生物分野実習3日目(8/26)

こんにちは。博物館実習生(生物分野)の大川・武田・林部です。
今日は、明日(8月27日)開催の生きものミニサロンの企画について話し合いました。前回の実習で決めた方向性を軸にして、まずは室内で必要な道具の用意と、タイムスケジュールの作成です。

企画を考えています

その後に外で予行演習を行いました。

進行を確認

そんな私たちが企画した明日の生きものミニサロンは、「夏の生きものビンゴ」です。五感をつかって夏の生きものを感じてもらいたいです。

こんな生きものが見つかるかな?

開催時間は12時と15時の2回(各30分)で、申し込み不要・参加無料となっています。

こんな生きものも見つかるかも

どんな生きものが見つけられるでしょうか。ご参加お待ちしております!

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アシダカグモ

博物館内の階段を下りていると、壁面を素早く動くものがいます。刺激しないようにそっと離れ、カメラを取りに行きました。戻ると、壁面に静止していました。

壁にいるのは・・

アシダカグモです。家屋内に生息するクモの中では最大種で、写真の個体も足を広げた大きさは10センチメートル近くありました。このクモは、相模原市内ではここ20年ほどの間に進出してきた外来種です。国内では、19世紀末に九州で発見されてから、徐々に分布を広げたと言われています。

アシダカグモ

こんな大きなクモが家の中にいるとなると、恐怖を感じる方も多いと思います。実際、博物館には時々、「家の中にでっかい毒グモが入ってきた!」と問い合わせがあります。同様に毒グモと思われて、殺虫剤をかけられ、ビンなどに厳重に封入された状態で持ち込まれたことも1度や2度ではありません。
しかし、このクモが家の中にいるのは理由があります。それは、ゴキブリを食べるからです。家の中のゴキブリの最大種である、クロゴキブリを主食と言ってもよいくらい食べてくれます。

照明器具の裏側へ隠れてもらいました

アシダカグモは、クモが嫌いな人にとって、いわゆる「不快害虫」なのですが、一方で、クロゴキブリを捕食してくれる益虫でもあります。ちなみに、人に害を与えるような毒はありませんし、網を張らないクモなので、お掃除の手間を増やすこともありません。
博物館でも、ゴキブリは資料に直接的に害を及ぼす「文化財害虫」です。それを食べてくれる存在ということで、アシダカグモは大切に見守っています。清掃担当の方にも、どうかこのクモを、はたいたりしないようにとお願いしています。この写真のアシダカグモも、お客様が驚かないよう、照明器具の後ろの方へ追いやって隠れてもらいました。

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ミズキの果実を食べるカラス

8月21日、お昼休みを取りながらふと窓の外へ目をやると、今年生まれの若いハシブトガラスが、ミズキの木の枝上でなにやらゴソゴソやっていました。

ミズキの枝にとまるハシブトガラス

ミズキの果実を食べているようなのですが、ほとんどがまだ未熟で、そんなものを食べて美味しいのか?と疑問に思っていました。しかし、撮影してよくよく画像を確認すると・・

窓ガラスごしの撮影なのでちょっと画像が不鮮明ですが・・

ちゃんと黒紫色に熟したものを選んでつまんでいたのです。

小さな果実を器用につまみとっています

ハシブトガラスは雑食性で、果実を食べるのも珍しくはありません。ただ、動物性の食物が豊富なこの季節にわざわざこんなに小さな果実を食べるのは、このハシブトガラスがまだ幼くて、動物性の食物を獲るのが上手ではないからかもしれません。それにしても、体の大きなハシブトガラスが枝先にとまると、枝が大きく揺れて食べにくそうです。そんな不安定な体勢でも、熟した果実を選んでつまむ食への執念を垣間見た気がします。

ミズキの果実 熟すと黒紫色になり、緑色の果実はまだ未熟です

博物館の駐車場付近では、若いカラスがいつも5、6羽から10羽近くで群れています。時には朝、前夜に羽化して動きのまだ鈍いセミを探して食べたりもしています。若いカラス同士、知恵を出し合って生き抜こうとしているようです。

