玄関から20歩の自然 その27 蒸し蒸しの梅雨空もムシたちには快適

今日(7月28日)も梅雨空が続いています。湿度が高くて人間には不快ですが、昆虫たちにはとっても快適な気候のようです。7月に入ってから急に大きく成長してきたオオブタクサをよく見ると・・

オオブタクサ

アオバハゴロモが羽化してとまっていました。左の白いモジャモジャは幼虫です。

アオバハゴロモ 左が幼虫、右が成虫

こちらは、近い仲間のベッコウハゴロモ。翅(はね)の模様がなかなか渋いですね。

渋い模様のベッコウハゴロモ

どちらも蛾と間違えられることが多いのですが、大きな分類ではカメムシ目(もく)に属し、セミに近いグループです。
アオバハゴロモのモジャモジャな幼虫も不思議な姿ですが、ベッコウハゴロモの幼虫はさらに奇抜です。

お尻に白い飾りをつけたベッコウハゴロモの幼虫

お尻に白い飾りをつけたようで、なんともユーモラス。おまけに、ぐるぐるお目々。

目がぐるぐる・・

アオバハゴロモやベッコウハゴロモの幼虫が付けている白いものは、お尻付近から出すロウ状の物質だそうです。なぜこんなものを付けているのか・・おそらくカムフラージュの一種なのでしょうが、詳しいことはわかりません。
庭木や街路樹、フェンス沿いなどに普通に見られる昆虫なので、探してみて下さい。顔をよく見ると、セミに近いということがよくわかるはずです。

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ヒルガオ

二十四節気の大暑に入っているというのに、まだまだ梅雨空が続きそうです。
5月のこのブログで、コヒルガオを紹介しました。その時に、ごく近い仲間のヒルガオも過去の写真を使って紹介しましたが、その写真と同じ場所でヒルガオが咲き始めました。「コ(小)」と付かないだけに、花も少し大きめです。それにしても、雨粒がちょっとおしゃれですね。

ヒルガオの花

博物館近くのフェンスにからみついていて、ここの株は真夏に咲きます。春の終わり頃から咲くものもありますが、コヒルガオよりも少し花期が遅く始まるのも特徴のようです。
コヒルガオとヒルガオは、実は識別がとても難しいということを前回のブログでも書きました。一番のポイントとなるのは、花のすぐ下の柄がつるっとしているのがヒルガオです。

ヒルガオの花の柄。ひだが無くつるっとしている

下の写真はコヒルガオで、柄にヒダがついています。

コヒルガオ 柄にひだが見える

葉や、花を支えている2枚の苞葉(ほうよう)という部分が比較的大きくて、先が丸いというのもヒルガオの特徴なのですが、コヒルガオと共に個体差が大きくて、それだけでは識別できません。

ヒルガオの葉 この株はあまり典型的な形ではない

今、コヒルガオもヒルガオもあちらこちらのフェンス沿いや、街路樹の植え込みなどで花を咲かせています。歩道でついつい立ち止まり「どっちかな?」と見比べてしまうのですが、あまり熱中していると通行の邪魔になるし、不審者になってしまうので気をつけています。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.19・うどん作り)

前回は夏場のごちそうとして「酒まんじゅう」を取り上げましたが、相模原は畑作地帯として、冬場に非常に多くの大麦や小麦を作っていたことを紹介してきました。このうち、大麦は米と混ぜて麦飯として食べ、小麦は粉にして「酒まんじゅう」のほかにも、うどんなどとしてたくさん食べられました。

市域では、そば粉で打ったものではないうどんのことも「そば」と呼び、日常的に食べるほか、自宅で行われた結婚式でも「そばぶるまい」などと言って来客にうどんをたくさん振る舞いました。このように、うどんは普段の生活から結婚式などのハレの場でも欠かせないもので、特に、かつての毎日の夕食はほとんどうどんが食べられていました。

次の写真は、昭和63年(1988)7月に緑区下九沢で、文化財記録映画「相模原の祭礼行事」撮影時のものです。前回の酒まんじゅう作りとともに撮影され、小麦粉に水や湯を入れてこね、麺棒で伸ばして包丁で切ったものを釜で茹でています。

