生物分野実習2日目(8月26日)

こんにちは!生物分野の実習生(近内、宮地、山口)です。
本日(8月26日)は専門実習2日目で、企画展示の撤収(移動)と、前回に引き続き標本のレスキュー作業を行いました。

午前中の特別展示「わぉ!な生きものフォトコンテスト」の撤収作業では、作品を特別展示室から常設展示室の出口付近へ移動しました。現在は休館中ですが、再開したらぜひ見に来てください!

フォトコンテスト写真展の移動作業

午後の標本のレスキュー作業では、前回と同様に水害に遭った植物標本の洗浄を行いました。

水害で被災した植物標本の束(標本が新聞紙に挟まれています。新聞も古いものが多く、歴史的資料のようです)

今回の標本は水がしみているものや、虫喰いやカビによって状態が悪くなっているものがあり、より丁寧に汚れを落とすよう心がけました。

今日は、館の入り口付近の木の葉っぱに、アカスジキンカメムシの幼虫がいることに気付きました。

アカスジキンカメムシ

背中の模様、みなさんには何に見えますか?

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考古分野の博物館実習その2

考古分野の博物館実習も、いよいよ後半に突入です。実習の前半は前回ご紹介したとおり、資料の基本的な整理方法を学びましたが、後半は、展示の実習となります。常設展示室の一角を使って、実習生が一つのチームになってオリジナルの展示を作り上げます。

今回展示を行うスペース

展示実習初日の8月24日は、今回の展示テーマを決めるため、遺跡の参考資料などを見ながら打ち合わせを行いました。浮かんだアイデアをホワイトボードに書きつつ熱い議論は午前中いっぱい続き、ようやく、今回は縄文時代の「土偶」をテーマにすることに決まりました。

展示テーマの打ち合わせ

午後からは展示候補となる土偶の確認を行うため考古資料収蔵庫に移動し、収納箱から取り出した土偶を一点ずつ観察し、大きさや状態を確認していきました。

収蔵庫での資料確認

収蔵庫から戻ったら再び議論再開です。土偶をどのようなタイトルで展示し、どんなメッセージを伝えるのか、担当学芸員の助言を得ながら意見を出し合いました。しかし、途中、議論が煮詰まってしまう場面が何度もあり、なかなかまとめることができません。今日中にまとめることは無理かな?とも思われましたが、終了時間の間際で、なんとか展示タイトルまで決めることができました。

実習は残り2日となりますが、これからどんな展示になるのか、その様子を引き続きレポートしたいと思います。

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春とは印象の違う植物

博物館の前庭の樹木の一つに、こんなものがついています。

枝から何か異様なものがぶらさがっています

今年は臨時休館中のためお問い合わせもありませんが、例年、「これは病気?」とか「虫こぶですか?」などと尋ねられることがあります。でも、よくこのゴツゴツしたものを見てみると・・

何かが生まれそう・・

ちょっとホラーな見た目ですね・・

怪物の目ざめ・・?

正体を知らないと思わず後ずさりしたくなるような雰囲気ですが、冷静に観察すると、どうやら果実から種子が顔を出しているということが理解できます。そう、病気でも虫こぶでもなくて、これはしっかり実った果実なのです。では、なんの果実かというと、その花は・・

コブシの花(3月に撮影)

春の訪れを告げる花、コブシです。春に咲く花と果実は随分と異なる印象です。
この純白の可憐な花の名前がそもそもコブシ(拳)なんていう力強い名前である理由は、この果実にあります。果実が握りこぶしのようだから・・
この種子にはもう少しおもしろい特徴があるのですが、それはもう少し熟してからご紹介したいと思います。

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カメムシ注意報

博物館お隣の樹林地を歩いていると、葉っぱの上のかわいい模様が目に付きました。

アカスジキンカメムシの幼虫

よく見ると、同じ木に5、6匹います。真上から見ると、口を開けて笑っているようにも見えるこの虫は、アカスジキンカメムシの終齢幼虫です。ということは、近くにもう成虫になっている個体がいるのではないかと探すと、いました!

アカスジキンカメムシの成虫

この個体は全体の色味が淡く、薄紫色の筋が美しいのですが、緑色や赤スジ模様がもっとはっきりしたものもいます。個体差が大きいので、他の色合いの成虫も撮影できたらまた紹介します。

“カメムシ注意報”のタイトルは、臭いカメムシ大量発生!という意味ではなくて、とびきり美しいカメムシの成虫が見られるタイミングなので、見逃さないように!という意味でした(成虫は春から発生します)。ちなみにキンカメムシ類は、人により感じ方の差がありますが、あまり臭くないと言われることが多いグループです。

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「写真で見る相模原~昭和・平成の生活と民俗~」(No70・盆の砂盛り)

本ブログのNo.22では、お盆の行事として「砂盛り」と言われるものがあり、その分布には特徴があって、市内では、南区磯部と新戸で濃厚に見られ、当麻・下溝・上鶴間は場所によって作り、中央区田名や上溝は希薄ながら家によっては行い、それ以外の北部に当たる中央区の区域と緑区では見られないことに触れました。

