スズミグモ

博物館の駐車場脇に、直径1メートルはありそうなドーム状の網がありました。

駐車場にあったスズミグモの網

周囲を囲むようにジョロウグモの網が多数あるため、一瞬見落としかけたのですが、これはスズミグモの網です。おそらくメスの成体のものです。
スズミグモは体長2cm程。不規則網の中にドーム状のメッシュ網があるという、特徴的な網を張ります。日本国内では、もともと静岡県以西に生息していましたが、1980年以降、神奈川県内でも発見されるようになり、現在では埼玉県・茨城県・栃木県などでも確認されています。相模原市内では藤野、城山、津久井での記録があるだけです。
これは貴重な記録になると思ったのですが、肝心のクモがいません。網の状態からすると、つい最近までここにいた様子なのですが。今まで見落としていた事が悔やまれるばかりです。
かなり気落ちしながら、とりあえず隣の樹林地へ行くと…奇跡的に幼体が1個体見つかりました。

スズミグモ幼体

ごらんのとおり、ドーム網の下にぶら下がっています。
クサグモ、ヒメグモ、サラグモ類も似たような網を張りますが、スズミグモの場合はクモがいる場所の網が、シートではなく、きっちりとした網目になっています。

腹部の模様も特徴的です

これほど簡単に他の個体が見つかったという事は、探せばあちこちにいそうです。
分布を広げているかどうかはわかりませんが、もしかしたら今年はこのクモの「当たり年」かもしれません。市内ではまだ珍しいクモですので、身近に見かけたら「ちょっとラッキー」と思って間違いありません。

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玄関から20歩の自然 その30 セミの抜け殻くらべ

家のまわりの公園など、身近な場所でセミの抜け殻を探すと、かなり大きさの違う抜け殻を見つけられます。

左からニイニイゼミ、ツクツクボウシ、アブラゼミ、クマゼミ

上の写真はすべて違う種類で、左からニイニイゼミ、ツクツクボウシ、アブラゼミ、クマゼミです。
ニイニイゼミはそろそろ季節的に終わりになり、探すと見つけられる抜け殻のほとんどがアブラゼミ、またはミンミンゼミになります。この2種類は抜け殻だけ見ると、とてもよく似ています。その違いはまた改めて紹介します。クマゼミは相模原付近では比較的最近広まってきたので、分布が偏っているため抜け殻を見つけるのは難しいかもしれません。
季節がそろそろ終わって見られなくなるので、ニイニイゼミの抜け殻を紹介します。表面になぜか泥が付いているのが特徴です。

ニイニイゼミの抜け殻

成虫はこちらです。

ニイニイゼミの成虫

小さめのセミで、翅にまだらの模様が入るのが特徴です。このまだら模様が見事に保護色になっていて、鳴いていないと見つけにくいセミです。
もう鳴き声もアブラゼミやミンミンゼミにかき消されつつあります。ニイニイゼミを観察するなら、今のうちです!

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ホオズキカメムシ

ワルナスビの茎にうじゃうじゃと虫がついています。

ワルナスビに虫がたくさんついています

ナスやトマトの害虫として知られる、ホオズキカメムシです。
このカメムシは、群れる事がよく知られており、ワルナスビはナス科の植物なので、実に納得の光景です。
しかし、よく見ると面白い事に気が付きます。
色々な形、色、大きさの虫が混ざっています。

色々な齢が混在しています

実はこれ、すべてホオズキカメムシの違う齢の個体です。卵もあります。

左のほうにある黄色いツブツブは卵です

ただ群れるだけでなく、ここで繁殖をしているのですね。
様々な齢の個体が入り混じっているという事は、複数のメスが違ったタイミングで産卵して、幼虫がふ化した後も同居をしているのであろうという事が推測されます。
うっかり通り過ぎてしまいそうな道端の雑草の上でも、意外に面白いことが起きています。
そういえばいつもこのあたりを通り過ぎるときに変なにおいがしているのを思い出しました。もしかしたらカメムシのにおいだったのかも知れませんね。

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シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介⑮ ㋵

「呼ばわり山 迷子のはやぶさ 声届く」

「相模原ふるさといろはかるた」 ㋵

㋵の札は、相模原市中央区共和1丁目にある新田稲荷(しんでんいなり)神社内の「呼ばわり山」を取り上げています。

文政元年(1818年) 淵野辺新田の鎮守として建立された「新田稲荷神社」入口

「新田稲荷神社」社殿

「新田稲荷神社」社殿の隣にある「呼ばわり山」(画像右奥の木々の中)

