令和7年度地質学講座「富士山の溶岩と湧水」1回目

5月18日(日)に令和7年度の地質学講座の第1回目を開催しました。連続4回の講座で、1回目と4回目は博物館での講義、2回目と3回目は野外に出かけて地形や地層の観察をします。

今年度のテーマは「富士山の溶岩と湧水〜桂川上流の地形と地質〜」です。山梨県都留市で富士山の溶岩や泥流堆積物とそれらがつくる地形、湧水を観察します。

相模川の川原では富士山から相模川によって運ばれた溶岩が川原の石としてみられます。また、富士山の麓から流れ下った泥流の地層が相模原市内でも観察できます。

相模川の河原の石として見られる富士山の溶岩(相模原市立博物館常設展示室)

相模原市内の富士相模川泥流堆積物の模型(相模原市立博物館常設展示室)

相模原の地形や地質の成り立ちに深く関わる地層や溶岩を富士山の麓で実際に観察することが今回の講座の目的です。

1回目は博物館で観察地点の地形・地質の概要の解説です。富士山や泥流、湧水のしくみについて説明しました。

2日目は6月1日(日)に都留市の東桂駅周辺で地形や地層を観察します。梅雨が近づいているので雨が降らないよう、気合を入れてお祈りしたいと思います。

(地質担当学芸員)

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小学校でテントウムシ探し

緑区の小山小学校でテントウムシを題材とした出張講座を行いました。
これは、法務省矯正局と実施している環境学習のプログラムのひとつです(小山中学校での授業の様子はこちら)。
まずは、テントウムシについてお話をしました。

室内からスタート!

3年生の児童の皆さんは、ちょうど理科の授業で虫のことを習っているそうで、タイムリーな話題だったようです。
テントウムシのすごいところ、ということで、アブラムシを食べることや、テントウムシが天敵から身をまもる術、そして、模様や種類の多様性の話を聞いてもらいました。
ところで、テントウムシは日本に何種いるか、ご存じですか?なんと、その数、約180種類。
その話をすると、児童のみなさんは「えーっ!」といい反応をしてくれました。

お話の後は、校庭でテントウムシを探してみます。

何かいた!

テントウムシが生きていくためには餌のアブラムシ、そのまた餌の植物と、いろいろな生きものがいる必要があります。
テントウムシ以外の生きものも一緒に探してもらうことで、校庭の生態系の一端をみんなで覗きました。

ナミテントウの幼虫

肝心のテントウムシは、幼虫と蛹がたくさん見つかりました。校庭にもたくさんのテントウムシがいるようです。ただ、残念ながら、成虫は見つかりませんでした。
また探してみてね、ということで講座を締めくくりました。
(動物担当学芸員)

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生きものミニサロン「虫と草木のひみつの仲」を実施しました!

5月17日、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。今回は、いつもサポートスタッフとして活躍してくれているお二人の企画、進行でした。テーマは「虫と草木のひみつの仲」です。

最初の説明をするサポートスタッフのお二人 今回は室内で実施

前日から迷うことないほどの降水確率だったため、室内で実施しました。まず、事前に採集しておいた草木の葉をいくつか観察してもらいました。

事前に採ってあった葉を観察

そこで、虫とかかわりのある「部分」を探してもらいます。答えは、ヤマザクラの葉の蜜腺(みつせん)です。

葉の付け根に対になっている蜜腺

この蜜腺がアリを呼び、そして、アリが群がるということは、葉を食べる他の虫に対しての防御になるという、ヤマザクラの戦略が紹介されました。他にも、いろいろな身近な花の模様がじつは蜜への道しるべになっている、蜜標(みつひょう)も写真で紹介しました。
続いて、葉についている“こぶ”のようなものを観察。

エノキハトガリタマフシという名のついた虫こぶ

博物館のまわりに生えているエノキの葉についていました。このこぶの中には何がいるのか、カッターで切ってみます。

注意深くカッターで切ります

何が出てくるのか、みなさん興味津々!

