カイコ、間もなく始まります!

毎年行っているカイコの飼育展示が間もなく始まります。今年の品種は「かい・りょう×あけ・ぼの」(大日本蚕糸会 蚕種科学研究所 作出)です。すでに孵化(ふか)が始まっています。

孵化が始まったカイコ

拡大してみると、毛蚕(けご)と呼ばれるとおり体に毛が生えているのがわかります。

中央左に、まだ頭だけ出かかっているカイコがいます

孵化の様子を紹介した過去のブログ記事はこちらです。
すべての卵が孵化するまで待ち、出そろったところでクワの葉を上げ始めます。これを「掃き立て」と呼びます。それは、毛蚕をクワの葉の上へ移す際に、毛蚕を傷つけないよう羽帚(はぼうき)を使って掃くように落とすからです。

養蚕用の羽箒 当館所蔵

飼育展示は、来週から1階エントランスでスタートする予定です。今年もカイコの成長をお楽しみください!
(生物担当学芸員)

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コミスジのランデブー

気持ちの良い晴天に恵まれた5月28日、博物館お隣の樹林地でコミスジというチョウを見かけました。

葉にとまるコミスジ

大柄で目立つ種類が多いタテハチョウ科の中では、比較的小型で、地味なチョウです。
しかし・・林内をゆったりと2頭で飛ぶのをよく見かけます。この日もついたりはなれたりしながらしばらく飛びました。

コミスジのランデブー

ランデブー飛行などと呼びますが、この2頭はどのような関係なのでしょうか。

近づいたり離れたりしながら飛んでいました

なわばり争いなのか、求愛なのか・・こんなふうに飛んでいると、ちょっと幻想的な雰囲気が漂います。
ふと目を下に移すと、里山の宝石がいました。アカスジキンカメムシの成虫です。

アカスジキンカメムシ

コミスジのランデブーに、アカスジキンカメムシ・・どちらも普通種なのに、一度に見られるとちょっと得した気分になります。
(生物担当学芸員)

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アステロイドデースペシャルトーク2025「地球衝突が指摘された小惑星、2024 YR4とアポフィスにフォーカス!」を開催します

毎年6月30日は、地球への衝突の可能性がある小惑星についての危険を認識し、地球上のすべての人の未来を守るための観測の重要性や対策などを考える「アステロイドデー」です。これに合わせて6月28日(土)、JAXAと日本スペースガード協会、当館が共催し、アステロイドデースペシャルトーク2025を開催します。今年のテーマは「地球衝突が指摘された小惑星、2024 YR4とアポフィスにフォーカス!」

©池下章裕

この二つの小惑星は近年、地球への衝突可能性が議論されています。特に2024YR4は昨年末に発見、2032年の地球への衝突可能性について確率が議論され、今年に入ってから世界的な話題となっています。また、アポフィスは2004年に発見され、2029年に衝突の可能性があるとされていました。しかし近年、軌道計算から衝突の可能性は極めて低いとされたものの、現在も観測が続けられています。今回のスペシャルトークでは、これらの小惑星に関する研究、観測の最新情報などを最前線の研究者が解説します。現在予定されているプログラムは次のとおりです。

【2024 YR4 セッション】
◆2024 YR4について何が起こったのか   吉川 真(JAXA)
◆2024 YR4の地球衝突確率        竹内 央(JAXA)
◆2024 YR4に「はやぶさ2」を向かわせる? 津田 雄一(JAXA)
◆NEOの観測と2024 YR4プレカバリー    浦川 聖太郎(日本スペースガード協会)

【アポフィス セッション】
◆アポフィスについてのこれまでの経緯  吉川 真(JAXA)
◆アポフィスへのミッション1:DESTINY+山本 高行(JAXA)
◆アポフィスへのミッション2:RAMSES 豊田 裕之(JAXA)
◆アポフィスへのミッション3:衝突実験で表面を探る 橘  省吾(東京大)
◆アポフィスの観測、掩蔽観測      吉田 二美(産業医科大学・千葉工業大学)
◆2029年のアポフィスの見え方      浦川 聖太郎(日本スペースガード協会)

なんとも豪華な顔ぶれによるトークセッションです。当日はYouTubeによるライブ配信もあります。

YouTubeによるライブ

そして昨年、JAXAでは小惑星の地球衝突問題について本格的に取り組むため「プラネタリーディフェンスチーム」が発足しました。そのプロモーション画像がこちらです!

