クヌギの伐採 その2

昨年2月に、博物館前庭のクヌギの、根元から枝分かれしたうちの北側の1本を伐採しました。その様子はこちらのブログに書いています。その中でも触れていますが、年輪を数えると、クヌギとしては老齢木と言える75年以上の樹齢であることがわかりました。またここ数年、根元に「枯れ始めているサイン」であるナラタケの大量発生があり、昨年秋にもやはり残った根元にナラタケが発生していました。

根元にナラタケが生えています

大量発生したナラタケ

木全体が不健康な状態にあることが推測されたため、南側に残っていた1本も伐採することになり、1月20日に実施されました。

2025年1月21日 伐採後の様子

上の写真は本日、1月21日に撮影したものですが、段階を追って写真を並べてみます。まずは伐採前の2023年12月の写真です。

2023年12月

こちらは、北側を伐採した2024年2月です。

2024年2月の伐採後

そして正面から2023年12月初旬の様子です。

2023年12月

こちらは本日、2025年1月21日の正面からの写真です。

2025年1月21日

年輪を数えてみると、やはり70年~80年の間であることがわかりましたが、不明瞭な部分が多くてはっきりはわかりませんでした。

伐採後の切り株

大きな木が伐られるとちょっと寂しい気分になりますが、木にも寿命があります。クヌギは本来、明るい場所で早く成長し、長命な木ではありません。適正に伐採していかないと落枝や倒伏の可能性が高まり、大変危険な状態になります。時間はかかりますが、また別の木が成長して緑を回復してくれるのを気長に待ちたいと思います。
(生物担当学芸員)

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【甲州道中歴史講座】第4回(最終回)「江戸幕府の五街道政策と甲州道中」を開催しました。

1月19日(日)、甲州道中歴史講座の第4回目を開催しました。
この講座は、甲州道中における各都県下で唯一の本陣建物が現存しているというご縁から、本市と日野市との自治体間連携として実現した事業の一環です。昨年10月から月1回、連続講演会形式で行ってきた本講座もこれが最終回です。(第1回第2回第3回

講師には、国文学研究資料館プロジェクト研究員の菅原 一(すがはら はじめ)さんをお招きしました。菅原さんは近世の村社会を研究分野とされていて、フィールドである長野県域の史料調査から浮き彫りになった江戸幕府による五街道政策について本講座でお話しいただきました。題して、「江戸幕府の五街道政策と甲州道中」です。

講座の開始を皆さま心待ちにしています。

講座の中で大きく取り上げられていた「今井太郎九郎一件」は、信州小県郡(ちいさがたぐん)房山村(ぼうやまむら/現在の長野県上田市)の丸山家が所蔵する古文書に記述されていた江戸幕府による宿駅・助郷窮乏の救済計画です。この計画の登場人物をかわいらしいキャラクターに見立てた人形劇仕立てで解説いただき、古文書に親しみがある方もそうでない方も楽しまれていた様子でした。

古文書の内容も、人形劇仕立てならわかりやすい!

また、これまでの講座でも頻出し、村々の大きな負担となっていた宿駅の仕組みや助郷制度についても解説いただき、まとめの最終回として理解を深められたことと思います。

この日も多くの方が来場され、ありがたいことに参加者の1割ほどは複数回にわたってお越しいただいたとのことです。なんと、全て制覇されたという数名の強者も…!全4回で延べ200人以上の皆さまにご参加いただきました。

最終回は過去最多の84人に参加いただきました!

甲州道中歴史講座はこれにて終了しますが、日野市立新選組のふるさと歴史館の特別展「甲州道中日野宿と本陣」は来週1月26日(日)まで開催中です。このほか、令和6年度の歴史分野博物館実習生が制作したミニ展示「甲州道中と明治天皇巡幸」を、年度内に吉野宿ふじやで出張展示する予定です。まだまだ甲州道中本陣連携事業は続きますので、引き続きご興味を持っていただけると幸いです。

(歴史担当学芸員)

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勝坂でバードウォッチング

1月19日、勝坂遺跡でバードウォッチングの案内をしてきました。勝坂遺跡は国指定史跡で、その活用事業(相模原市文化財保護課主催)の一環として企画されたものです。
まず、管理棟内で簡単なレクチャーです。今日見られたらいいな、という野鳥を紹介しました。

