広田小学校で遺跡のお話

4月27日に相模原市緑区にある広田小学校で、縄文時代の遺跡について、お話ししてきました。

6年生の先生からご相談いただき、昔の暮らし、特に広田小学校の周りにある遺跡を紹介して欲しいとのことでした。

太枠で囲まれた範囲が遺跡であり、255が広田小学校です。

授業では、市内の遺跡や広田小学校の近くの遺跡を紹介し、縄文時代が今から何年前なのか概説を行いました。その後、遺跡から出土した縄文土器や石器を実際に触ってもらいました。

市内の遺跡を説明中

触ってもらうための、土器・石器

遠慮せず、どんどん触って!

6年生の児童全員が初めての体験なので、持ち方をレクチャーした後に触ってもらいました。この土器、石器は触ってもらうことを前提とて準備したものです。

また、今回は担任の先生と相談し、「一番好きな土器はどれかな?」と児童に考えてもらい、さらに時間がある児童にはイラストを描いてもらいました。
これはなんとなく土器を見るのではなく「好きな土器」として自分の考えを出してもらい、土器、石器をよく観てもらうことが目的です。さらにイラストとなると、ただ触るだけでは表現できず、どんな形なのか意識しないとできません。ちなみに、考古担当学芸員もいっぱい作図しています。考古学の基本は「観察」であり、博物館資料全体にも当てはまります。

今回は実物を通じて、遺跡を身近に感じてもらう良い機会になりました。幅広い年代の方に遺跡の重要性や面白さを伝えるために、今後も取り組んでいきます。
(考古担当学芸員)

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生きものミニサロン「木や草についているヘンなものを見てみよう!」を実施しました

5月20日、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。この日は国際博物館の日2023「博物館探検隊!」を開催中で様々なイベントが企画され、たくさんの来館者をお迎えしていました。そんな中、生きものミニサロンもいつもより少し多めのみなさんとスタート。

エントランスに集合してスタート

今回のテーマは「木や草についているヘンなものを見てみよう!」です。早速、カイコの飼育のために植えているクワの木のまわりへ。まずは参加者のみなさんに生きものを探していただきました。

クワの木を囲んでみんなで観察

次々に??となるものが見つかります。まずはこちらです。

葉の裏に白いもじゃもじゃ・・

葉の裏に白い毛のようなものがもじゃもじゃ。
お配りしたルーペでじっくり見ていただきます。時折「ギャー」という声も・・

大人の参加者も恐々観察

よく観察するとモゾモゾ動き、さらによく見ると脚も!

モゾモゾ動いていました

この虫は、春のミニサロンの定番、クワキジラミです。クワの葉の汁を吸って生活します。成虫はこちらです。

クワキジラミの成虫

成虫を見ていた参加者から「バナナムシみたい!」と。そうです!バナナムシ(ツマグロオオヨコバイ)と同じくカメムシ目の昆虫なのです。すばらしい観察眼ですね。
さらにこんな虫を見つけてくれた人も。

大きな幼虫

こちらはテントウムシの仲間の幼虫です。他の葉の、クワキジラミのそばでも何匹か見つけました。これがどんな成虫になるのか説明すると、みなさん興味津々でした。成虫が見つかったらまたこのブログで紹介します。
1本のクワの木でみっちり30分観察していただき終了しました。終了後、駐車場のそばでヤモリを見つけてくれた親子も!

終了後もヤモリを観察

来月のミニサロンは6月17日(土)12時からです。お楽しみに!

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ウンモンスズメ

5月18日、市内でこんな蛾を見つけました!

