アリの巣の近くに

カタクリの自生地をめぐる調査(ブログ記事)のさなか、足元に転がっている朽木にたくさんのアリがいるのを見つけました。

クサアリのなかま

何という種(しゅ)のアリかは調べていませんが、クサアリのなかまに見えます。
どうやら近くに巣があるようです。
アリたちの回りをよく見ると、面白い昆虫が2種見つかりました。

まずは、こちらの茶色いひょうたん型のもの。

マダラマルハヒロズコガ

これは、マダラマルハヒロズコガという小さな蛾の幼虫が作ったケースです。
中を開けてみることはしませんでしたが、ミノムシの蓑のようなイメージで、中に幼虫が隠れています。

次に見つかったのはアリヅカムシの一種です。

アリヅカムシのなかま

アリヅカムシのなかまはカブトムシなどと同じコウチュウ目に属しますが、体長が数ミリ程度ととても小さい昆虫です。
今回撮影した写真をアリヅカムシのなかまの専門家に見てもらったところ、写真の個体はツノアリヅカムシ属(Basitrodes)の一種であろう、と教えてもらいました。

アリヅカムシのなかまの一部の種は、その名のとおり、アリの巣と深いかかわりのある生活をしています。このようにアリとのかかわりの深い昆虫は、「好蟻性昆虫(こうぎせいこんちゅう)」と呼ばれています。
足元のアリの巣の回りのミクロな世界も、観察するととても面白いです。
(動物担当学芸員)

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ムサシアブミ

博物館お隣の樹林地に、数年前からこんな植物が生育しています。

林内に咲くムサシアブミ

ムサシアブミという、サトイモ科の植物です。博物館やその周辺にも多いミミガタテンナンショウと同じ仲間です。ただ、この植物の本来の分布は西日本が中心で、関東地方南部には分布しません。種名に武蔵(むさし)とつきますが、これは仏炎苞(ぶつえんほう・花を包む部分)の形が馬具の鐙(あぶみ)に似ているからですが、その著名な産地が武蔵国だったとのことです。ちょっと紛らわしいですね。関東地方で見られるのは、栽培されていたものが逸出(いっしゅつ)したと推測されています。

仏炎苞が鐙(あぶみ)に似ていることから名づけられた

近隣の公園などでも増えていて、いかにも南方系の植物らしく、葉が大きくつやつやしていて、さらに変わった形の花を咲かせるため、駆除されることもなく生育しているのをよく見ます。

大きな葉は遠目にも目立ちます

博物館周辺でも爆発的に増えるような気配もないため、とりあえず駆除せずに放置しています。何より、見た目のおもしろさもあり、咲くのをちょっと楽しみにしたりしていて、(国内)外来種の扱いの難しさを実感しています。
(生物担当学芸員)

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シロバナハンショウヅル開花

4月16日、博物館お隣の樹林地でシロバナハンショウヅルが開花しました。

樹林地内のシロバナハンショウヅル

まだ開ききっていませんが、今年はたくさんのつぼみがついているので楽しみです。
ただ、上の写真の株は一般の来館者が入れないエリアにあるため、一昨年から挿し穂で増やし、駐車場のフェンス際へ植えました。今年はその株にたくさんのつぼみがつき、そちらは日当たりが良いせいか、少し早めに開花しました。

駐車場内で咲いたシロバナハンショウヅル

西側の、未舗装の駐車場の一番奥に植えていますので、どなたでも見ることができます。
同じ場所では、絶滅危惧種のカザグルマも植えてあります。これは、市内の自生地の株から、やはり挿し穂で増やしたものです。つぼみがだいぶ大きくなってきたので、来週には咲そうです。

カザグルマのつぼみ

カザグルマは開花すると、その名のとおり大きなカザグルマのような花が見られます。お楽しみに。
(生物担当学芸員)

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3D+縄文土器=??

4月12日に博物館にて、縄文土器の3Dスキャンイベントを行いました。
これは「さがみはらデジタルアーカイブ」の二次公開イベントであり、当館所蔵の縄文土器を活用し、参加者の方に土器の3Dモデルを作成してもらうものです。

講師の野口淳先生(公立小松大学)

初めに講師の野口淳先生(公立小松大学)からどのようにスキャンするのか、簡単な説明です。
使用した機器はスマートフォンで、3Dスキャンアプリがインストールされています。

スキャン中!