呼ばわり山」とは、迷子や行方不明者を捜すとき、そこへ行って鐘や太鼓をたたいて”迷子の迷子の誰それやーい”と叫ぶと、尋ねあてることができると信じられていた約7メートルの小高い丘です。

「呼ばわり山」入口

むかし、この周辺は「相模野」と呼ばれる広大な原野であったため、方向が分からずに行方不明になる人がいました。そこで、小丘を築き、人探しにご利益のある武蔵国多摩郡川口村(現 八王子市内)の今熊野権現社(いまくまのごんげんしゃ(現 今熊神社))を
勧請(かんじょう)し、祠(ほこら)を建てたと伝えられています。

「呼ばわり山」頂上に建てられた今熊神社

 

読み札にある”迷子のはやぶさ“は、小惑星探査機「はやぶさ」のことです。
小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャで、JAXA宇宙科学研究所の川口淳一郎教授は、2005年12月に宇宙で行方不明になってしまっていた「はやぶさ」の発見を祈願して、毎夜のように「呼ばわり山」に立ち寄ったと言われています。その声が届いたのか、行方不明から約一か月半後、「はやぶさ」は奇跡的に発見され、地球との通信を回復させました!絵札に鳥居と探査機が描かれているのは、上記のエピソードによるものです。

また、JAXA相模原キャンパスで現在運用中である小惑星探査機「はやぶさ2」のプロジェクトメンバー達が、2019年1月5日に新田稲荷神社を参拝し、小惑星リュウグウへのタッチダウン成功を祈願しました。その願いは届き、2019年2月22日「はやぶさ2」は小惑星リュウグウへのタッチダウンを見事に成功させました!

現在「はやぶさ2」は2020年12月の地球帰還を目指し、宇宙を旅しています。無事に地球へ近づくことができれば、小惑星リュウグウのサンプルを採取したカプセルを私たちに届けてくれる予定です。ご興味がある方は、新田稲荷神社の「呼ばわり山」を参拝して、「はやぶさ2」を応援してはいかがでしょうか。

さらに「はやぶさ2」の活躍を詳しく知りたい方には、当館プラネタリウムで2021年3月まで上映を予定している全天周映画「HAYABUSA2~REBORN」をお勧めします!!番組や上映スケジュールについては当館HPをご覧ください。お待ちしております!

 

*このかるたは当館のボランティア「市民学芸員」が2017年に制作したものです。
*このかるたは相模原市立博物館にて貸出し可能です(現在は当面の間、貸出しを休止しております)。
*貸出しの詳細やその他このかるたに関心のある方は、博物館までお問い合わせください(042-750-8030)。
*貸出し使用時には感染症予防のため、事前・事後の手洗い・消毒などを必ず行ってください。

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玄関から20歩の自然 その29 セミの旅立ち

梅雨が明けて、近所のセミの声がだいぶ騒がしくなってきました。
通常、関東地方南部の平地なら、7月初旬のニイニイゼミに始まり、梅雨明け前後にアブラゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、そして8月に入ってツクツクボウシ・・といった順番で鳴き始めるのですが・・近年、セミの羽化の時期が変化してきているように感じられます。今年はニイニイゼミが遅く、アブラゼミとあまり変わらず、ヒグラシやミンミンゼミも同時くらいになりました。なぜそうなっているのか、もっと時間をかけて見ていかないとわかりません。全国的に記録をしっかりとっておくことが重要ですね。
さて、8月2日の夕方、博物館の駐車場の地面を歩くアブラゼミの幼虫を見つけました。

地面を歩くアブラゼミの幼虫

ヨイショヨイショと歩いて、サクラの幹の根元にたどり着くと、迷わず登り始めました。

サクラの木の幹を羽化場所に選んだようです

おそらくあと数時間も経たずに羽化を始めることでしょう。
抜け殻はこれからの季節、あちらこちらにくっついていますが、動いている幼虫を見つけるのはなかなか難しいものです。蚊の襲来を覚悟しつつ、夕方6時から7時の間くらいに、抜け殻の多い場所を探し回ると見つけられるでしょう。土の地面がある公園や緑道などでも見つけられます。羽化前の幼虫はとてもデリケートなので、決して触らないようにして、追い掛けてみて下さい。夜8時過ぎまでがんばって観察を続けると、羽化を観察できます。下の写真は昨年撮影したもので、アブラゼミの羽化の様子です。