砂盛りは各家の入口のところに土や砂を盛って作りますが、家によっても材料や形に違いがあり、前回のブログでは、主に昭和61年[1986]に南区磯部地区で撮影した写真を取り上げました。今回はいつもとは異なり、今年撮影したものを中心に紹介します。

下の四点はいずれも南区磯部・下磯部地区で、下磯部は他の地区に比べて砂盛りがよく作られているところです。一枚目は缶の中に砂をつめ、線香立ての筒を立てています。こうした缶や植木鉢などを使うことは以前から見られました。そして、二枚目は石の鉢、三枚目では専用の自製した木の箱を使っており、階段も作っています。また、四枚目では容器に土や砂をつめるのではなく、全体が石製です。

 

次の二枚は南区新戸の同じ家で、最初は平成18年[2006]、二枚目が今年撮影です。平成18年は土を固めて作られているのに対し今年は石になっており、下磯部の四枚目のものと同様に毎年作る必要がなく、保管していて盆の時に出して使用するものと思われます。

 

最後は南区下溝で、実はこの場所には、ほかでよく見られるような土で作った砂盛りがありましたが、現在はこのようなブロックで囲った中に土をつめるものに変わっています。

 

ここで挙げたのはわずかな例で、これだけでもちろん現状を捉えることはできないものの、やはりブログNo.22で取り上げた昭和61年[1986]に比べると大きく変化し、作られなくなっていると考えられます。それでも缶などの利用はもとより、自製の箱や石を使うなどの形も現れており、市域の文化や民俗を調べていく上で、今後ともどのようになっていくのか、注目する必要があるといえるでしょう。

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生きものミニサロン ウェブ版「ようこそ!小さな昆虫レストランへ」を公開しました!

先日、このブログでも紹介したヤブカラシなどのつる植物について、動画をYouTubeの相模原市立博物館チャンネルに公開しました。タイトルは、「ようこそ!小さな昆虫レストランへ」です。

博物館ホームページの「ネットで楽しむ博物館」のページから視聴できます。
家のまわりの身近な場所でできる自然観察の方法をぜひご覧下さい!

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生物分野実習1日目(8月20日)

こんにちは!生物分野の実習生(近内、宮地、山口)です!

本日は専門実習1日目です。午前中は、ボランティアグループである相模原植物調査会の方々と一緒に、昨年水害に遭った人吉城歴史館(熊本県)の植物標本洗浄作業をしました。

 

泥とカビを残さないように、丁寧に作業を行いました。

全国の博物館が協力して被災した標本のレスキュー作業を行っていることを知って、古い標本の大切さを学びました。

午後からは、博物館周辺の樹林地にて植物採集を行いました。

トゲのある植物、くっつく植物、においのする植物など合計9点採集しました。
今日から乾燥させて、8月27日に標本を作成する予定です。

残り5日間、多くの事を学んでいきたいと思います。

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考古分野の博物館実習が始まりました。

8月に入り、学芸員資格取得のための博物館実習が始まりました。今年度は21名の大学生が参加しており、このうち4名が考古分野の専門実習を受けています。

8月18日の専門実習初日には、資料整理の基本編として、寄贈された土器や石器の注記作業や分類集計を行いました。注記作業とは、土器や石器自体に登録番号や分類番号を直接記入する作業で、資料管理上とても大切な作業です。ザラザラした土器片に数ミリの小さな字をいくつも書いていく作業は大変ですが、実習生はすぐに慣れて、200点以上の注記作業を終えることができました。

注記した土器片

注記のアップ

集計作業の様子

実習2日目の8月19日は、前日に注記した資料の写真撮影と資料カード作りです。ライティング作業に四苦八苦しながら、朝から始めた撮影作業は午後まで及びました。撮影後の資料カード作りですが、実習生が話し合って必要な項目を考え、オリジナルの資料カードを作ることから始めました。作成したカードに情報を記入し、撮影した写真を貼り付け完成となります。前日の集計と写真に写った資料の点数が合わないなど、様々な反省点はありましたが、無事2日目の課題を終えることができました。

撮影作業

オリジナル資料カード

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、今年度も感染症対策による様々な制限下での実習となっていますが、考古分野の実習は来週も続きますので、随時レポートしていきたいと思います。

 

 

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小さな花 その2

先日、このブログで小さな花をいくつか紹介しました。
今回はさらに小さな花の写真を撮影してきたので紹介します。それはヒトツバハギ。

ヒトツバハギ(相模原市緑区)

ハギと名が付きますが、秋の七草、 萩 (はぎ) 、尾花 (おばな) 、葛 (くず) 、撫子 (なでしこ) 、女郎花 (おみなえし) 、藤袴 (ふじばかま) 、桔梗 (ききょう)に含まれるマメ科のハギとはだいぶ違う趣です。七草のハギは秋に野山に咲くハギ類の総称です。例えば相模原市内にも自生するマルバハギはこちらです。