いる?いたいた!と声が飛び交いました

すると、中にはハエの仲間の幼虫が入っていました。

エノキトガリタマバエというハエの仲間の幼虫

スマホに着けるクリップ式のマクロレンズを貸し出したら、みなさん熱心に撮影されていました。

スマホでマクロ撮影

サポートスタッフのお二人のすばらしいアイデアにより、初めて扱うテーマでしたがとても盛り上がりました。
次回は6月21日(土)12時から実施します。お楽しみに!
(生物担当学芸員)

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ヨツメトビケラ

市内の河川敷で、黒地に白い模様の目立つ虫がひらひらと目の前に飛び出してきました。
その虫はノイバラの茂みの回りをしばらく飛んでいましたが、ぴたっと葉にとまりました。

ノイバラの葉の上のヨツメトビケラ

ヨツメトビケラです。
トビケラとは、いわゆる水生昆虫のひとつのグループです。
幼虫は水中で砂などを使って巣をつくって暮らし、成虫は主に水辺の草むらなどで生活をします。

そっと近づいて、アップでも撮影してみました。

美しい模様

この種は、真っ黒な翅(はね)に白い模様が入ることが特徴です。
前翅と後ろ翅、合わせて4枚のそれぞれの翅にひとつづつ白い模様が入るのを「4つの目」に見立てて、この名がつきました。
白い部分が濃い黄色の模様の個体もいるそうですが、私はまだ見たことがありません。
(動物担当学芸員)

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エゴノキの花

毎年、木々の花の開花を地面から気づくことが何度かあります。博物館お隣の樹林地でも、いつのまにか地面にこんな花が落ちだして、やっとエゴノキの開花を知ります。

地面に落ちているエゴノキの花

見上げてみれば、枝から無数の花が下がっています。ふだん、いかに樹上へ目を向けていなかったか、思い知らされます。

枝に咲くエゴノキの花

クマバチが何頭も訪花していました。

クマバチとエゴノキ

同じように、この樹林内で落ちている花で開花に気づくのは、アカメガシワやネムノキです。開けた場所に立っている木ならいざ知らず、林内だと林の上の方にしか花が着かないため、落ちてから気づくのです。ただし、エゴノキは下層の枝でも咲くので、単にそこへ目が向いていなかっただけなのですが・・。いずれにしても、落ちている花は、それはそれで地面に星が散っているようで美しいですね。
(生物担当学芸員)

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陣馬山山頂のタンポポ

前回お伝えした5月9日実施の陣馬山の調査では、外来種の状況も確認しました。陣馬山山頂では、タンポポがちらほら咲いていました。今、低地ではセイヨウタンポポとカントウタンポポの雑種が優勢であることをこのブログにも書きましたが、山頂のタンポポの多くが外見上、典型的なセイヨウタンポポでした。

セイヨウタンポポと思われる花 花を支える総苞の外側がはっきりしたへ反り返っているのがセイヨウタンポポの外見的特徴

陣馬山山頂付近は、現在は眺望確保のため伐採と草刈りを行っていて、タンポポの生育に適した草地になっていますが、もともとはカシなどが優占する樹林でした。つまり、陣馬山山頂付近にもともとタンポポは生えていなかったことが推測されます。

現在の陣馬山山頂 シンボルとなっている、白い馬のモニュメント(中央)が登山者を迎えます

山頂の白い馬のモニュメント 調査当日の写真

陣馬山山頂の整備は半世紀以上前にさかのぼるので、その頃、セイヨウタンポポが山頂へ分布を広げ、その後、カントウタンポポと出会うことなく、現在までセイヨウタンポポが生育してきたのかもしれません。

晴れた日の陣馬山山頂 伐採により360度開けていて眺望が良く、東側は高尾山や生藤山、西側は富士山を望む

そうは言っても、陣馬山は年間をとおして多くの登山者を迎え入れ、山頂はいつも賑わっています。雑種の種子が山麓から飛んできたり、登山者などに付着して運ばれることも当然考えられます。探してみると、やはり一部の区域では雑種の特徴を示すタンポポが咲いていました。
セイヨウタンポポも外来種なので保護する必要はありませんが、久しぶりに、典型的なセイヨウタンポポの形態を見たので、思わずたくさん写真を撮ってしまいました。