重力を使って羽化します

全身が抜ける直前に頭を上げて、今度は翅(はね)を重力で伸ばします

緑がかった乳白色が神秘的です

セミの羽化は、身近な場所で観察できる生命の神秘です。近くの公園へライトを持ってぜひ出かけてみて下さい。

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シリーズ「相模原ふるさといろはかるた」でみる名所紹介⑭ ㋕

家族で行こう 青根の 緑の休暇村

緑区青根の道志川沿いに青根緑の休暇村はあります。
キャンプ場施設である「青根キャンプ場」、温泉施設の「いやしの湯」、宿泊施設の「緑の休暇村センター」などを中心に、コテージやテニスコート、音楽ホールである「やまびこホール」も併設した、自然の中で活動的に過ごすための一大拠点です。

農林省(当時)の自然休養村事業の一環として昭和51年(1976)に休暇村整備事業が着手され、昭和55年(1980)6月に休暇村事業の中心施設の休暇村管理センター(現、緑の休暇村センター)が開所されました。

昭和61年(1986)、合唱曲「遙かなる友に」が道志川沿いのキャンプ場で生まれたことを記念する「遙かなる友に」歌碑が建立され、除幕式には「合唱の里」宣言が採択されました。作詞・作曲者の名前をとり、磯部俶(いそべ とし)記念道志川合唱祭が毎年9月に行われています。

平成6年(1994)には、合唱館「やまびこホール」も開設され、合唱の里の機能が充実します。

さらに、平成17年(2005)5月には、絵札に描かれている温泉施設「いやしの湯」が開館します。

また、「遙かなる友に」歌碑の隣、沢沿いには「沢水枯渇 痛恨の碑」という碑も建てられています。これは、宮ケ瀬ダム建設に伴い道志導水路(トンネル)が開鑿(かいさく)され、沢水が枯渇したことを嘆いて、平成14年(2002)に設置されたものです。

令和元年10月の東日本台風(台風19号)による国道413号の通行止め(令和2年3月解除)などもあり、さらに新型コロナウィルス蔓延のため、いやしの湯及び休暇村センターは、令和2年3月2日から休館を余儀なくされ、6月19日にようやく再開しました。青根キャンプ場も6月1日から通常営業に戻っていますが、どちらもソーシャルディスタンスを守っての営業ということで、入場者を制限する形での営業になっています。
また、令和2年度の道志川合唱祭も中止が決まっています。

そんな残念な状況ですが、自然の中で味わうバーベキューやキャンプ、コテージやテニス、源泉かけ流しの天然温泉に違いはありません。逆に、少なめの人数で、ゆったり味わえるチャンスなのかもしれません。ぜひ、ご確認の上、お出かけください。
  青根キャンプ場(キャンプ施設) 042-787-1380
  緑の休暇村センター(宿泊施設) 042-787-2215
  いやしの湯(温泉施設)     042-787-2288

*このかるたは当館のボランティア「市民学芸員」が2017年に制作したものです。
*このかるたは相模原市立博物館にて貸出し可能です(現在は当面の間、貸出しを休止しております)。
*貸出しの詳細やその他このかるたに関心のある方は、博物館までお問い合わせください(042-750-8030)。
*貸出し使用時には感染症予防のため、事前・事後の手洗い・消毒などを必ず行ってください。

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人吉植物標本レスキュー 洗浄作業開始

7月の豪雨災害で被災した人吉城歴史館所蔵の植物標本レスキュー作業を、7月31日から本格的に始めました。
フェイスシールド、マスク、ニトリル手袋で防備した相模原植物調査会のみなさんが、慎重に標本の束を開封します。

慎重に開梱

まずは泥のかぶり方が一番ひどい状態のものを仮洗浄します。

泥のかぶりかたがひどいものを洗浄

比較的泥が少ないものも、水をたっぷり含んでいるので、大切な標本ラベルがはがれていたりします。これが標本と離ればなれになってしまうことは絶対に避けなくてはいけないので、一番神経を使うところです。