上の写真ではうどんを伸ばし、切るのに手で行っていますが、次第にうどん作りの機械(製麺機)を使うようになり、ある家では昭和4年(1929)頃に買ったと言います。この機械では生地を薄く伸ばして切ることができ、機械で作ったうどんを初めて出したところ、手打ちと違って太さが均一な麺なので何かおかしい、と言われたという話も残っています。

写真(平成8年[1996]11月・南区下溝)では製麺機で麺を切り、小麦粉をこねるのに使うコネバチの回りに掛けています。こうすれば麺がくっついたりせずに茹でる際によく、台所に持っていくのも運びやすくなります。

最初にかつては日常的にうどんを食べていたことを紹介しましたが、暑い夏場には茹でた麺を、水でさらして冷たくして汁に付けて食べる「あげそば」、反対に冬は野菜などと一緒に麺を煮込んで温かくした「にこみ(にごみ)」が作られました。
両者の麺の作り方としては同じですが、あげそばは、茹でた後に水でさらすというようにひと手間かかる上に、野菜と煮ることもなく小麦粉だけで作るため、にこみに比べてどうしても一食分の粉を多く使い、少しぜいたくという感じもあったと言います。

写真は上がにこみ、下があげそばです。上は製麺機でのうどん作りと同じ時の平成8年[1996]11月、下は同年4月の撮影で、両方とも南区下溝の同じ家で作っていただきました。

こんなにうどんをたくさん食べていたと聞いて少し驚かれましたか。このほかにも、例えば、あげそばの上から暖かい汁を掛ける「ぶっかけ」や、野菜と煮込むのでなく茹でた麺をそのまま椀に取って食べる釜揚げうどんのような「ひきずり(だし)」と呼ばれる食べ方があり、麺ではなく、小麦粉をお好み焼きのように焼いた「やきもち」もありました。
こうしたいろいろな食べ物の作り方や食べる機会、また、それにまつわるさまざまな伝承や話の中にも、地域の興味深い歴史や文化を伺うことができます。

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令和2年の標本レスキュー開始

7月23日、博物館にずっしりと重い段ボール箱が2箱届きました。
これは、7月4日に熊本県の球磨川の水害によって被災した、人吉城歴史館所蔵の前原勘次郎植物標本の一部です。

被災標本が入ったダンボール箱

収蔵庫が2メートル以上浸水し、納められていた資料のほとんどが水没してしまいました。
当館では平成23年にも、東日本大震災の津波被害に遭った陸前高田市立博物館の植物標本のレスキュー(洗浄と乾燥など)を行いました。作業にあたった相模原植物調査会のみなさんと、そのノウハウと技術を生かそうと、今回もレスキューに参画することにしました。
箱を開けてみると、完全に水没していたようで、たっぷり水を含んだ上に泥がかなりかぶっています。

中には水をたっぷり含んだ植物標本が

現地の報告によると、被災した標本は約33,000点、ダンボール箱にして数百箱になるようです。全国各地の博物館や大学、植物園などがレスキューに名乗りを上げ、分散して作業を進めています。

標本をはさんだ新聞紙が歴史的な資料であることを物語ります

標本の多くが70年以上前に採集され、学術的に極めて重要な標本です。カビ対策など作業者の安全をはかりながら、慎重に洗浄作業を進めていこうと思います。

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おかいこさま飼育中(48日目 最後の羽化)

6月3日の掃き立てから48日目の7月20日、乾燥せずにとっておいた繭の中で残りの1つが羽化しました。
羽化は夜中に始まることが多いのですが、この繭は午後明るい時間帯に羽化したようです。繭の中は見えないのですが、カタカタと繭が動き始めたのです。
すると繭の片側が濡れてきて、あっという間に茶色く変色しました。

酵素で茶色いしみができた繭

これは、成虫が口から酵素を出して、繭をかためている「のり」成分を溶かしているのです。そうして、繭をほぐして穴をあけます。繭には穴があきますが、繊維自体は切れていません。また、成虫の酵素を出す口は、食べるためのものではないので、成虫は飲まず食わずで最後の時間を過ごすことになります。
モゾモゾと頭から出てきます。このときに繭からうまく出られない成虫もいるので、少し穴をひろげてあげました。

頭が見えてきました

前脚(まえあし)が出て、翅(はね)が抜けると後は早くなります。

翅が抜けたら、あと少し!

