セミの羽化の観察会

8月に入りました。本日1日は月曜日ですが、夏休み期間中なので開館しております(8月28日まで博物館は無休です)。
さて、7月30日に、大野南公民館主催の「セミの羽化観察教室」(場所:麻溝公園)に講師として参加してきました。最初に、セミの生態や、なぜ夜に羽化をするのかなどお話しした後、まだ明るいうちにセミの抜け殻探しをしました。

葉っぱの裏側についていることが多いね!

最初はなかなか見つかりませんでしたが、目が慣れてくると、次々と見つかります。壊さないように大事に持ってきてねとお願いしたら、「こうすれば壊れない!」と素敵な運び方を発見してくれた参加者がいました。

これなら壊れず持ち運べます!

みんなで持ち寄った抜け殻を見て、セミの種類を識別しました。今回はすべてがアブラゼミでしたが、これから季節が進むとツクツクボウシなど他の種類の抜け殻も見つけやすくなります。博物館特製の識別シートを配ったので、家でもチャレンジしてくれるでしょう。
そして、羽化観察の本番開始です。大人でも「動いているセミの幼虫を見たことがない」という方が多く、羽化の場所を探してゆっくり歩く幼虫を見つけると、とても感激していました。

どこまで登るのかな?

夏の夜なのでヤモリも活発に動いていて、観察することができました。

木の幹を走り回るヤモリもいました!

なかなか羽化が始まりませんでしたが、ついに参加者の小学生が、背中が割れているアブラゼミを発見してくれました。

羽化が始まったアブラゼミ

翅(はね)が出てきて、全身が青磁器のような美しい色の現れる様子に、みなさん息をのみます。

半身が出たところ

ただし、残念ながら終了時刻となり、駐車場の閉場時間の都合でこの日の観察はここまで。でも、身近な場所で夜の8時前後にセミの羽化を観察できることがわかったので、参加者のみなさんはきっとまた羽化観察にご近所へ出かけてくれることでしょう。そんなきっかけづくりになれば嬉しい限りです。
博物館へ戻り、帰りがけにお隣の樹林地をのぞいてみると・・

カラスウリの花

カラスウリがこの日も妖艶な姿で咲いていました。
真夏の夜の自然観察はやっぱりおもしろいですね。

セミの羽化の様子については、昨年公開した生きものミニサロンウエブ版で映像を見ることができますので、ぜひご覧ください!

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決めつけられない、植物の匂い

博物館お隣の樹林地では、クサギの花が咲いています。

クサギ

猛暑の中ですが、スッと立った雄しべと純白の花弁が爽やかな花です。近づくと、甘い匂いが漂います。

甘い匂いを放つクサギの花

芳香と表現できる香りなのに、どうしてクサギ(臭木)なのかというと、葉の方にちょっと強い匂いがあるからです。ただ、その匂いも人によっては「ピーナッツバターみたいな良い香り」だったり、「カメムシ臭い」だったり・・匂いの感じ方は人それぞれです。
ちなみに、クサギは秋の終わりにこんな果実を実らせます。

花の写真と同じ株の、昨秋の果実

萼片(がくへん)が星形に開いて赤く染まり、その中央に黒く熟した果実が配置されます。鳥に見つけて食べてもらおうという見事な造形です。クサギは花も果実も自然観察の素材として抜群の存在感です。
さて、博物館駐車場のフェンスでも、白い花が咲いています。ヘクソカズラです。

ヘクソカズラの花

こんなに可憐な花なのに、こちらも名前がいかにも臭そう・・。でも、この匂いも人によって感じ方は様々です。自然観察会などで匂いの感想を聞いてみると、どちらかというと好き、という人が一定の割合でいます。こうして考えてみると、クサギもヘクソカズラも、ちょっと罪深い命名ですね。

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博物館収蔵資料紹介~寝る時の道具

今回は寝る時に用いられたものを紹介します。

最初の写真は「箱枕(はこまくら)」です。箱型の台の上に、布を袋にして籾殻(もみがら)などを入れたものを乗せています。袋の部分に和紙を巻き、また、台が高くなっているのは布団(ふとん)の外に置くためで、結った髪型が崩れないように首の付け根にあてがって使いました。女性の嫁入り道具などとしてあり、これも昭和17年[1942]に南区古淵から緑区下九沢に来られた方が持ってきたものの一つです。                 