室内で簡単なレクチャーから始めました

歩き始めてすぐ、レクチャーでも紹介した「日本で一番小さいキツツキ」であるコゲラが登場。全員で観察できました。

目の前に現れてくれたコゲラ

木をつつく様子や、背中のシマシマ模様がかわいいと大人気でした。
出現する野鳥を次々に紹介するよりも、じっくり観察することを心掛けました。また、途中では冬越し中の植物や、谷戸と湧水などの環境についても紹介しました。

じっくり観察を心掛けました

それでも、一瞬の登場でみなさんから歓声が上がった種もいます。ほんとうに上空を一瞬通過しただけだったためその場では識別できなかったのですが、かろうじて1枚だけ撮影できた写真を後から画像調整して確認したら、ハイタカの成鳥でした。

一瞬の登場だったハイタカ

大きさから判断してメスと思われます。この後、遺跡公園内でムクドリの群が突然飛び立ったと思ったら、上空をオオタカが飛びました。なので、猛禽類が2種類観察できたことになります。
その後もツグミやムクドリ、上空を飛び回るイカルの群などを観察しました。
遺跡公園内を一周して管理棟の前まで戻り、最後にモグラ塚をつついて遊びました。

モグラ塚をつついてみると・・

モグラ塚は、モグラ(アズマモグラ)がトンネルを掘って出た土をかき出したもので、塚の中心を木の枝などでつつくと、スポンと土が落ちてトンネルの穴が現れます。そこからモグラの胴体の太さを想像してもらいました。
まとめとして、みなさんと観察した野鳥を確認(鳥合わせ)しました。案内役だけでなくて、他のみなさんと複数で確認できたのは、15種でした。
風がほとんど無くて穏やかな冬の日、楽しくバードウォッチングができました。
(生物担当学芸員)

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生きものミニサロン「植物たちの春の準備を観察しよう!」を実施しました

1月18日、毎月恒例の生きものミニサロンを実施しました。テーマは「植物たちの春の準備を観察しよう!」として、ロゼット葉や冬芽(休眠芽)を参加者のみなさんと観察しました。
ロゼット葉(よう)とは、根から直接出た葉が地面に張り付くように放射状に広がる様子を表す植物用語です。タンポポの葉を思い浮かべていただくとよいでしょう。雑草としておなじみのハルジオンのロゼット葉を観察しています。

ハルジオンのロゼット葉

どれどれ?あった!と盛り上がっています

他にも、オオバコやヘラオオバコ、そしてロゼット葉も葉裏が白い、ウラジロチチコグサなどを観察しました。植物に関心のある小学生の参加者がいて、興味深そうに観察してくれました。
続いて、冬芽の観察の前にちょっと寄り道です。ナツヅタのつるを切って、染み出てくる樹液をなめてみました。
「ちょっと甘い!」

切断面に染み出た樹液を指につけてなめます

これは春の準備というよりも、厳しい冬をしのぐための工夫でしょうか。糖分を含む樹液は凍りにくいためだと思われます。
さて、いよいよ冬芽の観察です。いろいろな冬芽がある中で、今回は「悪い顔の冬芽を探す!」をミッションとしました。そして、それをスマホで撮影に挑戦するために、こんなツールを使っていただきました。

繰り出し式ルーペ

繰り出し式のルーペです。これを指に挟み、スマホのレンズに当てて撮影します。

レンズにうまく当てると、マクロレンズになります

すると、こんな画像が撮影できます。簡易のマクロ(接写)レンズですね。

ハリエンジュの冬芽 般若?デビル?

ちょっと難しいけど、頑張って撮影しています。

ヒメコウゾの冬芽を撮影中

撮影した「悪い顔」をみなさんと見せ合いました。

参加者同士で見せ合っています

怪物が口を丸く開けているように見える、ヒメコウゾの冬芽と葉痕(ようこん:葉が落ちた痕)です。

怪物の顔?ヒメコウゾの冬芽と葉痕です

悪い顔だけではちょっと気分も悪くなりそうだったので、サンショウの枝にいるエンジェルも撮影してもらいました。

サンショウの冬芽と葉痕、そしてトゲ(デジタルカメラで撮影)