©JAXA ©TSUBURAYA PRODUCTIONS

地球を守る!イメージにぴったりキャラクターです。
6月28日、多くのみなさまのご来場をお待ちしております。

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スズメの子、ツバメの子

5月下旬になり、クワの果実が実っています。

ヤマグワの果実

南区のある場所で、クワの木の下でスズメが鳴いていました。よく見ると、巣立ちビナを連れた家族群でした。枝にたくさんのクワの果実が実っているのに、スズメは地面に落ちた果実を好んで食べています。そして、巣立ちビナが翼を震わせて食べ物をねだると、親がクワの果実を与えていました。落ちている果実を食べるのなんて、ヒナでもできるはずですが、このように親から与えられる餌をとおして食べるべきものを学んでいくのかもしれません。

巣立ちビナへ落ちたクワの果実を与える親スズメ

近くでは、ツバメの巣立ちビナも飛び回っていました。でも、体力がまだあまりないのか、時々フェンスにとまって休息します。

ツバメの巣立ちビナ

考えてみると、ツバメが4月下旬に営巣を始めてから抱卵に約2週間、孵化して巣内で成長して約3週間で、巣立ちます。卵からたった1か月で、親と同じ大きさに育ち、飛び回っているというのはものすごい成長速度です。初夏へと移り変わるこの時期は、野鳥の成鳥の速さに驚く日々です。
(生物担当学芸員)

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ホタル観察会を実施

5月23日、市内田名のゲンジボタルの発生地で、県立上溝南高校地域連携実行委員会主催のホタル観察会が行われ、当館学芸員がご案内してきました。
例年、80~100名くらいが参加します。水路沿いの細い遊歩道を歩くこともあり、シーズンの初めに実施しています。ゲンジボタルの発生のピークは、ソメイヨシノの満開から2か月後が一つの目安です。そうすると、ソメイヨシノの開花が遅めだった今年はゲンジボタルの発生ピークもやや遅めになりそうなので、この日に発生しているかちょっと不安でした。
やはり、歩き始めてもホタルはまったく飛んでいません。今年はゼロか!?と不安がよぎりつつ、遊歩道の折り返し地点まで来ると・・飛んでいました!(下の写真は昨年のものです)

昨年のゲンジボタルの様子(長時間露光)

昨年は水路でも多くのゲンジボタルが光っていましたが、やはりこの場所で一番数多く見られました。数は10数頭でしたが、諦めかけた後の出現に生徒のみなさんも大変盛り上がっていました。恒例の“スマホでホタル”の記念写真です。

ゲンジボタルを見られてテンションも上がりました

結局、復路も水路上には飛んでいなくて、出発地点で数頭見られただけでした。引率の先生のうちわにとまったゲンジボタルです。

うちわにとまったゲンジボタル

数は少なかったものの、生徒のみなさんは水路の反射や蛾などをホタルと見間違えては笑ったりして、楽しそうに観察してくれました。4月に事前学習として、動物担当学芸員からゲンジボタルとその生息環境について話を聴いているので、この場所が地域の自然環境を語る上でとても重要であることも実感できたと思います。
(生物担当学芸員)

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当麻田小で縄文土器の講座を行いました。

先日、当麻田小にて、縄文土器を活用した講座を行いました。
これは、緑区にお住まいの方から、ご自身がみつけた土器をもとに、
学校で遺跡のお話ができないか相談をいただいたことがきっかけでした。

いつも土器×2タッチで多くの方に土器をさわっていただいており、
「さわる体験」を重視していますので、このお申し出に賛同し、開催することとしました。

当麻田小の近くの遺跡や、土器の特徴を解説

対象は5・6年生で、合計100名と人数が多いので博物館から持参した縄文土器・石器もさわってもらいました。

博物館から持参した縄文土器

はじめて土器をさわる児童が大半で、とても熱心にさわっていました。
写真や図面とは異なり、質感や重さ、土器の模様など注目する点を説明しました。

いろいろな疑問が尽きません。

昼休みもさわってもらう時間に充てて、5・6年生以外にも2~4年生にも体験してもらいました。

今回、印象的だったのはこちら。説明に使った図の1枚です.

オレンジの線は、昔の住居などがある可能性が高い地域(遺跡の範囲)です。赤星は当麻田小です。児童が、自分の家が遺跡の範囲なのかどうか、地図を見て調べていました。自分の住む場所が遺跡に含まれるのか、自発的に調べる視点はとても重要です。

今後も、土器を活用したわかりやすい講座になるよう経験を積みつつ取り組んでいきます。
(考古担当学芸員)

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サイハイラン

5月23日、博物館お隣の樹林地の林内でサイハイランがひっそりと咲いていました。

サイハイラン

れっきとした野生ランなのですが、平地や低山の林内で普通に見られること(時に大きな群落を作ります)や、全体的にちょっと地味な印象が強いため、ランにしてはあまり注目されません。でも、花を拡大するとやっぱりランの仲間らしい華やかさがあります。

花を横から見たところ

種名は武将が戦場で持つ采配(さいはい)にちなんでいます。武者人形が弓矢などと共に持っている、アレです。

正面から見た花

花がちょっと下向きに群れて咲く様子は確かに采配を思わせます。
薄暗いヤブのような場所でも咲くので、せっかく開花しても見落としてしまいがちです。今回は、蚊の襲撃に耐えながら写真を撮ることができました。
(生物担当学芸員)