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生物分野実習1日目(8/19)

はじめまして、博物館実習生(生物分野)の大川・武田・林部です。
本日から分野別実習が始まりました。

本日は植物を採集し…と思っていたら学芸員の方が大きな袋を。
中身は…

検体のアナグマを観察

アナグマでした!市内で路上死していたものが持ち込まれたのです。

分野別実習、はじめにやったことは即席のアナグマ観察会。持ち込まれた検体を標本にするのも博物館の役割であることを実感しました。

そして当初の予定どおり相模川の河原に植物採集へ。
炎天下の中、花や果実をつけた植物を採集して新聞紙に折り込んでいます。

採集した植物をその場で挟みます

そんな中で暑さを忘れさせてくれるような涼しげな花を発見。

ネムノキの花

ネムノキの花だそうです。名前は聞いたことありましたが、こんな爽やかな花をつけるんですね。

博物館に戻り採取した植物を乾燥させるために吸湿紙に挟み直す作業。

仮押しされていた標本を本押しします

吸湿紙のサイズはできた標本を貼り付ける台紙より少し大きいそうです。なのでその後を考えると吸湿紙よりひとまわりほど小さく収めないといけないため、その作業に四苦八苦でした。

最後に、8月27日に開催する「生きものミニサロン」の素材探しのために博物館周辺を散策しました。本番に向けて、企画の準備を頑張っていきます。

真剣に企画を議論

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猛暑の中の植物調査

8月17日、朝から降っていた雨が止んだ緑区のある林道へ植物調査に行きました。目的の植物はこちら、キセワタです。

キセワタ

神奈川県のレッドデータブック(2022年版)では絶滅危惧1A類とされています。15年ほど前に確認して以来、しばらく生育状況の確認を行っていなかったため、現状を調べることにしたのです。幸い開花を確認できたのですが、咲いていたのは脇から伸びた茎で、主茎はシカに食べられて無くなっていました。付近には3株があっただけで、非常に危険な状況であることがわかりました。
近くには、キセワタと同じくシソ科のカワミドリが盛大に茂って開花していました。

カワミドリ

こちらは全草にシソ科特有の強い匂いがあるからか、シカは好まないようです。キセワタももう少し匂いが強ければよかったのかもしれません。
林道を歩いていると、脇の方で動くものがありました。

写真の中央になにかいますが・・

ピタリと静止してしまうと、どこにいるのかわかりません。上の写真の中央にその生きものがいるのですが・・見事な保護色です。横から見ると・・

カジカガエル

カジカガエルでした。
それにしても、この時期の調査は厳しい条件です。湿度も温度も高く、さらにこの場所にはヤマビルがわんさかいます。

林道を少し外れると、ヤマビルだらけ

雨上がりでヤマビルも元気いっぱい。ヤマビル忌避剤をスプレーしていても、長靴を這いあがってきます。

ヤマビル

この日は博物館を拠点に活動するボランティアグループの相模原植物調査会のみなさんと調査したので、ヤマビルのいない場所でお互いに足の裏側や背中をヤマビルがいないか定期的にチェックしました(それでも吸血された方もいましたが・・)。
コンディションが厳しいため、この日はお昼で調査を切り上げて帰りました。でも、久しぶりの野外調査会だったこともあり、みなさんとても充実した気分で帰途につきました。

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津久井城市民協働調査の講習会を行いました。

7月20日に津久井城市民協働調査の講習会を津久井湖城山公園で開催し、13名の参加がありました。

今回のテーマは「土壁(つちかべ)」。津久井城の御屋敷曲輪(おやしきぐるわ)からは土壁材が出土しています。

御屋敷曲輪からみつかった土壁材

よくみると溝があると思います。これは竹で作った壁の下地である「小舞」(こまい)の痕跡と考えられます。

点線の部分が小舞の幅です (縦1列、横2列)