スキャン時間はわずか3分程度。完成したものはスマートフォン上ですが、
拡大・回転が自由にできます。
そして、スキャンした3Dモデルと実際の土器を比較する方が大半で、詳しく土器の細部を観察されていました。

次はどの土器にしようかな・・・

最後にまとめとして作成した3Dモデルについて、お一人ずつコメントをいただきました。展示ケース越しでは土器の後ろ半分が見えなくなりますが、3Dスキャンはそうではありません。
博物館資料をしっかりと見てほしい気持ちは、学芸員なら誰でも持ちます。
今回の取り組みは、土器の特徴をより具体的に把握する上で大変効果的であると感じました。当日作成した3Dモデルのいくつかはさがみはらデジタルアーカイブにて公開予定です。

冒頭でも触れたように、さがみはらデジタルアーカイブは現在公開中で、今年度も博物館資料の追加を継続していきます。
世界に向けて相模原市の歴史・文化を発信できる重要な取り組みですので、皆様もぜひご覧ください。

さがみはらデジタルアーカイブ(webページへ飛びます。)

(考古担当学芸員)

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キュウリグサとハナイバナ

路傍にいろいろな草花が咲き出して楽しい毎日です。今回は、花がとても小さくて似た者同士の花を紹介します。
まずは、キュウリグサです。花はとても小さくて、直径2~3ミリメートルくらいしかありません。

キュウリグサ

茎や葉を指で揉んでにおいを嗅ぐと、少し青臭くてその名のとおり、キュウリのようなにおいがします。花をアップにすると、園芸種のワスレナグサに似ています。それもそのはず、同じムラサキ科の植物です。キュウリグサの花の特徴は、中心部分に黄色い縁取りがあることです。

キュウリグサの花のアップ

そして、同じように道端などで普通に見られる、キュウリグサとそっくりな植物、ハナイバナです。

ハナイバナ

キュウリグサとハナイバナは、同じくムラサキ科なので似ていてもおかしくはないのですが、細かく見ていくといろいろと違いがあります。キュウリグサは、茎がスルスルと伸びて、上の方に花がたくさん並びます。花の近くに着く葉は小さく目立ちません。一方、ハナイバナは、葉が目立ち、葉の間に花が着くよう見えるので「葉内花(はないばな)」と名付けられたようです。
そして、最大の違いは、ハナイバナの花の中心部分には黄色味がありません。

同じような環境に生えているのに、明らかな違いがあります。小さくてもこれだけはっきりとした花が咲くということは、その花を目指して訪れる虫がいるということです。どんな虫が来るのか、気になりますね、今度、これらの花の前でじっくり観察してみたいと思います。
(生物担当学芸員)

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雑種タンポポの形

今年はカントウタンポポ(在来種)をはじめとしたタンポポの開花が遅いと、このブログで何度か書きました。4月中旬に入り、開花がぐんぐんと進み、博物館周辺でも地面に黄色が目立つようになってきました。
博物館の駐車場側には雑種(カントウタンポポ×セイヨウタンポポ)が多く、そちらもたくさん咲き出しています。今回は、雑種の総苞(花の受け皿の部分)の形をいくつか紹介します。まずは、カントウタンポポそっくりの雑種です。

識別が難しい雑種タンポポ

これは一見するとカントウタンポポのように総苞がしっかりまとまっていますが、違いは、総苞片の先です。カントウタンポポは、角のような突起があるのが特徴です。

カントウタンポポ 総苞片が見やすいよう、閉じた花の写真です

こちらは、総苞がほぼまとまっているものの、数片の総苞外片(外側の総苞片)が離れています。これも雑種の証です。

惜しい!と言いたくなるような雑種タンポポ

そして、総苞外片のまとまりが悪いこちらも雑種です。

ここまで開いていると、雑種とすぐにわかります

さらに、総苞外片がほぼ開いてしまっているこちらは、一見するとセイヨウタンポポのようなのですが、セイヨウタンポポはもっとはっきりと下へ反り返るので、こちらも雑種です。現在、路傍などで見られるタンポポのほとんどがこのタイプです。

セイヨウタンポポ、と言いたくなりますが、こちらも雑種

そして、典型的なセイヨウタンポポはこちらです。現在、このようなはっきりとしたセイヨウタンポポはあまり見られなくなりました。

こちらが、典型的なセイヨウタンポポ

21世紀に入ったころから、タンポポの世界もだいぶ様変わりしています。これからどのように変化していくのか、興味が尽きません。
(生物担当学芸員)

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ギフチョウ調査(2回目)

3月22日のブログでは、神奈川県の天然記念物であるギフチョウの調査の様子をご紹介しました。
先週末には今年2回目の調査が行われ、参加しました。
前回は残念ながらギフチョウを見つけることができませんでしたが、今回の調査では、ごくわずかな数ながら成虫を確認することができました。

ギフチョウを発見!

