“神の手”凱旋

8月3日(日)、博物館で動物の標本づくりなどを行っているグループである、さがみホネホネ団(さがホネ団)の活動を実習実験室で行いました。でも、ふだんのように、個々に黙々と標本に向き合う様子とは違います。

10数名が取り囲んでの標本づくり作業

じつは、ドイツの博物館で標本作製技術者として活躍する相川稔さんが一時帰国されているので、その技術を間近に見せていただく会を企画したのです。現在のさがホネ団のメンバーにとってはまさに“神の手”ともいえるワザです。かぶりつきでみなさん見つめています。
相川さんは、ドイツへ渡る前の数年間、当館に近い地域に住まわれていたので、さがホネ団の前身である相模原動物標本クラブの活動へ定期的に来ていただいていたのです。

無駄のない手さばき

その後、ドイツの博物館へ再就職されてからコロナ禍を挟み、久しぶりに当館へ凱旋して下さったというわけです。今回は、シロハラという鳥の仮剥製(かりはくせい)を作りながらの歓談となりました。仮剥製と言っても、作り方はほとんど本剥製と変わりません。無駄のない手さばきに加えて、素早く済ませられる部分としっかり時間をかけるべき部分のコントラストが明快なところも印象的です。
次々と出てくる質問にもなごやかに、なおかつ職人としてのこだわりの根拠も明確にしながら答えてくれて、楽しく学びの多い一日となりました。
(生物担当学芸員)

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博物館実習2日目

8月6日は博物館実習2日目でした。2日目の実習は資料の取扱い実習です。資料の梱包、人文系資料の取扱い、自然系資料の取扱いの3つの作業を行いました。

資料の梱包は実際に土器を使って行いました。土器の梱包は土器を安定させるために二人一組で行います。

人文系資料の取扱いでは、掛け軸を取り扱いました。箱から出して、壁に掛け、再び箱に戻す作業を行いました。簡単そうに見えて結構難しい作業です。特に、箱に収めるために綺麗に巻く作業は、なかなかうまくできません。

自然系資料の取扱いは植物の押し葉標本の作成を行いました。実際に博物館資料として収蔵庫に収めるための標本を作ります。ボランティアグループの相模原植物調査会の皆さんからご指導を受けながら作成しました。

どの作業も慣れていないと、上手にできません。実物資料を用いての作業だったので、実習生はかなり緊張していたようです。

共通実習3日目は展示解説の実践です。実習生たちが展示資料の解説に挑戦します。

(地質担当学芸員)

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博物館実習が始まりました!

当館では毎年、学芸員資格の取得を目指す学生向けに「博物館実習」の受入れを行っています。今年も実習の時季となり、16名の実習生が当館に集まりました。

今年はこのメンバーで実習を行います!

学芸員実習は、その年の実習生が全員集まって実習を受ける「共通実習」と、専門分野ごとに分かれての「分野別実習」の2つの内容で構成されています。
3日間の共通実習の初日である8月5日は、当館や館の業務の概要について、座学で学ぶところからスタートします。

管理運営業務についての講義

組織の中での博物館の位置づけや博物館の目標・使命といった、博物館で働くうえではとても重要なことに意識が向くきっかけとなったのではないでしょうか。

午後はバックヤードを含む館内全体の見学です。

望遠鏡の解説

展示室では、展示の意図を含め、詳しい解説が行われました。

自然歴史展示室の解説

それぞれ驚いたりうなずいたりと、様々な学びがあったようです。
次の日の共通実習2日目は、実際に資料に触れる実習です。
(動物担当学芸員)

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今夏も実施します!相模原のシカの革でキーホルダーを作ろう(8/14)

昨年大変好評だった、人と動物の共存について考えるイベント「相模原のシカの革でキーホルダーを作ろう」を今年も8月14日(木)に実施します。

シンプルで素敵なキーホルダーを作ります

このイベントは、市内緑区を中心に狩猟と皮革の利用、普及などの活動を行う「野生動物との共生の会」の協力を得て実施します。県内では毎年たくさんのシカやイノシシなど野生鳥獣が、有害駆除などによって捕殺されています。

野生鳥獣の有害駆除などによる捕獲と利用の現状についてのレクチャーもあります

しかし、駆除された動物はほとんど利用されることなく処分されているのが実情です。そうした現状を紹介するレクチャーと合わせて、相模原産のシカ革を使ったキーホルダーづくりを行います。

どなたでも参加できます!