マルバハギ(マメ科)の花

ハギ類独特の桃色が美しい花です。一方ヒトツバハギの花はこちらです。

ヒトツバハギの花

直径3ミリメートルほどで、花びら状のものがかろうじて見えますが、雄しべでどうにか花とわかる程度のものです。確かに、全体としては丸い葉が平面的に並ぶ様子がハギ類に見えなくもないのですが・・

ヒトツバハギ

初秋に実る果実を見ると、いっそう、ハギには見えません。

ヒトツバハギの果実(2019年9月に撮影)

それもそのはず、ヒトツバハギはトウダイグサ科の植物で、マメ科のハギ類とは縁もゆかりもない植物なのです。ただし、相模原市内ではやや珍しい植物です。植物好きの人からすると、マルバハギなどの花も見つけるともちろん嬉しいのですが、ヒトツバハギの方がもっと嬉しい植物なのです。この日見つけたこの株も、枝を一つ採集して持ち帰り、標本にしました。
近くの雑木林では、キツネノカミソリが咲いていました。

キツネノカミソリ

二十四節季の立秋(今年は8月7日)の頃から咲き始めるためか、この花を見ると夏が終わりに近づいていることを感じます。

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「軍都さがみはら展」のコーナー解説ブログ①

緊急事態宣言を受け、7/17から8/29まで開催予定であった博物館×公文書館共催 相模原町誕生80年企画「軍都さがみはら展~国内最大の町誕生物語~」は、8/5で終了となりました。(当館は緊急事態宣言中は休館の予定です)

企画展入口看板です(生き物写真展も同会場で開催していました)

そこで、「軍都さがみはら展」について、今回から6回にわたりコーナーごとにこのブログにて解説していきたいと思います。今回は最初のコーナー「陸軍士官学校の東京からの移転」です。

陸軍士官学校の東京からの移転 展示コーナー

陸軍士官学校は陸軍の将校を養成する学校で、まさに陸軍の中心的施設の一つです。もとは東京  市ヶ谷(現 新宿区内)にありましたが、昭和初期に軍隊の装備の近代化(戦車など)により広大な演習用地が必要となり、陸軍内では移転候補地を模索していました。

そうした中、1936年(昭和11)4月、移転候補地は次の表のとおり八王子附近、富士南麓、原町田西方、愛知県豊橋の4つの候補地に絞られました。このうち、原町田西方が現在の相模原市南部から座間市北部にあたります。

士官学校移転4候補地~相模原市史 現代テーマ編より~

拡大画面は下記をご覧ください

士官学校候補地

移転候補地の条件は、大部隊の演習が可能であること、買収のため土地が安く地主も少ないこと、建築工事に際し基礎工事がしやすいこと、そして天皇陛下が卒業式に臨席(りんせき)するため行幸(ぎょうこう)がしやすいこと等々がありました。最終的に原町田西方は、「実現確実且容易なり」とあり最終候補地に決定しました。

1936年(昭和11)6月27日、座間村役場に集められた座間・大野・新磯・麻溝村の4村長と陸軍主計官(しゅけいかん)との間で、初めて用地買収会合が開かれました。

麻溝村の士官学校・練兵場関係書類

内容は陸軍士官学校用地として座間・新磯村で66.7町歩(66.1ha)、演習場用地として新磯村250町歩(247.8ha)、麻溝村340町歩(336.9ha)の土地を買収したいという申込みでした。

相模原市域の陸軍施設…右下部に陸軍士官学校と相武台演習場とある

練兵場予定図~麻溝村役場資料 士官学校関係書類より~

各村は村内で議論を交わし、特に耕作地の大半を失うことになる新磯・麻溝村は紛糾しましたが、陸軍側の強い態度もあり、村側は失業対策を陳情した上で買収に協力します。

新磯村内磯部地区の買収地請求書類

士官学校の建設工事は、同年10月に起工、翌1937年(昭和12)9月に第一期工事と本科生徒隊1300人の移転が完了しました。

また、同年12月20日の第50期生徒の卒業式に昭和天皇が行幸され、この時に現在も市内の小田急線沿いを通る行幸道路が作られました。卒業式に臨席された昭和天皇はこの地を「相武台(そうぶだい)」と命名されました。

行幸の際における奉拝者の心得

相武台の碑~キャンプ座間内~

また、このコーナーでは、士官学校当時の写真を展示しました。

士官学校当時の写真

その他、現在のキャンプ座間内に残る士官学校当時の建造物などを写真パネルで紹介しました。

旧陸軍士官学校大講堂…戦後劇場として使用されていた

旧陸軍士官学校地下室(天皇陛下の防空壕ともいわれる)

なお、士官学校の用地の約2/3は現在の座間市域です。陸軍士官学校の移転の詳細は、『相模原市史 現代テーマ編~軍事・都市化~』ほか『相模原市史』や『座間市史』などを図書館等でご覧ください。

『相模原市史 現代テーマ編』ほか近現代関係

また、本企画展の展示解説動画を、当館ホームページ「ネットで楽しむ博物館」に掲載しておりますので、そちらもご覧いただければ幸いです。

当館ホームページ「ネットで楽しむ博物館」

 

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