全身が出てきたので、繭につかまりやすいように支えてあげて・・ポーズ!

無事に繭から出られました

この様子は、タイムラプス映像(コマ撮りの早送り動画)に編集しましたので、カイコ展示で放映中です。

現在、この映像を展示中です

もう生きたカイコは展示していませんが、ぜひ羽化の様子の映像をご覧下さい。

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アナグマが3頭

7月16日のブログで、博物館お隣の樹林地に仕掛けたセンサーカメラにアナグマの親子が写ったことを紹介しました(撮影日は7月11日~14日)。
7月17日には、3頭が写りました!

3頭のアナグマ

背中を向けていますが、動画を丁寧にチェックすると、尾の形や顔つきから3頭ともアナグマでした。ちなみに、争うこともなくこれだけ接近して写っているのは、3頭とも同じ種類の哺乳類と考えるのが自然です。
さらに、違う角度で写った画像で確認したところ、上の写真の一番左が母親で、右の2頭は子どものようです。アナグマは1回に4頭前後を産むことも多いのですが、子どもはまだ他にいるのでしょうか。
先日から夜のモノクロ写真ばかりなので、春に写った昼間のアナグマの写真も紹介します。

昼間写ったアナグマ(2020年5月25日撮影)

アナグマは主に夜活動していますが、時々真昼も活動します。上の写真は午後2時頃に写ったものです。
これからの暑い季節は、夜もたくさんの小動物が活動しているため、アナグマもどちらかというと夜の食べ物探しの方が活発になるかもしれません。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No.18・夏場のごちそう・酒まんじゅう)

「相模原の名物料理は何ですか」。しばしば聞かれることですが、私たちも古老の方々に質問しました。もちろん、いろいろな食べ物がある中で皆さんが揃って言われたのは「酒まんじゅう」です。写真は、平成8年(1996)7月に中央区田名のお宅で作られていた、出来立ての酒まんじゅうです。

 酒まんじゅうは、「まんじゅう酒」と呼ばれる甘酒のようなものを作り、それで小麦粉をこねて丸めて蒸したまんじゅうです。「夏場の」と記したように、暑くならないとまんじゅう酒がうまく発酵せず、特に7月から8月にかけてのお盆や祭りなどには欠かせないもので、どの家でもたくさん作って自分の家で食べたり、親戚に配ったりしました。

 次の4枚の写真は、平成10年(1998)8月の撮影で、当時、博物館でも「酒まんじゅう作り教室」を行い、地元の方を講師に招いて実際にまんじゅうを作る事業を行っていました。
 1枚目がまんじゅう酒で、桶に炊いたご飯と水に麹(こうじ)を入れて、2日間程度そのまま置きます。女の人は、このまんじゅう酒を作る桶を大事にしていて、ほかのものを入れたりせずに、酒まんじゅう作り専用として使っていたといいます。

 できたまんじゅう酒は小麦粉と混ぜても、すぐに丸めることはせず、しばらくおいて発酵させます。酒まんじゅうの魅力は、発酵してふっくらと膨らむとともに、まんじゅう酒の効果で独特の匂いがすることです。

 その後、いよいよまんじゅう状に丸めますが、1枚目の写真と比べると少し小さいのが分かります。まんじゅうとして丸めた後もすぐには蒸さず、ここでもさらに発酵させます。

 ちなみにまんじゅうの中身は小豆の餡子(あんこ)が多いものの、なかには味噌を入れたものもあり、甘みのある小豆とは違った風味でこちらを好む人もいたそうです。せっかくなので教室でも両方を作っていただきました。

 酒まんじゅうを蒸すには、蒸籠(せいろう・せいろ)が使われ、丸型のものに数個ずつ詰めて重ねて蒸していきます。写真は昭和63年(19880)7月に緑区下九沢で、文化財記録映画「相模原の祭礼行事」撮影時のものです。映画では、夏場の祭礼には欠かせない食べ物として撮影されました。

 最後に紹介するのは、祭礼の際に、地域内を担いでいく神輿に酒まんじゅうが供えられているところです。地域の名物の酒まんじゅうは、人間が食べるだけでなく神様をおもてなしするのにも用いられ、神輿に乗られている神様も、氏子からの酒まんじゅうに大いに満足されたことでしょう(平成20年[2008]8月3日・緑区青山)。