10時~15時まで、参加費は200円(実費)で、各回7名程度、時間は約20分です。材料は100名分ほど用意しますが、材料がなくなり次第終了となります。キーホルダー作りをとおして、野生生物との共存について考えてみませんか。
(生物担当学芸員)

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今年もタンポポの花粉識別を実施中

8月2日(土)、実習実験室でなにやら真剣なまなざしで顕微鏡を見ているみなさんが・・

顕微鏡を真剣にのぞいています

これは、昨年に引き続いてアースウォッチジャパンの「日本固有のタンポポ全国調査」に当館が協力する中で、そのバックヤードプログラムとして全国から集められたタンポポを、花粉で識別するボランティアのみなさんの作業の様子です。

作業を行う前のレクチャー(横浜国立大学の倉田教授)

ひさしぶりに顕微鏡を触った、という方も多く、はじめはピント合わせなどの操作に戸惑っている様子でしたが、しだいに慣れてきて作業もはかどります。
集まっているタンポポの花は、「2倍体の在来種」という判断で採集されたものですが、この写真のように花粉の粒の大きさがそろっていないものは、在来種と外来種の雑種です。

雑種の花粉 粒の大きさが不ぞろいなものが多く見られます

もちろん、在来種と判断できたものも多数ありましたが、市民調査で外見上、在来種と判断されたものの中にかなりの割合で雑種が含まれている可能性があることがわかります。この結果は改めて、今年中に発表したいと考えています。
中には、訪花昆虫がつけてきたものでしょう、まったく違う花の花粉が混じっていることもあります。こちらは、アカバナ科の花の花粉です。消波ブロック(いわゆるテトラポット)のような形をしていますね。

特徴的な形のアカバナ科の花の花粉

猛暑の中でしたが、室内でじっくり集中して作業する時間が意外と楽しかったようです。あと2回ほど実施して、集まった300個以上のタンポポの花の識別を行う予定です。
(生物担当学芸員)

※ボランティアの募集はすでに締め切られています

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バックヤードツアーを開催しました!

8月2日、博物館の「ウラ側」をお見せする、バックヤードツアーを開催しました。
バックヤードとは、普段は職員しか入ることのできないエリアのことで、資料が保管してある収蔵庫も含まれます。
今回は30分のコースで、1階と3階の収蔵庫エリアを中心にご見学いただきました。

まずは、大型の資料を収蔵している大型資料収蔵庫です。

大型資料収蔵庫の内部

実際に収蔵庫の中に入り、収蔵資料を見学してもらいました。
冷蔵庫だ!こっちは棚かな?と、様々な声が上がります。

生活資料収蔵庫では、中を覗いてもらいながら、満杯になりつつある収蔵庫の現状をご覧いただきました。

民俗学関連の資料を多く収蔵している生活資料収蔵庫

今回のツアーでは、そのほかに動植物資料収蔵庫と考古資料収蔵庫、特別収蔵庫・古文書収蔵庫・美術品収蔵庫の前室もご紹介しました。

そして、最後にご案内したのは写真室です。
資料を撮影する専用スペースがあることに驚かれた参加者の方もいらっしゃいました。

写真室にて

今回は午前、午後の2回ともに整理券がすぐになくなってしまう状況で、ご参加いただけなかった方には大変申し訳ありませんでした。
担当学芸員も、バックヤードへの注目度の高さを改めて感じる機会となりました。
バックヤードツアーは今後も企画、実施する予定です。
実施の際には改めて告知を行いますので、ご注目ください。
(動物担当学芸員)

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夏の白い花

季節によって咲く花の色の傾向があるわけではありません。でも、なんとなく、夏の花は白が目立つように感じられます。その一つがクサギです。

クサギの花

この花は香りも強めで、満開のときには甘い匂いが付近に漂います。秋に実る果実もまた独特で、萼(がく)が赤く星形に開き、その中央に黒紫色の果実がつきます。

クサギの果実(秋に撮影)