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ハハコグサ、チチコグサ

数日おきに降る雨と、初夏を目前にした蒸し暑さのおかげで、道端の植物も元気いっぱいです。この季節に咲きそろう、名前も姿もまぎらわしい近縁の植物を紹介します。
まずは、ハハコグサ(母子草)です。

ハハコグサ

花が黄色く目立つので、こちらは迷うことなく見分けられます。問題は、父の方・・こちらはチチコグサ(父子草)です。

チチコグサ

そして下の写真、並んで生えているのに、この二つは別種です。左がチチコグサモドキ、右がタチチチコグサです。「チ」が多くて呼びにくいですね。どちらも花が穂状につき、花の近くの葉の形が幅広いのがチチコグサモドキ、細いのがタチチチコグサの特徴です。

並んで生えていたチチコグサモドキ(左)とタチチチコグサ(右)

さらにこちらは、ウラジロチチコグサです。

ウラジロチチコグサ

どの種も路傍でごく普通に見られますが、現在、最も頻繁に見るのがウラジロチチコグサです。他のチチコグサの仲間と比べて全体的に緑色が濃いのですが、その名のとおり、葉の下面が白く見えます。

ウラジロチチコグサの葉裏 白毛が密生していて白く見える。茎も白い

このように、ハハコグサとチチコグサの仲間は姿も名前もほんのちょっとした違いで紛らわしいのですが、それもまた植物観察の楽しみと言えます。ちなみに、母子草という字は当て字とされていて、あまり意味は無いようです。
(生物担当学芸員)

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賑やかなクワの木

博物館駐車場前に植えられているクワの木には、いろいろな虫が集まります。虫だけではなく、人も・・

クワの木のまわりで虫や植物を観察する大野村いつきの保育園のみなさん

ご近所の大野村いつきの保育園のみなさんは、毎年博物館をたくさん利用してくれていて、その活動の成果を「学びの収穫祭」で発表もしてくれています。今年もクワの木を観察して、熟してきた果実を食べたりしています。

先生に肩車をしてもらってクワの実を収穫

ただ、このクワの木は実つきが良いものの、なかなかしっかり熟す割合が低いのが残念なところです。

きれいに熟した実が少ない 白くなった実は熟さずに落ちてしまいます

6、7年前に立て続いた台風の接近で、100メートルほど離れた場所にあった雄の木の大木が倒れてしまいました。クワは風媒花(花粉を風で運ばせる花)で雌雄異株のため、それ以来、このクワの木の熟す割合が極端に下がってしまいました。近くにまた雄の木が育ってくれるとよいのですが・・
ところで、子どもたちがこんな虫を見つけてくれました。

ハラグロオオテントウの幼虫(左)

ハラグロオオテントウの幼虫です。クワの木につくクワキジラミの幼虫を食べています。クワキジラミは、葉をしわくちゃにしてしまうため、カイコを育てる上では害虫です。ハラグロオオテントウにはがんばってクワキジラミを食べてほしいものです。アリもたくさん群がっていたのですが、こちらは理由がよくわかりませんでした。食べるために持ち去っている様子は無かったので、幼虫の分泌物でも食べているのでしょうか。
ハラグロオオテントウは間もなく成虫が見られそうです。とてもインパクトのあるテントウムシなので、また見つけたらこのブログで報告します。
(生物担当学芸員)

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令和7年度地質学講座「富士山の溶岩と湧水」1回目

5月18日(日)に令和7年度の地質学講座の第1回目を開催しました。連続4回の講座で、1回目と4回目は博物館での講義、2回目と3回目は野外に出かけて地形や地層の観察をします。

今年度のテーマは「富士山の溶岩と湧水〜桂川上流の地形と地質〜」です。山梨県都留市で富士山の溶岩や泥流堆積物とそれらがつくる地形、湧水を観察します。

相模川の川原では富士山から相模川によって運ばれた溶岩が川原の石としてみられます。また、富士山の麓から流れ下った泥流の地層が相模原市内でも観察できます。

相模川の河原の石として見られる富士山の溶岩(相模原市立博物館常設展示室)

相模原市内の富士相模川泥流堆積物の模型(相模原市立博物館常設展示室)

相模原の地形や地質の成り立ちに深く関わる地層や溶岩を富士山の麓で実際に観察することが今回の講座の目的です。

1回目は博物館で観察地点の地形・地質の概要の解説です。富士山や泥流、湧水のしくみについて説明しました。

2日目は6月1日(日)に都留市の東桂駅周辺で地形や地層を観察します。梅雨が近づいているので雨が降らないよう、気合を入れてお祈りしたいと思います。

(地質担当学芸員)

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