土壁材は土器のように焼けて硬く締まっています。また土壁材がみつかるところは礎石建物があった場所とちょうど重なります。このことから土壁を持つ建物が御屋敷曲輪にあり、火災に遭ったことがわかります。

土壁材を説明中

さて、土壁材について学んだあとは、実際に土壁をつくります。今回は、相州武井組建工さんにご協力いただきました。

相州武井組建工さん

稲わらを混ぜた土(左)竹小舞を組んだ壁の骨組(右)

土の作り方、小舞の組み方の説明を受け、骨組みに土を塗っていきます。

職人技が披露されます。

土を塗った場所の裏側。小舞の間から土がでています。

職人さんの実技を観た後は、参加者みんなで体験します。

実際に体験!

土壁づくりが初めての方が大半で、非常に良い経験ができました。

作業後の土壁。右上は 小舞をみせるために土を塗っていません。

土壁はこの後2週間乾かし、再度仕上げ塗りをして完成です。完成した土壁は津久井湖城山公園でしばらく展示するとのことです。
また年明け3月には今回作成した土壁を使用し、再度土壁について学びます。今回は座学と土壁製作体験とかなり内容が濃く、充実した講習会となりました。

次回、8月17日は、津久井城がある城山周辺の先史時代について博物館の学芸員が講義を行います。城山周辺に生きた先史時代の人々に迫ります。講義の様子はこのブログで紹介いたしますのでお楽しみに!

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博物館収蔵資料紹介~猫行火(ねこあんか)と炬燵(こたつ)

前回は、布団(ふとん)に入れる暖房用の湯たんぽや行火(あんか)を取り上げましたが、次の写真は「猫行火(ねこあんか)」あるいは「猫火鉢(ひばち)」と呼ばれるもので、「猫」の名称は、元は招き猫の形を模して造られたことからと言われています。

中に見える鉢に炭や豆炭(まめたん)を入れて布団(ふとん)を掛けて使い、寝床に入れるほかにも動かすことが可能で、一人用の暖房として用いられました。写真のものは、昭和13年(1938)頃に寄贈していただいた方の近所の商店で売られていて、昭和20年(1945)代まで使っていました(収集地・中央区上溝)。

 

猫行火と同じようなものに「櫓炬燵(やぐらごたつ)」「置き炬燵」があり、木製の枠の中に火入れの鉢を入れてやはり布団を掛けます(緑区上九沢)。写真のようなものはどこでも動かすことができますが、古い家にあった囲炉裏(いろり)など、部屋の一部を掘った「掘り炬燵」の上側に乗せる大きな枠のものは決まった場所で使い、四方から暖まることができました。                  

 

次の写真は、掘り炬燵の中に入れる電気を熱源とする置き炬燵です。昭和30年(1955)代に東京で購入し、その後、南区上鶴間団地に引っ越してからも使用していたそうです(南区相南)。               

 

そして他の道具と同様に、次第に家電製品の炬燵が普及するようになります。次の写真は自然・歴史展示室で展示している電気炬燵で、前の櫓炬燵と同じ家で使われていました。しかし、かつてはどの家にもあった電気炬燵も、和室の減少などに伴って見られなくなっているようです。皆様の家ではいかがでしょうか。                 

 

行火や炬燵の他にも、暖房用具として火鉢などがあります。手をかざして暖まるほか、暖房だけでなく、お湯を沸かしたり食べ物を焼いたりすることもできます。写真の木製の角火鉢(かくひばち)は、内側にブリキを張っています(中央区上溝)。                 

 

火鉢にはさまざまな種類があり、次回は火鉢の火を扱う時に用いたいくつかの道具などを含めて紹介します。

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台風の後の森で

8月13日、台風8号の接近で相模原市も嵐となりました。翌14日は、台風一過という爽やかさは無いものの、晴れて蒸し暑い真夏が戻ってきました。こんな時は、博物館お隣の樹林地は生きものの気配が濃くなります。目の前を高速で何かが飛んだと思ったら、クズの葉の上にピタリととまりました。

キマダラセセリ

キマダラセセリです。一見地味で小さな虫ですが、よく見るとオレンジ色の翅(はね)と大きな目、モフモフの毛でおおわれた姿がかわいらしいチョウです。

キマダラセセリ 止まり方もカッコイイ!