ギフチョウの翅(はね)の模様を詳しく見ると、そのギフチョウがどの産地のものかが大まかにわかります。
ギフチョウに詳しい調査員さんによると、今回の調査で見つかった個体の翅の模様は、丹沢にもともと生息しているギフチョウの特徴を示しているということでした。
この調査地では、他の地域から人によって故意に持ち込まれたと考えられるギフチョウが見つかった例があるため、今後も注視を続けていきます。

調査中には、この時期に成虫が発生するチョウの一種のミヤマセセリや、マルハナバチによく似た見た目をしたハナアブの一種にも出会うことができました。

ミヤマセセリ

ハナアブの一種

ミツバツツジも綺麗に咲くなかでの、気持ち良い調査でした。

ミツバツツジの花

(動物担当学芸員)

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中央支援学校の子どもたちと昔の道具

先日、神奈川県立相模原中央支援学校の視覚部門に通う2人の子どもたちが、昔の道具について学ぶために来館されました。
当館には過去に2回、理科の授業で来ていただいており、今回ははじめての社会科になります。

事前に先生から、学校でスチームアイロンを使う機会があったというお話をうかがっていたので、今回は昔のアイロンについて学習することにしました。
用意したのは「火のし、こて」「炭火アイロン」「電気アイロン」です。

左から、火のし、こて、炭火アイロン、電気アイロン

まずは「火のし、こて」を触って、観察してもらいました。

金属の部分と木の部分があることや、重いこと、金属の底の部分がすべすべしていること、多くの気づきがありました。
また、火のついた炭は入れていなかったのですが、「火事のにおいがする」、と鋭い発言も。

「炭火アイロン」はたくさんの穴があることが分かりましたが、なんのための穴かはちょっと難しかったようです。

先生と一緒に、炭火アイロンに触る

また今回は、黒電話の使い方も学習しました。

黒電話

黒電話はアニメにも出てくるので、親近感をもってもらえたようです。

(民俗担当学芸員)

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早春の山野草めぐり

4月9日、市域のカタクリの自生地をめぐり、今年の開花状況を調査しました。いくつかの春の花の開花期が遅れていた一方、カタクリは平年並みの開花で、この日はいずれの自生地もすでにピークを過ぎていました。しかし、きれいに咲いている株もありました。

谷の北向き斜面に咲くカタクリ

上の株を撮影した場所では、撮影しているとヤマビルが靴についてきました。まだ動きは鈍くて吸血されませんでしたが、これから天候によってヤマビル注意のシーズンですね。
カタクリ以外の、早春の花をたくさん観察できました。こちらはヤマエンゴサクです。

ヤマエンゴサク

エイザンスミレ

エイザンスミレ

カントウミヤマカタバミ

カントウミヤマカタバミ

イチリンソウ

イチリンソウ

頭上でさえずりのような鳴き声を聴かせてくれたキセキレイも、夏羽に衣替えしていました。

キセキレイ

花粉の飛散も多く、鼻には負担のかかる調査でしたが、たくさんの花に苦労をねぎらってもらえました。
(生物担当学芸員)

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『相模原市立博物館研究報告 第33集』を刊行しました。

昨年度末に『相模原市立博物館研究報告 第33集』を刊行しました。現在、当館のホームページで公開中です。

『相模原市立博物館研究報告 第33集』

この『研究報告』は当館の定期刊行物で、各分野による調査・研究の成果などを掲載しているものです。『研究報告』というタイトルではありますが、収集資料紹介や、展示の開催結果、ボランティアの活動内容など、前述の調査・研究のみにとらわれず様々な博物館活動について報告しています。
第33集は13のタイトルが寄せられ、大変読み応えのある内容となりました。

2010年以降に刊行したバックナンバーは、すべてホームページで公開しています。『相模原市立博物館研究報告』をぜひご覧ください。

(歴史担当学芸員)

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