 酒まんじゅうは、この周辺では相模原市域をはじめ、神奈川県中部から東京都の多摩地域にかけてよく作られており、現在でも和菓子屋などで売られているのを見かけます。今では各家で作られることも少なくなったと思われますが、こうした郷土食と、例えばその作り方やこだわりなどの、これらが伝えてきたさまざまな文化をこれからも大切にしていきたいものです。

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アナグマ親子

博物館お隣の樹林地に仕掛けているセンサーカメラには、タヌキの次くらいにアナグマがよく写ります。
これまで1頭だけ写っていることが多かったのが、7月中旬になってから、2頭写るようになりました。

アナグマの親子

親子です!体の大きさがだいぶ違うので、今春に産まれた子どもでしょう。アナグマは妊娠したまま巣穴の中で冬ごもりし、春頃出産、夏になると子どもを外へ連れ出すことが知られています。大人の方は母親です。なぜわかるかというと、乳房が発達しているからです。まだ授乳も続いているのかもしれませんね。

母親のアナグマ 乳房と乳頭が発達しているのがわかります

このところ、タヌキも複数でよく写ります。この画像では光る目が3組写っていますが,直前にもう1頭が手前に通過していったので、4頭です。

タヌキ 目が3組(3頭)光っています

タヌキの方は大きさが同じくらいなので親子かどうかはわかりませんが、いずれにしても血縁関係にある群と思われます。
梅雨空が続きますが、夜の森はにぎやかです。

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雨の中、ヤマユリ開花

7月14日、博物館の前庭でヤマユリが開花しています。雨模様がよく似合う、日本を代表するユリです。
ただ・・

花が重くて地面に寝てしまったヤマユリ

ヤマユリは花がとても大きくて重いため、すっかり地面に倒れ込んでしまっています。
そこで、支柱を立てて少し立ち上がってもらいました。

支柱を立ててやっと持ち上がりました

いくら大きく目立つ花を咲かせるとは言え、大切な花が地面に着いてしまっていては元も子もありません。なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか。
それは、本来ヤマユリは斜面に咲く花だからです。こちらは緑区の生藤山(しょうとうさん)で撮影した自生のヤマユリです。

斜面から垂れ下がるように咲く自生地のヤマユリ

登山道の法面(のりめん)から垂れ下がるように咲いています。
林道や山あいの道を通ると、薄暗い法面に大きな花がたくさん咲いていて驚くことがあります。今がちょうど花期なので、樹木の生い茂る斜面地の中を通る道や、山あいの道を歩く時は法面を気にしながら歩いてみて下さい。

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おかいこさま飼育中(42日目 羽化)

6月3日の掃き立てから42日目の7月14日、乾燥せずに残しておいた繭の一つから、羽化した成虫が出てきました。

出てきた繭につかまるカイコの成虫(オス)

成虫は食べる口を持ちませんが、ある酵素を出す口を持っています。繭を固めているのり成分(セリシン)を溶かす酵素です。蛹から羽化すると、すぐにこの酵素を出して繭をほぐして穴をあけ、モゾモゾと出てくるのです。出てくる様子はまた改めて紹介したいと思います。
成虫が出た繭は丸い穴が開いていますが、繊維本体は切れていません。かつてはこうした繭は出殻繭(でがらまゆ)と呼ばれ、機械を使わずに手でよりをかけて紡ぐ、紬糸(つむぎいと)の原料にしました。
さて、カイコの成虫はまるでぬいぐるみ!モフモフで本当にかわいい・・

かわいい!

この成虫はオスでした。カイコの成虫は飛ぶことができませんし、近くにメスがいないので、おとなしく出殻繭につかまってじっとしています。でも、もしメスがそばにいるとメスは羽化してすぐにフェロモンを出すため、交尾しようとメスのまわりを羽ばたきながらぐるぐる回ります。
まだメスは羽化していないので、このオスには少しの間、展示に出てもらうことにしました。

成虫の展示の様子

明日以降もオスが羽化すれば展示しますが、成虫の展示は長くても今週いっぱいくらいまでしかできません。カイコの成虫を見てみたい方は、ぜひ早めにご来館ください。

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