 

次の写真は袖がついた着物のように見えますが、寝る時に上掛けにする「掻巻(かいまき)」です。中に綿が入り、肩口をすっぽり覆うため暖かく、防寒に優れていました。やはり嫁入り道具の一つで、女性の客用として持参し、自分たちが使うものは別にあったそうです。元々は東京にお住まいだった方からの寄贈です(収集地・中央区淵野辺本町)。                  

 

前回の蝿(はえ)とともに嫌がられたのが蚊(か)です。特に寝ている間に蚊に刺されないように部屋に吊る蚊帳(かや)は、かつて夏の暑い夜には戸を開けて寝ることも多かった生活ではなくてはならないものでした。なお、写真は収納してある状態です。

この蚊帳は南区東林間で使われたもので、昭和30年[1955]代の東林間はまだ林などが広がっていて蚊も多く、昭和35年頃に町田で購入されたものです。                  

 

そして次の写真は、博物館で毎年秋から冬にかけて実施している「学習資料展」において、実際に蚊帳を吊った様子です。見学した子どもたちに、この中に布団を敷いて寝ていたことが分かるように展示しました。なお、学習資料展で、毎年蚊帳を展示しているわけではありませんのでご注意ください。                  

 

冬の寒い夜に布団の足元に入れたのが「湯たんぽ」(緑区二本松)です。写真は金属製の湯たんぽで中に湯を入れ、やけどをしないようにタオルなどに包みました。また、風邪をひいたりした時にも使われました。                  

箱枕や掻巻に対して、蚊帳や湯たんぽは子どもの時に使った記憶がある方もまだ多いのではないでしょうか。今後ともさまざまなテーマのもとに収蔵資料を紹介していきたいと思います。

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真夏の夜の女王

博物館お隣の樹林地に、白くて華奢(きゃしゃ)なつぼみがついていました。つる植物なのですが、このつぼみは、昼間は開きません。

一見華奢に見えるつぼみですが・・

夜、真っ暗な中でこんな風に開きます。

カラスウリの花

カラスウリの花です。レースをまとったような独特の花は、昼間のつぼみからはちょっと想像できない豪奢(ごうしゃ)な咲き姿で、女王と呼びたくなります。ちなみに、カラスウリはその名のとおり、ウリの仲間です。晩秋に実る果実は、目の覚めるような朱色で、紅葉にも負けない華やかさです。

晩秋に実るカラスウリの果実

夏の夜の自然観察は、カラスウリのほかにもいろいろと見どころがあります。これから少しずつこのブログで紹介していきたいと思います。

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当館の土器・土偶が厚木市へ。

当館の考古資料が7月23日(土)からあつぎ郷土博物館で展示されます。

具体的な資料は、大日野原遺跡(おびのっぱらいせき)出土の人体文深鉢形土器、
寺原遺跡出土の線刻画土器、橋本遺跡出土の土偶(以上、市指定文化財)、川尻遺跡出土の有孔鍔付(ゆうこうつばつき)土器、田名花ヶ谷戸遺跡出土の土偶などです。いつもは常設展示室で展示している資料で、見覚えのある方もいるかもしれません。

大日野原遺跡出土の人体文深鉢形土器(当館寄託個人蔵)

寺原遺跡出土の線刻画土器(当館所蔵)

 

橋本遺跡出土の土偶(当館所蔵)

 

展示のタイトルは「令和4年度特別展 有孔鍔付土器と人体装飾文の世界」です。有孔鍔付土器(ゆうこうつばつきどき)を中心にその類例や人体装飾文(じんたいそうしょくもん)を紹介し、豊かな縄文文化を学びます。
ここでは資料の貸し出しの様子をお伝えします。