冬芽やロゼット葉の観察はちょっと地味な内容かな、と心配もしましたが、みなさんとても盛り上がって観察してくれました。
次回は2月15日(土)12時からです。
(生物担当学芸員)

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1月15日、16日は休館します

相模原市立博物館は1月15日(水)、16日(木)の2日間、館内メンテナンス作業のため休館します。

1月12日、市内のスポーツ施設近くを歩いていると、街灯の上にチョウゲンボウがとまっていました。

チョウゲンボウ(オス)

オスの成鳥で、頭の青灰色と背中の赤茶色のコントラストが美しい個体です。チョウゲンボウはハヤブサの仲間で、猛禽類です。しかし、近年明らかになった分子系統による分類では、同じ猛禽類のタカの仲間とは縁遠く、インコなどに近い仲間であることがわかっています。そう言われてみると、顔つきもかわいらしく見えます。
盛んに地面の方を気にしていましたが、スッと飛び立ち地面に下りました。

飛び出したチョウゲンボウ

地面に下りたところ 獲物を見つけたのか?

そして、なにやらつかんでまた街灯の上にとまったのですが・・

つかんでいるのは・・

どう見ても、枯葉と小枝です。お腹が空きすぎて、イモムシにでも見えたのでしょうか。
葉をポイっと捨てると、また隣の街灯へ移ってまた地面を見つめていました。なんとか獲物を見つけて冬を乗り切ってほしいですね。
(生物担当学芸員)

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イカルの群

【メンテナンス休館のお知らせ】
相模原市立博物館は1月14日は祝日後の休館日、15日(水)、16日(木)は館内メンテナンスのための休館します。次の開館は1月17日(金)となります。

1月11日の朝、博物館の駐車場を歩いていると、上の方から「クッ、クッ」「ヒーコーキー」とつぶやくような声がしています。イカルの群です。30羽くらいいたでしょうか。ネムノキにとまり、枝にわずかに残ったお豆を食べていました。

ネムノキにとまるイカル

しかし、食事の効率が悪かったのか、ネムノキにはあまり執着せず、すぐに別の木に移りながら大きな嘴(くちばし)で樹皮をかじるように何かを食べていました。

コナラやクヌギの木でも何かを食べていました

それにしても、インパクトのある顔つきです。かつて、鉄道の駅の売店のシャッターにはこの鳥をモチーフにしたキャラクターが描かれていました。今はもう見られなくなりましたが、デフォルメするまでもなく、この黄色い大きな嘴はキャラ立ちします。

大きな黄色い嘴がよく目立ちます

年によっては春に向けて100羽以上の群になることもあり、博物館周辺の樹林を大騒ぎしながら移動する様子が見られます。今年はどれくらいの数になるか、ちょっと楽しみです。
(生物担当学芸員)

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トモエガモの顔の不思議な模様

1月8日、近隣の公園に行くと、池にトモエガモのオスが泳いでいました。

トモエガモ(オス)

かつては比較的珍しい冬鳥で、飛来すると話題になるような種類でした。しかし近年、県内のあちらこちらへ飛来するようになり、相模原市内の記録も増えています。
それにしても、不思議な顔の模様です。その名のとおり、巴模様(和太鼓に描かれることが多い、勾玉が並んだような日本の伝統的な文様)を連想させますが、色合いといい、その複雑さといい、「なぜこうなったの?」と問いかけたくなるような模様です。

トモエガモ(正面から見たところ)

カモの仲間には、このように複雑で不思議な模様の種類が少なくありません。こちらはシノリガモという海ガモの一種です(相模原では見ることはできません)。

シノリガモ(オス)茨城県の海岸で撮影

筆で白い絵の具を無造作に置いたような模様です。目の少し後方に白くて丸い点があり、見ようによってはこちらが目のようにも見えます。
パンダの目の周りが黒いのは、急所である目を外敵から守るためというのが一つの理由と推測されています(はっきりしたことはわかっていません)。そうだとしたら、タヌキなどの目の周りの模様も同じような理由かもしれません。
カモの仲間にも、愛称「パンダガモ」がいます。和名はミコアイサですが、オスは見事なパンダ模様。

ミコアイサ(オス)