セイヨウタンポポ 陣馬山山頂

人の手が強く入っている山頂ですが、夏に向けて希少な植物もたくさん開花します。引き続き、調査を続けたいと思います。
(生物担当学芸員)

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キバネツノトンボ

ツノトンボという昆虫がいます。
トンボのなかまではなく、「アミメカゲロウ目」というグループに属する昆虫で、本州には三種が分布しています。
そのうちの一種、キバネツノトンボは、環境の良い草地環境に生息する種で、神奈川県では絶滅危惧種に選定されています。
この時期にのみ成虫が見られる昆虫であるため、一週間ほど前に、市内に残存している生息地に探しに行きました。
探しながら歩くと…いました!

キバネツノトンボ

黄色と黒の美しい模様の翅をしています。
撮影に夢中になって近づきすぎてしまい、この後すぐにどこかに飛んで行ってしまいました。

本種の生息地では、ほかの昆虫もたくさん観察できました。
こちらはイチモンジセセリというチョウ。

イチモンジセセリ

そして、足元に目を向けると、カタモンコガネというコガネムシの一種がじっとしていました。

カタモンコガネ

キバネツノトンボについては、この日はまだ成虫の出現期の序盤だったようで、数頭が見られる程度でした。
時間が取れれば、成虫の数がピークの時期と思われる今週にもう一度調査に行きたいと思います。
(動物担当学芸員)

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陣馬山で生物調査

5月9日、緑区の陣馬山(標高855メートル)へ、相模原植物調査会のみなさんと当館生物系の学芸員2名で生物調査に行ってきました。生物系学芸員とは、このブログで署名を「生物担当学芸員」と「動物担当学芸員」としている2名です。コロナ禍を挟み、調査会ではしばらく市内の山域の調査のブランクが空いてしまっているため、今年度から少しずつ登って調査する予定です。また、「動物担当学芸員」はまだ着任2年目で、市内の山へあまり登ったことがないため、現地視察の目的もありました。沢井の登山口から一ノ尾尾根を登り、栃谷へ下りるコースを歩きました。
当日のお天気は曇りで下り坂というものでしたが、かえって暑すぎず、とても歩きやすい天候でした。早春から初夏へと移り変わる端境(はざかい)期でしたが、たくさんの花を観察することができました。まずは、オカタツナミソウです。爽やかな青色が美しい花です。

オカタツナミソウ

ツクバネウツギは花盛りでした。

ツクバネウツギ

チゴユリは山頂に近づくにつれてきれいに咲く株が多く見られました。低い場所はすでに花期が終わろうとしているようです。

チゴユリ

ヤマツツジも林内でよく目立っていました。

ヤマツツジ

こちらはイカリソウです。登山道沿いのあちらこちらで咲いていました。特に下りのルートで多く見られました。写真の花は赤味が少なく、白っぽい花でした。

イカリソウ

今回の調査では、外来種の状況も確認しました。こちらは下りのスギ植林地内にはびこっていたオニマタタビです。

オニマタタビ

種名にピンとこないかもしれませんが、この植物の果実であるキーウィフルーツならご存知の方も多いでしょう。おそらく、山麓の栽培地でハクビシンなどの哺乳類が食べて、種子が周辺へ散布されているようです。
こちらは登山口周辺の石垣に茂っていたペラペラヨメナです。白い花ですが、時間が経つとピンク色に変化することから園芸種として持ち込まれ、野外で広がっています。

ペラペラヨメナ

じつは、山頂で興味深いタンポポの分布の様子を確認したのですが、それはまた次回、お伝えしたいと思います。
(生物担当学芸員)

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ヤマトシロアリの結婚飛行 2025年(シロアリの群の画像あり)

5月11日、来週土曜日(5/17)に実施する「生きものミニサロン」の準備のために、お隣の樹林地内をサポートスタッフのみなさんと下見をしていました。すると、森の一角から無数の羽虫が湧き上がるように飛び立っています。先月末には動物担当学芸員がクロオオアリのオスの群飛の様子をブログにアップしていましたが、今回は、ヤマトシロアリでした(ちなみに、シロアリはアリの仲間ではありません)。