中央区のマンションの壁で発見!ウンモンスズメ

ウンモンスズメです。スズメガの仲間は、シャープな印象のフォルムもさることながら、色合いや模様の美しいものが多いのです。このウンモンスズメも、抹茶色の渋みが際立つ模様です。

ウンモンスズメ プラスチックケースに入れて撮影

明るい場所で撮影すると、少し翅(はね)がかすれてしまっているようですが、それもまたこの模様の渋さを深めているように感じます。
決して珍しい蛾ではないのですが、ウンモンスズメを見つけるととても嬉しくてたくさん写真を撮ってしまいます。

ところで、相模原市立博物館ではインスタグラムの公式アカウントを開設しています。こうした生きものや、展示で使用している美しい写真などを、ほぼ毎日更新しています。ぜひフォローしてみてください。

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特定外来生物 オオキンケイギクの調査

エコパークさがみはらが主催する自然環境観察員制度に、博物館は毎年協力して調査を実施しています。今年の全体調査のテーマは、「オオキンケイギクの分布調査」です。
オオキンケイギクは、在来の生態系や人に対して悪影響を及ぼす可能性のある外来生物の飼育や栽培、移動などを規制することを定めた特定外来生物法により、特定外来生物に指定されています。そのオオキンケイギクの分布状況を把握することを目的とした調査で、市域全域(丹沢山地などを除く)を対象としています。
5月16日、緑区へ調査へ行きました。博物館周辺などでは、かつて国道などに群生が見られたものの、現在は特定外来生物であるという認識が定着してきたのか、抜き取られていてあまり見かけなくなりました。しかし、津久井地域では道沿いでちらほらと見られました。

オオキンケイギク

一見するとコスモスと形が似た美しい花です。しかし、旺盛な繁殖力で、またたくまに分布を広げます。
特定外来生物に指定された種は、生きた状態での移動が禁止されているため、見つけても抜いたりはせず、記録にとどめます。

道沿いに咲くオオキンケイギク

緑区の青山や牧野、鳥屋など5カ所の幹線道路沿いで確認しました。
途中、オオキンケイギクに負けないくらい鮮やかな黄色をまとったキビタキに出会いました。

キビタキ(オス)

軽やかに美しくさえずっていました。こちらは在来の夏鳥なので、安心して声と姿を楽しむことができますね。
(生物担当学芸員)

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石のステンドグラス2展示解説5/13

現在、相模原市立博物館で開催中の企画展「石のステンドグラス2〜偏光顕微鏡の世界〜」の展示解説を5月13日(土)に行いました。

偏光顕微鏡は偏光フィルターを装着した顕微鏡で、岩石プレパラートの観察には、偏光顕微鏡を使います。

まずは偏光フィルターについて解説しました。偏光フィルターは色がついている訳ではなく、特定の光だけを通過させるフィルターです。偏光顕微鏡での観察は光が偏光フィルターと鉱物を通過するときの性質を利用します。鉱物によって偏光顕微鏡での見え方に特徴があるので、鉱物を見分けることができます。

今回展示した岩石の偏光顕微鏡写真は、研究・教育目的で撮影したものの中から、色の美しいものや模様のきれいなものを選びました。きれい、面白い、などの観点で撮影した訳ではないので、全ての写真に岩石学的や鉱物学的な意味があります。

全ての写真を解説したいところですが、限られた時間ですので、数枚の写真を選んで解説しました。

一部を除いて偏光顕微鏡写真を展示した岩石の標本も展示してありますので、標本と写真を見比べながらの解説も行いました。

今回の展示では、写真を背後からの光でステンドグラス風に展示したコーナーもあります。偏光顕微鏡で岩石プレパラートを観察するときはプレパラートに下から光を通過させて観察します。このコーナーでは実際に偏光顕微鏡で観察しているのと近い感覚でご覧いただくことができます。

岩石プレパラートは岩石を光が通るくらいまで薄くします。実際の厚さは0.03mm、千円札の3分の1の厚さ(薄さ?)です。そのためにはいくつかの工程が必要で、1枚の岩石プレパラートを製作するのにはかなりの手間ひまがかかります。

実際に使う道具や工程写真が展示してあるので、展示解説の最後には岩石プレパラートの製作方法も紹介しました。

展示解説は、5月28日(日)と6月24日(土)にも開催します。いずれも2時〜2時30分です。

また、実際に岩石プレパラートを偏光顕微鏡で観察するイベント「石を顕微鏡で見てみよう」を6月11日(日)、10時〜4時に開催します。この時間内であれば会場に出入り自由ですので、ぜひご参加ください。

(地質担当学芸員)