トモエガモやシノリガモ、ミコアイサの模様が目の位置をわかりにくくするためのものかはわかりません。しかし人間にとっては、これらの鳥たちの魅力の一つであることは間違いありません。カモたちの模様や行動を見ながらあれこれ想像を膨らませるのは、冬の楽しみの一つです。
(生物担当学芸員)

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さがみはら文化財ユニークべニュー作品展 開催中!【1月31日まで】

現在、当館では「さがみはら文化財ユニークべニュー作品展」を開催しています。
ユニークベニュー??はじめて耳にする方も多いと思います。

『Unique Venu=:特別な場所』を意味し、ヨーロッパで生まれた考え方です。
歴史的建造物・神社仏閣・城跡・美術館・博物館などの独特な雰囲気を持つ施設を会場としたイベント等を実施することで、特別感や地域特性を演出できます。

今回市内にある文化財建造物の魅力をより多くの方に知ってもらうために、
さがみはら文化財ユニークべニューとして、旧中村家住宅(国登録有形文化財)、
小原宿本陣・旧青柳寺庫裏(くり)(神奈川県指定重要文化財)の3施設を会場に、
教育委員会文化財保護課と、博物館、フォトシティさがみはら実行委員会がタッグを組み、写真教室などの写真と文化財を掛け合わせた連続イベントを実施しました。

今回の作品展はその最終回。集大成です!

各参加者がカメラ越しに見つけた文化財の魅力がもりだくさん。
建物全体の写真があれば、こんな所あったっけ?と見逃してしまいそうな細部の写真まで様々です。

展示場所は、当館の入口からまっすく進んで・・・

特別展示室の右側奥です。

ユニークな顔フォトフレームも!!

文化財建造物の魅力はその現地に行って、佇まいを肌で感じることにあります。ぜひ現地にも足を運んでみてください。あなたもカメラを持って文化財にでかけませんか?

中村家住宅(市ホームページ)  旧青柳寺庫裏(市ホームページ)
小原宿本陣(市ホームページ)

展示は1月31日まで実施していますので、じっくりとご覧ください。
(担当学芸員)

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40日ぶりの降水

1月6日の午後から本降りになった雨は翌7日の朝まで残りました。まとまった降水は、昨年11月27日以来なので、40日ぶりの雨となりました。その間相模原では、ほんのわずか、車のフロントガラスに水滴が乗って初めて気づく程度の雨や、ちらちらと一瞬だけ雪が降ったことはありましたが、降水量が記録されるほどの雨は降っていません。これだけの期間雨が降らないのも珍しいですね。
7日の午前には晴れて青空が広がりました。ひさしぶりの降水でマンリョウの果実もみずみずしさを取り戻したようです。

マンリョウの果実

博物館前庭の木々にも水滴が並んでいました。

背景は博物館の天体観測室

後からよく見たら、水滴の中に天体観測室が写りこんでいました。

水滴にクローズアップしたところ

またしばらく晴天が続きそうな予報なので、今回の雨は生きものたちにはとてもありがたい天の恵みとなることでしょう。
(生物担当学芸員)

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マガモの潜水

先日、近隣の公園の池で何気なくマガモを見ていました。すると、チャポンと潜水しました。1度ではなく、何度も何度も繰り返していました。

マガモ(オス)

勢いよく潜ります

体は完全に水中へ

カモの中でも、潜水が得意なグループ(魚介類を主食とするもの)と、マガモの仲間のようにあまり潜水をしないグループ(雑食性で、主に水草や藻類などを食べるもの)がいます。マガモの仲間も、まったく潜水をしないわけではないのですが、地上を歩いたり、水面の食物を食べることが多く、特に水面ではこのように逆立ちして食べているところをよく見ます。この日も、何度か潜水した後にこのように逆立ち採食をずっとしていました。

逆立ち採食

盛んに潜水していたのでビデオでも記録しておこうと録り始めたら、この時は23秒ほど潜っていました。残念ながらちょっと離れた場所へ浮上したので、一部始終を記録、というわけにはいきませんでしたが・・

マガモの仲間の潜水はだいたい5秒前後のことが多く、この日もだいたいそれくらいの潜水を繰り返していました。ちょうどビデオで録画している時だけ長々と潜っていたので、カメラを意識して(警戒して?)いつもより長めに潜っていたのかもしれません。
(生物担当学芸員)

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