見事なコントラストで、野鳥たちに果実が熟したことを知らせます。このような色の組み合わせを二色効果と呼びます。
近くでは、こんなつぼみもありました。カラスウリです。

カラスウリのつぼみ

しかしこの花は、昼間は咲きません。夜になると、レースを広げたような見事な花が咲きます。

カラスウリの花

なぜ夜に咲くのかというと、この花は蛾を呼び寄せて花粉を運ばせるからです。スズメガの仲間などがこの花が放つ芳香につられてやってきて、蜜を吸いつつ花粉を体へつけます。闇夜にそんな営みが行われるのであれば、香りだけで花弁は不要なのでは・・と思ってしまいますが、香りだけではさすがに目立たせることが難しいのでしょう。スズメガからこの花がどんなふうに見えているのか、気になりますね。
(生物担当学芸員)

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マダニに注意!

先日、博物館の動物標本作成ボランティアの方からマダニの生体をもらいました。
マダニの仲間は人の血を吸うことで知られていますが、それだけではなく、病気を媒介することもある危険な生き物です。
ごく最近では、マダニが媒介し、重症化リスクの高い感染症である「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が神奈川県でも報告されており、注意が必要な状況です。
せっかく生体をいただいたので、今後の普及啓発の資料とするため、自然の中で写真を撮ってみました。

「バンザイ」をするマダニ

意外と俊敏で、スタスタと歩いていきます。
ところが、息を吹きかけるとぴたりと止まり、第一脚をバンザイの姿勢に持ち上げます。
獲物が近くにいると察知したのでしょう。なんとも恐ろしいです…。

大型の種類です

今回のマダニはタカサゴキララマダニという、マダニ類の中でもかなり大型の種類です。
この個体は体長8mmほどもありました。

メスの成虫です

このマダニはなんと、ご自宅のベランダにいたそうです。
どうやってベランダにたどり着いたのかは不明です…。

執筆している私も近年マダニと遭遇することが増えていると感じます。
野外での活動の際には、マダニ対策を十分にする必要があります。
また、マダニは野生動物だけでなく犬や猫などにも寄生し感染症を媒介させます。
そのため、例えば野良猫との接触なども大きなリスクとなるので、注意をしたほうがよいでしょう。
(動物担当学芸員)

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【企画展コーナー解説①】相模原市立博物館のこれまで

7月12日(土)から、当館特別展示室にて市立博物館開館30周年記念企画展「相模原市立博物館 30年の歩みを未来へ」を開催しています。

会期初日今月21日(月・祝)には、本企画展の担当者でもある動物担当学芸員による展示解説会を実施しました。大変好評いただきましたが、限られた回数・時間内での解説となったため、このブログでも何回かに分けて企画展の見どころ解説を行います。
展示解説に参加できなかった方も、今一度じっくりご覧になりたい方も、ぜひ楽しんでいただけると幸いです。

この大きな看板と横断幕が会場の目印です。

初回となる今回は、「博物館のこれまでを紹介!」と題した、会場に入って一番初めに皆さまをお出迎えするコーナーを解説します。

オレンジ色のコーナーカラー!

ここではコーナータイトルのとおり、当館のこれまでの歩みについて紹介しています。まずは、当館の歴史から…。

当館は平成7(1995)年11月20日に開館しましたが、準備にあたってはその15年前から動き出します。この頃の市域では博物館建設の機運が高まり、現在の当館があるこの地に建設の検討が盛り込まれたのが、昭和55(1980)年4月のことでした。翌年には当時の市社会教育課に「博物館準備係」が設けられ、本格的に博物館設置が進められることとなります。

当館ができる前の建設予定地上空写真。中央向かって左側の白い建物がJAXA相模原キャンパス、そのはす向かいの建物が国立映画アーカイブ相模原分館です。

準備段階において特に難航したのが、建設用地の確保でした。当館ができる前、現在の市立博物館周辺は「キャンプ淵野辺」という米軍施設でしたが、昭和49(1974)年11月に全面返還された後、博物館用地としての跡地処分が決定するまでには実に6年の歳月を要しました。当時の担当者たちの苦心の末、「博物館をつくる懇話会」が提唱した「自然環境に恵まれた」用地を確保することができ、憩いと学びの“森の中の博物館”が実現したのです。