すぐそばのクズのつる上では、オジロアシナガゾウムシが交尾していました。

オジロアシナガゾウムシ

なぜか、クズの葉の上にツクツクボウシの抜け殻がありました。セミの羽化は重力を使うので、地面に対して垂直か、または逆さまにならないと抜けません。葉の上面の、しかも頭を斜め下に向けているので、ふつうに見る抜け殻とは真逆の向きです。こんな姿勢ではうまく羽化できないように思いますが・・

通常と逆向きの抜け殻の理由は・・

これにはちょっと説明が必要です。クズなどのマメ科植物の多くが、葉の調位(ちょうい)運動をします。これは、光合成の効率を上げるために、太陽光との角度を調節するように葉の向きを変える運動です。おそらくこの葉は、ツクツクボウシの幼虫が羽化場所を求めて歩き回っている時は、葉が垂れ下がり、ツクツクボウシは地面と垂直にとまれたのでしょう。
調位運動は太陽の向きや温度などと関係するため、単純に夜は垂れ下がって昼間は開くというような動きではありません。写真の場所も林内で日陰になるため、どのような動きをしていたかわかりませんが、ともかく、ツクツクボウシが羽化するには好都合の向きだったことは間違いないでしょう。
そんなことを考えていたら、視界の隅に目線を感じました。

葉の影からこちを見ているのは

ニホンカナヘビが、こちらを伺っていました。そっと回り込んで、全身が見える位置から撮影できました。

ニホンカナヘビでした!

気持ちのよい場所だったのか、カメラを近づけると目線は向けるのですが、逃げません。邪魔をしないよう、撮影後はそっとその場を離れました。

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シオカラトンボ

博物館の駐車場周辺に、水色のトンボがとまっていました。

シオカラトンボ(オス)

シオカラトンボです。ふつう、水田の周辺などに多い水辺のトンボです。水田も川も無い博物館周辺になぜいるのかというと、どうやら駐車場の周囲の排水溝で発生しているようです。ちなみに、近い仲間のオオシオカラトンボもよく見られます。

オオシオカラトンボ(オス)

腹部が太く、目が黒く見えるのがシオカラトンボとの識別点です。シオカラトンボは最初の写真のように、腹部が細く(正確には翅(はね)のうしろで急に細くなる)、目が水色に見えます。オオシオカラトンボという名前からは大きさに差があるように感じられますが、実際はほとんど同じくらいの大きさです。

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【現在展示中!】巡回ミニ展示「尾崎行雄の不戦運動」を開催しています。

緑区又野出身の尾崎行雄をみなさんはご存じでしょうか?
「憲政の神様」「議会政治」の父と呼ばれる明治~昭和の政治家であり、「2つのフセン」が有名な活動として知られています。「フセン」とはすなわち、「普通選挙」と「不戦」です。

尾崎行雄の不戦運動について、8月8日(月)から8月19日(金)まで、相模原市立総合学習センター1階の交流ラウンジに展示しています。

展示状況

右下は演説する尾崎

尾崎の貴重な肉筆を写真で紹介(右)

尾崎は、戦争にかかる予算を減らし教育や農業などの予算を増額せよ、と訴え、他国を侵略するのではなく、国民が住みやすい国となるような政策を行うべきだとしました。
終戦記念日を8月15日に控え、尾崎の不戦への強い思いを紹介します。

また、尾崎行雄について詳しく知りたい方は、又野にある尾崎咢堂記念館へぜひ足を運んでみてください。

尾崎咢堂記念館(相模原市の公共施設ページ)

尾崎咢堂記念館(博物館ホームページ)

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