7月13日に資料の貸し出しが行われました。

資料の観察中

はじめに資料の状態を点検します。さらに土器の部分と石膏などで復元された部分なのか、しっかり確認します。資料のどこを守る必要があるのか、把握するためです。

その次は梱包(こんぽう)です。移動時に破損が生じないよう、「布団」で保護します。
ここでいう「布団」は綿を和紙で包んだもの、下の写真の白い長方形のものです。

丁寧に包んでいきます。

布団の固定は紙紐を使います。

資料が動かないよう隙間に布団を入れます

その後、コンテナに入れます。コンテナの内側にも布団が敷き詰められ、資料に衝撃が伝わらないよう対策されています。

無事、資料の貸し出しが終わりました。

どのように展示していただけるのか、大変楽しみです。皆さんもぜひご覧ください。

あつぎ郷土博物館:https://www.city.atsugi.kanagawa.jp/atsugicitymuseum/index.html

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オオヤドリカニムシ

7月16日、生きものミニサロンの参加者のお一人が、自宅の庭で拾ったというアカネズミを検体としてご持参くださいました。ネコが捕まえて持ち込んだようです。野生の哺乳類は、たとえネズミやモグラであっても許可なく捕獲することはできないため、こうした検体のご提供は博物館にとってとても重要です。ありがたくいただきました。その際に「カニムシのようなものがたくさんついていました」とのことだったので、早速検体を調べてみると・・

オオヤドリカニムシ 左側の脚に餌?のダニがついていました

まさしくカニムシ!土壌動物としても人気があり、観察会でカニムシが出現すると大変盛り上がります。それがなぜ、ネズミの遺体に?と疑問がわき、「がろあむし展」でもお世話になった土壌動物を得意とする写真家の吉田譲さんに問い合わせました。するとすぐに「オオヤドリカニムシです!」とのお返事がきました。“宿り”と名につく生物は寄生性のものが多いのですが、このカニムシは寄生するわけではなく、ネズミなどにつくダニを食べているのではないかと推測されています(吉田さんによると、実際は捕まえられるものなら何でも食べるとか)。そのため、食料が安定して供給されるネズミに、コバンザメのようにくっついていたようです。吉田さんも、ネズミの死体にたくさんくっついているのを見たことがあるそうです。それにしてもこのカニムシ、大きいです。

メモリは0.5ミリメートル刻みです

体長は4.5ミリメートルくらいあります。野外で見るものはこの半分くらいの大きさのものが多く、なかなか迫力のある姿ですね。カニムシの仲間は昆虫ではなく、4対の脚に、大きなハサミのついた触肢を持ち、大きな分類ではクモやサソリ、ダニなどと同じ仲間になります。
ふだんあまり見る機会の無い生物のうえ、メカニックな体つきがかっこよく、一緒に観察したミニサロンのスタッフのみなさんと大いに盛り上がりました。

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市史ミニ展示「学び再編-終戦直後の暫定教科書-」を展示中です。

7月16日(土)から、常設展示室内で暫定教科書(ざんていきょうかしょ)などをテーマとしたミニ展示を行っています。

聞き慣れない言葉ですが、これは終戦直後の教科書の一種です。
墨塗り教科書は比較的有名であり、墨塗り教科書の後に新聞用の更紙(ざらがみ)を用いて作られたものが、暫定教科書です。

こちらは墨塗り教科書です。

終戦直後は、占領軍による教育方針や内容について指令が発せられ、軍事的な内容が削除されました。その後、教育内容が変わり教科書が一新されますが、物資難のため新聞用の更紙が使用されました。その後、新教科書となり、次第に挿絵やカラー印刷が徐々に増加していきます。

 

展示の様子 ケース内中央が暫定教科書

戦後の社会情勢がよくうかがえる資料ですので、ぜひご覧ください。

 

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博物館収蔵資料紹介~蠅取りの道具

私たちの回りにはさまざまな虫が見られますが、その中でも蠅(はえ)は伝染病を運び、また、家畜や農作物に害を与えるものとして嫌がられたものの一つです。

昔は多くの蠅が食べ物や赤ん坊の顔などにたかって、手で払いのけるようだったとの話もよく聞かれるところで、蠅を取る道具も各家にありました。

最初の写真はガラス製の「蠅取り器」です。ちょうどタマネギのような形で、底は中央が内側に丸く湾曲して立ち上がっています。容器の下に食べ物を置いておくと、下側の隙間から蠅が入りますが外に出ることができず、湾曲した部分に入れた水に落ちてしまいます。