泥をかぶっていなくても水のダメージが甚大です

絵筆を使って慎重に泥を洗い落とします。

集中力のいる作業です

こうして洗った標本を一つずつ水を切り、温風乾燥機に入れて乾燥します。これでとりあえずはカビの増殖を防げますが、まだ泥を含んでいるため、状態が悪いものはさらに洗浄と乾燥を行います。くるまれた新聞紙を含めて、届いているもの全てを完全に人吉市へお返しするため、標本のカケラ一つも見落とさないように集中して作業しています。
相模原植物調査会のみなさんは、2011年の東日本大震災の時にも陸前高田市立博物館の津波被災標本のレスキューを行いました。その時の作業を思い出しつつ、お互いに作業手順を確認しながら進めています。半世紀以上前の貴重な学術資料を後世に残すための作業、これからしばらく続きます。

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かいこごっこ

7月1日のブログで、博物館の近くにある、大野村いつきの保育園の年長さんたちがお散歩の途中いつも来館して、カイコを観察してくれている様子をお伝えしました。そして、お散歩から帰ってカイコのお絵かきをしたり、かいこごっこをしているので、その作品などを見せていただくお約束をしていたところ、今日、持参してくれました。

よく観察したことがわかる作品です!

上の写真はカラーコピーされたものですが、お一人ずつ自分の作品(実物)を紹介しながら見せてくれました。
そしてこちらは、かいこごっこで、カイコに変身した様子!あまりのかわいらしさに感激してしまいました。

カイコになりきり!(画像を一部加工しています)

今日も羽化の動画をたっぷりと見たり、自然・歴史展示室の養蚕の道具を見たりして、博物館を楽しんでくれていました。

今日もいろいろと観察!

せっかくのみなさんの作品を、できれば展示したいと先生にも相談しているところなので、もしかしたら来館された皆様にご披露できるかもしれません。お楽しみに!

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ヤマシロオニグモ

博物館周辺で見つけたクモ。比較的大きく、色彩は地味。いかにも「クモ」という見かけです。

ヤマシロオニグモ

ヤマシロオニグモのメス。体長15mmほどで、平地の樹林などで見られます。この個体は、茶褐色に黒い斑紋がありますが、中には大きな白い斑紋を背負っているものなどもいて、模様の変異が多い事で知られています。
このあたりでは、同じ位のサイズのオニグモ類としてヤエンオニグモを良く見かけるのですが、腹部前端の形状が異なるので、見分けがつきます。

ヤエンオニグモ。腹部前端の「肩」の部分が尖っている。オニグモなどと共通の特徴。ヤマシロオニグモは「肩」が丸く、似た種にイエオニグ、コゲチャオニグモなどがある。

ヤマシロオニグモは特段珍しい種ではなく、博物館周辺の環境であれば普通にいるだろうと常々思っていたのですが、ようやく出会う事ができました。

次の写真はヤマシロオニグモを正面からアップで撮ったものです。長い毛がたくさん生えていること、8個ある目のうち正面にある4個の位置が良く分かります。クモが苦手な人はクリックしない方が良いと思いますが、興味のある方は大きい画像でお楽しみください。

正面から見たところ。クリックすると拡大します。

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玄関から20歩の自然 その28 メタリック!

昆虫の中には時々、妙に鮮やかな金属光沢を持つものがいます。身近な昆虫の中で代表格は、キンバエでしょう。
ただ、あまりにもイメージがよろしくないので、今回はこんな昆虫を紹介します。

アカガネサルハムシ

アカガネサルハムシです。庭に植えられたブドウの葉や、フェンスにからみつくエビヅルの葉の上などにいることがあります。小さいのでちょっと見つけにくいのですが、遠目に見てもキラリと光るので、目が慣れてくると結構見つけられます。

葉の上でおとなしくとまっていることが多い

こちらもメタリックな輝きでは一歩も引かない、アシナガキンバエ。冒頭に紹介したキンバエと名前は似ていますが、分類上はまったく別のグループに属するハエです。

アシナガキンバエ

樹木の多い公園などでも見られますが、アシナガキンバエも小さくて、よく飛び回るので見つけるのはちょっと難しいかもしれません。
メタリックではありませんが、博物館のまわりのミズキ林ではこんな昆虫も見られています。

エサキモンキツノカメムシ

ハートマークを背負う虫、エサキモンキツノカメムシです。
雨模様が続きますが、それだけに雨がやんでいる日中は昆虫の動きが活発になり、こんな虫たちを探しやすくなります。

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