリシズカです。

花弁はありませんが、静御前の名を冠した美しい花です

同じ場所のシャガは満開です。ただ、雨に当たって花がだいぶ下を向いています。

外来のアヤメのなかまです

雨に濡れた花もなかなか美しいですね。
二階の喫茶室から見える中庭に、あまり目立ちませんがこんな花が咲いています。しかも、後ろ向きです。

博物館のまわりの樹林の中でも姿勢良く咲いています

ミミガタテンナンショウというマムシグサのなかまです。この写真は中庭に出て撮ったので正面ですが、室内からは残念ながら花の背面しか見えません。この花は野外でもなぜか山道などの明るい方に背を向けて咲いていることがよくあります。ヒマワリのように、明るい方に向きたい花ばかりではないのですね。

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難しいサクラ

博物館の敷地のサクラも満開となっています。周辺の並木とちがって、博物館のサクラの種類は、ソメイヨシノはごく少なくて、ヤマザクラと、さらにそれ以外のサクラばかりです。そのうちの1本が、駐車場の奥で咲いています。

美しく咲く問題のサクラ

見事に満開です。花と葉が同時に展開しているので、少なくともソメイヨシノではありません。葉と花が同時に開くヤマザクラかというと、花が白色で出始めの葉が赤くないのでそれもちがいます。そうすると、桜餅に巻く葉で有名なオオシマザクラかな・・と思って枝を取りよーく見てみると・・

左はオオシマザクラ、右が問題のサクラ

上の写真は、花の付け根の萼筒(がくとう)という部分を拡大したものです。右側が1枚目の写真の花で、左側は、同じ駐車場の別の株に咲いているものです。左側は、おそらくオオシマザクラと言って良いものです。しかし、右側には明らかに違う特徴があります。

萼筒を拡大したところ

さらに拡大すると、萼筒に毛がたくさん生えています。これはオオシマザクラには無い特徴なのです。では、もう一つのわかりやすい特徴の葉の縁を拡大して見てみます。

一つの鋸歯の中にもう一つ鋸歯があるのが重鋸歯

鋸歯(きょし=葉縁のギザギザ)の先が針状に尖っていて、重鋸歯(じゅうきょし=ギザギザが二つずつで一つの山になっている)なので、これはオオシマザクラの特徴です。さて困りました。葉はオオシマザクラを主張し、花は違うと言っています。
こうした場合、雑種を疑わざるを得ません。実際、サクラのなかまは数え切れないほどの種類と、それらの雑種があります。自然に交配することもありますし、園芸樹であるサクラは人工的に作られた雑種も多数あります。
結論として、博物館駐車場の問題のサクラは、オオシマザクラと何か別の品種(ソメイヨシノかそれに近いもの)が掛け合わさった雑種であるとしか言えません。このブログのタイトルはむしろ、「サクラは難しい」とすべきかもしれませんね。

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フデリンドウが開花 でもまだ見ごろは先・・

博物館のお隣の樹林地で、フデリンドウが開花しました。

独特の青色が美しいフデリンドウ

咲き始めは一輪ずつ花を付ける株が多く、落ち葉の影でひっそりと咲いています。
遊歩道やフェンス沿いではまだつぼみばかりで咲いていません。見ごろは来週末くらいになりそうです。
一足先に咲いたタチツボスミレは満開で、場所によっては一面が薄紫色に染まっています。

タチツボスミレは圧巻の咲きっぷりです

カントウタンポポもだいぶ咲いてきました。

在来種のカントウタンポポ

路傍のタンポポは外来種との雑種がほとんどですが、この樹林地内のものは在来のカントウタンポポであることを確認済みです。
フデリンドウが見ごろを迎えたら、またこのブログでお知らせします。

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真打ち登場!

先週はまだ影も見えなかった緑区のギフチョウですが・・4月5日、相模原植物調査会のみなさんと行った野外調査ではしっかりと飛んでいました!
といっても、暖かくて元気いっぱいのギフチョウはなかなか都合よくとまってくれず、キブシの花に張り付くように止まっているところをパチリ・・

キブシの花にとまるギフチョウ

木々の花も咲きそろってきて、アブラチャンの花にはテングチョウが。

こちらは成虫越冬するチョウなので、翅はぼろぼろです

こちらもキブシの花にでん!っと構えているのは、ヒオドシチョウです。迫力がありますね。

しっかりにらみをきかせています

さて、今日はむしろ早春の植物調査が主です。博物館でもニョキニョキ出てきたヤブレガサが、モサッと出ていました。

小さなモンスターのようなヤブレガサの芽生え

こちらはヒトリシズカです。気品があります。

静御前の名を戴く春の花です

イロハモミジの萌芽は、紅葉と同じ色です。

展開したての葉も紅葉しています

博物館のまわりのソメイヨシノはやっと五分咲きくらいですが、こちらのフサザクラは満開でした。といっても、フサザクラはサクラとは縁もゆかりもない植物です。

バラ科のサクラとは縁もゆかりもないフサザクラ

やくの色が血の滴るような強烈な色合いで、花弁すらないこの花になぜサクラの名がつけられているのか謎です。咲く季節が同じくらい、という共通点しかありません。
山を下りると、石垣でひなたぼっこをしていたニホントカゲがいました。

なんとなく眠そうなニホントカゲ

なんだか寝ぼけ眼でした。
春もいよいよ加速をつけて進んできたようです!

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尾崎咢堂記念館にも春の訪れが・・・

今日(4/5)は防災訓練やその他打ち合わせのために、緑区又野にある博物館の所管施設:尾崎咢堂記念館に行ってきました。

尾崎咢堂記念館のコブシ

今、尾崎咢堂記念館の庭ではコブシが見ごろを迎えています。

尾崎咢堂記念館の桜。まだこんなかんじ。

桜はまだあまり咲いておらず、つぼみもまだ固いかんじ。もう少し咲いたら連絡をもらうことにしたので、ツイッターなどでもまたお知らせしたいと思います。

絵はがき展も開催中!

4月23日までは絵はがき展も開催しています。常設展や庭の木々もみなさんをお待ちしています。ぜひ春の尾崎咢堂記念館にお立ち寄りくださいね。(入館無料です。開館時間や休館日についてはリンク先をご覧ください)

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忍び足の春

4月1日、新年度を迎えました。平成29年度も相模原市立博物館をよろしくお願いいたします。
常設展示はもちろんですが、春休み中のプラネタリウム企画展、そのほかさまざまなイベントを実施中です。
それにしても、寒いですね。今日明日は市役所さくら通りで相模原市民桜まつりを開催するのですが、まだ三分咲きにもなるかどうかという状態での桜まつりは近年、記憶にありません。開花直前になっての低温が響いているようです。春の冷たい雨の中、博物館中庭のヤブレガサが見ごろです。

ヤブレガサの芽生え

まさに「破れ傘!」
雨に濡れても、ミヤマガマズミの崩芽は元気いっぱいに見えます。

ミヤマガマズミの冬芽が崩芽しています

今日撮影したものではないのですが、おとなりの樹林地ではタチツボスミレがだいぶ咲いています。

日だまりがよく似合うタチツボスミレ

ここの樹林地の一番のスターである春植物のフデリンドウはあと少し、晴天が必要です。

つぼみもかわいらしいフデリンドウ

フデリンドウが咲いたらまた写真を掲載します。そして、臨時の「生きものミニサロン」を開催したいと考えています。

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