飛び立つヤマトシロアリの生殖虫

シロアリは家屋害虫として知られていますが(イエシロアリ)、ヤマトシロアリのように樹林地に普通に生息している種類もいて、倒木や落枝などを穴だらけにして分解を促進しています。
4月下旬から5月のおだやかな晴天の日の午前、ヤマトシロアリの生殖虫(有翅虫)は巣穴から出て、結婚飛行と呼ばれる群飛を行います。この日はちょうどそのタイミングに出会えたというわけです。

群飛前のヤマトシロアリの生殖虫 不思議なことに、少し離れた3つのコロニーからほぼ同時に飛び立っていました

(この動画に音声はありません)

この群飛はコロニーを増殖するためのものですが、なんと少し飛んだだけで、生殖虫はすぐに翅(はね)を落とします。そして、地上を歩きながらパートナーを探し、交尾します。

飛んでいるヤマトシロアリ 翅はこのあとすぐに落としてしまいます

じつは、上の動画を撮影したときは群飛の様子を撮影できるレンズを持っていなくてスマホで撮影したのですが、この後館内にレンズを取りに行き、すぐにもとの場所へ戻りました。しかし、すでに飛び立ちは終了していました。ほんの10数分のことだったようです。
かわりに、ヤマトシロアリの群に大喜びで?集まった捕食者たちを撮影できました。こちらはニホンカナヘビです。次々と大量のヤマトシロアリを食べていました。

ヤマトシロアリを捕らえたニホンカナヘビ

こちらはヒガシニホントカゲ。お腹がぱんぱんなのか、動きが鈍かったです。

ヒガシニホントカゲ

そして、アブの仲間も。

そこらじゅうで捕まっていました

近くのオニグモの巣にもたくさんのヤマトシロアリがかかっていました。

クモの巣にかかったヤマトシロアリ

飛び立ったと思ったら捕まるとは、はかない運命です。しかし、小さな野生動物たちのダイナミックな営みを目の当たりにして、楽しい下見となりました。
今月の「生きものミニサロン」は5月17日(土)12時から実施します。今回はサポートスタッフのみなさんの企画で楽しく自然観察します!お楽しみに。※シロアリの観察は行いません。
(生物担当学芸員)

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バードウイーク

5月10日から、愛鳥週間(バードウイーク)が始まりました。
バードウイークは、1947年に米国の鳥類学者、オリバーL・オースチンの提唱により4月10日をバードデイと定めたのが始まりです。しかし、4月初旬ではまだ積雪の残る地方があることから、その後ひと月遅らせて5月10日に、さらに1950年からは5月10日~16日をバードウイークとし、様々な普及啓発活動が行われてきました。
さて、そんな5月初旬、中央区のある公園近くで、小型のタカの仲間であるツミの鳴き声が聞こえてきました。車の通りも激しい市街地なのに、タカがいる・・。そう、ツミは2000年代に入るころから都市の緑地などへ繁殖分布を広げた、いわゆる「都市鳥」なのです。

ツミ(メス) 国内では一番小さなタカ

近年のツミの営巣場所を見ていると、あえて人通りのある通路の真上や、建物に近い樹木の中などに巣を作っています。これは、ツバメと同様に、人の存在によってカラスなどの天敵から巣を守る効果を狙っているようです。さらに、ツミの存在をあてにして営巣する鳥もいます。オナガです。

ツミのそばに“お約束どおり”にいたオナガ

ツミの巣の周りでオナガが営巣するのも、今や定番です。オナガはツミの狩りの対象となりうる体のサイズですが、それ以上に、巣の卵やヒナを狙うカラスの方が脅威のようです。ツミは巣の近くに来たカラスを追い払うので、その防衛力に期待しているのでしょう。「虎の威を借る狐」ならぬ「ツミの威を借るオナガ」です。
そして、博物館お隣の樹林ではキビタキがさえずりを聞かせてくれています。

キビタキ

キビタキも、2000年代に入ってから、都市の緑地の樹木が高木化、古木化したことに伴って繁殖分布を広げてきました。野鳥たちの暮らしぶりも、刻々と変化を続けています。バードウイークは、そんな野鳥たちを改めて見つめ直すきっかけになるとよいですね。
(生物担当学芸員)

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