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5月18日は何の日?くずし字を読んでみよう

毎年5月18日は何の日かご存じですか?その答えは、「国際博物館の日」です。
国際博物館の日とは、博物館が社会に果たす役割を広く普及啓発することを目的として、ICOM(イコム/世界の博物館関係者で組織される国際博物館会議)によって1977年に制定されたものです。

相模原市立博物館では5月13日(土)~5月20日(土)の土日に、国際博物館の日にちなんだ様々なイベントを実施しています。題して、国際博物館の日2023「博物館探検隊!」です。
5月14日(日)は、イベントの1つとして「くずし字を読んでみよう」を行いました。

お集まりいただいた皆さんに「くずし字」についてお話しています。

わたしたちが日常で使う漢字やひらがなとは異なった形をしている「くずし字」。古文書や昔の書物でしか馴染みがないと思われますが、お蕎麦屋さんの暖簾(のれん)や割り箸の箸袋など、実は意外にも身近で使われていることがあります。このワークショップでは、そうした身の回りにあるくずし字の紹介や、くずし字のもととなっている漢字(=字母/じぼ)に関するお話をしました。

また、せっかくの国際博物館の日のイベントということで、参加者の方には博物館で働く学芸員の仕事を体験してもらいました。
今回は資料の扱いについて学ぼう!をテーマに、本物の掛軸の取り扱いに挑戦しました。

慎重に、丁寧に…

掛軸を掛け外しする際は、矢筈(やはず)という専用の道具を使います。本物の掛軸を前に少し緊張気味の皆さんでしたが、一連の手順が終わると最後はホッと笑顔に。普段はなかなかできない経験ができたと喜んでいただけました。

上手にできたね!

国際博物館の日2023「博物館探検隊!」は、今週末も開催します。5月20日(土)は、毎月恒例の生きものミニサロン、コスチュームと本物の土器で記念撮影できる縄文人体験や、博物館のバックヤードツアーを実施する予定です。
ここでしかできない様々な体験を楽しんでいただくとともに、このイベントを機に当館の活動についてもっと知っていただけると嬉しいです。

(歴史担当職員)

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フデリンドウの結実

先日、このブログでフデリンドウのその後について紹介しました。その際に、結実の様子がまたおもしろい、と予告したのですが、結実(けつじつ=果実が実ること)してきたので再び紹介します。
果実は、実っても真上を向いています。

フデリンドウの果実

上から見ると、まるで「がまぐち」です。

うえから見るとまるで「がまぐち」のようなフデリンドウの果実

がまぐちの奥へクローズアップすると・・。

がまぐちの中に茶色い種子がたくさん入っています

真上を向いたままの果実から、種子がどうやって出たのかというと・・
それは、雨です。中の種子がしっかり実って準備万端となると、がまぐちは下へ反り返ります。

反り返った果実

そして、そのがまぐちの中へ、雨粒がポチャンと入って、水と一緒に種子があふれ出たら大成功、というわけです。こうした種子散布を、雨滴散布(うてきさんぷ)と呼んでいます。
フデリンドウは他の植物が丈を伸ばす前の早春に咲くので、日照をめぐる競争があまりありません。そして、越年草(えつねんそう)のため、花が咲いて結実すると枯れてしまいます。親株が枯れてなくなった場所が、開花実績のある生育適地であるならば、新天地を目指す必要も無いのかもしれませんね。種子は、親株のまわりに落ちればよいため、タンポポのように綿毛で飛んでいったり、トゲやかぎ爪で動物の毛にひっついて運んでもらったりする必要もないということなのでしょう。

今年4月のフデリンドウの花

同じ場所で来年も上の写真のような花を見せてくれるよう、うまく雨粒が落ちてくることを願いつつ、このところの雨模様を眺めています。
(生物担当学芸員)

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麻布大学いのちの博物館と連携に関する覚書を締結しました!