建設中の様子

用地処分が認められた平成2(1990)年から約2年半後、平成5(1993)年6月に博物館の工事が始まり、さらに2年後の平成7(1995)年7月に竣工しました。やや次のコーナーのネタバレになってしまいますが、地質分野の資料紹介では、博物館建設時にボーリング調査(=地盤の強度や地質を調べるために地面に穴を掘って行う調査)した際のボーリングコアを展示しています。ぜひ、ここで紹介したことを思い浮かべながらご覧いただきたいと思います。

博物館建設時のボーリングコア(地質資料)

完成当初の当館

そして、同年11月20日の開館を迎えてから、本当にたくさんの方々にお越しいただきました。入館者数は、開館から半年で10万人を突破し、10年以内に100万人を超えました(平成16(2004)年1月に達成)。

入館者数の推移

これは、30年間の入館者数の推移を表したグラフです。青い棒グラフは各年度の入館者数(目盛りはグラフ左側)、オレンジ色の折れ線グラフが累計数(目盛りはグラフ右側)を示しています。
突出して多いのが平成22年度ですが、これは小惑星探査機「はやぶさ」の帰還カプセルを当館で世界初公開した年です。年間で182,880人にご来館いただき、以降はJAXA連携企画展の開催も恒例となりました。

「はやぶさ」帰還カプセル世界初公開時の様子(平成22(2010)年7月30日)

平均すると1年間で約12万人にご来館いただいている当館ですが、令和2・3年度は新型コロナウイルス感染症拡大による影響を大きく受けました。この頃は全国どこの館園も苦しい時期だったと思いますが、当館も例外ではなく、令和2(2020)年4月1日~6月8日と令和3(2021)年1月13日~3月21日に感染症拡大防止のため休館、さらに同年8月6日~9月30日にも緊急事態宣言下での臨時休館を余儀なくされました。入館者数が最も少ない年で、平時の約4割まで激減していることがグラフから読み取れます。
令和5(2023)年5月からは新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、徐々に日常を取り戻しつつある令和6(2024)年11月に入館者数360万人を達成しました。

こうした困難を乗り越え、開館30周年を迎えられることに感謝の気持ちでいっぱいになります。

開館30周年記念ののぼりがはためきます。

会場では、より詳細な年表を大きく貼り出して展示していますので、ぜひご覧ください!

また、今週末の8月2日(土)は、本企画展最後の関連事業「博物館バックヤードツアー」を実施します。各回20名の先着制ですので、ご興味のある方はお時間に余裕をもってお越しください。詳細は以下のとおりで、当館ホームページからもご確認いただけます。

《博物館バックヤードツアー

日時:8月2日(土) ①午前11時30分~正午(受付:午前11時~)②午後2時30分~午後3時(受付:午後2時~)
定員:各回20名(先着順)。エントランスで各回開始30分前から整理券を配布します。

みなさまのご参加、心よりお待ちしています。

(歴史担当学芸員)

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【市民学芸員かわら版】ここにあったロケ地

7月27日(日)、当館のボランティア「市民学芸員」情報発信チームによる『市民学芸員かわら版』の最新第18号が発行されました。題して、「ここにあったロケ地」です。

『市民学芸員かわら版』とは、テーマ選定から情報収集、記事のレイアウトまで全て市民学芸員が行い、自然・歴史・文化に関する様々なトピックスについて、市民目線を取り入れながらわかりやすく紹介している不定期刊行の壁新聞です。

『市民学芸員かわら版』第18号「ここにあったロケ地」

近年はシティプロモーション活動の一環として、自治体や地元観光協会などが連携をして映像作品の撮影支援や誘致をする動きが広まっています。今回の『市民学芸員かわら版』では、“都市と自然のベストミックス”が強みの本市が舞台となった映像作品について、市民学芸員による写真とイラストを添えて紹介しています。

味わい深いイラストは、すべて市民学芸員の手描きです!

本市の魅力とともに、様々な作品がロケ地マップ付きで紹介されていますので、お好きな作品の聖地巡礼をしてみるのも楽しいと思います!
ご来館の際は、当館1階情報サービスコーナー入口横が定位置の『市民学芸員かわら版』をチェックしてみてください。

(歴史担当学芸員)

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