南区下溝の方からの寄贈で、第二次世界大戦後に、粘着性のある薬品を塗った蠅取り紙が出まわるまではよく使っていたそうです。                

 

また、天井に止まっている蠅を捕らえる、ラッパ状の口に細長い管を付けて下の丸い溜まりに水を入れて使う「蠅取り器」もありました(収集地・南区磯部)。

      

 

こうした道具のほかに、蠅を叩いて打つ「蠅たたき」もあります。写真は叩く部分が樹脂製で、広く販売されていました。南区の相武台団地にお住まいだった方からの寄贈で、農家だけでなく、コンクリートでできた住宅でも必需品でした。                    

 

最後の写真は「蠅帳(はえちょう・はいちょう)」です。食卓に置かれた食べ物を蠅から防ぎ、また、風通しをよくして食べ物が腐らないように被せるもので、四本の骨があり、傘(かさ)のように開閉することができました。こちらは南区上鶴間団地で昭和33年(1958)に結婚した当時に購入されたとのことで、団地に入居した当時は蠅が多かったそうです。                    

 

現代は衛生状態も改善され、家庭の中で多くの蠅を見ることは少なくなりましたが、今回紹介した道具からは、蠅などの害虫を防ぐための工夫をしてきた生活の様子を知ることができます。

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【8/24配布終了しました】BUNCARD(ブンカード)を配布中です!!

当館で配布中のBUNCARDについて、8月24日に配布終了となりました。
多くの方の思い出のカードとなるよう祈念しております。また、おびのっちのモデルとなった土器についても、またご覧いただければ幸いです。

以下、BUNCARDの紹介です。

現在、博物館ではBUNCARD(ブンカード)を配布しています。

みなさん、BUNCARDをご存じですか?

これは遺跡の発掘調査や、土器・石器の収納などでよく使用されるテン箱を製造・販売している第一合成株式会社様の企画で、各地の博物館などの一押しの資料をカード化し、他の施設と地域の枠を超えた文化財の交流を目的としたものです。

BUNCARD一覧

BUNCARDの概要

相模原市立博物館では、大日野原遺跡(おびのっぱらいせき)の土偶付深鉢形土器をカード化しました!
当館のキャラクター「おびのっち」のモデルとなった土器でもあります。

市指定文化財 当館寄託資料(個人蔵)です。

常設展示でもアピール中!

配布場所は1階受付で、アンケートにご回答いただくと贈呈します。先着順で9月11日(日)まで行っていますので、この機会に是非!

配布場所はこちら。

BUNCARDをきっかけに相模原の歴史や遺跡について注目していただければと思います。

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考古担当学芸員、相原遺跡群を語る。

7月2日(土)に相原公民館で考古分野の講義を行いました。これは「相原の歴史をさぐる会」の講師として招かれたものです。

会場の様子

今回のテーマは「相原地区周辺の旧石器・縄文時代」。相原の歴史をさぐる会の方から古い相原の歴史を知りたいとのことでした。参加者は40名で、皆さんに熱心に聴いていただきました。

相原地区の旧石器時代は遺跡があまり発見されていないことから、相原地区の東に位置する橋本遺跡の旧石器時代を説明しました。
縄文時代では中期が多く、相原地区のどのあたりに縄文人が住んでいたのか、どのような土器が出土しているのか、などを写真を中心に紹介しました。

遺跡が残る土層を説明中

黒曜石の産地について説明中

最後に、相原地区に貴重な遺跡が残っていること、そしてその遺跡からしかわからないことがあることを伝えました。
講義後は複数の方から質問をいただき、相原地区の遺跡について関心が高いことがわかりました。

今年度は講師の依頼をいただくことが少しずつ増えています。
考古学の視点から各地域の特徴をより分かりやすく紹介できるよう頑張っていきます。

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