麻布大学と相模原市は平成26年に「麻布大学と相模原市との包括連携に関する協定書」を締結し、連携を深めているところですが、両者の有する博物館施設の展示・教育活動の更なる連携を進めるため「麻布大学いのちの博物館と相模原市立博物館との連携事業に係る覚書」を締結しました。

麻布大学いのちの博物館

5月11日、いのちの博物館の島津徳人館長が渡邉志寿代教育長を訪問されました。

懇談する島津館長(左)と渡邉教育長(右)

これまでにも、いのちの博物館への当館のミニ展示の巡回や、当館での学生による出張展示解説を行うなど連携してきましたが、今後はよりスムーズな情報交換と手続きにより、相互の特性を生かした事業展開を行っていく予定です。

覚書の締結を記念した講演会も企画しています。

麻布大学いのちの博物館×相模原市立博物館連携講演会
令和5年7月9日(日)午後2時~4時
相模原市立博物館 大会議室 定員200名(当日先着順)
講師 麻布大学いのちの博物館 島津徳人館長
相模原市立博物館    秋山幸也学芸員

内容など詳細は近日中に博物館ホームページなどでお知らせします。

ところでこの日の日没近く、東の空に大きな虹が出ました。

博物館屋上から撮影した虹(5月11日18時ころ)

まるで2つの博物館の架け橋を象徴するかのような風景でした。
(生物担当学芸員)

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ナワシロイチゴ

博物館のまわりの樹林地やそのフェンス沿いで、ナワシロイチゴの花が咲きだしました。

ナワシロイチゴの花

遠目に見るとぼんやりした印象なのですが、近くで見るととても美しい花です。ノイチゴの仲間の花は白色が多いのですが、ナワシロイチゴは紅梅色と言えばよいでしょうか、なんとも繊細な色合いです。開いた花も良いのですが、閉じた花もまた美しい造形です。

花弁を閉じた状態のナワシロイチゴ

梅雨の頃に実って真っ赤な果実をつけます。ジャムなどに利用されますが、果実の粒が小さく、しかもアリなどがたくさんついていたりして、収穫するのは少々難儀なノイチゴです。
近くではガマズミも咲いていました。

ガマズミの花

林内で純白の花がボウッと灯(ともしび)のように浮き上がって見えました。この花もよく見ると雄しべがツンツンと飛び出していて、かわいらしい花です。

ガマズミの花

連休終盤の雨のせいか、植物が生き生きとしているように見えました。
(生物担当学芸員)

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今日から愛鳥週間

毎年5月10日~16日の1週間は、愛鳥週間(バードウィーク)です。
戦後間もない1947年、アメリカ人鳥類学者のオリバー・L・オースチンの提唱により、4月10日をバードデーと定めました。しかしこの時期、北日本ではまだ積雪もあるという理由で、1950年からは1か月遅らせた5月10日~16日を愛鳥週間と定めました。以来、野鳥保護思想の普及に努めることを目的とした様々なイベントが行われてきました。
さて、このブログでも愛鳥週間にちなんで、相模原市の鳥であるヒバリを紹介します。

ヒバリ(オス)

ヒバリは畑地や河原、草原などを主な生息場所とする野鳥です。相模原台地はかつて広大な桑畑や畑、カヤ場(ススキ原)が広がっていたことから、この地域はヒバリの密度が非常に高かったと推測されます。市の鳥の選定理由は「元気良くさえずる声が躍進する市の姿を象徴している」(1974年)なので、生息環境や生息密度は理由に含まれていません。しかし、ヒバリの囀りがとても身近だったことは選定の背景にあったと思われます。

飛びながらさえずるヒバリのオス

せっかくなので、2006年~2007年にかけて相模原市と合併した旧津久井郡四町の鳥も紹介します。
旧城山町の鳥はメジロです。

メジロのつがい

旧津久井町の鳥はウグイスです。

ウグイス

旧相模湖町の鳥はオシドリです。

オシドリのメス(左)とオス(右)

旧藤野町の鳥はヤマセミです。

ヤマセミ(オス)

いずれも地域の環境に見合った鳥が選定されていました。
この時期は野鳥の繁殖活動が最も盛んな季節です。巣立ったヒナがおぼつかない足取り、危なっかしい飛び方でウロウロしていてハラハラしますが、近づかずにそっと見守ってください。
「ヒナを拾わないで」キャンペーンも実施中です。詳しくはこちらをご覧ください。
野鳥たちの生活を、一歩下がって、温かい目で見守る意識を高めるための愛鳥週間としたいですね。
(生物担当学芸員)

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